---アイズ---
フィンとリヴェリアの話を盗み聞きしてしまった。そうか、豊饒の女主人の裏手にいるのか…痛い身体を引摺るように、自室に戻り、外出着に着替えた。悔しかった。何も出来ずに、魔法を喰らい、意識を持って行かれていた。何がいけなかったのか…訊いておきたい。
ホームを抜け出し、目的地へ向かう。地面に叩き付けられて、全身打撲状態である。一歩踏み出すだけで、激痛が走る。でも、向かわないといけない。死なない為にも…生きている間に…
目的地に着き、呼び鈴を鳴らすと、メイドさんが出て来た。
「なんの用でしょうか?」
「団長さんとお話をしたいんだけど…」
「お帰りください。ただいま、入院患者の治療をしていますから」
入院患者?ティオナとティオネか?
「ではお見舞いに」
「取って付けた理由ですね。お帰りください」
扉を閉ざされてしまった。どうしよう…気が緩んだのか、激痛が襲い掛かり、意識が混濁していった。
-------
全裸で、どこかの台の上にいる。
「こんな怪我、ここまでか?」
誰かの声がする。
「どうしますか?」
「怪我人を放置は出来無い。治療はするよ。オーフィス、リリス、また頼めるかな?」
「「喜んで♪」」
暖かい光に包まれていく。それに伴い痛みが柔らんでいく感じである。
「チェイン、骨はどうだ?」
「ヒビが入っています。折れてはいないかな」
「じゃ、これを頼む」
「はい♪」
暖かな光により、眠気に呑まれていく。
------
目が覚めると、目の前にリヴェリアがいた。
「目が覚めたようだな、アイズ。容体はどうだ?」
ここはどこだろう?私の部屋では無い。明るくて、清々しい室内。
「えぇ、だいぶ、痛みが引きました」
「そうか…ティオナはどうだ?」
「力を入れると痛いけど、大丈夫です」
隣のベッドからティオナの声がした。ここって、病室なのかな?
「それならいい。あとは。ティオネの回復待ちだな」
あのファミリアのホームに入れたようだ。でも、身体が思う様に動かない。
「まだ、動けないぞ!軽傷程度になるまで、身体の動きに制限を掛けた」
あの男が目の前に現れた。
「質問があるのだが。答えて貰えるか?」
リヴェリアが男に訊いた。
「内容次第だな」
「何故ここに、ハイエルフの里のお茶があるのだ?」
「古里を思い出したか?」
「あぁ…しかし、あれは持ち出し禁止だぞ!」
「許可は取ったよ。問題は無い」
「どうやって、取ったんだ?」
「企業秘密だ」
「お前は何者だ?!」
「個人情報を探るのは違法だぞ!」
「何故、神格系呪文が使えるんだ?」
「黙秘します♪」
「おい!」
「仲間になれば、教えてやる。部外者には教えられない。以上だ!」
男は部屋から出て行ってしまった。神格系呪文…神なのか…たった一人で、ロキ・ファミリアを壊滅させてしまった男。興味が深まる。
---イッセー---
ヴァーリは異常が見付からなかった。でも、魂が安定するまで、様子を見ながら、鍛錬をすることになった。
僕は重心を一定にして、前後左右上下の的を射る鍛錬をしている。
「ぶれているよ!」
アスナさんから、厳しい指摘が飛ぶ。ブレは、死を招くかもしれないので、真剣に集中して身体に覚え込ましていく。
「少し、休むか?使い過ぎても筋肉の為に、良く無いからね」
アスナさんも、団長に厳しく教え込まれたらしい。アスナさんの場合、速度優先な為に、僕よりも厳しかったらしい。
「どの敵がダメかな?」
「蟻さんの大群はダメです。装甲は固いし…」
足の関節部分を確実に斬らないと、進軍が止まらない。
「あぁ、あれは難敵だよね。魔法部隊に頼るのが、正解なんだろうけど、イッセー君の鍛錬がメインだから」
そうですね。僕がやらないと、鍛錬にならない。リトルさんもフィアナさんも、別の世界で鍛錬を積んできたそうだし。
「団長は大丈夫ですか?」
ガイラさんを無くした団長。気になる。
「今は、そっとしといてあげようよ。その内、元のド変態になるだろうから♪」
アスナさんもド変態三昧されたらしい。娘枠、妹枠以外の女性は、大抵ド変態三昧という洗礼を受けるそうだ。
---リヴェリア---
面会時間が終了したので、病室を後にした。すると、リビングに、私の若い時にソックリの少女と、レフィーヤ似の少女を見かけた。どういうことだ?!
