迷宮都市オラリオ…神々が降臨する以前の『古代』とよばれる時代から存続する世界有数の大都市であり、同時に世界で唯一の迷宮都市。
世界一の魔石製品輸出都市であるオラリオは、ダンジョンの恩恵である魔石産業による利益を受け、大陸の一国家より遥かに発展している。
街は広大な面積を誇る円形状の形をしており、堅牢な市壁に取り囲まれている。都市中央には、天を衝く白亜の巨塔がそびえて立ち、都市の中央から放射状に、北、北東、東、南東、南、南西、西、北西の八方位に巨大な大通りが伸びている。
白亜の巨塔は、摩天楼施設『バベル』と呼ばれ、ダンジョンの『蓋』として機能している。内部には冒険者の為の公共施設(シャワールーム、簡易食堂、治癒施設、換金所等)の他に、開いているスペースには、色々な商業者にテナントとして貸し出されている。また20階から上はギルドの管理のもと神達に賃貸されている。
地下1階 ダンジョンに通じる大広間。床の中央には地下迷宮の出入口の大穴(直径10m)が口を開けている。
2階 冒険者用公共施設 簡易食堂等
3階 冒険者用公共施設 換金所等
4~8階 【ヘファイストス・ファミリア】バベル支店
---イッセー---
遠征前に配られた資料を読む。実地鍛錬として、異世界へ遠征することになった。学問としての鍛錬は基礎であり、実戦こそリアルな鍛錬だそうだ。
遠征メンバーは僕、ヴァーリ、ガイラである。これだけでは、チームとして機能しないので、サポートメンバーも随行するそうだ。
前衛として、聖戦士の夏凜さん、剣士のアスナさん、魔法使いとして、ハーフエルフのリトルさん、ハーフハイエルフのフィアナさん、回復役として、エリザベスさん、メイドとして、鬼族の双子姉妹のラムさん、レムさん、索敵要員として人狼のチェインさん、夜のお供として、雪姫さんだそうだ。
うん?夜のお供って何だ?
そこに、シュウさんのチームメンバーが加わるらしい。
「夜のお供って何ですか?」
よく解らない言葉を訊いた。
「あぁ、それは僕の…イッセーはヴァーリがいるだろ?」
「何を言っているんですかぁぁぁぁ~!」
真っ赤に顔を染めたヴァーリが手で顔を覆って俯いた。
「父様!それはセクハラですよ~!」
ガイラからレッドカードが出された。あぁ、そういうことか…男女…授業で夜の営みってあったなぁ…
「この程度でかぁ?う~ん…性教育も必要か?」
「アウロス学園で基礎知識は習っていますって…まったく、父様はブツブツブツ…」
シュウさん親子…羨ましいなぁ。僕には出来無い親子のヤリトリ…
「私がいるよ、イッセー」
ヴァーリが僕の背中に抱きついた。なんか、落ち着く。なんでかな…
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何か所かを経由して、オラリオの世界へ来た僕達。中世ヨーロッパ風な…ファンタジー世界のような感じだ。実際、ファンタジー世界なんだろうけど。
「団長、お待ちしていましたよ」
「おぉフレイ、悪いなぁ」
「いえいえ。こちらです」
親衛隊のフレイさんが出迎えてくれた。この世界の拠点になる場所へ先導してくれている。
「ここです」
「う~ん…ここか…」
良い香りが漂ってくる。食事処が傍にあるのかな?
「ここって、借り易いから…どこの世界でもねぇ」
「トラブルも呼び込み易くないか?」
「地下室は無いですよ。今回へ団長の部屋でお願いしますね」
地下室?何をしていたのかな。まぁ、シュウさん関連だから、アレだろうけど…
ホームと呼ばれる僕達の住処に足を踏み入れた。玄関を入ると店舗スペースがあり、奥に作業や水回り系の施設がある。住居スペースは2階、3階だそうだ。一人一部屋が与えられた。自分の装備品は自分の部屋に置くようにだそうだ。
「基本的に、装備品は、フレイとジムと僕で作って、支給する。稼ぎは、大事に使えよ」
基本、稼ぎは、おやつとか遊行費に使って良いらしい。でも、いざと言う時の為に貯めることは大切だと習った。
「で、主神は誰がやるんだ?」
「あぁ、僕がやります」
親衛隊のジムさんが挙手した。
「ファミリア名は、ナイトクロウにしてあります」
この世界では、神及び女神が主神となり、ファミリアという冒険者組織を持てるらしい。って、言うか、迷宮に潜るにはファミリアに所属していた方が良いそうだ。
「食事は…まぁ、ここで食べるのが基本です。団長を除いてね…」
「おい!外泊ありきで、言うなよ!」
抗議するシュウさん。ガイラさん、フィアナさん、リトルさんの視線を気にしている。三名とも娘枠だそうだ。
「はいはい♪」
ジムさんは、シュウさんの抗議をスルーした。凹むシュウさん。
「いつも、こんな感じ?」
アスナさんに訊いた。
「まぁ、ねぇ」
苦笑いしているアスナさん。
「そうだ。イッセー、この剣を使え!」
ジムさんが一降りの剣を手渡して来た。
「龍喰剣ドラゴニールだ。所謂、ドラゴンスレイヤーにあたる」
ドラゴンスレイヤーとは、対ドラゴンに於いて、ダメージが多くなる剣である。この世界はドラゴンがいるのだろうか?
