---数馬---
目の前には、先代の式森家当主がいる。俺の隣には俺の息子の和樹がいて、兵藤家の現当主が俺達に睨みを効かせていた。
「お主は、現当主に伝えておらぬのか?」
兵藤源氏が、先代当主である俺の親父に尋ねた。
「すまぬ。まだ伝えておらぬ」
源氏に頭を下げる親父。
「お前の息子は、儂の孫を化け物と言ったのだぞ」
「すまぬ。教育が出来て無くて、本当に申し訳ない」
親父は源氏に頭を下げつつ、俺を睨んだ。
「本当にすまぬ。息子と言い、娘と言い、孫と言い…禄でも無いヤツばかりで」
散々なことを言われている。そこまで言われる所以は無いと思うのだが。
「数馬、後まだ聞く権利は無いが、次期当主の和樹にも教えておく。これは兵藤家、式森に関わる禁忌事項と理由じゃ」
確かに姉さんと義兄さんの結婚は、禁忌事項に抵触するので、ダメだと言われた。でも、二人はそれぞれ当主という座を捨てて、駆け落ちした。そして生まれたのが…
それから、延々と親父から禁忌事項と理由を教えられた。和樹はあまりにも長い話だった為、うたた寝をしていた。
「どういうことじゃ?大事な話し中に寝るとは…お主の孫は…舐めているのか?」
「重ね重ねすまぬ…息子の孫への教育が行き届かず…」
「では、先祖還りの危険性があるので、禁忌となったのですか?」
「そうじゃ。今回はたまたま無事に生まれたようじゃが、毎回無事ではない。過去に母子ともに暴発ってこともあったそうじゃ」
それは、禁忌になるよな。
「で、一誠君は先祖還りしていないってことですか?」
「お主の目は節穴か?式森の魔法が効かなかったんじゃろ?覚醒しておる。魔人としての能力がな」
魔人…兵藤家、式森家のルーツらしい種族。魔法などの攻撃を受けた際、そのエネルギーを吸収して無力化、物理攻撃の際は再生能力が発動する無敵の生物らしい。
「そんな危険な生物は、今のうちに処分するべきではないのですか?」
「お主の息子は、儂の孫を処分しろと言っているが、それが式森家の総意と取ってもよいのかのぅ。あぁ、お主の孫でもあったな」
「すみません…息子が無礼で無情なことを…」
親父は源氏に深々と頭を下げた。
「この世界の数馬は、この世界の誠達を殺したヤツらと、同じ穴の狢か?」
聞いたことの無い子供の声がして、一瞬で空気の質が変わった。息苦しい…今までに感じたことのないプレッシャー。
突然、俺達の前に姿を現した少年。
「イッセーを処分だと?ふざけたことを言うな、数馬!」
少年に睨まれただけで、心臓がつぶれそうな感覚が生じ、とてつもなく苦しい。
「お主が、イッセーのチームの長か?」
源氏ですら、顔色が悪いが、声を絞り出すようにして、少年に尋ねた。
「そうだ。まぁ、僕も今はこの世界の並行世界で、兵藤一誠として生きているけど」
並行世界の化け物?
「数馬、初対面の僕に対しても化け物呼ばわりか?まぁ、僕は化け物だから、問題ないけど、この世界のイッセーには言うなよ!」
彼からオーラが放たれてきて、息をするのもつらくなってきた。
「で、だ…イッセーをどうこうするって言うことであれば、この時点で式森家には消えてもらうけど、どうする?先代さん」
「息子の暴言…すまない…許して…くれ…」
「和樹をイッセーのガードに差し出せ。とりあえず、ソレで手を打つ。どうする?先代さん」
「その取引…応じる…」
「ウソ吐いたら針千本飲ませるよ♪お前ら三人にね」
胃に針の刺さったような痛みが走った…
「あぁ、数馬には試しに一本飲んで貰ったよ。その痛みを忘れるなよ。その痛みを5分間隔で1000回与えるからな」
彼は、空間から何かを取りだし、親父に渡すと、親父はそれに血判を押した。その瞬間ソレは燃えて消えた。
「契約成立だ。和樹は何本まで耐えられるかな?あぁ、死んでも続けるからな。地獄でね♪」
コイツ…本当の化け物か?
