ちなみに蛇姫様は登場しません。
へたりこんだマリアの上から声が降ってきた。
「質問を替えてやろう。お前…、幹部専用の脱出口を使ったのか?」
マリアは再び硬直する。答えが一つだけであることに気付き、違う意味で絶望的になった。マリアの表情の変化を見たドフラミンゴは、残忍な笑みを浮かべて口を開く。
「あの脱出口は出ることはできても入ることはできねェ。乗組員のヤツらはあの脱出口の存在は知らねェ。つまり、ヤツらにとって、お前はここにいるはずがねェってことだ」
ドフラミンゴはマリアの前に片膝を付き、手を伸ばして帽子を取り上げる。中から豊かなブロンドの髪がこぼれ落ちてきた。
「だが、お前をここに残していくワケにもいかねェからな。俺が船まで匿って連れてってやろう」
言うなり、ドフラミンゴはマリアを抱え上げ、鮮やかな手つきでマリアを一糸まとわぬ姿にした。そしてマリアの手を自分の背中に、太股を腰に回させると、いつもは肩に掛けているだけのピンクの羽根コートの前をしめ、マリアを隠す。
「ちょっと!!若様!せめて負ぶって連れていってください!」
「勝手に来たヤツが文句言うんじゃねェ。それより、しっかりしがみついてねェと、バレるぞ。あと、声もたてんじゃねェ。分かってるな」
ドフラミンゴはマリアの腰に手を回し、長い指を彼女自身に忍び込ませた。抵抗できないマリアのその部分から、次第に粘液が分泌される。
「フフフフフ…。俺は親切な人間だからな。お前が下に落ちねェように協力してやろう」
そう言って、派手なパンツから己の怒張した箇所を剥き出しにすると、マリア自身に突き立てた。
分泌された粘液で痛みは感じないものの、気持ち良さも感じない。ただ、背中に回した手が爪をたてないように拳をしっかり握りしめた。
一方、自分ではマリアを支えず恐るべき背筋力で人が腹にしがみついていると、傍目からは分からない姿勢でドフラミンゴは歩き出した。
(んっ…!)
ドフラミンゴが歩みを進める度に振動がマリアに伝わる。怒張した箇所が少しではあるが、彼女の中を行き来して快感を感じ、知らず知らず抱きつく腕に力がこもる。声を出さないよう、奥歯を噛みしめた。
ドフラミンゴは瓦解した海軍本部に足を踏み入れる。マリアはどこにいるのか分からない。が、船に向かっていないことに気づいた。
「若様!さっさと船に帰ってください!」
マリアの言葉などキレイに聞き流し、エースが到着するまでいた部屋に入り、奇跡的に残っていたソファに腰を下ろした。マリアの中により深く彼自身が浸入してきて、彼女を刺激する。
「若様!!」
マリアは抗議しようとしたが、外に人の気配を感じ仕方なく口を閉じる。
「ここで何をしている」
部屋に入ってきたのはセンゴクだった。
「フフフフフ…。一働きした後の一杯でも楽しもうと思ってな」
テーブルの上に置いてあるワインボトルに手を伸ばした。
「エースも白ひげも死んだ。お前ら七武海がここにいる必要はなくなった。用が済んだら、とっとと出て行け」
ドフラミンゴは忍び笑いを漏らす。それを聞き咎めたセンゴクが明らかに機嫌を損ねた声をあげた。
「何がおかしい」
ワインボトルを取ろうと前屈みになった途端、更に深く貫かれたマリアの内部が激しく蠢き、絶頂に至ったことが分かった。ドフラミンゴもそれに反応して欲望を放出する。
海軍のトップである元帥の目の前で、背徳的な行為が行われていると、誰が信じるだろう。そう思うと愉悦な気分になったからだったが、ボトルを直に口に運んだドフラミンゴはそれをおくびにも出さず違う答えを言った。
「確かに、エースも白ひげも死んだ。だが、それに付け加えておけ。ネズミ一匹、インペルダウンに潜り込んだおかげで大量の、しかも凶悪な脱獄者が出て世界政府の威信に傷がついた、とな。フフフフフ…」
絶頂に至ったマリアの荒い息づかいが万が一にも聞こえないよう、再び忍び笑いを漏らした。
センゴクは怒りを露に歯噛みし、握った拳を震わせる。ドフラミンゴを殴りつけたいのを、必死で我慢しているようだ。
ドフラミンゴの実の弟であり、我が子のように可愛がっていた部下のロシナンテを殺されたこともあり、余計にその衝動に駆られる。
「二度とは言わん。さっさとここから出て行け!」
己の欲望を放出しきったが勢いを保ったまま、ボトルを空にしたドフラミンゴは立ち上がり、更にセンゴクの神経を逆撫でするように言葉を発した。
