新たなる門出
---イッセー---
ドアを開けると、一人の少女が立っていた。黒髪でスリムである。で、眼鏡っ子である。大きく丸い眼鏡は伊達眼鏡に見えないことも無い。
「イッセー君だよね?」
「はい」
「私はセーラ。セーラ・シトリー・鬼門です」
鬼門…シュウさんの娘さんである…はぁい?
「お父様から、一緒に住むように言われています。一応、私が姉ってことですので、今後、イッセー・ヒョウドー・鬼門、若しくはイッセー・鬼門を名乗るように」
って、部屋に上がり込むセーラさん。ベッドが一つしか無いのだけど…
「うん、思ったより広いわね」
ここに二人で?間違いが起こりそうだ。
「間違い?お父様を父親にしたいなら、どうぞ♪オススメはしないわよ」
ですよね…
「ここを拠点にして学校へ通います」
「ここって、どこの世界ですか?」
「あなたの世界よ。何を言っているの?」
僕の世界…そう言えば…銀行のカードには『Makoto Hyoudou』と記名されていた。父さんの口座のカードなんだ…
「私の役割は…兵藤一誠を魔属性に染めないこと。私…私の世界で兵藤一誠に殺されたの。首を折られてね」
衝撃的な告白。彼女の世界の僕は、彼女を殺した…
「どうして?」
「兵藤一誠の恋路をジャマしたからかな…私の世界では、イッセと呼ばれていた」
イッセ…その愛称は、聞いた事がある。ドラゴンと悪魔のハーフで、最悪最凶の悪魔と呼ばれていた人物だとか。
「なんで恋路を?」
「イッセの彼女が、私のお母様の心を、踏みにじったから。イッセと愛し会うために、身籠もった子供を私のお母様のお腹へ託し、自分はメスになりイッセと愛し続けた。借り腹をしてもらっているのに、出産にも立ち会わなかったそうよ。その時、お母様には私も入っていたの。私達は双子として、産まれた。お母様は双子として私達を育てた、だけど…あの女は、育児にも協力せず、愛する男と愛し会っていた。そして、私の片割れである弟の怒りが爆発した時、あの女はいなかったことにしたのよ。恋路をジャマしたくならない?ねぇ…」
ドロドロ系…僕の周囲にはなかった関係だな。
「ジャマしたい気持ちは分かる。だけど、殺されるほどジャマしたらダメだよ」
「私だって、あの程度で殺されるって思わなかったわよ!」
なんか、理不尽に殺されたんですね。怒り心頭なセーラであった。
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学校…普通の中学校のようだ。人間だけが通う学校…って、セーラって、何?
「私は…鬼と悪魔のハーフだよ」
あぁ、鬼の血を引いているんですね。
「ハーフで通えるの?人間だけの学校って…」
「大丈夫だよ。転生人間になっているから♪」
転生人間…そうするとシュウさんの駒入りってことか。シュウさんの駒は、ベース種族はドラゴンであるが、種族変更機能付きなので、敵の属性によって、種族チェンジが出来るそうだ。
セーラが何かの術を発動すると、荷物が転移してきた。
「これが制服で、これが通学カバン。あと、これが教科書よ」
既に入学手続きは終わっていた。
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僕達の住む場所は駒王町である。僕が両親と共に住んでいた町でもある。なんか懐かしい。で、通う学校は、何故か隣接する八王子市の学校であった。越境入学?