「イッセー君、お茶にしない?」
「あぁ、フィアナさん、ありがとうございます」
私に似た者はフィアナと言うのか…あの耳は、ハイエルフの血を受け継いでいるようだ。
「おい!そっちは、プライベート空間だ、お帰りはあっちだぞ」
肩を掴まれた。振り返ると彼がいた。
「すまない…」
彼らのホームを後にした。ロキ・ファミリアのホームに戻り、『フィアナ』という単語の意味を調べた。
フィアナ騎士団…フィアナ・フィンが団長を務めた騎士団
と、いう項目を見つけた。フィンだって…偶然か?更に、
フィアナ・フィン…フィン・マックールが正式名で、生来の名前はディムナ
確かフィンの名前って、フィン・ディムナの筈だが…
フィンを見つけて訊いてみた。
「うん?フィアナかい?それは 小人族が信仰している女神の名前だけど…それがどうしたんだ?」
私の調べた内容と、今日体験したことを話した。
「偶然の一致だろう。フィアナ騎士団は人間の騎士団で、俺達小人族とは関係は無いが…」
何かが気になっているフィン。
「リヴェリア似のフィアナって少女は気になるな。レフィーヤ似の少女もいたってことは…たぶん、アイツらは並行世界から来たのかもしれない」
並行世界?
「アイツらの主神のナイトクロウは、伝説に出てくる神なんだよ。ロキに確認したが、天界にはそんな名の神はいないそうだ」
「並行世界の神なのか?」
「可能性はあるそうだ。こことは違うオラリオから来たのかもしれない」
そんなことが可能なのか…
「そうでないと説明はつかない。たった一人で、ロキ・ファミリアを全滅だよ」
どこか吹っ切れてサバサバした様子のフィン。
「リヴェリア…潜入捜査してくれないか?」
笑顔でフィンが私を見つめた。
-------
翌日、彼のホームへ向かった。彼に会う為に。
「面会ですか?」
入り口でメイドに訊かれた。
「面会と改宗希望です」
改宗とはファミリアの移籍を意味する言葉である。
「そうですか…どうぞ、こちらへ」
メイドに先導され、2階の一番大きな部屋に案内された。
「どうしたんだ、レム?」
「彼女が改宗希望だそうです」
「そうか、入れ!」
私だけ、部屋に入れられた。彼の前に行く。
「ふ~ん…改宗ねぇ。じゃ、全裸になってくれ」
え?!全裸に?
「なれないなら、帰ってくれ。こっちは忙しいんだよ」
彼は私ではなく、机に向かい、何かの書物に読み始めた。意を決して、服を脱いでいく。そして…
「全裸になりました」
彼が振り向いた。
「ベッドに腹這いになって」
言われた通り腹這いになった。背中に何かを塗られていく。熱い…何かが蒸発していく感覚である。その時、下腹部に違和感を感じ、胸にも違和感を感じた。ベッドから何かが生え、下腹部に入っていく、乳房がベッドに吸い込まれて行く、そんな感覚である。これは…うぅぐっ!口の中にもベッドから生えた何かが入って来た。鼻の穴にも、耳の穴にも…何だ、これは…
「嘘吐きにはお仕置きが必要だろう?お前、潜入捜査する為に、改宗したんだろ、違うか?」
お尻の穴に何かが入ろうとしている。何とも言えない感覚に陥る。マズい…逃げないと…
「はぁ?逃げられる訳無いだろ?お前をベッドに犯させている。ベッド相手に悶えてみてくれよ」
え…初めての相手がベッド?イヤだって!
