海楼石で出来た扉の鍵をつるが開けた。
中では囚人服姿のドフラミンゴが海楼石の足枷につながれた左足の膝の上に右足の踵を乗せて、寝台の上にぐんにゃりと寝そべっていた。
部屋に入ってくる三人の方に興味なさそうな顔を向けたが、一番最後に入って来た人物を見つけて起き上がる。
にぃっと口角を上げ、冷酷な笑みを浮かべた。
「海軍にしちゃあ、やることが早ェじゃねぇか」
「この子で間違いないんだね。ドフラミンゴ」
つるは厳しい声で言った。
そんな言葉をきれいに無視して、ドフラミンゴはマリアを迎えるように右手を上げる。
「久しぶりだなぁ。マリア」
「若様…」
マリアが動かせるのは、唇だけだった。
足はすくみ、動かない。
動けないマリアを見て、ドフラミンゴの顔が歪んだ。
「チッ」
舌打ちが漏れる。
二人の様子を眺めていたつるは部屋のライティングデスクの椅子に腰かけて、どちらともなく、声をかける。
「契約は今この時間からでいいね」
「勝手にしろ」
ドフラミンゴは吐き捨てるように言うと、再び寝台に寝転んだ。
センゴクとマリアはローテーブルを挟んでソファに腰をかける。
「マリア、あんたはドフラミンゴの食事の用意やら、この部屋の掃除やら、まあ、身の回りの世話をするのが仕事だ」
マリアはうなずいて言った。
「かしこまりました」
「ドフラミンゴと言葉を交わしたら、内容を報告おし」
ドフラミンゴが不機嫌な声を発した。
「なぁ、おつるさん。どうせインペルダウンにゃ女っ気がねェんだろ。それまでコイツを相手にしてもいいよなぁ」
センゴクは正面のマリアを凝視し、つるはすっと目を細めて言った。
「この子はあんたの女かい」
ドフラミンゴは不敵な笑みを浮かべて言った。
「そいつぁ、ノーコメントだ」
マリアも言葉を発しない。
「そんなことはどうでもいいけどね」
つるは無関心を装って答える。
そしてマリアに向き直って尋ねた。
「いやなら、拒否していいんだよ。私が責任を持つ」
マリアは深く息を吸って静かに吐いた。
「条件を付けてよろしければ」
「条件?」
つるが確めるように言う。
ドフラミンゴも関心のない風を装おって、聞き耳をたてる。
「先ほど、会話の内容について報告を、と命じられましたが…」
マリアは意を決したように続け、無邪気な笑みを浮かべた。
「まさか男女の愛の囁きまで報告しろ、なんて無粋なことは、いくら海軍でも命令しませんよね?」
マリアの明け透けな言葉に、センゴクは吹き出し、つるは再び目を細める。
「ハッハッハッ!ここまであからさまだと笑うしかないわい!」
「さすがは、あんたの女だ。一筋縄では行かないようだね」
「もちろん許可されないなら、お受けしませんが」
マリアは静かに付け加えた。
つるはドフラミンゴに確認する。
「あんた、何か企んでいるのかい?」
ドフラミンゴは嘲笑するような表情で鼻を鳴らした。
「ここで何か企んだところで、あんたらに阻止されるのがオチだろう」
「阻止?何も企めないようにするのがワシらの仕事だ」
今までと打って変わって、ドスのきいた声をセンゴクが発した。
つるは静かに続けた。
「他には?」
「別に…」
「こっちも、一つ加えよう。『若様』は、おやめ」
「かしこまりました」
マリアはうなずいた。
つるは金額など細かいことをマリアに確認しつつ、契約書をさらさらと書き上げた。
「また、何か追加事項が出来たら、覚書って形でいいね」
マリアは再びうなずいた。
「それじゃ、あんたの依頼は受けたからね。私らの要件は終わりだ」
つるはドフラミンゴを見つめる。
「だったら、とっとと出てってくれ」
ドフラミンゴはシッシッと追い払うように手を振る。
三人が出て行こうとすると、ドフラミンゴが呼び止めた。
「マリア、少し話がある」