「そうだよ、数馬。そう言っただろ?ここで、殺すのは簡単だ。ジワジワ殺すのが良いと思うんだ、罰として考えた場合はね」
コイツ…サディストなのか?
「そうだよ。エスプレイヤーだよ、僕♪」
「お主は何者だ?」
源氏ですら息をするのもやっとのようだが、アイツに質問をしていく。
「僕?通りすがりの源氏の孫じゃ、ダメかな?」
おどけたように言う少年。そして、親父と源氏に耳打ちするように、何かを告げた。
「なんだって…」
「えっ…」
親父と源氏は絶句している。どんな驚愕的なことを言われたのか?俺には聞こえなかった。
「そういうことだから、イッセーに手出しする勢力は叩いてくれるかな?僕が出てくると、色々問題が大きくなるからさぁ。あと、イッセー達には僕が、こんなお願いをしたのは内緒だよ?」
「なんで…孫の事をそんなに親身に…」
「僕も禁忌な生まれだから、元々ね。だから、ほっとけないんだよ」
また、親父達にだけ聞こえるように耳打ちをしている。
「え…」
「そんな…」
「そういう事だから…まぁ、僕に比べれば、イッセーはオトク感満載だよね。初めから魔人なんだし。あぁ、僕のことを口外した場合、全員消すからね♪転生できないように魂を消す。いいね?」
頷く源氏と親父。
「じゃ…源氏、イッセーのことをお願いします。僕はたまにしか来られないから、心配でね」
「わかりました。おまかせください」
源氏が少年に深々と頭を下げた。それを見届けて、少年は姿を消した。それと共に空気は普通に戻り、苦しさは消えた。息子は、意識を失っているようだ。
「親父…アイツは何者なんだ?」
「それは言えぬ。言えることは、敵ではない。一誠君サイドにいる分にはな」
親父は含みを持たした言い方をした。
---イッセー---
朝、目覚めると大変な事態になっていた。
「わぁ~い、イッセー君だぁ~♪」
って、セラフォルーさんが抱きついて来た。この行動パターンって…クリスさんに目を向けると、困ったような顔をしていた。
「あぁ…鬼が降臨してなぁ…セラフォルーさんを同化吸収させたようで…」
そういえば、このセラフォルーさんの髪の毛は黒々としている。染めたようには見えないくらい。
「なんで、この世界に…おバカが降臨を?」
イッセさんの思考も固まり気味だ。
「この世界のセラフォルーさんの要望を叶えたみたいだ。と、言うか厄介払いをしたというか…あぁ…」
こんなに凹んだクリスさんも珍しい。リアスがクリスさんを心配して、駆け寄っていく。
「団長…何をしたいんだ?」
クリスさんは困惑している。少し落ち着き、グレモリー夫妻、ソーナ、残りの魔王3名を集めて、セラフォルーさんを紹介した。
「僕達の団長が本来いた世界のセラフォルーさんです。この世界のセラフォルーさんとは同化吸収していまして、記憶は共有できていて、性格、能力、破壊力は合わさっています」
「ど~も♪セラフォルー・レヴィアたんで~す♪」
ソーナは、姉の性格の大変化にショックを受けているようだ。
「なぁ、シュウ様の魔王が、コチラの世界に来て大丈夫なのか?」
アジュカさんが、心配して声をかけた。
「問題無いです♪私、魔王の地位を剥奪されて、元魔王ですから」
この世界の魔王3名が驚いている。
「何をすると剥奪されるんだ?」
ファルビウムさんがきいた。
「職務放棄して、愛する男性の元に旅立ったんです♪」
満面の笑みで話すセラフォルーさん。いや、そこは反省して…
「では、シュウ様の世界では魔王は3名?」
「いや、私の甥っ子が魔王になりました。たぶん、最凶の悪魔じゃないかな?」
正確にはセラフォルーさんの甥っ子では無いんだけど…それに気づかないお…な元魔王様。
「クリスよりも強いの?」
リアスが質問をした。
「う~ん、どうだろう?戦っているのを見たことないし」
頭を斜めに傾けて、記憶を辿っているようだ。
「ガイアは、僕より強いよ。僕は単なる純血悪魔だけど、彼は鬼と天使と悪魔のクォーターだからね」
クリスさんがリアスの質問に答えた。
