※この作品はR-18です。

若様と私   作:ピーチャ

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勝手な設定しています。笑ってやり過ごしてください。


頂上決戦。傍観1

次の日の朝方に船は海軍本部のあるマリンフォードの港に着いた。ドフラミンゴは一人で船を降りる。マリアはついて来ない。

「若様を探してる海軍の方に話しかけてみてください」

マリアはそう言うだけでドフラミンゴを見送った。依頼書のことは何も言わない。

船を降りたドフラミンゴは港に鷹の目のボートのような小舟を見つけた。

(あいつも来たのか…)

そして海軍本部の方へ向かおうとすると、ガッシリした体格の老人が近づいてくる。短髪と口ひげとあごひげは白いが、鋭い目には力が宿り「正義」の上着を羽織っている。

「貴様も来たか。会議で抜けられないおつるちゃんの代わりに迎えに来てやったぞ。感謝せい」

「…。アンタは会議に出ねェのか?」

「ぶわっはっはっはっ。いびきがウルサイとセンゴクに追い出されたわい」

 

豪快に笑ったガープ中将は自分の身体を探りながら話を続ける。

「さて…。貴様は随分と抜け目のないヤツだが、手下どもも抜け目なく育てているんじゃな」

そう言いつつ羽織っている上着のポケットから、ガサガサと音をたて畳まれた紙を出して広げた。

「これが送られてきた時は、てっきり貴様が招集を拒否してきたかと思って騒ぎになりかけたんじゃが…」

ドフラミンゴの目の前につき出された紙は探していた依頼書だった。

ガープはニヤリと笑いもう一枚の紙を広げる。ドフラミンゴはその紙を引ったくり、目を通す。

依頼書はドフラミンゴに渡すと破棄される可能性があるので、返送する。ドフラミンゴがマリンフォードに着いたら誰か迎えに行ってくれ。それで海軍の依頼を引き受けたことの証明としろ。

見慣れたトレーボルの字で、そんな内容のことが書いてあった。

 

その紙を持つ手が怒りに震える。

「ちょっと来い…」

低い声で呟いた。ガープは怪訝な表情になる。二人の周りにはドフラミンゴが話しかけたと思われる人間はいない。するとドフラミンゴが乗ってきた船からもう一人降りて、こちらに小走りで向かってきた。幹部ではない見慣れない女性の出現にガープはますます怪訝な表情になる。

マリアはドフラミンゴの横に立ち、問いかける。

「お呼びでしょうか。若様」

「とぼけるな!これはお前の仕業だろう!」

ドフラミンゴは声を荒げ、トレーボルの手紙をマリアの顔にかざした。

マリアはそれを手に取り熟読する。読み終えるとドフラミンゴを見上げ、ニッコリと微笑んだ。

「これはトレーボル様の筆跡(て)ですね」

 

ドフラミンゴはカッとなった。

「そんなことは聞いてねェ!お前がトレーボルに書かせたんだろう!」

ガープはそんな二人のやり取りを呆気にとられて見ていた。

マリアは落ち着き払って言う。

「私がトレーボル様に書かせたとしたら、トレーボル様の性格上、それも書くのではないかと思いますが」

ドフラミンゴは珍しく冷静さを失っていた。

「そいつを書く前にお前が取り上げたんだろう!」

マリアは無邪気な笑顔を浮かべる。

「若様。証拠もないのに、そんなことを言ってはいけませんよ?」

 

 

マリアがトレーボルに出した条件は、この手紙を書き海軍に依頼書と一緒に返送することだった。マリアが依頼書をどこに隠そうと、ドフラミンゴは必ず見つけ出すだろうことを予想し、手を打ったのだ。

ドフラミンゴが悪事を働く時は、自分の手を汚さず裏で糸を引く。海軍や世界政府に何か言われても、証拠はどこにある、の言葉で切り抜けていた。マリアはそのやり方を真似たのだった。

自分の手口を使われ、海軍本部まで連れて来られ、ドフラミンゴは最高に気分が悪くなった。

「ぶわっはっはっはっ…。貴様を出し抜くとはあっぱれだわい!ぜひとも海軍にスカウトしたいもんじゃ!」

ガープは愉快そうに大笑いした。マリアは小首を傾げる。

「若様は本部に行かれなくてよろしいのですか?」

 

「おお。そうじゃった。そうじゃった。鷹の目とくま、それに黒ひげも来ておる。そのうちモリアも蛇姫も来るじゃろ。海兵にチョッカイ出される前に貴様を連れて行かにゃ、おつるちゃんにどやされる」