つるもセンゴクも立ち止まらずに出て行った。
マリアは恐る恐る振り向く。
「こっちへ来い」
有無を言わせない冷たい声で命令する。
マリアは声に引き寄せられるように寝台へと歩み寄った。
と、あっという間にドフラミンゴに押し倒された。
右肩を押さえられ、左腕を万力のような力で握られる。
「今さら何しに来た?海軍に捕まった俺を嘲笑いにでも来たか」
怒気に満ちた声で言いながら、寝台から出ている二の腕を床の方へ伸ばす。
マリアの肩の関節が悲鳴を上げる。
しかしマリア自身は外の見張りに聞かれないよう、歯を食い縛り耐えた。
「それとも海軍の犬に成り下がったか」
冷たく言い放たれた言葉を聞いたマリアの鳶色の瞳に涙が盛り上がった。
その涙とともに言葉がこぼれた。
「若様にお会いしたかったのです…」
その言葉がドフラミンゴの耳に届いたかどうかは分からない。
ゴボッいう音がドフラミンゴの喉から吐き出されるとともに、寝台の下に二人揃って落下したからだ。
寝台に押し倒されていたマリアは、ドフラミンゴに引っ張られるように床に落ちる。
ドフラミンゴを下敷きにするような体勢だったが、彼が頭を打たないようマリアは右手でしっかり抱きしめた。
かばった右手にぬるりと生暖かい感触を感じたマリアは、身体を起こした。
思わず両手を口に当て悲鳴を上げた。
床に広がる液体と、ドフラミンゴの口から漏れる彼自身の血液に動転したためだ。
「誰か!若様が!」
扉の外で見張っていた海兵が血相を変えて室内に入って来た。
「…。クソ…。ローにやられた傷が…」
「若様!喋っちゃダメ!」
マリアは涙声で言った。
海兵に続いてセンゴクたちも部屋に入る。
「内臓をやられてるようだな…」
ドフラミンゴの脇で片膝を立て、眉根を寄せたセンゴクが呟く。
つるは見張りの海兵に命令を下した。
「ドフラミンゴを医務室に」
「はっ」
敬礼をした海兵は急いで担架を取りに部屋を出た。
センゴクは医務室に緊急手術が入ることを伝えに行く。
「何があったね」
静かに問うつるにマリアも気を落ち着かせ、答える。
「別に何も」
無表情で付け加えた。
「ベッドの上での会話は報告義務がありません」
つるは威圧するようにマリアを睨むが、マリアは表情を変えない。
そこへ担架を抱えた海兵四人が部屋に入り、見張りの海兵が敬礼をしながら伝えた。
「今から囚人を医務室に搬送します!」
つるは無言で頷き、了承の意を表した。
海楼石の鎖を寝台から外し、足枷をしたままのドフラミンゴが担架で運ばれて行った。
マリアは床に飛び散った赤黒い血液を始末しようとして、左肩の痛みに気付いた。
顔をしかめ右手を肩に運んだのを、つるが目ざとく見つける。
「あんたも医務室に行った方が良さそうだね」
「肩がはずれかかってるな」
筋骨隆々とした船医はそう診断した。
袖のないシャツを着たマリアの二の腕にはくっきりと手形が残っている。
「ドフラミンゴにやられたね?」
「よく覚えていません」
「覚えていない?」
「ええ。落ちる時につかまれたような気もしますが、あっという間のことだったので」
二人の女性の間に漂う冷ややかな空気を砕くドラ声がした。
「じゃあ、肩を治すぞ」
船医はマリアの華奢な肩と二の腕を注意深く動かした。
「ここだな…」
そう呟くと角度を変えないように二の腕を肩の方へ力を込めて押し上げた。
痛みは嘘のように消えた。
マリアは深く息を吐いた。
船医に頭を下げる。
「どうもありがとうございました」
その時、手術を行っている最中と思われる血に染まった白衣の男が隣の部屋から出てきた。
「少尉!輸血用の血液が足りそうにありません!」
「何だと?」
「元々、少ないXF型のRH-のうえ大変な手術ですので…」
「海兵たちに手当たり次第聞いて来い!」