「交通機関を使うことも鍛錬のうちよ」
って…電車とバスを乗り継いでの通学…遠い…
しかし、この二人暮らしには落とし穴があった。
「どうしよう…イッセー…食事…」
セーラは食事が作れないそうだ。シトリー家のお嬢様として育った為、料理、洗濯、掃除なんかをしたことが無いと言う。
「イッセー…お父様には内緒だよ…」
普段、強気に見えるセーラだったけど、シュウさん絡みになると可愛らしい程に弱弱しくなる。よほど、恐いんだろう。自分の子供には厳しいとシュウさんも言っていたし。って、どうするんだ?食事は僕が作るとして、掃除、洗濯が問題だ。
「セーラ、メイドさんを手配して…」
「えっ…バレちゃうよ~」
「食事は僕が作れるけど、掃除、洗濯が危険だよ」
「着たきりすずめってやつ?」
涙目のセーラに頷く僕。
「う~ん…わかった。お母様に相談してみる…」
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だけど、バレた。並行世界間の通話である。本拠の管制ルームに傍受されていたようで…
「セーラ…料理は作れる様になったって言っていたよな?」
「ごめんなさい…」
大粒の涙を溢し、鬼に土下座しているセーラ。
「作れるっていうから、セーラに任せたのに…」
「だから…だから…任せてもらいたいから…」
「嘘を吐いたのか?」
「うぇぇぇぇぇぇ~ん」
泣いてしまったセーラ。唸る鬼。叱ることはしないようだ。セーラの気持ちが分かるのだろう。
「そうなると、この家では狭いなぁ」
「ごめんなさい」
「どうするかな。転居届も出さないといけないし」
どこかへ連絡をし始めた鬼。スマホだったから、この世界であると思う。
「すみません。娘が…いえ、本当に申し訳ありません」
通話相手に謝罪しまくる鬼。「ごめんなさいごめんさい」と鬼に縋って泣いているセーラ。
「じゃ、引っ越しだ。学校も変更だ。遠く成りすぎるから。で、セーラはどうするんだ?お前は必要無くなったよ。住み込みで、学校へ通わせてもらうことになったから」
「そんなぁ…」
涙目で鬼を見つめるセーラ。
「私はジャマですか…」
「こういう事態になるとジャマだ。こういう基本設定をぶち壊す嘘はダメだ」
鬼の言葉が鋭く刺さったのか、号泣し始めたセーラ。
「イッセーには悪いが、コイツも人間界で鍛錬させる。お目付役と思ったが、同等同格の扱いで良い。面倒見て貰えるか?」
はっとして泣き止んだセーラ。僕を見つめる。涙を堪えた目で…そんな目で見ないでぇぇぇえぇ~!断ると悪人になりそうだよ。断れない気がする。こんなかわいい女子の言葉無き願いを…
「わかりました、セーラと暮らします」
「ありがとう…イッセーくぅ~ん♪」
僕に抱きつき、僕の肩で泣いているセーラ。
「で、どこに住み込むんですか?」
三人で転移した。転移した先は大きめのマンションのような部屋であった。
「まぁ、自分の家の様に寛いで良いぞ」
作務衣を着たオッサンがソファーに座っていた。
「イッセーとセーラに紹介する。堕天使組織『神の子を見張る者』通称グリゴリの総督であるアザゼルだ。虐めたら、『ブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード』と唱えろ♪」
「おい…てめぇ~…なんでソレを…」
オッサンが仰け反った。なんか、スゴい呪文のようだ。
「これも有るけど…」
鬼の手には『ぼくの考えた最強の神器設定集(イラスト付き)』と書かれた小冊子があった。
「どうやって、入手したんだ…」
顔が青ざめていく堕天使の総督。
「並行世界を何度も行き来しているとね、掘り出し物を発掘出来るんだよ~♪」
鬼が堕天使の総督を虐めているように見える。
「くそぉ~!鬼がぁぁぁ~!」
「そうだよ。鬼の子だもの♪」
堕天使の総督は灰に成った気がする。大丈夫か?
「でも、アザゼルって、食事が作れるって意外だな…って、お前…まさか、レンジでチン派か?!」
鬼が怒りを纏った。
「おい!待て!冷静に話し合おう…なぁ」
目の前に瀕死状態の堕天使の総督が転がっている。鬼を怒らしたらダメだよ。オーラに振れましたね…チーン!
