---兵藤誠---
こまめに来て、掃除をしてくれているシュウ。一香はまだ棺の中である。
「なぁ、一香は?」
「すまないが、魔力が足り無い。もう少し待て!」
一杯一杯になってきているシュウは、イラついたように言い放った。案件を熟しながらの掃除。大変である。重々承知はしている。だけど…
「僕だって、早く一香とやりてぇ~よ!」
あっ、あぁそうだったな。そういう約束だったんだ。俺以上に一香を生き返らせたいのは、シュウ本人であった。
「で、何が問題なんだ?」
「グレイフィアだけが黒幕だったのかを、検証中だよ。あいつだけって感じでは無いから。まだ、隠れているヤツがいる気がするんだよ」
九十九屋が暗躍している。シュウの指示で情報を収集しているようだ。
「グレイフィアとリリンの間に産まれる子供は神器は宿らない。じゃ、ドラゴニールは誰の子供なんだ?」
そうだな。純血悪魔同士では宿らない。最悪なシナリオでは、リアス・グレモリーと鳴神一成の間に産まれた子供に宿ったそうだ。だけど、この世界の鳴神一成は、生殖能力は無い。
「仮説だけど…リリンのDNAと鳴神のDNAで作りだした完全なる人工生命体とか…そいつに、『ドラゴンの笛』を与えたとか」
有り得る…鳴神一成は最強なるクローン体という器に、完全なる人工生命体を埋め込んだ者だ。その覆製…そのクローン体が存在しているかもしれない。
「愉快犯のリリンのことだ。何かのタイミングで起動するようにしてあるとか…リアスが身籠もったタイミングとか」
胎児の置き換えか…リリンならやらかしそうだな。
「イッセーのいる未来には影響しないが、このノードから出る分岐枝に、ソイツを消し去った記録を刻みたい。ソイツが存在しない未来にしたいんだよ」
保存場所を探しているのか…
「そういうことだ。そいつを処分したら、イッセーの元へ行き、完全決着をする」
---シュウ---
誠には言わなかったが、この世界をリスタートさせる計画がある。また勢力戦争に割って入り、この世界に介入するのだ。ただ、この世界はこのまま継続させ、勢力戦争時に分岐枝を出し、違う記録を刻ませるのだ。もし、後者の歴史が安定したものであれば、前者の歴史、つまりこの誠のいる世界の記録は消し去ることになる。
次のラウンドでは、あのバカ兄弟の排除がテーマになる。そして、あの戦争時に、リリンとロキは確実に消すことが重要である。そこまでして、歴史がどうなるかは、また長い時間を掛けて検証しないとダメだけど…
誠達には悪いが、膨大な並行世界の広がりに置いて、誠達はモルモットと同じなんだ。すまない…
---イッセー---
最悪な事態に陥っている。魔神の軍勢とドラゴニールの軍勢に挟まれてしまった。
「姉さん、僕とこの世界を制覇しようよ」
「イヤ!私は戦うわよ。ソーナさん、シイラを還してよ~!」
ドラゴニールとガイラの言い分には隔たりがあり過ぎである。
「おい!ドラゴニールよ!そいつらを、ドラゴン達の糧にしてしまえ!」
魔神族とドラゴニールに命じているヤツも現れた。ソイツはロキみたいだ。みたいって言うのは、纏うオーラがロキとは違うから。こいつには纏うオーラが無い。これって…クローン体だ。
「クローン体で、生きていたのか!」
「そうだよ。本体は、あの鬼畜にやられたからな。クローンでは有るが、記憶は受け継いでいる。知識もだよ。リリンの記憶と知識も受け継いだ。俺は最強の賢者なんだよ」
「おい!自分が賢者って名乗るヤツは愚か者だぞ!」
「何?誰に訊いたのだ?」
「賢者様だよ。あの方は自分の事を『通りすがりのエロ好き』って言っているんだぞ」
「そうなのか…いや。お前達を消し去れば、そんな事実は消える。おい、ドラゴニール!何をしているんだ。あのダークドラゴンを出せ!兵藤誠、一香を喰ってしまった罪深きドラゴンをな!」
この世界の僕か…勝てるかな…
「ロキ!姉さんだけは助けろ!約束だろ?」
えっ?!って表情のガイラ。まさか、ガイラを人質に取られて…
「そうだったかな…まぁ、それでも良い。早くヤレ!」
ドラゴニールは笛を吹き始めた。天空に禍々しい龍門が発現して、闇属性のドラゴンが姿を現した。
「ここまでかぁ…ゼノヴィア、魔神を出来る限り減らすわよ」
「あぁ、アーシア、了解だ。イッセー、生きろよ!」
二人は魔神軍団に斬り込んでいった。
「イッセー君、生き延びてね」
メイビスさんがダークドラゴンへ向けて飛び立った。ダメだよ…みんな…僕の意識はそこまでだった。
---ガイラ---
イッセーさんの悲しみが暴走していく。もう一人のイッセーさんのオーラに呼応して、同調していく。そして、彼はダークドラゴンへと変貌していった。ドラゴニールの笛により、自我を忘れ、周囲の者達を食べていく。
「ドラゴニール!イッセーさんを二度も殺すの?」
ドラゴニールは無言であった。拳を強く握り締めている。
「イッセー君、やめてぇぇぇぇ~!」
遠くでメイビスさんの悲鳴が響いた。イッセーさんの心が死んだ瞬間である。この世界のイッセーさんも、両親を食べた時点で心が死んだから。心の死んだハーフドラゴンは、龍化が解けないらしい。死ぬまで罪を重ね続ける運命だと言う…
「ドラゴニール!私だけ生き残ってもダメなんだよ~。分かっている?」
押し黙っている弟…つらそうな表情である。
「アーシアぁぁぁぁ~!」
ゼノヴィアさんの悲痛な声…彼女達は魔神に…救われないよ。こんな世界は…もし、神様がいるなら、この世界を消してください…
バーン!ズドーン!