ドラゴニールは見た目がごつい割りに軽い。軽く振ってみる。うん、重心も悪くない。さすが、ジムさんのお手製である。
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このホームには中庭があり、そこで軽い鍛錬をする。剣の先生はアスナさんである。
「う~ん、いい感じだね。実戦だとどうなるかだな」
実戦は経験ゼロである。
「明日、軽く潜る?経験してみて、問題点をあぶりましょうね」
問題点…ありそうだ。不安だらけである。
「イッセー、一人で背負うなよ。チーム戦の鍛錬なんだからね」
ヴァーリが僕に抱きつき、勇気付けてくれる。
その夜、シュウさんの部屋を訪れた。僕には解決したい問題があったから。シュウさんはエリザベスさんと…最中だった。
「かまわない。なんだ、イッセー」
いや、僕が困ります。しなやかなエリザベスさんの肢体が、シュウさんに絡み付くようにスキンシップをしていた。
「うん?目のやり場に困るか…エリザベス、ちょっと、席をはずしてくれるか?」
「はい!また、後で寵愛をくださいね♪」
着ていた物を抱え、全裸で部屋を出て行ったエリザベスさん。
「で、なんだ?」
「あのですね…シュウさんとかヴァーリとかと初めて会った時、初めてでは無い感覚があったんです。なんでですか?」
「それは、魂に刻まれた記憶のせいだ。前世の記憶が残っているのだろう。消そうとしても消えない記憶がな」
前世の記憶?
「前世で、お前と共に戦ったんだよ。僕達はねぇ」
前世で共に?
シュウさんの口から、長い長い物語が語られた。僕の前世の物語…僕は、前世でお世話になった者達を死へ向かわせたらしい。配慮が足り無かった、いや、判断が甘かったのだろう。ヴァーリは僕を護る為、命を削っていたそうだ。そして…
だから…ヴァーリは…
「ヴァーリもガイラも前世の記憶はまるまる残っている。お前への想いを消すのが忍びなかったからだ。そして、ジムの打った剣、ドラゴニールにはガイラの弟の魂を宿している。あいつも、イッセーの為になりたい想いを持っていたから。結果的ではあるが、アイツは二人のイッセーの心を殺したから…」
この剣は…そういう剣なんだ…だから、見た目と違い、剣が僕をアシストしてくれているのか…
「ここでの鍛錬が終わったら、お前を、兵藤家、式森家、両家の当主と会わせる。立派な面構えを見せてやれ」
僕は前世で、シュウさんの大事な人を殺した…それが唯々ショックだった。
「おい!思い悩むな!前世でのことだ。今は今の世界を考えろ!」
光に包まれていく。シュウさんが笑顔で見ている。どこに転移させるんだ?
「えぇぇぇぇ~!」
お風呂場に転移した。ヴァーリとガイラ、リトルさん、フィアナさんが入浴中だった。
「う~!父様だよね…こんなことをするのは…」
ガイラさんが怒り心頭である。ヴァーリは全裸で僕を見据えて固まっていた。
「あの…シュウさんに…聞きました。その…前世でのことを…ヴァーリ、ごめんなさい」
僕はヴァーリに頭を下げた。
パシャ!
