---イッセー---
ヴァーリは日に日に衰弱していった。そして、生命維持装置の中に横たわっている。
「命を削りながら、ここまで来たようだ。イッセー様を護りながら…」
ロデムがヴァーリの容体を説明してくれた。命を削りながら?
「彼女は体力、スタミナがそんなに高く無かった。それなのに、無理をしすぎたようです」
僕のせいだ。ガイラに気をつかっていて、ヴァーリに頼りすぎてしまったのか。
「ヴァーリぃぃぃぃぃ~!」
生命維持装置に泣きすがる僕。そんな僕にか細い声のヴァーリが話し掛けてきた
「イッセー君、お願いを聞いてくれるかな?」
「もちろんだよ。ヴァーリの願いは叶えるよ」
「私のアルビオンを、ガイラにあげて…もう、戦えない私には必要ないから」
なんで、笑顔でそんなことを言うのさぁ。
「私の願いは叶えてくれるんだよね?イッセー君…」
そうだけど…
「早く…意識が飛ぶと、抜けなくなる…もし、私が死んで、魔神に渡ると、この世界は終わる…だから…」
言っていることはわかる。でも…ヴァーリは笑顔で僕を見つめている。うっ…やりたくない。でもヴァーリの願いだし…
『強奪』を発動すると、ヴァーリから白い球体が飛び出した。『譲渡』を発動すると、その球体はガイラの身体に吸い込まれて行った。その瞬間、はっとしたようにガイラの両目を大きく開き、ヴァーリに駆け寄った。
「ヴァーリさん…ダメだよ…ヴァーリさん…うっうっうぅぅぅぅ~」
ロデムは生命維持装置の電源を切った。つまり、そういうことなんだね。
「彼女に宿る神滅具の力で、生き延びてきただけだったようです」
ロデムが事態を説明してくれた。ガイラに命のリレーをしたのか…なぁ、ヴァーリ!
冷たくなっていくヴァーリを抱き起こし、抱き締めた。
---式森和樹---
翌日、学校へ行くと、皆沈んでいた。天界と冥界が全滅というニュースが世界中に流れ、絶望的な戦いの日々が近いと感じた。
天界所属の者、冥界所属の者達は呆然としている。これでは勉強なんて手に付かないだろう。
「龍牙、どしたんだ、その腕は?」
片腕に包帯を巻いている龍牙。
「アニキにやられた。イッセー君を護りきらないことに、腹を立ててね」
こいつも家から破門されたのか?戦いから逃げたから。
「和樹、今からイッセー君の元に行けないかな?」
龍牙が呟くように言った。
「死にに行くのか?」
「生き残れると思うのか?イッセー君無しで、この世界でさぁ」
生き残れないだろう。最強軍団はこの世界から離脱しているし。
「イッセー君を連れ戻せれば、勝機があると思うんだよ」
-----
放課後、龍牙と共にイッセーに家に向かった。しかし、そこには父がいた。
「今更、なんだ?和樹よ!」
父の威勢は弱々しかった。何かあったのか?