隣の部屋から、のっそり出てきたセンゴクが止める。
「海兵たちの資料を調べてくる。おつるさん、あんたも手伝ってくれ」
二人が出て行くのを静かに見送ったマリアは船医に話しかけた。
「あの…。私もXF型のRH-ですけど、何かお役に立てませんか?」
「病気などの検査が必要ですよ」
白衣の男は困った顔で船医に言う。
「背に腹は代えられん。彼女が病気をもっていようがいまいが輸血出来なければ、あの男は死ぬことになる。センゴクさんに急遽、彼女の血液を輸血することにしたと伝えてくれ」
「しかし、彼女の血液だけでもまだ…」
白衣の男は言葉を濁した。
「とりあえず、海兵たちを確保できるまでの‘’つなぎ‘’だ。至急、輸血の用意を!」
マリアが白衣に着替えて隣の部屋に入ると、血の臭いが鼻をついた。
数名が横たわったドフラミンゴの周りを囲んであわただしく動いている。
彼らの邪魔にならない程度に離れた場所に簡易ベッドが置かれた。
「では、ここに横になって下さい」
言われた通り、マリアは固いマットレスの上で仰向けになる。
マリアの細い腕に針が刺され、血液が抜かれていった。
カチャカチャと器具がたてる音以外は誰も口を閉ざしている。
(医者としての義務だけなのね…)
マリアは思った。
確かにドレスローザでの彼の傍若無人な振舞いは、目に余るものだった。
自業自得だ、という気配が部屋に満ちている気がする。
どれくらい時が流れたのか、段々マリアは眠気に襲われてきた。
必死で目を開けるが、目の前を無数のウンカが飛んでいるのしか見えない。
マスクでくぐもった声がする。
「これ以上、続けるのは危険だ」
「まだ海兵は見つからないのか?」
苛立った声が次第に遠のいて行く。
「元七武海………死なせたら……世界政府が黙って…」
朦朧とした意識の中、最後の力をふりしぼってマリアは自分の意思を伝えた。
伝え終わると、マリアの意識は暗い闇に飲み込まれていった。
隣の部屋から声がした。
「海兵を見つけて来たぞ!」
「待ってください!せめて白衣に着替えて…」
バタン!とドアが乱暴に開かれた。
「細菌なんぞでヤツがくたばるか!さっさと輸血を始めろ!」
センゴクが適合する海兵を拉致してきたらしい。脇に一人ずつ抱えている。
訳も分からず連れて来られた涙目の海兵に同情しつつ、白衣の男は輸血の準備を始めた。
「彼の方は、もう大丈夫だろう。しかし、彼女の方は…。かなり危険な状態だ」
「何とかしろ!元七武海だろうが民間人だろうが、命を天秤にかける事は許さん!」
センゴクが一喝した。
ドフラミンゴが目を覚ました。海軍の護送船の中の部屋だとすぐ分かったのは、点滴の管越しに大参謀・つるが椅子に腰をかけているのが見えたからだ。
「おつるさん、ヒマなのか?」
それが手術後の彼の第一声だった。
つるは右眉を上げて答えた。
「ご挨拶だね。マリアは少しの間ここには来られない。順を追って説明するから、よくお聞き」
そして彼自身、内臓に大きなダメージを負っていたこと、輸血用の血液が不足していたこと、マリアに輸血してもらったが大量に血液を抜いたためマリア自身も一時危篤に陥ったことを詳しく説明した。
(センゴクが白衣も着けず手術室に乱入したことは、後で難癖をつけられても困るので黙っておく)
「マリアはもう大丈夫だ。ただし、2~3日は絶対安静が必要だそうだ」
「そうか」
ドフラミンゴは素っ気なく答えた。
「あの子の腕にあんたの手形がついてた。肩がはずれかかってたね」
「それで?」
つるは厳しい表情で続ける。
「あんた、あの子に何をしたんだい?」
「マリアは?」
「ん?」
「マリアは何て言ってる」
つるは苦い顔をした。
「よく覚えてないそうだ。あんたが落ちる時につかまれた気がするけど、だと」
ドフラミンゴの顔に残忍な笑みが浮かぶ。