「黒ひげにもいいように使われて、大したザマだな」
そう言ってドフラミンゴは歩き出し、絶頂の余韻に浸っているマリアをかばいながら、部屋を後にする。部屋の中からガツッと鈍い音が聞こえた。行き場を失ったセンゴクの拳がテーブルにでも打ちつけられたのだろう。
負傷者が運ばれたり、手当てされたりしている修羅場を平然とドフラミンゴは歩いた。再びマリアの中を怒張した箇所が行き来する。
ドフラミンゴが海軍に手を貸すはずもなく、今度こそ船を目指す。
マリアを支えるかのようにヒップに手をかけるが、音をたてないように、わざと離したり接近させたりして彼女を絶頂へと導こうとした。
マリアの腕に力が入り、再び内部が蠢く。今回はその感触を楽しむだけで、欲望を放出することはなかった。船を見つけ、人間離れした跳躍力で甲板に降り立つ。そこにいた乗組員たちが一斉に声をかけた。
「おかえりなさい!若!」
「本部で何があったんですか?」
「津波は来るし、本部は壊れるし…」
ドフラミンゴは片手を袖に通し、ヒラヒラと振った。
「後で説明してやる。少し休むが出航させとけ。用は済んだ」
「了解!若!」
答えると、全員キビキビと動きだした。ドフラミンゴは側を通った乗組員に問いかけた。
「マリアはいるのか?」
乗組員は不思議そうな表情で答える。
「部屋にいるんじゃないですか?声かけてきましょうか?」
「いや。いるならいい。俺がいねェからって羽根でも伸ばして、寝てやがるんだろう」
ドフラミンゴは幹部専用のシャワールームに直行した。
広間にコートを投げ捨て、服を着たままシャワールームに入る。下を向くと涙を浮かべ、上目遣いで睨みつけてくるマリアと目があった。口をへの字にしている。抱きついているマリアの身体を離すと、繋がっていた部分から自分の放った液体が出てきた。その部分をシャワーで洗い流してやっている間にも、欲望が高なってきた。
洗い終えた後も、その部分に指を這わせ強引に唇を重ねる。舌で口内を蹂躙しようとするが、マリアはまだ歯を食いしばっていてそれが出来ない。それに鉄錆びの味が舌に伝わってきた。
いったん唇を離し、足の付け根を触るのも辞め、指を口にこじ入れた。
入り込んできた指を噛むことはできなかったのだろう。マリアの口はスンナリ開いた。少し上を向かせると、舌の付け根や頬の内側を噛んでいたのか、内出血していたり、血が滲んでいたりしていた。
マリアが文句を言わないのは、自分が勝手な行動をして言えなかったのだとドフラミンゴは思っていた。が、喋ると傷ついた口内が痛むからマリアは口をきかなかったのだ。
ドフラミンゴの心にモヤモヤした何かが生まれた。
「口をゆすいで部屋に戻れ」
冷たい口調でそう言うと、シャワーの湯を使わせる。口をゆすいだマリアはキョロキョロして、排水口に薄赤い湯を吐き出した。
それを見届け、ドフラミンゴは自分の身体にシャワーヘッドを向ける。が、急に湯が止まった。下を見ると蛇口をしゃがみこんだマリアが閉めていた。
「何してやがる」
不機嫌な声にも平然としてマリアは立ち上がり、ドフラミンゴを小さな椅子に座らせ、少し濡れた服を脱がせながら身体を目視で素早く確認し始めた。
「怪我なんかしてねェから、さっさと部屋に行け」
下着ごとパンツを脱がしていたマリアの動きが左足のところで止まる。脛に5㎝くらいの切り傷があった。銃弾か瓦礫の欠片でもかすったのだろう。少し血が滲んでいる。
傷が浅いと判断したらしく、そのままドフラミンゴの抜け殻を丸めてマリアは蛇口を開けるため再びしゃがみこんだ。
蛇口が開き、湯が出てくるのを確認した後、サングラスに手をかけ、ドフラミンゴは扉に向かうマリアに声をかけた。
「おい」
振り返ったマリアに、投げつけられたサングラスが直撃しそうになったのを、慌ててキャッチする。ドフラミンゴは背中を向け、頭からシャワーを浴びていた。背中に軽く頭を下げてマリアはシャワールームを出る。
クスリと笑ったマリアはドフラミンゴの服を、洗いかごに放り込む。そして身体を拭いたバスタオルを巻き付け、自室に行って下着と服を身に付けた。それから広間の床に落ちていたピンクの羽根コートを拾った後、ドフラミンゴの部屋に向かう。コートをクローゼットに掛けてから、着替えを手に脱衣場へと移動すると着替えの上にサングラスを置き、脱衣場を後にした。
シャワールームから出たドフラミンゴは、バスタオルの横の着替えの上に置いてあるサングラスを見て、再びモヤモヤした気分に襲われる。