ヴァーリが湯船から出て来た。2、3発殴られるかな…予想とは違い、柔らかい濡れた肌が僕を抱き締めてきた。
「そう…話したんだ…団長。気にしないでいいんだよ。私はイッセー君にしたいことをしただけだから。悔いはなかった。こうして、またイッセー君の傍にいられるし♪」
「そうなのか…あと、ガイラさん!弟さんの魂を借りします」
「それも話したの?父様は…」
ガイラさんが苦笑いをしている。
「弟の贖罪よ。弟は私を人質に取られて、あなたを二人も殺した。それは事実だから…だから、ドラゴニールの気の済むようにしてあげて」
ペタペタペタ
全裸のフィアナさんとリトルさんが僕の横を通り抜けて行く。
「ちょっと、団長に抗議してくるわ!」
二人は怒りのオーラを纏っている。全裸で行くのか…
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翌朝、シュウさんは部屋から出て来なかった。朝まで二人に絞られたらしい。
「二人共大丈夫?」
「えぇ、団長に睡魔を退治してもらいました。私達の眠気をドレインしてもらったし」
そうなると、シュウさんは三人分の眠気を抱いて寝ているらしい。
「じゃ、役割分担は、前衛をイッセー君、私、アスナさん、夏凜さんで行きます。イッセー君一人で行けるところまで行き、残りの者はマズい時は参戦をします。中段は、リトルさんとフィアナさん、後衛はエリザベスさんでお願いします」
指令塔役のヴァーリから、メンバー発表がなされた。
「心配するな。イレギュラーが発生したら、直ぐに行くから」
って、フレイさん。僕達の後方5分程度の距離で、付いて来てくれるらしい。
「じゃ、行きますよ。あぁ、各自お弁当を持ってね。ポーターがまだいないから」
ポーターとは荷物運び役らしい。団長の指示が無いと動けないらしく、今回は熟睡中の団長からは指示が出ていないんだそうだ。
中央広場にあるバベルの目指す。そこの地下に迷宮があるんだとか。貰った資料にも出ていたな。
まず1階層にある『はじまりの道』で鍛錬をする。相手はゴブリンである。4階層までが上層と呼ばれ、ゴブリン、コボルトが主体だそうだ。1匹ずつは弱いらしいが、たまに集団で現れると脅威になる。
「慌てずに、確実にだよ」
ヴァーリから指示が飛ぶ。そうだけど…集団で来るとあせる。
「背中はまかせて」
アスナさんに声を掛けられた。そうだ。僕達も集団だよな。少し余裕が出るが…
「首とか足の付け根を狙って!動きを封じ込めるんだよ」
ヴァーリからの指示。しばらくすると、
「ヴァーリ!息が上がってきているよ。下がって!」
リトルさんからの指示、ヴァーリが下がり、そのポジションに夏凜さんが入り、応戦をする。
3階層へ下りる通路で休憩。通路に魔物が出ることは少ないらしいから。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
ヴァーリの呼吸が荒い。
「ここまでだな。帰りのことを考えて進まないとね」
って、リトルさん。
「すみません。はぁ…はぁ…」
苦しそうな呼吸をしながら、ヴァーリがみんなに謝っている。
「いいんだよ。気にしないでね。ヴァーリの体力アップも課題だから」
フィアナさんが優しく、ヴァーリを気遣っている。
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ホームに戻り、反省点、問題点を洗い出していく。
「イッセーは狙うポイントの選択速度のアップ、ヴァーリは体力アップだ」
親衛隊の隊長のファルコンさんから、課題を言われた。
「1週間後に再度潜ってくれ」
1週間、中庭で鍛錬をみっちりだな。
「イッセー君は、剣捌きは問題ないわ。そうね、フットワークを鍛錬しましょうね」
って、アスナさん。それは反復横跳びとか、スクワットとか蛙飛びですね。う~ん、苦手な分野だ…だから、問題なのかな?
---ヴァーリ---
団長の部屋を訪れた。私の問題の解決策を見いだす為に。
「どうした?」
「想っていた以上に、早く息が上がっちゃうんです」
切実な問題を訴えた。
「しょうがいない。正規な手順で無かったから」
正規で無い?
「前世で君の魂を神器に保存しただろ?君を生かしたまま。あれがダメなんだよ。普通は死んでから、招魂して、神器に保存するのが正規の手順だよ。でも、君は生きた状態でイッセーに言葉を掛けたかったって…」
あぁ、あれが原因なのか…
「魂が疲弊しているんだ。ボロボロの状態のまま、魂的には死んではいないから」
確かに…死んではいない転生である。魂は死という体験を経て休めるらしいが、私の魂は、あの時のままである。死を体験せずに、神器の中に封じ込まれていた。
「どうすれば、改善しますか?」
「そうだな…苦しいけどいいか?」
「かまいません。イッセー君の傍にいたいんです。彼の隣にいたいんです。彼が天寿を全うしたら、私はロストしてもかまいません」
「う~ん…」
難しい顔の団長。こんな団長は見た事がない。
「ロストはさせない。させられない。もう君はイレギュラーだからね。毎日8時間、闇の世界での禁固刑を受けて貰う。この世界の1秒は、あっちでは1日になる。だから、毎日80年ほどの禁固刑になる。どうする?」
それしか手が無いなら…
「それでかまいません」
「夜の営みは出来無くなるぞ」
それは…でも…
「かまいません。で、どの位、それを受けるのですか?」
「初犯だから1000年ほどだ。だから、約2週間くらいだよ」
1000年か…精神が保つかな…不安ではあるが、それしか無い。
「お願いします」
「あぁ、わかった。まぁ…」
団長の話している途中で、目の前が真っ暗になった。刑が執行されたようだ。何も感じ無い。何も見えない、聞こえない…だけど、脳裏に前世の救われないシーンが繰り返し流される。イッセー君がダークドラゴンになりメイビスさんを食べるシーン、魔神化が進む百代さんの首を刎ねるシーン、リーラさんを斬り殺すシーン…私とのシーンは無かった。これが罰なんですね。
私の問いに答える者は、ここにはいないようだ。