舌打ちするドフラミンゴを従え、ガープは本部へ向かった。

「酒ぐれェ用意してんだろうな。人を呼びつけたからには」

「貴様がそう言うと思ってな。天竜人御用達のワインを特別に用意してやったわい」

そんなやり取りを見送ったマリアは船に戻る。ドフラミンゴは怒り心頭だが、白ひげとの争いで暴れてくれば、少しは機嫌も直っているだろう。

自室に戻ったマリアは、暇つぶしに麦わらの気配を探った。ハンコックとは既に別行動をとっている。ハンコックに騒ぎを起こさないよう、釘を刺されていたにも関わらず、早々に正々堂々と看守たち相手に戦っているのを、呆れながら感じた。

 

マリアは次にハンコックの気配も探る。蛇姫は能力を封じる海楼石の手錠をされる寸前、麦わらを関係者に気づかれることなく、インペルダウンに潜入させた。しかし、それがまったくの水の泡だったことも露知らず、署長をはじめとする関係者たちに囲まれ海底深く降りて行った。それと同時に火拳の気配も強くなる。最下層にたどり着き、両手を壁に繋がれたエースのところへ近づいた。エースの前にハンコックが進み出る。

カマトトぶっていると分かっていても、ハンコックのような美女だと、能力を使わずとも誰もが彼女にメロメロになる。ハンコックの美貌と仕草に騒ぎ出した囚人たちを署長と呼ばれる人物が静めた。

双方が騒いでいる隙にハンコックがエースに麦わらが来ていることを伝えた。エースは驚愕の表情を浮かべる。

 

そのエースに対する静かだが強い感情をマリアは感じた。

かなり遠く離れているにも関わらず、感情と気配を感じるのは初めてだった。天竜人に対するような負の感情ではなく、何か慈愛に近い感情だ。

(白ひげ…)

しかしマリアは気配を探っているうち、勘違いしているのに気がついた。驚いたことに遠く離れているのではなく、船と共に白ひげが海中にいることを。船がバリアのような膜に包まれているようだった。その膜のようなものが気配を探るのを妨げている感じがした。

それが分かったのは、周囲の気配を探った時に遠くない海中にいる海獣の気配を感じたからだ。試しに海獣の気配を探ると、同じような船が二隻膜に包まれて海中にあった。

マリアは驚いた。かつて、気配を探りながら物体を感じることはなかった。しかし、その膜に包まれた船は感じることができる。ひょっとしたら、膜自体に何か気配を感じるようなものが使われているのかもしれない。

 

だからなのか膜を通して船の中を探ろうとしても、一隻には白ひげ以外にも人がいるはずなのに火の鳥のような生き物だったり、花びらや無色透明な鉱物のようなものを漠然と感じたり、ハッキリ人間として存在が分かるのは白ひげだけだった。ドフラミンゴの仮説が正しければ、彼も覇王色の覇気というのを使えるのだろう。それに引き換え、もう一隻の中の気配に至っては人間がいるのかいないのかすら分からなかった。

息を潜めて近辺から様子を伺い、処刑が実行される前に姿を現す。白ひげはそうする段取りのようだった。マリアは瞑目し、ドフラミンゴにこの事実を伝えようか迷ったが、麦わらの存在も海軍に伝えない彼に伝えても無駄だと思い放置した。伝えたところで、俺の言った海軍のシナリオ通りだろ、と自慢されるのがオチだ。それより海軍と白ひげとの衝突は避けられないようだとマリアは思った。

ふとドレスローザにファミリーが入った時のことを思い出す。リク前国王がドフラミンゴに操られ国民に剣を向けていた時のことを。

 

リクが抱く、国民の生命を不本意に奪うことの悲しみ・怒り・絶望と、国民が抱く信頼していた国王に生命を奪われることの恐怖・不信・絶望。リクの気配を通して感じられる感情にマリアは涙したことを。

衝突が起きたらドフラミンゴを通して、その時より遥かに強く多くの感情を感じてしまうだろう。それなら、自分の目で直接現場を見た方が感情を感じずにすむかもしれない。

マリアはそう考え、使用人のワンピースから動きやすいよう、身体にぴったりフィットするTシャツと七分丈のパンツに着替えた。そして乗組員にも秘密の幹部だけの脱出口からコッソリ船を出た。物陰に身を潜めながら、処刑台のある場所を目指す。

港から広場の入り口に行くまでに土産物屋が建ち並んでいるが、開いている店は一軒もなかった。

 

つい物珍し気にマリアがキョロキョロ辺りを見回していると、いきなり後ろから声が飛んできた。

「おい!今日は外出禁止だ!何をウロウロしている!」

海兵に見つかってしまった。確かに、白ひげが来ると知って外をフラフラする海軍関係者はいないだろう。マリアは海兵に答えず、逃げ出し路地に入った。マリアを追って路地に入って来た海兵に不意討ちに当て身を食らわせ、意識を失わせるとその海兵の服を脱がせる。汗臭いのを我慢して自分の服の上にその制服を身に着け、まとめた髪を隠すように帽子を目深にかぶった。その後、海兵の下着も全て剥いだ。万が一、意識を取り戻したとしても、簡単に行動を起こせないようにしたのだ。

