(気配&ちょっとだけですが。笑)
まもなく、火拳の迎えがインペルダウンに到着するだろう。
マリアは答の出ない問いを再び考える。ドフラミンゴに聞いたところで『世界政府の考えなんざ知ったこっちゃねェ』と言われるに違いないからだ。
そもそも。
何故、世界政府は均衡を崩すと分かっていながら、四皇の一角でもある白ひげを討とうとするのか。エースの存在が邪魔なだけなら、獄死したことにすればいいだけの話だ。世界政府だったら、そんなことは朝飯前だろう。わざわざ公開処刑をして白ひげを
ひょっとしてエースを公開処刑すること自体が世界政府の目的なのだろうか。それによってエースを助けにきた白ひげも捕獲できれば尚更いい。
そう考えれば、火拳の感情に納得がいく。
海軍に捕まってしまったことへの後悔。それだけでなく、自分の存在自体を疑問視している。自分は本当に生まれて良かったのかという思い。そんな自分の全てを受け入れてくれた白ひげに対して、自分を助けに来てほしくないという願い。同じような思いを麦わらに対しても向けていた。
マリアは哀しく思った。何故、自分の存在を疑問に思うのか。確かに望まれずに生まれる子供もいるかもしれない。
だが、それこそが世界政府が彼を消したがる理由なのかもしれない。
新聞記事によると、部下だった黒ひげという男が掟を破り、仲間を殺して逃走したので、制裁をくわえようとしたが、逆に黒ひげに捕まり七武海に加盟するため、海軍への手土産として使われたということだった。(ドフラミンゴの裏情報では、白ひげの制止を振り切って出奔したらしい)
そう言えば、ドフラミンゴを迎えに来た人間が黒ひげも本部に来ていると言っていたが、ドフラミンゴのいる部屋には見当たらない。代わりに、と言ってはおかしいが、蛇姫が同じ部屋に来ていた。男嫌いと言われるだけあって、そこにいる七武海のメンバーはソファに座っているのに独り離れた窓際に憂いを帯びた表情で佇んでいる。頭の中は麦わらのことで一杯だ。
マリアは、ふと白ひげの気配を感じた時に、かつて一度だけ感じたことのある気配を思い出した。白ひげの近くには居ないが、同じように海の中にいるので感じたらしい。
形は違うが、白地に黒い斑点のファーの帽子。昔はハナを垂らして大泣きしていた少年だったが、今は目の下にクマのある目付きの鋭い青年になっていた。思わず、マリアは頬を緩める。
トラファルガー・ロー。
今やハートの海賊団の
ローがルーキーとして名を上げ始めた当初、ファミリーの中では、何としても潰してしまった方がいいと言う意見があった。しかし。
「ルーキーで潰しちまうんじゃ面白くねェだろうが。もっと賞金額が上がってからにしろ」
このドフラミンゴの一言で騒ぎは収まった。
そのローが、何故この争いが起きようとしているところに潜んでいるのか。
マリアが感じたローの言葉を分析すると、白ひげ海賊団の隊長クラスの人間で自分の役にたちそうな者が負傷していたら、助ける腹積もりらしいことが分かった。ドフラミンゴと大して考えが変わらない。さすがは、元ファミリーの一員だ。
ローとクルーの会話に集中している最中に、強い気配が再び感じられた。火拳のエースが海兵たちに、抵抗していたのだ。マリアは思わずエースの方に意識を向ける。が、抵抗はすぐにやんだ。火拳はただ、感情的になっていたようだ。
エースの気配を感じていると、一番近くにいる強い気配の麦わらまで感じてしまいそうだったので、再びローの方に集中する。麦わらの治療が終わっているか分からなかったし、ローは強い気配ではないから集中するのには、うってつけだったのだ。
ローの船には、2~30人のクルーがいる。そばにいて話し相手になっているのは4~5人程度で、中でもマリアが気に入ったのは白い着ぐるみのクマのようなベポと呼ばれるクルーだ。他のクルーにツッコミを入れられてしょげたり、見かけの割りに俊敏な動きをしたり、何だか可愛らしい。
ローたちの気配を感じていたら、いきなり強い気配が複数、近くに出現したような感じがした。
火拳がマリンフォードに到着したのだ。それに伴い、七武海も海軍本部から外に出てきて3人の強い気配の持ち主が集合して、否応なくマリアの意識を引き戻す。