「今からイッセー君の元へ行きたいんです」
龍牙が用件を伝えた。
「はぁ?今更か?この状況を見て、この世界から逃げるのか?」
この状況?父の前には大きな箱があった。その箱の小さな小窓を覗くと、一香叔母さんがいた。これって…
「姉さんは死んだ。誠さんは。戦いに出て、戻って来ない。なぁ、転移術を使える者がいないのに、お前らはどうやって、イッセー君の元へ向かうのだ?」
え?一香叔母さんが死んだ?式森家前当主だった、叔母さんの死…それは俺にとって衝撃だった。
「魔神相手に、逃げるしかなかったらしい。式森流の魔法なんかでダメージが入らないそうだ」
一香叔母さんの魔法…歴代式森家当主において、最強と言われていたのに…それなのに、ダメージが入らないって…
「和樹、どうするんだ?あの方達に言われた通り、剣は使えるのか?」
使えない…より強力な魔法の開発に時間を費やしてしまった。
「教えを無視する傲慢さ、それがお前の弱点だ。言っただろ?剣技に魔法を乗せろと。俺の教えすら聞かない、お前にはがっかりだ」
父は俺の方を見ずに言い放った。
「すみません。どなたか、転移術を出来る方を知りませんか?イッセー君のお父さんの元で一緒に戦いたいんです」
龍牙が余計なことを言った。行っても、足で纏いな筈だ。
「私達が一緒に行きます」
背後から、女の声がした。
---イッセー---
ヴァーリの亡骸をロデムに託した。ロデムは、ヴァーリの亡骸に防腐処理をしてくれた。団長が来れば、蘇生できるように。
「で、ロデム。どうすれば、アイツらを倒せるんだ?」
「モニタを見てください」
大きなモニタに魔神の解剖図が表示された。
「血液を摂取した宿主の身体の皮膚と筋肉を糧にして、魔神細胞が活性化して、宿主を体内に取り込みます。宿主に刺さっているラインは、神経細胞で、宿主の能力を再現しています。2つある心臓は、魔神の大きな身体を動かすエンジンと思ってください。取り込んだ宿主が制御コンピュータの役目をして、身体をコントロールしています。なので、取り込んだ者の心臓もあり、合計で3つ有ることになります。で、対処方法ですが、コントロールユニットである頭部切断が有効的です」
3つも有るのか…頭部切断…百代への対処は正解だったのか…百代…
「宿主の思考回路はカットされており、敵を倒して食べるという本能だけで動いています。中には誰かの命令で動く魔神もいるので注意が必要かもしれません。」
誰か?黒幕がいるんだな。
「ドラゴールの方は、ドラゴンを味方につけ、魔神、生き残った者達の見境なく、ドラゴン達に捕食させています。彼には何も取り憑いていないようです」
「そんなはずは…あの子、優しい弟が、あんなことしないですよ!」
ガイラがロデムに噛みついた。うん?違和感がある。弟…種は1つだよな?で、ドラゴンの笛は神器だったよな…
「ガイラ、ドラゴニールは双子か?」
「違います。1つ下ですけど…あっ!」
ガイラも気が付いた。ドラゴニールの父親は誰なんだ?団長が父親の場合、神器を持てないはずだ。あれは人間かハーフ人間しか持てないから。僕のように後天的に持つ者もいるが、その場合、誰が与えたんだ?
「あの子の父親って…誰なの?黒幕なのかな?」
涙目で僕を見るガイラ。
「接触して確かめるか。オーラでわかるはずだ」
元々はリアスと鳴神の間に産まれるドラゴニールが持つ神器だったはず。だけど、この世界の鳴神は生殖能力は無い。そうなると、鳴神のDNAとリアスのDNAを掛け合わせた可能生が大である。
「ロデム、ドラゴニールの父親が黒幕の可能生が大だ。情報収集を頼めるか?」
「出来る限りやってみます。あと、日本のイッセー様の自宅に、何者かがいるようです。生き残りかもしれませんが…」
生き残りがいるのか。行ってみる価値は有るな。敵だったら、倒せば良いし。
「わかった。行ってみるよ!」
---リシアンサス---
龍牙さん、私、キキョウ、ネリネ、リコリスで、誠さんの後を追った。オラリオの遺跡跡へ転移すると、封印は破られていた。私達は、封印されていた入り口から迷宮に足を踏み入れた。
「ここから、誠さんの元へ転移します」
転移陣を発現させて、誠さんの元へ転移した。
「え?来たのか?」
私達を見た誠さんは、どこか疲れているようだ。
「えぇ、一緒に行きます。今、回復術を施しますね」
術を掛けると元気な誠さんに戻っていく。
「ありがとう…もう少し戦えそうだよ」
誠さんを先頭に、迷宮を下っていく。しかし、魔神と言われている物は出ず、普通の魔物が現れるだけだった。
「魔神はもう出ちゃったのか?」
誠さんが索敵を掛けるが、見付からないようだった。そして、地下60階に到達した。
「あれが封印の間の扉だよ」
封印されているようで、みんなで開けようとしても開かない。
「う~ん…封印はされているな。どこかに抜け道があるのか?」
封印の間に入ることが出来無い。ってことは、出る事も出来無い筈である。なのに、どうやって出て来たんだ?