 

ドフラミンゴのモノしか見たことのないマリアは、裸に剥いた彼のモノをマジマジと眺めた。ドフラミンゴは大柄な身体ではあるが、裸に剥いた海兵の身長に合わせたとしても、また海兵が興奮状態にないことを差し引いても、モノの大きさはドフラミンゴの方が圧倒的に太く長いように思った。どちらが標準サイズなのか、そんなどうでもいいことを考えながら、ついこの間、行われた行為を(自己嫌悪に陥りつつ)思い出したマリアは、顔を赤らめながら周囲を見渡した。路地の入り口に全裸にした海兵が昏倒している、その近くに雑誌のようなものが開いて伏せた状態で落ちていた。表紙には筋骨隆々の男二人が固く抱擁して口づけしあっているイラストが描かれている。活字で現された雑誌の内容も船のドクターが喜びそうな雑誌だ。

 

一瞬マリアは雑誌をドクターの土産にしようかと思ったが、1回水分を含み乾いたヨレヨレ感が気になりやめた。海兵が身に着けていたシャツを使ってその雑誌を拾い上げる(素手で持つのは躊躇われたため)。開いていたページには屈強そうな男性が四つん這いになって、華奢だが逞しいモノを持つ男性に後ろから貫かれ恍惚の表情を浮かべている写真が掲載されていた。そのページは何故かカピカピに固まっていたが、それを下に向け、裸に剥いた海兵の大事な部分を隠すように伏せて置いてやった。海兵のシャツはブリーフと一緒に海に捨てる。これで海兵は露出狂の疑いを向けられることはないだろう。(他の疑いはかけられるかもしれないが)

 

 

ゆっくりと、だが確実に処刑の時間は近づいてくる。

ハンコックは既にインペルダウンを後にし、海軍本部に向かっている。麦わらの心配をしているのが手に取るように分かる。

白ひげはじっと時を待っているようで、動きはない。マリアが一人で、やきもきしている感じだ。

ドフラミンゴに至っては、海軍本部の部屋で朝からワインを飲んでいる。

「まぁまぁ飲める酒だな」

機嫌良く独りごちる彼の隣には大きな帽子をかぶって腕組みしている鷹の目が座っていた。鷹の目はドフラミンゴのことなど我関せずとばかりに瞑目している。

 

とりあえずマリアは海兵たちが集まっている場所に素知らぬ顔で潜り込んだ。海兵たちは興奮していて、妙な熱気を発している。

海軍とはあまり接点のないマリアは目深にかぶった帽子の下から、海兵たちを観察する。ドフラミンゴを迎えに来た目付きの鋭い老人が、会議中だと言っていたので、役職がかなり上の人物はここには来ていないのだろう。マリアは誰何されないよう、適当に動き回り様子を見た。そのうちエースの処刑の時間に合わせ、本部からインペルダウンに迎えが行くらしいと周囲の海兵たちが喋っていた。

 

それを聞いたマリアは人目に付きにくい場所で再びエースの気配を探る。

エースは相変わらず両腕を海楼石の鎖で壁から繋がれて座っている。

しかし、悪運強くエースの近くまで来られた麦わらの方は瀕死の状態らしく、強く感じた気配が今は弱々しい。

と。いきなりエネルギーの爆発のようなものを感じた。ビリビリと痺れるような感覚だ。

(これは…)

マリアは何回か経験していた。ドフラミンゴが海兵や他の海賊たちを相手に同じようなことをしたことがあるからだ。爆発のようなものが起こった後、ドフラミンゴの回りにいた人間は昏倒していた。

同じように、麦わらに飛びかかっていた少なくない数の狼のような獣が、その場で意識を失いドサドサと地面に落ちる。

(これが覇王色の覇気…?)

 

その直後、力を使い果たしたのか麦わらは、その場で倒れた。そこへ明らかに囚人ではない人間が、どこからともなく現れた。何故か手にはブランデーグラスが握られている。そして、麦わらの側でやはり力を使い果たしたらしい長身の男と麦わらを、隠し扉を使いどこかへと運んだ。

そこは監獄内にあるにも関わらず、看守たちの目が届いていないようだ。囚人服を着ている人間は一人としていない。

麦わらはそこで荒療治を受けた。麦わらが感じるあまりの苦痛にマリアは気配を探るのを止めた。

 

海兵たちの話に耳を傾けていると、公然猥褻の容疑で留置場にブチ込まれた男がいるらしいと聞いた。マリアは素知らぬ顔でそこを後にした。気配を探るのを止めても、強い気配なので無意識に感じてしまうので、ドフラミンゴの気配を探る。

彼は相変わらずワインを手酌で飲んでいた。

(若様…)

これから大変なことが起きると分かっていながら、呆れる程の余裕だ。そろそろハンコックも本部に着くだろう。「その時」は刻々と近づいていた。

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