マリンフォードに到着した火拳、それにドフラミンゴと蛇姫の強い気配の持ち主たち。そして彼ら程ではないが、常人では考えられない強い気配。
マリアはドフラミンゴに見つからないよう、人混みに紛れる。聖地の時のように命令はなかったが、本来
主に呼び出されるのは彼の寝室だった。他には書斎のソファだったり、バスルームだったりした。が、たまに王宮の見晴らしの良い小さなバルコニーに呼び出し、景色に見とれているマリアを背後から襲ったり、自分の能力を確かめようと人気のない海岸で実験しているマリアをどうやってか見つけだし、抵抗をものともせずに欲望を満たす。
マリアはドフラミンゴに相手をするのは構わないが、寝室以外ではやめてほしいと要求したが、ドフラミンゴに却下された。
『同じ相手なんだから、シチュエーションを替えて楽しむんじゃねェか』
それを聞いたマリアが相手を替えて楽しめばいい、と抗議すると今度は不機嫌な顔で
『俺に指図するんじゃねェ』と答える。
国王がこんなことをしていると知ったら国民がどう思うか少しは考えてくれ、と言ってようやく王宮外での行為はなくなった。が、年に数回、マリア以外の使用人や幹部たち全員に強制的に休暇を取らせ、王宮から体よく追い払い彼の部屋以外の場所(中庭やプールサイドなど屋外)で行為を行うようになった。
国民の目もなく、場所も替わって如何にもドフラミンゴが舌舐めずりしながら、マリアを求めたがる環境だ。マリアは細心の注意を払った。
火拳が広場の奥に設置された処刑台に連れて来られる。隣に丸眼鏡をかけ天辺にカモメのついている、ふざけた帽子を真面目に被った人間が直立した。海軍の元帥センゴクと名乗った。強い口調で火拳の処刑の理由を語り始める。彼が白ひげ海賊団の二番隊隊長であること。しかし、それ以上に彼の父親がゴールド・ロジャーであることが主な理由だと述べた。
ゴール・D・ロジャー。
言わずと知れた海賊王。
いつだったかロジャーの話になった時、ドフラミンゴが訂正してきた。
「ロジャーはDの一族だ。各地で色々知識を得たみてェだからな。世界政府にしちゃあ消したい存在だったんだろうよ」
ロジャーの処刑を見たらしいことを匂わせながら、ドフラミンゴが言ったのだ。そのロジャーに子供がいたとは初耳だ。広場の海兵たちもどよめいている。エースは絶望したように頭を処刑台につけた。
長々と演説を続けるセンゴクにマリアは少し飽きてきた。
海軍の正統性を述べているようにしか思えなかったからだ。
(今まで放っておいたクセに…)
マリアが気を抜いていたその時。下からいきなり強い気配が近付いてきた。
白ひげが動き始めたのだ。膜に包まれた船が海面に現れ、膜が破れた。
今まで感じたことのない強い気配にマリアの全身が粟立つ。白ひげだけでなく、彼を取り巻く面々からも尋常でない気配が発せられているのが分かる。
海兵の制服を身につけているマリアは海賊たちとの争いに巻き込まれないよう、傍観できる建物内に潜り込んだ。
白ひげが能力で空間に震動をおこす。海軍の能力者も応戦する。大将
白ひげが能力を発動させた時、マリアはあり得ない気配に気付いた。
ドフラミンゴがインペルダウンから出られないと断言した麦わら。いつの間にか復活し、あろうことか軍艦を奪い、更には多くの脱獄囚を引き連れて来ている。しかも凍った大波の上…すぐ近くで気配を感じた。
目を丸くしているマリアの眼下で、ドフラミンゴたち七武海も相手が海軍だろうが、海賊だろうが、関係なく好き勝手に暴れている。
白ひげたちの船からエースのいる処刑台までは、距離がある。クルーたちも広場を目指すが、海軍も必死で食い止める。
そこに。
いきなり麦わらたちが頭上から降ってきた。マリア以外の人間には、何が何やら分からなかったが、マリアには分かった。麦わらたちの乗った軍艦が崩れた氷の波から落下したのだ。
予想外の展開に、双方の動きが止まる。
しかし、麦わらの意志は固く、エースを救う以外のことは考えていない。
「エース!!」
麦わらと一緒に落ちてきた者の中にも、尋常でない気配を発している者が複数いた。
