---兵藤家 本家---
現当主の兵藤源氏が寝ている時、源氏の脳へ直接話し掛ける者がいた。
「二人で話せる場所はないか?」
「地下の洞窟でどうじゃ」
「わかった。待っているよ」
源氏は起きて、周囲を見回すが、すでに気配がなかった。源氏は地下の洞窟に向かった。ここは当主である源氏と、その妻である羅輝しか入れないよう結界が張られていた。結界が張られていることを確認する。破られていない。
洞窟の奥にはたくさんの蝋燭が灯っている場所があった。そこに源氏を待つ者がいた。その者は、大きな蝋燭2本と小さな蝋燭1本が並んでいる箇所を見つめていた。
「三人は無事だ」
「そうか。で、お主はどなたじゃ?」
「シュウ・ヨハネ。特務機関の団長だ」
「雇い主は、どなたじゃ?」
「絶対神だ」
「そんな上からの指示なのか」
「あぁ…で、なんでお供の者が一緒に付いてきているのだ?二人でと言ったはずだが」
源氏が振り返ると、黒装束の者が数名闇に紛れて洞窟内にいた。
「お供ではない。結界があったはずだが…」
「式森家の人間もいるって証拠だな」
黒装束の一団は、シュウに襲いかかっていった。シュウは村正による居合い斬りで次々と首をはねていった。
「もう一人、奥にいるんだろ?あ、そうそう。ここからは逃げられないよ。僕のチームの者が結界を張り直したからね。ふふふ」
黒装束の生き残った者が、階段に向かうが弾かれて倒れた。
「この黒装束だ。姫島朱璃、朱乃親子を殺しに来た者と同じオーラが感じられる。おい、兵藤家と式森家は暗殺集団なのか?」
「違う!わしはそんな事を指示をしていない」
「そこの黒装束の者に問う。誰の指示だ?誰の指示で、誠と一香と一誠を殺しに行ったのだ?」
「なんだと?息子家族は、兵藤家と式森家の者に?」
「あぁ、はぐれ悪魔2匹とはぐれ堕天使1匹を金で雇ってな。証拠はあるぞ」
シュウは源氏に羊皮紙に書かれた悪魔側が保管していた契約書を見せた。
「これは…兵藤…照かぁ…」
源氏は、黒装束の者に詰め寄った。
「照、どうしてだ」
正体のバレた黒装束の者が、顔を覆っていた布をはずした。
「兵藤家を出て行った腑抜けの元当主なぞ、死に値するでしょ?強い者が正義、弱い者は罪だというのが、兵藤家の教えではないですか?当主の座を放り出す弱き者には死罪が適当だと思います」
「バカ者!教えの解釈が違うだろ?それで、よく兵藤家ナンバー2の座にいるな!」
「源氏様も腑抜けになられているようですし、私に当主の座を渡してくださいな」
「おい、お前!言う事はそれだけか?随分と蝋燭にも小細工をしてくれているな。芯がおかしな形なのは、消そうとしたかな?兵藤照よ!」
「あぁ、おかしいだろう?誠と一香は死んだのに、蝋燭の炎が消えないなんて。夜な夜な消そうとしたよ。まさか、生きていたとはな」
「お前は、苦しんで死ね」
「あがっ…何をしてんだ…」
「僕はネクロマンサー。魂を弄べる者。お前の魂に直接攻撃を加えている」
兵藤照の目には恐怖の色が浮かんできた。彼の後ろに獣門が開き始めていることに気づかずに。
「おい、トライ!良く噛んで食べろよ!腹壊すと大変だからな」
「ぐぎゃ…」
照は一声上げて、獣門から首だけを出したアイツに喰われた。そして、門は消失した。
「あぁ、これを見てくれるかな」
シュウは1つの手形を源氏に見せた。
「これは、我ら一族の長が書いた手形…お主、あの戦争を終戦に導いた英雄か?」
「英雄かどうかはわからないが、あの戦争に参加はした。魔人を数名屠った」
「魔人のために、隠れ里を確保してくれた恩人ってことか」
「あの時の指令は戦争の終結だからね。タダ止めろでは、再戦しかねないから、領土を確保してあげただけだ。ただ、僕のことを信用だけしてくれればよい」