上空から左右に斬り裂かれた2体のダークドラゴンが落ちて来た。私もドラゴニールも、上空を見上げた。
「我が娘よ!その願いを叶えてやる。僕の仲間に何をしてくれたんだ?!おい、ロキよ!」
金色の鬼…背中には金色に純白のラインが入った翼を展開して、頭上には光輪が3つ載っている…神様なのか?
「何?貴様は何者だ!」
「ファントムドラグーン団長、シュウ・ヨハネ・鬼門だ。今から、ファントムドラグーンが参戦をする。覚悟しろよ、ロキ!」
ファントムドラグーンって…幽玄龍騎士団だよね…あの伝説の騎士団だ…じゃ、あれが父様…なの…
「めっちん!空気の振動を抑えろ!」
「了解!」
分厚い書物を片手に、呪文を唱える少女。ドラゴン達の様子がおかしい。
「おい!そこにいるドラゴン共よ!ドラゴンマスターとして命じる。ここから去れ。去らぬ者達は殺す!リヴァさん、チームドラゴン出陣だ!」
『了解!』
天空を埋め尽くす数の龍門が発現し、次々にドラゴンが門より出て来た。そして、ドラゴニールの軍勢に襲い掛かっていく。
「なんで?笛が効かない…」
「空気の振動を抑えた。それが何を意味するか、知らないのか?音の伝搬を抑えているんだよ。要するに、聞こえないんだよ♪」
ドラゴニールを簡単に無力化した父様…
「トライ君、魔神を喰って!ネウロイ君は、アノ腐れクローンの金属を食べてね」
『『了解!』』
知らない門が二つ発現して、見た事のない魔物が現れた。その瞬間、空気の質が変わった。身体が震える、膝が笑っている。何らかの恐怖に本能が怯えているようだ。
「さて?後は、なんだっけ?」
「自分の娘を救出で無いのか?」
空跳ぶ馬に乗った女性騎士が、父様に告げた。
「あぁ、そうだな。夏凜、チェイン、頼む!」
「「了解!」」
私の両隣に、少女と女性が現れて、私をどこへ連れ去った。
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お城のような場所に連れ込まれた。また3Pなのかな?私を窓の無い部屋に閉じ込めた。大きなベッドが1つ置かれている。三方には本棚が置かれ、これでもかってくらい本が置かれている。どの本も文字が読めない。何の本だろうか?
コンコン!
銀髪で片目が隠れるほどの長い髪の女性が、部屋に入って来た。
「どこか怪我をしていませんか?」
「大丈夫です。それより、みんなは?」
目が泳ぐ女性。何か遭ったのか?
「何か遭ったんですね…」
「えぇっと…アーシアさん、ゼノヴィアさんは無事に救出しました」
「後の人達は?」
「メイビスさんはダメでした。二人のイッセー君もダメです。あの世界での生き残りはドラゴニール君とルシファーさんだけです」
二人は助かったんだ…
「ドラゴニールと会えますか?」
また、目が泳ぐ女性。会えないの?
「なんで?」
「あの世界をあのようにした罰…星の種にされました」
星の種?
「あの世界はゼロから始めるそうです。修正が効かない状態だそうです」
「神様なら、どうにかなるんですよね?」
金色の神様なら…
「あのまま、時を進めても…魂に刻まれた心の傷は、消えないそうです。ですから、リセットするって…」
「お願いです。私が直にお願いしたいです。神様に会わせて下さい」
女性に泣きすがり、懇願を繰り返した。
「無理です。私の目から見ても、あの先に希望があるとは思えません」
「あなたの目って…」
「これでも、一応女神族なんですよ。女神の私の目から見ても、無理ですよ」
私に覆い被さるように抱き締め、泣き始めた女性。救われない世界だったのか…
「彼もつらいんですよ。何十億年も掛けて育てた世界が、こんなことになって…」
実感出来る年数では無い…何?その年数は…
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私の生まれ育った星は消え、新しい星に記憶が少し移された。星は誕生したばかりで、何も無い。隕石を呼び集めて、星のコアに隕石をぶつけて、コアに無機物や有機物を付着させ、徐々に大きく成長させていく。
「父様、私だけ、なんで助けたのですか?」
「娘だから…エコひいきな親バカだから」
お城の窓から星を見守っている父様。
「あの星が歴史の分岐にさしかかったら、介入する。今度こそ、未来永劫、星の寿命が尽きるまで、星の住民達を住まわしたいよ」
父様は遠くを見るような視線で星を見ている。色々な想い出の詰まった星だったらしい。それを消すのはつらかったそうだ。
「まぁ、あの星の並行世界は残っている。分岐さえ間違わなければ、残れるんだよ」
父様の育て上げた弟子達は消えてしまった。星と共に…感慨に浸る父様。そんな父様に頭を預け、甘える私…