---シュウ---
ベッドの上で調べ物をしている。ヴァーリの状況があまり良くないのだ。原因は魂の疲弊なのだが、その解決方法を調べていた。司書のベアトリスが選別してくれた書物を読み漁っているのだが、唸るような解決方法しか出ていなかった。
「なぁ、雪姫はどう思う?」
僕の上にいる雪姫の意見を訊こうとしたが、彼女の口には僕のアレが…一生懸命に奉仕をしていてくれた。暫くすると体勢を入れ替えた雪姫。僕のアレの準備が出来たようで、彼女の身体の中に吸い込まれて行った。
「それしか無いのだろ?じゃ、何も言うことは無い」
そうなんだよ。これしか無いようだ。疲弊した魂に、元気の良い魂を与えるという、共食い療法しか無いようだった。喰わせる魂は誰でも良い訳では無いのが、唸っている理由である。疲弊した魂と想いが一緒でなければならない。この場合、該当する者は1名である。どうするかな…
「鬼畜野郎って言われている割りに、お前は優しすぎるのだよ。まぁ、そんなお前だから、私はお前に付いて来ているんだけど」
達したのか、雪姫が僕に重なるように倒れて来た。ソレを優しくキャッチした。
「鬼畜…そう言われるだろうな…」
「だとしてもだ、私はどこまでも付いて行く。例え、煉獄であろうと…」
僕の唇に自分の唇を重ねて来た雪姫。もう、しゃべるなってことか…
翌朝、ヴァーリとガイラを部屋に呼び出した。
---イッセー---
迷宮へ潜る日…いつもと変わらない朝を迎えた。いや、1つだけ違うか。ガイラの姿が見えないのだ。
「ガイラは部署替えで、代わりの者を今選別している。今日は1名少ないが、頼むぞ♪」
団長からお言葉が発せられた。それから、いつものように迷宮の入り口を目指した僕達。今日はやけに人が多い。入り口の前に集団が集まっていた。
「悪いが、今日は潜るのは、止めにしてくれ。ロキ・ファミリアの遠征なんだよ」
集団のケツにいた者に言われた。
「迷宮は、ロキ・ファミリアの物では無い。行くぞ♪」
ファルコンさんを先頭に、迷宮の入り口に近づく。
「おい!てめ~ら!どこのファミリアだ?はぁ?ロキ・ファミリアにケンカを売るのか?」
長身の獣人の男性に行く手を阻まれた。
「ベート、どけ!」
その男性を払い除けて進むファルコンさん。
「おい!貴様!」
ベートと呼ばれた男性が、ファルコンさんに掴み掛かろうとするが、ジムさんにより投げ飛ばされた。
「ジャマだ、犬ころ!」
「待て!混乱を避ける意味で、今日は止めてくれない?ベートの言い方は無礼だった。すまない」
小さきけど威厳を感じさせる男性が、ファルコンさんの前に立ちはだかった。
「ロキ・ファミリアは、そこまでエライのか?」
「エライとかの問題では無い。混乱するからだ」
「お前達のジャマだと言うのかな?ふざけるな!迷宮は皆に開放されているんだよ。おい!イッセー達は行け!私達が、ケツは護るから」
「でも…」
ヴァーリが不安そうに言った。
「大丈夫だ、今、鬼を呼び出した♪」
「そうですか…わかりました。みんな、行くよ」
ヴァーリを先頭に迷宮へ踏み込む僕達。
---シュウ---
殺伐とした気分な朝、ファルコンからスクランブル依頼たよ。問題発生か?ファルコンの隣に転移した。
「どうした?」
「こいつらが、迷宮に入るなと…」
ロキ・ファミリアかよ~。まったく、コイツらは…
「イッセー達は?」
「入りました」
「じゃ、お前達も行け!ここは僕が死守する」
「お願いします」
ファルコン達が、迷宮に入っていった。
「おい!話を聞いていないのか?」
この世界のフィンは高圧的なのかな?
「で。どうする?もう、入ったけど♪」
ロキ・ファミリアの面々から殺意の乗った視線を感じる。
「お前は何者だ?」
フィンに訊かれた。
「あいつらの親玉って感じだよ。で、どうするんだ?娘を亡くしたばかりで、喪に服していたんだけど…」
「そんなことは、どうでもいい」
僕にとっても大切なことだよ、フィン…
「どういう了見だ!」
ロキ・ファミリアのメンバーだけへ『ブレイン・ビブレーション』を発動した。脳みそが揺れていき、ふらふらになっていく、僕の心を踏みにじった配下の者達。症状は、船酔いの酷いヤツだしなぁ。
「貴様…何をしたんだ?」
往来で嘔吐をし始めた2軍のみなさん。
「貴様!」
ベートが僕に駆け寄って来た。そして、得意技のケリを放った。『透過』をさせて、バックを取り、投げっぱなしの垂直落下型のスープレックスを放った僕。この世界の者達はプロレス技への対処は出来無い。首の付け根から地面に激突したベートは、動けない。
「お前!」
今度は重装備のガレスが突進してきた。『ダイヤモンドダスト』で、自慢の鎧を木っ端微塵にして、瞬動術で目の前まで移動してからの、腹部へ掌底を撃ち込んだ。べろべろ状態の仲間達を弾きながら、遠くへ吹き飛んでいくガレス。
後方で空気の揺らめきを感じ、そこへ『エアスタンプ』を叩き込む。
ズドッ!