マリアはドフラミンゴの色の変わる瞳を気に入っている。が、立場を利用してまで見ようとはしない。ドフラミンゴが自分の目を嫌いなことを知っているからだ。
今回のようにマリアがドフラミンゴの瞳を見たければ、自分に直にサングラスを渡せばいいのに、彼が見せたくなければ隠せばいいし、見せても構わないなら隠さなければいい。そんな風に自分の好みを優先させるのではなくドフラミンゴの判断を優先させようと考えているようだった。
自分のモヤモヤした感情を分析したが、分からず、余計にモヤモヤが増殖しただけだった。
一方マリアは驚いていた。ドフラミンゴの感情に罪悪感を感じたからだ。
ファミリーの人間で、相手に悪いことをした、などという、いわゆる罪悪感を感じる者は今までいなかった。
ドフラミンゴはファミリーのボスという立場上、部下の生殺与奪権が自分に委ねられていることは重く受け止めていた。
が、責任感を感じても、罪悪感を感じたことはなかった。
それ故その感情が何か、ドフラミンゴは分かるはずもなく、答えの出ない状態が更に追い討ちをかける。
自分の感情をもて余す人間は不機嫌になることを、経験上よく知っているマリアはドフラミンゴの気を紛らわそうと彼の部屋にいた。
着替えとサングラスを身につけたドフラミンゴが部屋に戻ってきた。ベッドに腰を下ろしたマリアをチラリと見やると、近づいてくる。が、ライティングチェアに座り、足を行儀悪くデスクの上に投げ出した。
まだ自分の感情の分析をしているようだ。マリアは小さくため息をついた。こちらを見ようとしないドフラミンゴに話しかける。
「むいわあ…」
‘’麦わら‘’と言おうとしたが、舌を動かすと痛むのでヘンな発音になった。
ドフラミンゴが振り向いたので、マリアは口内の痛みに顔をしかめながら手招きする。近寄って隣に腰を下ろしたドフラミンゴの長い指をペン代わりにして、自分の掌に文字を書いた。
『麦わらを助けたの、誰だと思います?』
ドフラミンゴは立ち上がり、デスクに向かいながら答える。
「どうせ蛇姫あたりだろう。が、とりあえず、聴いてやろう。どこのバカだ」
デスクに置いてあったペンとメモを手に戻ってきた。
珍しく気を使っているらしいドフラミンゴに笑いを噛み殺し、それらを受け取るとペンを走らせた。
『直接手当てしたのはローよ。ハンコック様は匿う場所を提供しただけ』
「ロー?何故ヤツが…?」
『シャボンディに居合わせたらしいわ。新聞にも載ってたし』
そう言えば…、とドフラミンゴは思い出した。麦わらが天竜人を殴り付けたことが大々的に取り上げられていたが、ヒューマン・ショップから麦わらが脱出する際、たまたま居合わせたローとキッドと手を組んで海軍に応戦したことも小さく書かれていた。
クスクス笑うマリアに気づき、メモを見る。
『いい男になってたわ』
続きを書くため下を向いたマリアは、ドフラミンゴのこめかみに浮かんだ青筋の存在に気が付かなかった。
『ハナ垂らして大泣きしてたのがウソみたい』
書き終えたマリアがニコニコしながらドフラミンゴを見る。ドフラミンゴもニヤリと笑う。
見上げたドフラミンゴの感情から、いつしか罪悪感が消えていて、マリアはホッとした。そして、ふと浮かんだ疑問をドフラミンゴにぶつける。
『そう言えば、サー・クロコダイルに随分絡んでましたけど、若様ってそう言う
「ブッ!!」
ドフラミンゴが吹き出した。何か口に含んでいたら、それも吹き出していただろう。
「何でそうなるんだ!?」
マリアは大真面目な顔をしてメモをドフラミンゴに見せる。
『だって、ファミリー以外の人に興味を持つなんて珍しいから』
ドフラミンゴは不機嫌な表情になった。
「ヤツは七武海だった時、裏で色々やっていた。手を組めばそのコネが使えるんじゃねェかと思っただけだ」
「ふ~ん…」
舌を動かさなければ痛みはないので、マリアは相づちをうったが、100%納得した感じではなかった。
「元・七武海でもなけりゃ忘れてただろうよ」
そう付け加えたが、マリアの疑惑の視線は突き刺さる。
「くだらねェこと言ってんじゃねェ。俺は寝るからな」
そう言うとドフラミンゴはマリアをよけて、ベッドに寝そべった。
「お前もとっとと寝ろ」
マリアは頷きドフラミンゴの隣で横になると、目を閉じた途端に寝息をたてはじめた。それを呆れ半分に眺めたドフラミンゴも、いつしか眠りに落ちていた。