---シュウ---
クリス達と同時に戦闘フィールドに転送された。転送された位置は、僕が中心地で、クリス達はランダムだ。
まず、慌てずに状況を確認する。イッセー、イッセは龍化してのカウント開始、トスカは女性陣を集めての結界での防御か。
「クリス、戦法は定石通りか?」
クリスの顔は強張っている。ビンゴかな?
「考えましたよ。団長に勝つ為にね」
「じゃ、まず、火力を潰す」
イッセ対策済みの『ダイヤモンドダスト』を、ドラゴンとイッセーとイッセに撃ち出す。装甲の厚い二人には傷を付ける程度であるが、アジとクロウは即死。
「この程度の傷なんか、問題無い」
と、余裕のイッセだったが、徐々に苦しみ出す。
「団長、何をしたんだ…」
「イッセ、お前は大きな誤解をしている。『ダイヤモンドダスト』は相手を爆ぜさせる魔法では無い。元々、相手の分厚い装甲に傷を入れる魔法だ。今まで爆ぜて見えていたのは、装甲が薄いヤツにしか使っていなかったからだよ」
イッセーとイッセが驚いているようだ。
「で、イッセ。お前はもう1つ勘違いしている。僕がお前を倒すのに、いつも手こずっているのは、お前が強いからでは無く、殺さずに倒そうと思うからだ。お前なんか殺すのであれば、簡単なんだよ」
「え…」
言葉に詰まるイッセ。
「イッセーもそうだけど、サマエルの毒を体内に入れれば、お前らは死ぬ。毒は再生能力では無毒化できないから」
目の前の2体のドラゴンは息絶えて、その場で倒れた。それを見たクリスが、狼狽えている。チーム最大の戦力を失ったのだからな。
「何も…そこまで…」
まぁ、ゲーム感覚だとそう思うよな。
「おい、クリス!このゲームは殺し合いルールだ。甘い考えは捨てろ。次は誰だ?」
白音が飛び出して来た。うん?囮かな?それとも…エロっている隙に何かをするのか?そうなると…迷わず、白音の顔面に『ギャラクシー・マグナム』を叩き込む。これは、星霊を纏った拳でのストレートパンチだ。威力は星を破壊するレベルである。白音の頭部は粉々に飛び散った。頭部を無くし即死した白音が倒れた。
クリスは固まっている。まさか、僕が白音を殺すとは、思ってもみなかったようだ。
「じゃ、次は、そこの女性陣♪」
結界無効属性付きの15分モードの『催淫』を発動させる。悶え始める女性陣。
「トスカさんの結界…」
クリスが呟いている。
「はぁ?結界無効属性を術式に組み込めば問題無い。で次は…つがい相手だな。木場、ギャスパー!僕を倒さないと術は解けないぞ!放っておけば、アイツらは狂い死ぬ。ふふふ」
木場は聖魔剣を手にして襲いかかってきた。僕はザンバットソードを手にして、迎え撃つ。
ガチッ!バキッ!
木場の聖魔剣が折れた。狼狽える木場。その隙にギャスパーを屠りに行く。バロールモードになっているギャスパーを抱き寄せ、天使の翼で包む。
「ギャスパーよ、僕のような魔属性の闇属性持ちには、お前は恐く無い。寧ろお前の方が僕を怖がれ!僕は聖属性も持っているんだからな」
聖なる温もりにより、ギャスパーは灰になっていく。
「団長…卒業試験?…」
最期の力を振り絞り、目に涙を浮かべているギャスパーが、呟いた。僕が頷くと、嬉しそうに灰化して消えた。
「お前…ギャスパーに何しやがる!」
木場が新たな聖魔剣を手にして、再び襲い掛かってきた。剣同士がぶつかると、再び聖魔剣が折れた。
「何故…」
「木場、聖魔は融合しただけでは、ダメだ。混合しろ」
はぁっとした木場。
「ドレッシングと一緒だ。混ぜ合わせろよ」
「そういうことか…シュウ…また会おうぜ」
首を差し出してきた木場。
「機会があればな。クリスを頼むぞ!」