「封印は生きている。じゃ、どうして?」
誠さんが考え込む。その間、私達が索敵をして、敵に備える。
「わからない…アイツを呼ぶかな…」
誠さんが私を見つめている。う~ん…想像は付く。願いを叶えるには供物が必要と習っているから。はぁ~。
「私が供物になります」
「悪い…男は供物にならないんだよ」
誠さんが、懐から召還用のお札を取りだした。私は服を総て脱ぎ、そのお札を、下の入り口から私の中に入れた。
『我が信仰する神よ!ここへ現れ給え!』
誠さんの祈りが唱えられて、私の敏感な部分が…悶悶としていく私。
「ダメ…舐めないで…責任取ってくださいね」
お札が太くて固い物に変化していく。全身に電気が走り抜ける。痙攣が止まらない。口からヨダレが零れ落ち、茂みが湿地帯へ変貌していく。
「シアかぁ…まぁ、気持ちの良い身体になったなぁ」
目の前に団長が現れた。私のヨダレを啜っている。身体の中で蠢き、舐めて居るようだ…
「で、どうした?誠がこのような手で、僕を呼び出すとは予想外だよ」
「緊急事態でしたから。なりふり構っていられないんです。シアちゃんには悪いことをしたのが、残念です」
「え?僕って残念賞なの?」
凹む団長。いや、凹んじゃダメだよ。団長の身体に抱きつき、出来る限りの奉仕をしていく。
「健気な女性は好きだよ、シア♪で、願いはなんだ?」
「封印の間の封印が破られていないんですが…」
団長は扉をガン見した。
「あぁ、正式な手順で開けたバカがいたようだな」
正式な手順?
「そうなると犯人は、一人だ!シアのバカ親だな」
えっ?私の…そう言えば、長期行方不明だな…萎えていく私の身体。
「まぁ、萎えるよな。後で、供物プレイはして貰うからな」
『着衣』により、体液塗れな身体に服を着衣させられた。気持ち悪いんですが…拷問でしょうか?
「この扉は神なら開けられるんだよ。神が封印した者だからね」
神王な父…何をやらかしたんだ?
封印無効の能力で、団長が扉を開いた。封印の間には、バカ親2匹とヤハウェ様がいた。
「で、お前ら何をしているんだ?」
団長が声を掛けると、ヤハウェ様だけが跪いた。
「ヤハウェがバカ2匹を連れ込んだのか?」
「滅相もございません。私は被害者でございます。強制転移の術で、ここへ転移させられました」
バカ親2匹は団長を見て固まっている。
「はぁ?あれを発動したバカがいたのか?天界では、どんな教育をしていたのだ?」
「しっかりと、パンドラの箱に関して教え込んだはずです。なのに…このボンクラ神王ときたら…」
あぁ、父がやらかしたんだですね…
「いや、俺じゃ無い。発動したのはフォーベシイだよ!」
「悪魔王ではここに入れないはずだぞ。お前が入ったんだろ?」
「いや…だから、聖騎士長に騙されたんだ。ここに、お前に払う借金をチャラに出来るお宝が入っていると…」
やはり、借金返済の為なのね…おい!その為に、イッセー君は…
「神王様に申し上げます。アンタらのせいでイッセー君が…どう責任を取るのよ!」
「シアちゃん…えっ!イッセー君がなんだって?」
「じゃ、封印を破ったのは神王で、アイツらを解き放ったのは、悪魔王ってことだな?おい!どう責任を取るんだ?お前達の欲深さのせいで、一香が死んだ。ファルビウムもサーゼクスも死んだ。アザゼルもだ…どうするんだ!おい、クソ権力者達よ!」
私以上に怒りを纏った団長。ヤハウェ様が必死に謝罪の言葉を口に出すが、
ドサッ!