「どういうことじゃ?」
「こことは違う世界で、誠と一香には僕の仕事を手伝ってもらっている。一誠は、学校に通わせながら、戦いというものを教えている。当分、誠と一香は死んだことにしてほしい。また、狙われるからな。照だけではなく、兵藤家も式森家も欲や権力にまみれた者がまだたくさんいるから、同じ事がまた起きては困るのだ」
「そうだな。そうじゃ、禁忌の件は解決されたのか?」
「解決している。ただ、それのおかげで一誠は人間ではなくなった」
「解決するにはしょうがない事だ。人間という器では、魔人の血は収められない」
「一誠自身は人間だと思っているが、実際にはドラゴンと魔人のハーフの状態だ。だから、一誠には人間として接してほしい」
「了承した」
「娘達が暴走気味なので、解消しろって絶対神様から指令が来た。なので、一誠と娘を会わせる。しかし、兵藤家の家ではガードしきれないので、川神院に一誠をしばらく預けたいんだけど、手配してくれるかな?僕には、この世界の川神院とは接点がないから」
「了承した。今後、お主との連絡方法は?」
「とりあえず、この羊皮紙に描かれている魔法陣に念をこめてくれる?そうすれば、僕があなたに接触しに行くことにするから。連絡方法の充てはあるけど、時間がかかりそうだから」
シュウは羊皮紙を源氏に手渡した。
「では、準備が出来たら、連絡をください。一誠を川神院に預けにいきますから」
シュウは1通の封書を手渡し、転移していった。
『親父へ
世界は広い。自分の世界では最強といわれた俺達が、団長達と行く先々で苦戦している。世界は1つではなく無限にあるんだぜ。
一番ショックだった戦いは、団長との戦いだ。この俺が一瞬で屠られた。一香は廃人になりかけたらしい。死んでも蘇らせる能力があるそうで、俺は生き返ったよ。一香もカウンセリングのおかげで、一緒に戦えるレベルに戻って来た。
兵藤家、式森家に俺達は殺されそうになったらしいが、一誠が殺されないように、兵藤家を立ち直らせてくれよ。頼むぜ!
』
---イッセー---
今回はミッションってことでなくて、たまには人間の世界で修行して、どのくらい強くなったか実感して来いって。期間は1ヶ月くらい。ミッションが発生すれば、短くなるらしい。
「川神院」という武道の総本山が修行の場になる。人間界では死んだことになっているので、川神院からは出ないように言われている。あと、名前も「代羽一誠」にしていることを告げられた。人間の修行なので、ドラゴンに頼るなとも言われている。確かにそうだ。
僕のガード役として、フィアさんが同行してくれることとなった。移動は川神院の門の前まで転移してきた。そして、門をくぐり玄関に向かった。
「ごめんください」
フィアさんが玄関で声をかけた。
「どなた?」
「代羽の者ですが…」
「あぁ、住み込みで修業を希望されている?」
「そうです」
「貴女が?」
「いえ、私はメイドです。この子なんです。修行をさせたいのは。私は身の回りの世話をするために同行しました」
フィアさんが僕を紹介してくれた。
「今、兵藤家が出稽古に来ているんですが、参加しますか?」
「お願いします」
僕は、川神院の道着を渡されて、それに着替えた。そして、道場へ向かった。
道場では、試合形式の組手をしているみたいだけど…武器使用ありって…
刀を振り回す者、ピストルを構える者、兵藤家はひどい戦い方だ。だって、相手は丸腰だよ。
道場の上席(じょうせき)には、難しい顔した老人二名が座っていた。兵藤家と川神家の当主かな?うん?兵藤家の当主の顔?どこかで会った気がするけど…どこだっけかな?