「じゃあ、そうなんだろうよ。大体、俺はローのせいで内臓をやられちまってたんだ。女を襲う体力なんざ残ってねェよ」
「あんたの化け物じみた体力なら、出来そうだけどね」
つるは正直な感想を口にする。
「ちなみに俺は安静にしてなくていいのか?」
「そうだ、と言いたいところだが、今日いっぱいはさすがのあんたも安静が必要だそうだ。それで私が監視してるって訳だ」
「麻酔がまだ効いてやがる。暴れたり出来そうにねェから出てってくれ」
つるは椅子に腰をかけたまま動かない。
ドフラミンゴは小さくため息をついた。
「マリアについててやってくれ」
つるは驚いた。が、ドンキホーテ・ファミリーの絆の強さを思い出し、うなずいた。
「分かった。あの子も顔に似合わず気が強そうなところがあるからね。ベッドに縛りつけておかないと、絶対安静にしてないだろう」
そう言って部屋を後にした。
その言葉を聞いてニヤリとしたドフラミンゴは顔を天井に向けた。
切り刻まれた内臓から出た血が喉を通る寸前に聞こえたマリアの言葉を思い出す。
(若様にお会いしたかったのです…)
何もかも失った自分に会ってどうするというのか。
そして、今まで自分に忠誠を誓い命を落とした者たちの顔が頭をよぎる。
彼らを失うのは確かに痛手だったが、仕方ないとも思う。
だが。
失いたくないと感じたのは初めてだ。
何故そう思ったのか、いつまでも考えていた。
マリアが意識を取り戻した時、自分がどこにいるのか思い出せなかった。
とりあえず思いついた言葉を何も考えず、口にする。
「ワカサマ…」
「若様はおやめ、と言ったはずだよ」
突然聞こえた声にマリアは飛び起きようとし、ベッドに沈没した。
「ほらほら、急に動くんじゃないよ。2~3日は絶対安静なんだから」
仰向けで沈没したまま、まばたきしてみるが暗闇に無数のウンカが飛んでいるのしか見えない。頭も針金で縛られるように痛み、ご丁寧に耳鳴りまで聞こえる。
「自分の名前は言えるかい?」
「…マリア…です」
「ここがどこだかは分かるかい?」
「…海軍の船の中…」
「記憶障害はなさそうだね」
つるはホッとしたように言った。
マリアは少し目を閉じたままにした。
時間が経つにつれ、ウンカの数が減っていく。
徐々に気分もよくなってきたので、ゆっくりと目を開ける。
どうやら医務室に寝かされているらしい。
「大丈夫かい?」
つるが聞いてきた。
「何とか…」
「どこまで覚えているんだい?」
「わ…彼に輸血が必要だと聞いて、血液型が同じだから何か役にたてないかと…」
「…それから?」
「それから…?」
つるがニヤリとして言った。
「おや、覚えていないのかい?『自分が死んでも若様が死んでも、仕事がなくなるのには変わらない。仕事がないなら生きている価値はないから輸血を続けて』とか、こっぱずかしいことを言ったそうだが」
「キャー!」
それを聞いたマリアは叫び声をあげながら布団をかぶりジタバタしてるところを、つるに注意される。
「ほら、暴れるんじゃないよ」
「そ、そんなこっぱずかしいことを…」
布団から潤んだ目を覗かせたマリアはつるの言葉を繰り返し、青白かった顔を真っ赤にする。
それを見てつるは思わず、頬を緩める。
「残念なことに私は直接は聞いてないんだがね」
「そ、それは、わ…彼には…?」
「言ってないから安心をし」
マリアの体から力が抜けていった。
あまりに素直な反応に、つるは相好を崩した。が、すぐに真面目な顔になる。
「さっきも言ったが、2~3日は安静にしてないといけないよ。今みたいに暴れたりしてたら、それだけ回復が遅れるからね」
「分かりました」
消え入りそうな声でマリアは答えた。
言われた通り、次の日まで大人しくしていたマリアは翌日から仕事をしても良いと、船医から許可をもらった。