しかし、こちらはインペルダウンから出ることに関しては一致団結していたものの、脱獄できてしまえば目的はバラバラ。エースを助けようとしているのは、麦わらと彼の熱意に動かされた一部の集団だけだ。
特に目立つ大頭で奇抜な服装の人間(性別がマリアには分からない)と明らかに人間ではない生物(マリアは見たことがないが、魚人だろうと思った)は積極的に麦わらを援護している。
だが、それは一部であり、多くの囚人は赤鼻の男をリスペクトしているようだった。
更にそのどちらとも一線を画している者もいる。両耳から顔を横断するような傷があり、葉巻をくわえ左手が鉤になっている男は直接、白ひげを討とうとして麦わらに阻止された。
白ひげ海賊団と傘下の海賊たちに加え、麦わらたちまで相手にしなければならなくなった海軍が若干旗色が悪くなってきた。
しかし、そこは国の組織。大義は自分たちにあるものとの認識のもと、上からの命令に従う。大将自らが先頭に立ち一喝するや、それまで腰が引けていた海兵たちの戦意も復活する。
しかし海軍側のはずの七武海の人間が再び、自分勝手な行動に出ていた。ハンコックは麦わらを守るために。ゲッコー・モリアは一体でも多くの影を捕らえようと海兵たちに攻撃する。マリアは七武海のせいで混乱が大きくなっているような気がしてきた。海兵たちを意図的に狙って攻撃しないのは、鷹の目くらいだ。(剣撃の範囲内にいる海兵を巻き込んではいるが)
センゴクは苦々しい表情で歯噛みをして、エースは茫然とした表情で涙を流しながら状況を見ている。
ふと気がつくとドフラミンゴが先程、白ひげに襲いかかっていた人相の悪い男に話しかけていた。が、話は物別れに終わったようだ。葉巻の男は能力だろう、砂嵐を巻き起こしドフラミンゴに攻撃した。それをものともせず、砂嵐から脱出したドフラミンゴは男に負け惜しみのような言葉をかけ、姿をくらました。
抗争は泥沼化し、一向に終息する様子がない。苛立ったセンゴクはエースの処刑を早めることで事態を一転させようとする。マリアには彼が羽織っている正義の文字が皮肉に感じられた。
正義の名のもとでは、人の命も約束ごとも軽んじられても良いらしい。
『勝者だけが正義』というドフラミンゴの言葉が思い出される。
1度麦わらが覇王色の覇気で気絶させた執行人の替わりに、新たな執行人がエースの両脇に立ち、大刀を振り上げる。それが降り下ろされる直前。再び執行人が倒れた。ドフラミンゴに『ワニ野郎』と呼ばれた
海兵や囚人たちの話を結び合わせると、葉巻の男は元・七武海、サー・クロコダイルであるらしい。
その男が(結果的に)エースを救ったことが気に食わなかったのか、ドフラミンゴは能力で葉巻の男の首を落とす。が、その男も能力で何事もなかったように元に戻っていた。
(若様、あの人に随分こだわってるわね…)
窓からそっと眺めながらマリアは思った。
それにしても、麦わらの執念は通じそうだ。
奇抜な服装の人間の髪の毛に隠れていた、インペルダウンで麦わらともう一人の男を助けた白服の男が、これまた能力で処刑台への道を作ってしまった。そこを駆け抜け、自分の実の祖父も殴り飛ばし、満面の笑顔でエースと対峙する。
その横でセンゴクが能力を使いだした。巨大化し、金色に輝き始める。するとその衝撃でだろうか、倒れていた処刑執行人が目を覚ます。巨大なセンゴクが火拳に攻撃しようとするが、麦わらも風船のように身体を膨らませた。
何がどうなっているのか分からないが、執行人は麦わらの知り合いらしく、麦わらは執行人に能力でエースをセンゴクから守るよう指示した。
巨大化したセンゴクは体重も増えているのか、処刑台が壊れ出した。
麦わら・エース・執行人の3人が壊れた処刑台と共に落下する。エースの両手は、まだ海楼石の錠がはまっていて、能力を使うことができない。
執行人は落下しながら能力で錠の鍵を作り、それを麦わらに投げ渡した。
広場に激突する前に錠が外され、麦わらとエースは海兵たちに囲まれた場所に降り立った。(執行人の姿の人間は頭から落下した)
麦わらはとうとう、エースの救出に成功した。
今回はここで終わらせましたが、結末はご存知ですよね…。