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再度転移した。今度はどこだ?
「ここはオススメ出来ないんだけどなぁ…」
「そう言うなよ…大歓迎しているんだから」
紅髪のお兄さんと銀髪のフィアさん似のお姉さんがいた。
「サーゼクスよ!約束は護れるよな?」
「護るに決まっているだろ?アザゼルのようにはなりたくない」
紅髪のお兄さんの顔からは血の気が失せていた。
「グレイフィアは料理出来るんだろうな?」
「できます…これでもメイド長として、グレモリー家に仕えておりますから」
「後、判っているよな、サーゼクス!お前の妹と両親の事だ」
「判っている。無茶と無理はさせない」
「破ったら、お前の妹、妻、母親は下僕にするいいな!」
「わかった…」
「じゃ、そういうことだ、イッセー。生活する上で必要な金や物は総て、こいつが出す。コイツは冥界の4大魔王の一人でサーゼクス・ルシファーだ」
「セーラ、判っているな。世界が変われば、人物も変わるんだ。イッセーがそうだろ?」
頷いたセーラ。
「じゃ、頼むぞ」
鬼が帰って行った。
「この家を自分の家だと思って住んで欲しい。イッセー君、セーラ君」
この魔王様は腰が低そうだ。いや、鬼が恐いのか?
「学校はどうなるんですか?」
「ここは人間界にある俺の家だ。だから、人間界の学校へは通わせる。だけど、異種族共存な学校だよ」
そう言えば、セーラの種族が元の種族に戻されている。鬼が設定を変えていったのか。
「あなた達の部屋は、2階よ」
階段から紅髪の少年が降りて来た。
「この子は、息子のミリキャスだ」
「初めまして、イッセー・鬼門です」
「初めまして、セーラ・鬼門です」
「お兄さん、お姉さん、初めまして、ミリキャス・グレモリーです。よろしく、お願いします」
素直そうな良い少年に思える。
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僕とセーラは自室を頂けた。そして、食事…美味しい…
「セーラ君のことは、シュウに訊いた。並行世界とは言え、妹が済まないことをした」
「いえ、おきにしないでください。この世界でもクズだったら、迷わず消しますから」
おいおい、態度はナヨナヨなのに、言っていることは過激である。
「消す?君がか?」
「えぇ、その為の鍛錬はしてきました。私はリアス夫妻に、一度殺されていますからね」
「うっ…」
セーラから闇が漏れている。息苦しさがサーゼクスさんに伝搬しているようだ。
「セーラ、ダメだ!」
セーラに抱きつくと、セーラの闇が霧散していった。
「あっ…イッセー君、お父様には内緒にして…」
涙目でのお願いポーズ。このポーズは負けた気分になる。ズルい…
「判ったから、サーゼクスさん一家に、オーラを漏らしたらダメだよ」
「うん♪」
僕には素直そうなセーラであった。
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学校…駒王学園中等部である。サーゼクスさんが理事長を務める、幼稚舎から大学まである多種族共存な一貫校らしい。
クラスはセーラと同じクラスだ。別々だとセーラが危ないと判断されたらしい。セーラの闇暴走は僕にしか止められないだろうって。
授業は人間の学校と同じカリキュラムで、そこに多種族言語、種族関連、レーティングゲーム関連などカリキュラムが付加されるそうだ。
レーティングゲームの模擬戦は高等部になるとあるらしい。
普通の人間も通うので、彼らに関係ない教科は、夕方以降に置かれている。夜学生になった気分である。
僕もセーラもアウロス学園で基礎的な事は習っているので、寧ろ、人間の教科が敵であった。特に道徳は難問である。
悪魔と人間では道徳観が違う。更に言うと鬼と悪魔でも道徳観が違うのである。僕は人間あるけど、シュウさんの駒の影響で、ドラゴン的な道徳観に近いらしい。
救いは道徳には試験が無いことかな。