---ユーストマ---
最悪だ…聖騎士長の甘い言葉…『封印を解けば、お宝がザクザクらしいですよ。俺達は、同行して、内部にいる魔物と戦えるだけで満足です』って、言っていたのに…
この封印って解いちゃダメなヤツでは無いか。しかし、途中で止められなかった。そして、パンドラの箱は、神王の名の下に開かれ、災いが地上へと向かっていく。俺とフォーベシイは災いの代わりに封印の間に封印されてしまったし。災いは俺達に同行していた聖騎士団を食らい、鋭気を養って地上を目指していく。
「しんちゃん、どうするんだ?」
「どうにも出来無い。ここは神をも封印する場所だぞ」
マズい。シアちゃん達に災いが降りかかる。
「外へ連絡をしようよ」
「出来無いんだ」
地下に広がる迷宮。それも地下60階にいる。その上、この封印の間では、魔法が使えないのだった。会話用魔法陣すら開けない。どうするよ、これ…
「うん?しんちゃん、ここに魔法陣が刻まれているよ。何だろう?」
フォーベイシが魔力を注ぐと、何かがどこかに転移していった。
「おい!迂闊に起動させるなよ!」
アイツの発動した魔法陣を見ると、天界への転移陣のようだった。
「天界へ転移できるぞ!」
「うん?俺は行けないけど…」
悪魔では天界へは行けない。
「俺だけ行って助けを呼んでくる。お前は待っていろよ」
「え~、ズルいよ~。しんちゃん!って、ここにも魔法陣がある。こっちなら冥界かな?」
魔法陣に載り、発動したフォーベイシ。
「おい!勝手に起動するんじゃない!」
しかし、アイツは消えずに、ヤハウェ様が転移してきた。
「そう…あなた達がやらかしたのですね…」
怒り心頭気味のヤハウェ様。
「何をでしょうか?」
「今、天界は大変なことになっています。突然、魔神が現れて、天使達を食べているんですよ」
あっ!フォーベイシの発動した術式だな。って…
「魔神ですか?この世界にはいないはずでは?」
「えぇ、封印の間に封印していたのですよ。ココみたいな場所にね!」
俺達はとんでも無い者達を、解き放ったようだ。
---リシアンサス---
3学期の始業式が終わり、教室でまったりしていると、校内に異常を知らせるサイレンが鳴り響いた。
「何が起きたの?」
「ちょっと見てくるわ」
リアスが教室を飛び出した。暫くすると戻って来た。
「大変だよ。天界に何かが攻め込んだって!」
天界に?父親が行方不明なのに…って、何かやらかしたのか?キキョウと共に、情報を収集してみたが、天界と通信が出来無くなっていた。
何が起きたのだろうか?
---兵藤誠---
天界からのエマージェンシーコール。俺と一香で向かうと、天使達が喰われていた。黒い魔物に…いや、魔物ではない…まさか、これが魔神族か?
天使の聖属性攻撃、熾天使以上が持つ神格魔術が、まるで効かない。まずいって、これって…俺達でも無理な気がする。
魔神が俺達を目で補足したようで、こっちへやって来た。
「一香!逃げろ!」
魔神と一香の間に入るが、簡単に投げ飛ばされてしまった。
「いやぁぁぁぁぁ~!」
一香は襲い掛かられて、首の肉を噛み切られた。肉の無くなった首は頭部を支えられなくなり、地面に落下した。苦しげな表情の一香の頭部が転がっていく。
「一香!」
魔神は肩口を丸かじりして、肺臓、心臓を手づかみで掴みだし、食べている。俺は一香を取り戻そうとするが、簡単にはね除けられてしまう。どう戦えばいいんだ?
片方の乳房を食いちぎられた時、魔神が叫び声をあげて、その場に倒れ込んだ。
「おい!俺の獲物を…これじゃ楽しめないだろ!!」
来てくれたんだ…俺にとってのヒーローが来てくれた。
「誠、何しているんだよ。封印を護れって言っただろ?聖騎士なんて、クソ野郎達を信じるなよ!」
怒りまくっている。イッセーがいないことを知れば、更に…
「何で、イッセーがいないんだ?おい!」
しまった。心が読めるんだった。
「そこの黒いの!一香にした仕打ち、許せない!トライ君、食べていいよ」
「魔神か…うまいのかな?」
藻掻いている魔神をおいしそうに食べ進める、トライヘキサ…魔神よりも狂気を纏っている俺のヒーロー…
「どう?トライ君」
「僕以外だと魔神化しそうだな」
「そうか…トライ君だけか」
一香の死体を修復し始めてくれたシュウ。
「誠、コイツを生き返らせたら、一晩借りるぞ。エナジードレインしたいんだよ♪」
拒否は出来無いので、頷く俺。
「天使達はみんな喰われたのか…冥界も酷い有様だったよ」
冥界もやられたのか…
「誰だよ!封印を解いたバカは!!で、イッセーはどうした?」
うっ!