何かが地面に叩き落ちる音がした。どうせ、アイツだろう。
「アイズぅぅぅぅ~!貴様!」
アマゾネス姉妹が左右から斬り込んできた。ここもスルーしながら後方へ後ずさり。
「うっ!ティオネぇぇぇ~!」
ティオナの獲物がティオネの肩口を斬り裂き、ティオネの剣がティオナの腹部を貫通した。所謂同士討ちだ。
「精霊よ!力を貸し給え!」
レフィーヤの詠唱が終わり、僕に寒波が襲い掛かってきた。
『我、精霊王ファントムの主。我に攻撃するって、わかっておるな』
と、詠唱を返した。精霊達はレフィーヤとファントムを天秤に掛けて、レフィーヤへ向けて寒波が襲い掛かった。
「なに…たった一人を相手に…全滅だと…」
フィンが呟いた。リヴェリアはアマゾネス姉妹に駆け寄り、回復魔法を掛けている。
「往来で、丸腰の者相手に、酷いんじゃないかな?」
「丸腰?ふざけるな!」
フィンが手にした槍が、僕の腹部を貫いた。
「しまった…」
フィンは事態を把握した。公衆の面前で、話掛けた丸腰の者に対して、槍で貫いたことを…
「ひでぇなぁ~」
「それは無いだろ?」
見物人から、フィンへ罵声が飛んでいく。槍から手を放したフィン。自分槍を引き抜いた僕。痛そうな演技もしておく。
「おい!ギルドに問題提起をさせてもらうぞ!ロキ・ファミリアの団長さんよ!」
僕は、リヴェリアの元へ近づく。ティオネは虫の息である。
「ちょっと、ゴメンよ」
聖なる布を取りだして、ティオネを包んでいく。
「それは?」
不思議そうな目で見るリヴェリア。
「聖なる布だ。現状維持にすることができる。お前は、ソイツを抱き抱えてくれ」
頷いたリヴェリア。ティオナを抱き抱えた。僕の転移術で、ホームへ連れて行った。
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「ラム、レム、処置台2つを消毒してくれ」
「「了解です!」」
「雪姫、忍、結界を張ってくれ。死神が来たら、喰っていいから」
「「了解」」
「チェイン、容体を探査してくれ」
「わかりました」
仲間達に指示を出す。聖水で浄化消毒した台に、ティオネとティオナを置いた。
「ここは医療系ファミリアなのか?」
リヴェリアに訊かれた。
「いや、冒険系だけど、仲間の怪我は自前で治しているんだよ」
「こっちは内臓だけだけど、こっちは骨まで粉砕しているぞ」
ウルガで叩き斬られたからな…
「ティオナはラム頼めるか!」
「はい、このくらいなら大丈夫です」
問題はティオネだな。今朝、能力を使っているので、大出力系は無理であった。
「オーフィス、リリス、手伝ってくれ」
「「はぁ~い♪」」
僕の中から龍神姉妹が現れた。
「魔法陣は僕が描くから、交互に発動してくれ」
頷く二人。机で、羊皮紙に魔法陣を描いていく。書き上がると、チェインが二人に手渡してくれた。
「これは何系の魔法陣だ?」
リヴェリアに訊かれた。
「神格系だよ」
一杯一杯だった僕は、変化球を投げずに、正直に答えた。
「神格系だと…お前らは…一体…」
「訳有りなんだよ。口外はしないでくれよ。君を殺す事はしたくない」
一応、脅し言葉は伝えておく。
「チェイン、どうだ?」
ティオネの容体を探査してくれたチェイン。
「骨が粉砕骨折だな。充分に修復されていない」
骨格修復系の魔法陣を描いて手渡した。
「先程よりは良いが…」
まだ、ダメか…言葉を選びなから、魔法陣を描き上げていく。
「うん、だいぶ良いかな」
「じゃ、次は神経と血管と筋肉だな」
魔法陣を書き続ける僕。
---リヴェリア---
待合室で待つことにした。と、言っても中庭に面したリビングルームのようだ。
「お茶でもいかがですか?」
メイド服姿の者が、お茶を持って来てくれた。それを一口飲む…え?なんで…懐かしい香りと味…
「これは?」
「ハイエルフの里のお茶でございます」
「いや、だから、何故、ここに?」
「自家栽培しております」
自家栽培?里から持ち出し禁止の筈だが…もっと、訊こうと思ったのだが、メイドは奥へ下がってしまった。なんで…ここはおかしい…神格文字の魔法陣が描けて、発動出来る。ハイエルフの里の植物を自家栽培って…ここは、何なんだ?
