妄想・ワノ国へ1 モノローグ
ふと目が覚めた。
……。ここは、どこ…?
何だかユラユラする…。
起き上がると回りは海と空だけ。
何で?
慌てて自分の居場所を確認すると救命ボートの中。
隣には若様。
若様はひどい怪我をしてる。けど、息はあるからホッとした。
なぜか急に心が痛くなる。
これは大事な人を亡くした痛みだわ。
でも、私のものじゃない。だって若様は隣にいるもの。
何故か心臓の鼓動が速くなる。呼吸も苦しくなってきた。
(思イ出シチャ駄目)
(思イ出サナキャ駄目)
矛盾する思いが頭に浮かぶ。思い出さなきゃ…。
思い出すのは…、そう。気配が弱まっていく火拳のエース。そして彼を抱き止めている麦わらのルフィ。
これは麦わらの心の痛みだったのね。
原因がわかってよかった…。気持ちが落ち着いてきた。
調子に乗りすぎて海軍大将とかにやられたんだわ、多分。若様にも困ったものね。まったく…。ため息が出ちゃうわ。
とりあえず、止血しないと…。
でも、そんな道具はここにはないし、何だか骨も折れてるみたい。どうすればいいか分からないから、大きな血管が通っていて大丈夫そうなところを縛っておく。
あら?向こうの方に動物の気配がある。きっと島があるのね。動物がいるってことは、植物も水もあるはず。行き先は決まりね。ボートに掌を当てて念を込める。
「着岸流」
流れが出来た。海と空以外は何も見えなかったのに、遠くに何か見えてきた。そこから動物の気配を感じる。けど、人の気配はしないわね。無人島なんだわ。何故か安心した。
島に着いてもう3日…。噛んで柔らかくした木の実なんかは、口移しすれば飲み込むけど、未だに若様の意識は戻らないわ…。不安になっちゃう。水だってたまたま流れついてたビンに離れた泉から入れて来ないといけないから…。
でもボートから若様を移動できないのが、かえって動物に狙われなくて済んでよかったかもしれないわね。ちょうど岩影や木陰があって直射日光もそれほど当たらないし。
でも包帯代わりの服を洗う度に傷口が膿んでいくのが、怖いわ。でも消毒薬なんてないし…。
薬草の勉強、しとけばよかったわね。なんて後悔しても始まらない。
…。図書室で誰か難しい本、読んでた…?胸騒ぎがする。
いいえ。若様に決まってるじゃない。何を考えているのかしら。私ったら。
どうでもいいけど、水と食料を調達しに行くのは私なのよ。泉が湧いてる森にはヘンな虫がウヨウヨいるし。シャワーも浴びたいし。早く脱出したいわ…。
でも、遠くに
海中に潜ってるのね。船影は見えないけど、気配を感じるわ。頭の中で話しかけてみよう。
(怪我人がいるの。助けてくれる?)
―マリアは自分の記憶を改竄していること。そして思い出してはいけない記憶と、思い出さなければならない記憶が異なるものだとは、この時、知る由もなかった。―
次から本編になります。あまり期待せずにお待ち下さい。