「なんだって…ドラゴニールが発生した世界があるのか?」
俺の記憶を読んだシュウ。
「う~ん、ここは今日中に掃除をする。誠は封印を解いたバカを見つけろ!たぶん、封印の間にいるはずだ」
「わかった。で、イッセーの方は?」
「難しいなぁ。僕、忙しいんだよ。短時間で終わる案件なら、動けるけど。イッセーの飛んだ世界は、短時間で終わらない。どうするかな?」
「俺達が行く」
「ダメだ。無駄死だよ。1匹でこの様だろ?」
確かに…
「アイツの飛んだ先は、魔神の巣窟だと思う。で、魔神のボスクラスを倒す前に魔神化したヤツと、ドラゴニールの配下を解放しないとダメだ。あの世界のイッセーはダメなんだろ?」
ドラゴニールの配下だな。
「一応、何かの為に仲間を残しているが…」
シュウの顔が一瞬歪んだ。何かがあったようだ。
「鳴神が逝ったそうだ。くそっ!ソーナもソーナの子もダメだったのか…」
イッセーは?
「イッセーか?わからない。モニタリング装置をつけていないから」
鳴神達にはつけていたのか…
「また、来る…今さぁ、活動限界は10分なんだよ。一香の死体は防腐処理してある。次回入魂するから、大切に保存しておけよ」
そういうと、シュウは消えた。
---イッセー---
百代がやられた…再生能力を過信したのが裏目に出た。傷口から魔神の血を入れられてしまったのだ。
「イッセー!魔神化する前に殺せ!頼む!なぁ、私の手でイッセーを殺したら、団長に顔向け出来無いよ~」
泣き叫ぶ百代。身体が徐々に大きくなっていく。百代の身体が、黒い物体に埋まっていく。
「イッセー!頼む!なぁ!」
百代の顔が見られない。首元だけを見て、首を切断した。まだ、魔神化が済んでいない、百代はその場に崩れた。しかし、百代の身体と魔神の身体が融合しだしていた。百代の身体に黒いラインが何本も刺さり、百代の肌と筋肉は溶け、血管が浮き出している箇所がいくつもある。
「イッセー!」
誰かに身体を揺さぶられた。呆然と百代を見ていたようだ。って、誰だ?
「イッセー!」
そうだ、ヴァーリの声だ。
「先を急ごう。戦力が減ったんだぞ。いいか、ガイラはお前が連れて行け。次は私が盾になる。お願いだから、あぁなる前に殺してくれよ」
ヴァーリの乾いた唇が、僕の乾いた唇に重なった。
「わかったよ。でも、ヴァーリ、最後まで一緒に居て欲しい」
「当たり前だろ。みすみすやられないさ♪」
百代の頭部だけ、土に埋め、墓標を立てて、僕、ヴァーリ、ガイラの3名でバベルの塔を目指し、歩を進めた。
---リシアンサス---
学校から戻り、情報を仕入れようと、イッセー君の家に行くと、誠さんが泣いていた。誠さんの目の前の棺には、一香さんが横たわっている。
「どうして?なんでですか?」
「シュウが助けに来てくれて、身体を修復してくれたんだ。次回来たら、入魂してくれることになっている。それまでの間、俺は彼女の死体を護る」
一香さんが死んだ…それは衝撃的である。この世界の最強コンビの片割れが死ぬ戦いって…それも、この世界で起きた衝撃…
「もしかして、天界ですか?」
「あぁ、天使は全滅だ。冥界では堕天使が全滅らしい」
視線を一香さんから外さずに話す誠さん。
「誰が?」
「地下迷宮の最下層にある、封印の間の封印を解いたバカがいたらしい。平和だった世界に居なかった者を解き放ったようだよ。アイツらの前では、俺の戦闘力は無力に等しかったよ。一香が目の前で食べられているのに、目の前の敵にダメージがまるで入れられないなんて…」
悔しそうな誠さん。
「イッセーの向かった世界は、そんな敵がゴロゴロいる世界だそうだ。たった3名で行かしてしまった俺は、指令官失格だ。もっと戦力を持たせれば良かった…」
それは、イッセー君は助からない…生きて戻れないんだな…悲しみが急激に湧き出した。一緒に行けば良かった。回復役として…もう会えないのはイヤだよ!