団長がヤハウェ様をケリ飛ばした。
「おい!ヤハウェよ!謝罪で問題解決するってことは皆無なんだよ。行動で示せよ」
「え…ごめんなさい…」
「ヤハウェ!この部屋にある魔法陣の総てを消せ!転移先を総て教えろ!」
「はい…天界、冥界…バチカン…」
バチカン?被害報告は無かったけど…
「龍斗を向かわせたが、バチカンはダメらしい」
「えっ!アニキが…」
龍牙君が声を上げた。
「お前の尻ぬぐいがしたいと申し出たんだよ。で、バチカンの様子を見てきてくれって頼んだのだけど…聖騎士を取り込んだ聖属性の魔神達が、猛威を振るっているそうだ。その中の数匹が冥界に転移して、サーゼクスを仕留めたらしい」
「そんな…」
フォーベシイおじさんが声を上げた。
「驚いた顔をしてもダメだ。お前らは重罪だからな。よりによって、神王と悪魔王が欲に目が眩んで、パンドラの箱を開けたって…前代未聞な惨事だな」
団長の声が徐々に危険になっていく。死を感じさせるオーラが言霊に載って、私達の身体に染みこんできた。
「なぁ、娘達は助けてくれ!」
「じゃ、何かい?僕の弟子達を助けてくれるのか?」
弟子達?
「シア…百代とヴァーリが逝ったんだよ…後はイッセーだけだ。送り込んで生きているのはな」
百代さんとヴァーリさんが…なんで…
「なんで?シア、お前こそ、なんで一緒に行かなかったんだ?お前達には回復術を叩き込んだよな?疲れを取る方法も叩きこんだはずだ。なのに、ヴァーリは過労死だよ。お前がいれば防げたかもしれないのに…」
団長の悲しみのオーラが、私の身体を撃ち抜く。そんな…
「誠!バチカンへ行くぞ」
「わかった」
誠さんと団長だけ転移していった。
---間神龍斗---
聖属性の魔神…厄介だ。魔属性の俺達だと分が悪い。
「総大将、引きましょう!」
烏間に声を掛けられた。
「引けない…弟のしたことの穴埋めはしないと…」
「遅くなって、悪いなぁ、龍斗」
エロ神が来てくれた。
「どうすれば良い?」
「物理攻撃だけなら通る。心臓を2つ潰すのが難しかったら、取り込んだヤツの首を落とせ!」
魔神達のみぞおち辺りには、取り込んだヤツの頭部が出ていた。
「わかった」
「知り合いでも、躊躇無く斬り落とせよ」
手下にそのように指示を出し、
「弟はどうした?」
「迷宮に置き去りにした。あそこは安全だ」
そうか…弟は無事なんだな。
「おい、バチカンから出すなよ!」
---イッセー---
ガイラと二人で、僕の家を目指した。地軸が動いたのか、転移術で狙った場所に転移ができなくなっていた。まぁ、誤差の範囲といえば、そうなんだけど。
「ガイラ、もう少しだ」
「はい!」
ガイラの滅の力は有効だった。頭部だけを狙ってロストさせていく。頭部を失った魔神は、その場で崩れるようにして倒れていく。
「ガイラ、休みながらやれよ。ヴァーリのようになれても困る」
「はい…」
『大丈夫だよ。ガイラは考えてくれているよ』
って、ヴァーリの声が聞こえた気がした。そして、僕の家だった場所に辿りついた。確かに誰かいるようだ。魔神達から護るように結界が張られていた。何がいるか、わからないので、ゆっくりと、室内に入っていく。
「うん?イッセーか?生きていたのか?!」
懐かしい声…ルシファーさんだ。僕の目の前に現れたルシファーさん。彼女の片手が無くなっていた。
「ガイラ…そう、あの世界のイッセー君を連れて来られたのね」
顔が傷だらけの女性が声を掛けてきた。
「うん?見違えたかな?傷が増えているから…メイビスよ。団長に降格処分をされた神だよ」
神々しさはまるで感じないが、メイビスさんのオーラを微かに感じとった。