頷いた木場の首を、迷わず刎ねた。
「後はクリスだけか?」
僕の身体を雷撃が避雷した。朱乃か…『ハーフディメンジョン』という掛け声が聞こえた。ヴァーリもいるのか。二人に気を取られた僕に、ロセから北欧魔法のフルバーストが撃ち込まれてきた。空気と同化する僕。
「やったか?消えたが…」
「ロスヴァイセさん、まだゲームが終わらない。空気と同化したんだと思います」
クリスが良い読みをしている。う~ん、あの3名には『催淫』が効かないのか。普段、もっと激しいプレイでもしているのかな?まぁ、トスカとヴァレリーは、あれでお終いだろうけど。
『お前らの敗因は、アーシアを入れていないことだ。さすがの僕でも、アーシアは手に掛ける気がしないからな』
居場所を特定されないように、念話で話しかけた。まずは、ヴァーリかな。アルビオンの鎧にタッチすると、神滅具は解除され、地面に落ちていく。ヴァーリの落下速度を上回る速度で『エアースタンプ』で踏みつけた。悲鳴を上げる暇を与えずに、彼女は圧搾され、肉や骨はつぶれ皮だけがかろうじて、原型を留めている。
朱乃は苦しませたくない上、綺麗な死体にしたいので、心臓を掴み鼓動を止めさせた。
そして、ロセだ。
「ロセ、クリスを頼むぞ」
「もう逢えないんですか?」
「次回はラスボスとしてかな♪」
「私も指輪が欲しいんだけどなぁ~」
ロセと口づけをする。
『このまま、退場させてください』
ロセの願いを叶える為、彼女との濃厚な口づけをしながら、ロセの首筋を斬り裂いた。これで、クリスだけだな。僕はクリスの前に姿を現した。
「あとは、お前だけだ、クリス♪」
「賢者様…どうして…あんな惨い殺し方をしなくてもいいでしょ?」
クリスは怒りのオーラを纏っている。
「死の感覚を覚えないと、死ぬのに慣れてしまう。それでは前線では戦えない。いかに生き延びて、護るべき者を護るか、それを考えようとしない。それにこのゲームで死んでも魂は、このフィールド内にある。自分の死に様を見て反省するんだな」
クリスは『ホリーアロー(聖なる矢)』をフルバーストしてきた。僕はソレを吸収する。
「おい、聖属性吸収持ちに、その攻撃はどうなんだよ?」
『ホーリーニードル(聖なる鍼)』をクリスに撃ち込む。それにより、苦しそうな表情になるクリス。
「おい、最強の純血悪魔よ。なんで、苦しいのかわかるか?」
「なんで…聖属性攻撃…それも、こんな弱い攻撃に…何をしたんですか?」
わかっていないのか?自分の身体について…
「何もしていないよ。お前は聖属性を纏った純血悪魔だ。聖属性が少しくらい触れた程度では問題無いし、貫通する攻撃では効果無いんだけど、それの様に長時間体内に留まるタイプは、お前の身体の芯、悪魔としての内臓を焼き尽くす。おい、最強の純血悪魔よ、自分の特性を知らずに、他人を教育できると思うな!だから、お前は1軍になれないんだ、わかったかよ、クリス!」
クリスは返事を返す前に、死に絶えたようだ。
「アジュカ、試合終了だ。コイツらを生き返らせてから、帰還する」
---莉愛---
壮絶な殺し合いは終わった。クリス兄様が…あんなにも簡単に殺されるなんて、想像をしていなかった。
「本気出さずに、終わっちゃったわね」
え?ヴァイラさんは今なんて…
「シュウが本気で戦ったと思っているの?」
「違うんですか?」
「本気だったら、あんなに時間は掛けないわよ。フィールド内の空気を、無価値にすれば、終わるしねぇ」
空気を無価値…そんなことが出来るんだ…
「惨く殺すには、無駄な動作が起きるの。まぁ、隙をわざと作って、クリス達の様子を見ていた感じ」
わざと隙を?