「なんだ、川神院って武神以外はカスだな」
ひでぇ事言うな。
「おい、そこの新入りか?稽古を付けてやる」
って、ピストルを構えたヤツが僕を指差す。
「お願いします」
って、一礼して、戦闘域に入り、臨戦態勢を取る。ピストルで僕の頭を狙い撃ちしてきた。おい、普通の人間だと死んじゃうじゃん。僕は、弾のサイドからはたいて、落としていく。
「なんだって、ピストルが効かない?」
僕の後ろから気配がしたので、身をかがめて水面(みなも)蹴りをして膝を打ち抜く。相手は、自分で持っていた刀で腹を刺した。
「てめぇ、兵藤家にケンカ売るのか?」
兵藤家の参加者全員が、僕に襲いかかってきた。僕は冷静に、ドラゴンショットを撃ち込んでいく。
「やめんか!バカ共!お前らは兵藤家の看板にドロを塗る気か?丸腰の人間一人で、寄って集って武器で襲うとは、嘆かわしいわ」
兵藤家の当主の老人が一喝した。
僕は戦闘域を出て、上席に一礼して、場を後にした。
「君、凄いね。今日から修行しに来た新人君だよね?」
目の前に僕より歳上の女の子がいた。
「代羽一誠といいます。よろしくお願いします」
「私は川神百代よ。よろしくね。ねぇ。本気で戦いたいんだけど」
え?この人バトルマニアっぽい匂いがするんですが…
「本気で戦うことは禁止されているんですけど…」
「誰に?」
「団長に」
「団長って、どこの組織?私が話を付けてあげるから大丈夫よ」
「そうですか」
「おい、イッセー。騙されるな。相手のオーラを読めと、いつも言っているだろ?」
この声は副団長。声のする方を見ると副団長がいた。
「そんな弱いヤツに本気になるな。次期当主を殺したら、修行できなくなるぞ」
「そうですね。すみません」
僕は副団長のヤマトさんに謝った。
---川神 百代---
はぁ?私が弱いって?
「ちょっと待ちなさいよ。私が弱いってどういうことよ」
「こういうことだ」
目の前の相手が指を鳴らすと、私は暗闇の中にいた。音も気配もまるで感じられない。お尻を撫で回されている感覚がある。私は回し蹴りをするも、空振りに終わる。
すると、胸を揉まれて、乳首を吸われている感覚に陥った。正拳突きをするも手応えはないが、確実に、誰か弄ばれている。
下半身に感じたこと無い刺激が走った。太ももが痙攣して脚に力が入らなくなってきた。そして、私は跪いた。口に太いモノがねじ込まれてきた。口が閉じられない。口の端から唾液が垂れていく。
股の…女性として大事な部分にも太い何かが入って来て、私の身体の中で蠢いている。太ももを伝い床に垂れていく暖かい液体…お尻にも何かが入ってきて、蠢いている。背中にはなにか柔らかい棒状の物が何本も押し付けられている。胸に色々な刺激も感じ始めた。私は、複数の男におかされているようだった…感じたことがない絶望感、でも身体は喜んで刺激を受け入れている。性欲と絶望の狭間で、目の前が真っ白になっていった。
---イッセー---
ヤマトさんが指を鳴らすと、百代さんの周りに闇のオーラが纏わり付き、一瞬で倒したようだ。
「何ぃ?百代が倒されているだと…」
師範代のような人が僕に目を向けた。後ろを向くとヤマトさんは既にいなかった。誤解されるって。ヤマトさぁ~ん。
「おい、ルー来てくれ!百代がのされたぞ」
「釈迦堂、本当か?うっ、本当だ。百代、しっかりしろ」
「お前、さっき来たばかりのヤツじゃないか。百代を倒すレベルのやつがなんで、ここで修行をするんだ?」
「どうしたの、イッセー」
あっ、フィアさんが来てくれた。
「そこのアンタら、イッセーを虐めたら許さないからね。さぁ、イッセー。一緒に来て」
フィアさんに連れられて、奥の座敷へと行った。部屋に入るなり、二人の女性が僕に抱きついてきた。
「いっくん、会いたかったよ。うちのクソじじぃが中々会わせてくれないんだもの」
「一誠様、お元気そうで良かったですわ」
わぁ、この女性は誰だ?
「一誠、大きくなったわね」
この年配の女性、どこかで会ったなぁ…う~と、思い出せない。
「おい、一誠が困っているようじゃぞ。自己紹介をしてあげなさい」
あ、兵藤家の当主の老人だぁ…兵藤家?あっ、もしかして
「僕のお爺さんですか?」
「そうじゃ」
お爺さんが優しく僕の頭を撫でてくれた。
「わしらに会ったのは小さい時だったから、忘れていたんじゃないか?」
「はい。忘れてました」
「え?いっくん。私のことを覚えていないの?」
「一誠様…」
「ごめんなさい。覚えていません」
僕は謝った。女性二人が泣きそうになったので、土下座をした。
「本当に、ごめんなさい」
その後、自己紹介をしてもらい、父さんの妹、僕の叔母に当たる、悠璃さんと楼羅さんと判明した。