中庭の奥に見える建物…見覚えがある。あれって、『豊饒の女主人』か。後、ギルドで調べて見るか。
「お待たせ♪」
助けてくれた彼が現れた。
「二人の容体は?」
「ティオナは1週間の入院、ティオネは2~3週間だな。容体次第では、再度施術をする」
私に請求書を手渡して来た。まぁ、当然である。施術をしてくれたのだから…
「ティオナは100万で、ティオネが500万…」
「安く見積もったよ」
これで…でも、確かにディアンケヒト様なら、もっと高いと思う。
「わかりました。お支払いします。で、ここの主神様に挨拶をしたいのですが…」
「その必要は無い」
断られた。やはり、何かあるのか?
「主神はいない。だから、勘ぐるなよ♪」
いない?有り得ない…いや、あの施術現場に少なくても神格クラスは彼を含めて3名はいた。ここは複数の神で運営しているのかもしれない。
疑念を持って、ホームへ戻った。
---イッセー---
ヴァーリが息切れせずに、順調に10階層まで来た。5~7階層は主にキラーアントという大きな蟻の集団であった。で、8~9階層は、ここまで出て来た魔物の上位クラスがひしめいていた。ようやく辿り着いた10階層は、キリが立ちこめ、見通しが悪いのが難点だ。
「索敵を切らさないで!」
ヴァーリから指示が飛ぶ、フィアナさん、リトルさんが索敵をしている。
「ヴァーリ!今日はここまでにしよう」
バックアップ部隊のフレイさんが、声を掛けてきた。
「初日から飛ばすなよ。問題点があるかもしれないからな」
初日?何のだ?そんな疑問を余所に、ヴァーリは静かに頷いた。
「そうですね。ガイラさんの想いは大切にしたいです」
ガイラさん…何かあったのか?疑問が渦巻く僕であったが、地上を目指して進軍し始めた。
------
ホームに戻ると、入院患者さんが2名いた。1階に作られている病室に収容されているそうだ。
「エリザベス、1~2時間おきに、ヒールをしてくれ」
「はい♪」
「イッセー、部屋に来てくれ」
団長の部屋に呼ばれた。
「ガイラのことだが…もう、いないんだよ」
いない?転勤じゃ無くて?
「今朝、ガイラは逝った。そういうことだ」
「どうしてですか?」
「ヴァーリを救う為だ」
僕のせい…前世での僕の…
「違う!ヴァーリの為だ。このままでは、ヴァーリがダメなんだよ。アイツの魂は疲弊していたから」
前世の僕が…彼女の魂を削ったんだ。
「ガイラも納得して、ヴァーリの魂と融合した。イッセーとヴァーリが一緒にいる限り、ガイラはドラゴニールと一緒にいられるから」
前世の僕の…えっ!その時、有り得ない物を見た。団長の目には涙が溜まっていた。僕が僕のせいにするのと同じ様に、団長は団長のせいにしているのかもしれない。実の娘を犠牲にしたことを…
「だから、ヴァーリは通常の戦闘がこなせるはずだ。魂が馴染むまで、時間はかかるがな」
遠くを見るような団長…遠くにガイラさんの姿が見えるのかもしれないけど。
「僕は万能では無い。これまでも、これからも、大事な者を失うであろう。だから、僕に過剰な期待はするなよ」
鬼の目から涙が零れた。
---リヴェリア---
ホームに戻り、フィンに請求書を渡した。
「合わせて600万か…そこに入院費が入るんだろうな。確かに、ディアンケヒト様の処よりは安いな」
フィンは凹んでいた。往来で丸腰の相手を刺したことにショックを受けていた。
「なんで、あんなことを…」
頭を抱えているフィン。
「他の者達の容体は?」
「ガレス、ベートは一ヶ月は安静、アイズは2週間くらいだ。あとは船酔い程度だそうだ。相手は、医療系なのか…」
「それなんだけど…違うみたいんだよ。冒険系で、医療設備は自前で持っているそうだ」
「え?医療系を持つ冒険系なのかい?それは、初じゃないのか?」
今まであるファミリは特化系であった。2つ以上の目的を持つファミリアは無かった。あぁ、猫を被った隠密系はあるが。
「医療技術はディアンケヒト様のファミリアより上だった。神格系魔法陣で治療をしていた」
神格系魔法陣を扱えるのは、神だけである。
「なんだって…神が複数いるのか…」
「あぁ…少なくても3柱はいる。もしかしたら、もっといる可能性がある」
潜っている方へ、回復役として、随行している可能性である。
「それはアンレギュラーなファミリアだな。で、何て言うファミリアなんだ?」
「ギルドで調べてきたが、ナイトクロウ・ファミリアで、ホームは豊饒の女主人の裏手にある」
難しい顔をしているフィン。その神に心当たりがあるのか?