意識が戻ると、身体が動かなかった。天井しか見えない。
「どうだ?寝具になった気持ちは?」
彼が私を見下ろしていた。鏡で今の私の姿を見せてくれたのだが、首から上は枕に、首からしたはベッドになっていた。
「嘘吐きの刑、1週間にする♪」
ベッドになった私と交わり、枕となった私と唇を重ねて来た。こんな状態で、1週間も…有り得ない。夢なら醒めて欲しい。
---イッセー---
新しいメンバーを団長が連れて来た。リヴェリアさんというらしい。チャイナドレスに身を包んだ緑髪のハイエルフらしい。
「下着をつけさせてください」
団長に懇願するリヴェリアさん。
「え?こんなに素晴らしいボディを、余分な布きれで隠すのは冒涜だ」
アスナさんの言う通り、いつも通りのド変態に戻った団長。良かった、良かった♪
「こんな姿では魔法どころでは無いです」
「じゃ、僕とベッドでプレイするかい♪」
彼女に抱きつき、身体の線をなぞるド変態な団長。アスナさん達が頭を抱えている。
「セクハラです!」
「これが僕です♪」
誰も止めない。アレが団長だから…スリットから手を入れて…ヴァーリの顔が真っ赤になっていく。
「団長!ヴァーリが…」
「うん?あぁ、正常な証拠だ。たまには刺激を与えないとな!」
僕達の目の前で、プレイを始めた団長。
「おい!いい加減にしてよ!」
フィアナさんがキレた。
「正しい反応だ、じゃ、お前をこいつの教育係にする」
「ちょっと、待ってください。無理です!」
「ヘマしたら、連帯責任だぞ、フィアナ。二人並べて…ふふふ♪」
どこか、嬉しそうに、自分の部屋へと戻っていく団長。鬼だな…
「くそっ!嵌められたわ…」
凹むフィアナさん。
「イッセー君、こっちはこっちでやりましょう。巻き添えはゴメンよ」
って、アスナさんが苦笑いしていた。
---フィアナ---
どうしろって言うのよ~。あのド変態は…リヴェリアさんは恥ずかしさの余り、震えている。人前で、あんなことされたから…ハイエルフとしてはショックなことだ。
「大丈夫?奥で休んだ方がいいわね」
彼女の手を握り、リビングルームに向かった。リトルが心配そうに付いて来た。
「お茶を飲んで、リラックスして」
お茶を口にした彼女がはっとした。
「どうして、このお茶があるの?」
「茶葉を自家栽培しているからだけど…なんで?」
「里からの持ち出しは禁止のはず…」
「だから、苗木を貰って、自家栽培して、繁殖させたのよ」
「アナタも、里の出身?」
う~ん、どう答えるかな…困った。団長、どうしろって言うのよ…
「母が出身です。私は団長の城で産まれました」
「城?彼は王様なの?」
うっ!自分で自分の首を絞めた気分。まずい、躾対象になりそうだ。
「ノーコメントです!」
「あなたのお母様の名前は?」
「ノーコメントです!」
追い込まれていく私。以前、リトルが追い込まれたように…
「お父様の名前は?」
「もう…虐めないで下さい…」
追い込まれて心が折れた。非情に徹しようと思っていたのに…くそっ!
「虐めていないわよ。そんなことを言わないでね。躾の対象になっちゃうわ」
団長の躾はドエスプレイである。ド変態プレイなんてかわいいものである。
「プライベートなことは、訊かないでください。お願いします」
「フィンと関係があるの?」
一瞬固まった私。
「あるんですね…分かりました。あなたの正体が…」
その瞬間、彼女は光の渦に飲み込まれて行った。そして、光が霧散していく。
「いいのかな?同化吸収しちゃったけど…お父さんは、惨いことするな…核心に辿りついたら退場って…」
団長の娘さんのリヴェリアが、彼女を同化吸収してしまった。私の弱い精神を護る為に…団長は私に試練を与えたのだろう。いつかは乗り越えないといけない精神的な問題…
「うっ!若返るどころか、歳が増した感じだよ。お父さんは、いつもの部屋かな?」
頷くリトル。リヴェリアが怒りを纏って団長の部屋に向かって行った。私が非情に徹することが出来れば、彼女は消えないで済んだのに…くそっ!
---イッセー---
夕食時…シュウさんはボロボロだった。娘のリヴェリアさんが、同化吸収でこの世界のリヴェリアさんと一体になった結果、年齢が増えたらしい。その怒りをシュウさんにぶつけたとか…
「ハイエルフで2,3歳は誤差の範囲だよ。まったくもぉ~」
寿命が1000年近い、ハイエルフにとって、誤差の範囲らしい。しかし、お年頃のリヴェリアさんには納得出来ないことだったらしい。
「そうだ、フィアナ。注意しろよ!今後もこういう事態はあるかもしれない」
「はい…反省しております」
凹んでいるフィアナさん。彼女のミスで、この世界の者が一人消えたから。
「その度にリヴェリアの怒りがこっちに…」
そのリヴェリアさんはシュウさんに甘えていた。普段は娘さんのアイズさんに、甘えを独占されているそうで、甘えたい心が暴走中らしい。
困った表情のシュウさん。
「団長、すみません!団長にとって、大切な人をロストさせてしまって…」
フィアナさんが泣きながら、シュウさんに謝っている。
「彼女は彼女であって、彼女では無い。それは気にするな、フィアナ」
過去に、救いたくても救えなかったリヴェリアさんがいたそうだ。
「でも…」
「フィアナが代わりになれば良い」
「なります!」
フィアナさんが即答し、困った表情になるシュウさん。
「冗談だよ。娘枠には手を出さない」
変な汗が滲み出ているシュウさん。
「そんなことを言わずに…」
フィアナさんが、シュウさんに迫る。非常に困った表情になるシュウさん。
「えっ!フィアナさん、お父さんに迫らないで!私が甘えるんだからねぇ~」
そこに、リヴェリアさんが乱入。今夜も賑やかな夜になりそうだ…