「莉愛、シーグ、いい?こう言う公開の場の戦いは、記憶に残る戦いをしなさい。で、誰も見ていない戦いでは記録にも残せない戦いをしなさい」
記録にも残せない…
「シュウの死闘はほとんど記録に残っていない。シュウは護るための戦いしかしない。だから、必死に戦う場合がほとんど。こんな風な戦いは、シュウのスタイルだと思わないでね」
相棒だったから言えるのかな…
「ヴァイラ様、キャッスルドランに戻りましょう」
メイビスさんが声を掛けてきた。
---アジュカ---
こんなに惨い殺し方は見たことがない。愛する者達をここまで、惨く殺せるものなのか…
「最強悪魔が一瞬で…」
アザゼルの言葉は最後まで続かない。この世界で、こんな戦いは目にしたことが無かったから。
「パンチで顔面を粉砕って…」
「皮だけ残して圧搾って…」
「挙げ句の果てに狂い死に追い込む…」
「畏怖しか無い…尊敬に値しない…」
俺の考えは変わった。神を尊敬してはいけない。畏怖する存在である。ラスボスがいるとするならば、彼で間違い無いと思う。
「う~む、あそこまで強え~と、倒す気すら起きないな」
ファルビウムが唸っている。
「倒そうと思ってはいけないんだと思う。触れてはいけない存在なんだろう」
俺の言葉に頷くみんな。
「リアスは大丈夫か?」
彼の元に留学させた妹を心配するサーゼクス。
---イッセー---
完敗だった。何もできなかった。イッセさんとクリスさんの受けたショックは、壮絶な感じだし。
1軍メンバーのギャスパーさん、ロスヴァイセ先生、木場さんはサバサバしている。
「まぁ、あんな感じだったよ。僕達がシュウと鍛錬していた頃はね」
「もっと酷い現場もありましたよね。あの悪魔至上主義の世界とか。あれに比べれば、惨さは少ないかな」
体験している場数が違うのか、今回のゲームを普通と言い切れるみたいだ。
「シュウ…もう、来ないのかな」
ロスヴァイセ先生は、目に涙を溜めている。
「来ないだろうな。問題点を提示していったから、その辺りを解決しないと、来ないだろうな」
木場さんが言うには、今回のゲームは、チームクリスメンバーの弱点を、示する場だったらしい。
「聖魔をミックスしないとダメなのか…う~ん…」
木場さんは指摘された問題に悩んでいる。
「う~ん…戦闘要員と見なされていないんだ…はぁ~」
朱乃さんは落ち込んでいる。きれいな死体だったのが、許せないみたいだ。
「だって、きれいな死体って、戦っていないってことでしょ?ねぇ、イッセー君」
「そう…ですね…」
戦っていれば、それなりの傷はあるものだ。
「顔面粉砕…読めなかった…」
白音さんは、シュウさんの唯一の弱点と言われている、笑顔封じに凹んでいた。
「痛みは無かった。でも…あぁ、悔しい…抱きつくことも出来無いなんて…久しぶりだったのに…」
イッセさんは項垂れている。クリスさんは放心状態に近い。
「あの二人は、当分ダメだな」
いや、あの二人以外にもう一人ダメな者がいる。ヴァーリだ。
「イッセー…悔しさすらも無い。根幹な部分を変えないと…」
神滅具無効って、ヴァーリのように、神滅具へ絶対の信頼を置いている者にとっては、戦ってはいけない相手だと思う。
「『ハーフディメンジョン』が効かないなんて…」
団長は周囲の次元を初めから歪めていたようで、矩形で範囲指定するアレの場合、矩形での範囲指定が出来無いのが敗因だったらしい。
「その挙げ句に『エアースタンプ』で圧搾だよ…最悪だ~」
僕に泣いて縋るヴァーリ。
「結界無効を術式に組み込むっていうのは、想定外でした。ごめんなさい」
って、トスカさん。まぁ、あれは想定していないよな。無効系を術式化できる技術も凄いけど。
「シルキーに1回、屠られているのを忘れていたよ」
イッセさんが反省会に加わってきた。少し立ち直ったのかな?
「あの毒は危険だ。ドラゴンである以上、あれは喰らってはいけない」
イッセさんの一番ショックだったのは、殺さずに倒すのは難しいが、殺していいなら簡単って言われたことのようだ。
「団長が手こずるから、俺は強いんだと錯覚していた。そうだよな。殺さずって条件が大きかったんだぁ」
それは僕も同じだ。僕も殺さずに倒すのは難しいらしい。殺すなら、今日のような攻撃でイチコロだそうだ。神滅具を纏っても、無効化されゃうだろうし。はぁ~
「まぁ、一番のショックはクリスだろうな」
木場さんはクリスさんを見つめていた。
「愛弟子だったし、いつか気づくだろうと放置していたから。それなのに、まったく想定外だったって…シュウも嘆くよな、まったく」
聖属性を纏った純血悪魔…最強な悪魔の正体だった。聖属性部分以外に聖属性攻撃をすれば、それは悪魔な部分な訳で…焼き尽くされたようだ。
「聖属性の防御力を上げるしかないだろう。う~ん、それこそ聖魔をミックスさせるようなことをしないとダメだぞ、クリス!」
木場さんは叱咤激励をしていく。団長に、クリスさん、イッセさん、僕のことを託されたようだ。それはギャスパーさん、ロスヴァイセ先生にも頼んだらしい。
「まぁ、当面の鍛錬課題はわかったから、良しにしよう。今後はそれぞれの弱点を埋めるような鍛錬をしていって欲しい」