ついでにその日の夕方、部屋の外に出る許可ももらい、甲板に上がった。
海風が頬に気持ち良い。
マリアがいる船も含め、4隻の護送船が見える。
「いい風ですね」
案内してくれた海兵に話しかけたが、答えはなかった。
マリアもそれ以上は何も言わず、全ての船の様子を見聞色の覇気で伺う。
「娘さん、困りやす。海軍の船を探るのは」
マリアは驚いた。全く気配を感じられなかったのだ。
マリアを案内した海兵が慌てて敬礼して言った。
「申し訳ありません。藤虎さん。彼女がちょっと風に当たりたいと言ったので…」
「いやいや、お前さんが悪い訳じゃござんせん。あっしはちょっくら、この娘さんと話したいことがあるんで、お前さんは仕事に戻っておくんなさい」
「はっ」
海兵は再度敬礼して去っていった。
「あんたさんのようなカタギな娘さんがここにいる見当はついていやす。立ち話もなんですんで、中に入りやしょう」
藤虎は白杖代わりに鞘に収まった刀をついて下に降りていく。
食堂に案内され、そこにいた海兵達の好奇な視線を感じながら歩いていく。
奥のテーブルに向かい合って腰をかけた。
「これは、あっしの個人的な質問なんですがね。娘さん、どこでそんな尋常じゃねぇ覇気を覚えなすったんですかい?」
「よく分かりません。生まれつき気配は感じられたので…」
マリアは素直に答えた。
藤虎は黙って聞いている。
「昔、育った場所では両親に気味悪がられました。不作が続いて山に捨てられても戻って来られたので…」
「それは立ち入ったことを聞いちまったようで…」
藤虎のすまなそうな顔を見て、マリアは微笑む。
「本格的に食糧が足りなくなって村の子供たちは全員、絶対に戻ってこないように言い含められて追い出されました。その時、友人とその妹と一緒にファミリーに拾われました」
「お若ぇのに、随分ご苦労なすって…」
そう呟いた後、藤虎は厳しい表情になった。
「しかし、それとこれとは話が別。覇気を使って何を探っていやした?そのご友人でもお探しでしたかい」
「いえ…友人は…モネはある場所に派遣されていてドレスローザにはいません。その妹のシュガーは確かに幹部ですが、あの子を探していたわけでもありません。ただ、ドレスローザの街中と広い海の上で覇気の伝わり方が違うのか試したくなったのです。このような軽率な行動は二度としませんので今回だけ、お目こぼし頂けませんか?」
藤虎が鵜呑みにしないことは分かっていたが、知りたかったこと…幹部たち全員がドフラミンゴと同じ船にいること…を知ったマリアは素直に謝った。
厳しい表情のまま、藤虎は言った。
「二度としねぇと言うんでしたら、今回は見逃しやしょう。ですが次に使いなさったら、その場で船を下りてもらいやす」
マリアは頭を下げた。
「有り難うございます。藤虎様」
すると藤虎は相好を崩し、照れたように頭をかく。
「様は辞めておくんなさい。さん、で結構でござんす」
「いえ、私の軽率な行動と自分ほど覇気を使える人はいないだろうという慢心を諫めてくださった、尊敬できる方です。藤虎様は」
藤虎は嬉しそうに微笑みを浮かべた。
「あんたさんは心根がまっすぐでいらっしゃる…」
「そんなことはありません」
マリアは頬を赤らめて答える。
藤虎は心の中で思った。
(インペルダウンに閉じ込めるより、この娘さんのそばにいた方がヤッコさんには為になるんじゃねぇか…)
だが、口には出さなかった。
「あっしが聞きたかったのはそれだけでござんす。お時間をとらせて申し訳ねぇことをしやした」
次の日、ドフラミンゴの部屋に行くと、つるを呼ぶよう頼まれた。
若様、自分で呼んでおいて「何しに来た」って…。
思わず(アンタが呼んだんだろう!)とツッコミ入れてしまいました。
自分で書いたのに。(笑)