「悪魔としての基本能力は互角だと思う。お互いにグレモリー家だから」
クリスさんの追加情報にグレモリー夫妻とリアスが、目を見張った。
「そのガイアって者は、誰の血筋なの?」
ヴェネラナさんが暖かい眼差しでクリスさんを見つめている。
「ガイアは、リアスとシュウさんの間に出来た男の子です。僕と違い、紅髪で天使の翼持ちです」
「えっ…」
リアスが驚きの声をあげた。まぁ、他の世界とは言え、同じリアス・グレモリーだし。
「滅びの力に関しては互角ですけど、聖属性の強度が違います。僕は先祖還りなので、脅し程度なパワーですけど、ガイアは天使の血筋で、破壊力抜群です。聞いた話では、生後1週間目くらいで、最上級悪魔を2体を灰にし、生後半年未満で、オーディン、アザゼルを瀕死の目に遭わせたとか…」
この世界の悪魔達が固まっている。いや、そんなスーパーベビーな悪魔はいないだろうな。
「そ、そんなに強いの…」
リアスが一番驚いているみたいだ。そんなリアスを羨ましそうな目で、ソーナが見ている。
「でも、シュウの子供で一番強いのは、ソーたんとの子供のシルキーよ」
セラフォルーさんが自慢げに言った。そんな言葉に驚くソーナ。
「あぁ、シルキーはシュウさんの子供の中で一番強いだろうな。天使の翼は持っていないけど、聖属性攻撃の破壊力は抜群です。ただ…戦闘バカな上、セラフォルーさんのおバカさを受け継ぎ、シュウさん以外の命令は聞かず、性癖は二刀流で破綻している問題児です」
「ちょっと、クリス君。私をおバカと呼ばないでね」
ちょっとプンプンし始めたセラフォルーさん。でも、セラフォルーさん=おバカは、チーム内では有名な代名詞だし…シュウさんすら、そう公言しているし、何よりも、シュウさんによってこの世界に送り込んだのは…
「この世界のセラフォルーさんと同化すれば、真面になると踏んだんだろうな、団長…」
凹んでいるクリスさん。一見、豪快な性格になった、正確に言うならばノープランになった姉に戸惑うソーナ。冷や汗を垂らしているように見える魔王3人衆…どうなるんだ、この世界は…セラフォルーさんが、ラスボスって展開になるのか?
「うわぁ~、セラフォルーさんは厄介払いされたと思っていないんだ…むしろ、最終兵器な精鋭として、団長に送り込まれたと思っているみたいだぞ」
セラフォルーさんの心を読んだイッセさんから、恐ろし勘違い情報がもたらされた。どうすんの?この世界でセラフォルーさんを制御できる者っているの?
「そっか…そのガイア君と…」
ソーナが良からぬ考えを起こしているような…セラフォルーさんの影響か?
「クリスはクリスで良いんだよ。だから…」
リアスはクリスさんを励ましてくれている。
別室に魔王3人衆に呼ばれた僕。
「なぁ、イッセー君。あのセラフォルーは強いのか?」
「攻撃力はたぶんこの世界の悪魔としてはトップクラスだと思います。でも…残念なことに…」
正直な感想を言う僕。悪い人では無いんだけど、シルキーさん並の思考力だし…
「使いようってことかな?」
「そうなります。かみ砕いて、理解してもらえれば、最高な戦力になります。でも、難しいことというか、早合点をして暴走だけは気をつけないと…魔王解雇の原因にもなったし」
シュウさんが消えたことを聞いて、自ら氷の中に閉じこもってしまったセラフォルーさん。シュウさんのいない世界なんか考えられなかったのだろう。場所が悪かったのだ。なにも魔王の間で氷柱に籠もることは無かっただろうに…
一応、地位剥奪の原因も、お話しておく。
「そんなに感情的で情熱的なのか…この世界のセラフォルーには無かった性格だな」
ファルビウムさんが唸っている。
「俺もいずれ、あぁなるんだね」
遠い未来に思いを馳せるアジュカさん。
「紅髪で天使の翼のグレモリーか…」
ガイアさんに興味を持っているようなサーゼクスさん。
三者三様な反応だ。大丈夫かな、この世界は。セラフォルーさんの暴走で、氷漬けな世界はカンベンしてもらいたい。