「いやぁぁぁぁぁ~!」
悲しみに心が満たされ、溢れ始めると意識が飛んで行った。
---式森数馬---
誠さんに呼び出されて、彼の家に着くと、聖なるオーラで封印された棺の中に、姉さんが横たわっていた。しかも全裸で横たわっている。こんなきれいな裸体の死体は見た事無い。
「シュウが魂を入れてくれるまで、このままキープしろと言われている」
あの自信に満ちあふれていた誠さんが、肩を落として泣いていた。
「どうして…」
「人間では勝ち目が無い敵だった。俺は息子を、そんな敵の巣窟に送り込んでしまった。なぁ、数馬君、俺はどうすれば良いんだ?」
人間では勝ち目が無い敵…誠さんの口から出るとは思わなかった。彼でさえも、勝て無い敵、いや姉さんを護り切れなかった敵なのか…
「シュウのチームが掃除をしてくれて、地上、天界、冥界の敵は倒してくれた。でも、地下ダンジョンにいるヤツを倒さないといけないんだ。数馬君、頼む。一香を護っていてくれるか?」
この人は勝て無い敵と戦う気のようだ。自分だけ生き残るのはイヤなんだろう。
「俺も行く」
「ダメだ。一香を護れる者がいなくなる。じゃ、頼むよ、数馬君」
誠さんは転移していった。イッセー君は仲間二人だけを連れて、巣窟に向かったそうだ。和樹が逃げた気持ちも分かる。そんなのと戦う戦場なんか行きたくないから。でも、誠さんもイッセー君も進んで戦場へ向かった。彼らの尊敬する師匠のようになる為に…
---リアス---
冥界は酷い有様だった。そこら中に死体が置いて有る。黒い魔物の血液は劇薬らしく、触れるのも近づくのも禁止になっていた。でも、根性試しをするバカは冥界にもいた。近づき、黒い魔物化するバカ達。それと抗戦する魔王軍の軍勢。バカ達の戦力は凄まじい。それよりもアイツらの血が危険だ。体内に侵入すると、魔物化してしまうようで、ファルビウム様が魔物化してしまった。
お兄様の指示で、冥界を完全封鎖することになった。戦っても勝て無いなら、封じるしかないってことのようだ。
「アジュカ…後は頼めるか?」
「お兄様、何をおっしゃっているんですか?」
「リアス、俺は最強の魔王だよ。逃げる訳に行かない。アイツらを全部滅びの力で消してやるよ。いいか、アジュカ!万が一に備えて、完全封印しろよ」
完全封鎖では無く、完全封印って…全滅させても、私の前に帰れないお兄様…
「お兄様…」
私は魔王軍の者達により、地上へと連れられていく。そして、最後にアジュカ様が地上へ来られると、冥界は完全に封印された。
---イッセー---
少ない食料をヴァーリと分け合う。
「ヴァーリ、もう少しだ。塔に行けば食料があるから」
「あぁ…でもガイラにタップリと食べさせろよ。私は…」
意識が突然飛んだヴァイラ。その場に崩れた。脈を測る。鼓動を感じるが弱い…塔の近くの筈だ。砂嵐が酷いから。
『ロデム!』
念話で呼び掛けるが、ロデムが反応しない。まだ、遠いのだろうか?
「ガイラ、大丈夫か?」
「うん…でも、ヴァーリさんが…」
荷物を背負っている僕は、ヴァーリを抱き抱えた。置いて行けない。僕の大切なパートナーだから…
『ロデム!』
まだダメ…
『後、50メートルです。がんばってください』
ロデムの声を漸く拾えた。言われた通り頑張ると、目の前にいきなり塔が現れた。入り口を入り、エレベーターで居住エリアへと向かった。助かったのか?
居住エリアにあるコントロール室に向かうと、ロデムが待っていた。
「お待ちしていました。イッセー様」
「ガイラに食料、ヴァーリには水分だ」
ロッカーが開き、水筒と簡易食料を手に取り、ガイラとヴァーリへ差しだした。ヴァーリは自力で水分が取れないくらい衰弱していた。僕の口に水を含み、少しずつ、ヴァーリの口の中に垂らしていく。暫くすると、ヴァーリがドンよりした目付きをして目を開いた。
「助かったのか?」
「塔には着いたよ」
「ガイラは大丈夫?」
「あぁ、今、食事中だ」
「そう…」
僕は、再びヴァーリの口の中に水を垂らし始めた。
---リアス---
シュウさんに貰った種を見ていた。結婚相手が見付からない時のお守りって言っていた。イッセー君はいない。眷属の殆どがいない。お兄様もいない…種を畑に植えた。傍に誰でも良いからいて欲しいから。これで、お腹の中に子供がいてくれるはず…