マリアはつると一緒にドフラミンゴの部屋に入った。
数日前に大手術をしたとは思えない平然とした様子でベッドに腰をかけている。点滴の管も既にない。
「何か用かい?」
「ああ。他のファミリーの様子を知りたい。マリアを見に行かせてもいいか?」
つるは不審そうな顔をする。
「それは前に伝えたはずだけどね」
「幹部をよく知ってるマリアに様子を見てもらいたい。って意味なんだが」
つるはため息をついた。
「マリア。あんたもそんなに嬉しそうな顔をするんじゃないよ、まったく…。分かった。許可しよう。ただ、あんたと同じ条件だ。話した内容は報告すること」
「あの、彼らに触ってもいいですか?怪我の様子とかを見たいのですが…」
マリアが思わず口をはさんだ。
つるは右眉を上げる
「ドフラミンゴは私の目の届く所にいないと何をしでかすか分からないから、ここにいるけど、他の連中は海楼石の格子の中だ。その中に入らないと触ったり出来ないよ」
「許可は頂けませんか?」
「中に入って、人質にでもされたらどうする?遠慮なく射殺してもいいなら、許可してもいいけどね」
冷たい口調でつるは言う。
「構いません。そのことを契約に付け加えて頂いても結構です」
決意した表情でマリアは答えた。
不機嫌そうにドフラミンゴが付け加える。
「コイツを人質にするようなヤツぁいねェよ」
次の日、マリアは案内役の海兵と共に、最高幹部だったディアマンテのもとへ向かった。
ディアマンテは彼女の姿を見て驚きの表情を浮かべた。
マリアは格子の前で深々と頭を下げる。
「ドンキホーテ・ドフラミンゴからの依頼で参りました。宜しくお願い致します」
ディアマンテは海楼石の足枷の音を響かせながら、マリアに詰め寄り怒りを露にした。
「ドフィを呼び捨てにするとは、偉くなったもんだなぁ。え?」
そう言って体を起こしたマリアの顔に唾を吐きつける。
マリアは意に解さず額を拭き、付け加えた。
「最初にあなたのドフィからの伝言を伝えます。『守ってやれなくて、すまなかった』と」
それを聞いたディアマンテの顔がゆがみ、力が抜けたように座り込んだ。
「…ドフィに言っといてくれ。俺たちこそドフィを守れなくて、すまねェと」
「許可が得られたら、伝えておきます」
そう言うとマリアは案内役の海兵に目を移した。
「銃を構えろ」
彼は見張りの海兵に言うと、格子の南京錠に鍵を指す。
「怪しい動きがあったら、その女の方を撃て」
見張りの海兵とディアマンテが目を見開く。
マリアは微笑んで言った。
「承諾書にサインしてあります。遠慮なくどうぞ」
海兵は鍵と扉を開け、マリアを格子の中に入れる。と同時に素早く扉を閉め、錠をかけた。
座ったまま動かないディアマンテに近づいて行く。
「お怪我をされているとか」
気遣わしげにマリアが言った。
ディアマンテは鼻でせせら笑った。
「こんなモン怪我のうちには、入らねェ」
「カルテを見せてもらいました。切り傷と後頭部のコブ、となっていました」
マリアは囚人服の上から包帯が巻かれている胸の辺りに手を当てる。
「痛みますか?」
「いや…。それよりドフィはどうなんだ?麦わらのヤツにずいぶんやられたそうだが…」
ディアマンテは心配そうに聞く。
マリアの表情が一瞬くもった。
「内臓に大きなダメージを受けてました。3日程前、手術を受けて今は随分よくなっています」
それを聞いたディアマンテは安堵したように息を吐く。
「そうか…。無事なのか。良かった」
「本当に深傷は負っていませんね?」
確かめるようにマリアが聞く。
ディアマンテは再度、鼻でせせら笑う。
「こんなのが深傷だったら、他のヤツらはみんな死体だ」
ディアマンテは、ふと思いついたように言った。
「他の幹部たちは、どんな具合だ?」
「申し訳ありません。ディ…あなたが最初なのでまだ他の幹部の方たちには…」
マリアはすまなそうな顔をして続ける。
「変に勘ぐられないよう、海軍の方に会う順番を決めて頂いたので…」
「お前も苦労するな」
ディアマンテは苦笑して言った。
マリアはいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「一番苦労しているのは海軍かと。彼に手を焼いて私まで駆り出されるところを見ると」
「違ェねェ」
ディアマンテは大笑いした。
格子の外では二人の海兵が仏頂面をしている。
案内役の海兵が重々しく口を開く。
「そろそろ時間だ」
マリアは頷き、立ち上がった。
「それでは。ご伝言、確かに承りました」
「ああ。さっきは悪かったな」
と、ディアマンテは自分の額を指差した。
マリアは一瞬、何を言っているのか分からなかったが、自分に唾を吐きつけたことだと気付き笑みを浮かべる。
「お気になさらずに」
そのようにして他の最高幹部との面会も済ませた。
ドフラミンゴの部屋でつるの立ち会いのもと、彼らの伝言とともに内容を報告する。
二人とも表情を変えず、淡々と報告を聞いた。
そして、最高幹部以外の幹部たちの面会について2、3話しあった。
その夜、食事を下げに部屋を訪れ片付けをしていると、自分の右手を腕枕にして仰向けに寝ているドフラミンゴが左手の平を上に向けて、人差し指だけでマリアを呼ぶ。
マリアはベッドに近づいて行く。
「何かご用でしょうか」
と言い終わらないうちに腕を引かれ、ドフラミンゴにまたがるような体勢になった。
彼には従順なマリアが珍しく嫌がる体勢を、嗜虐的な彼は好む。
案の定、彼から離れようと抵抗するマリアの後頭部を自分の右肩に押さえつけ、彼女の耳に囁く。
「暴れるな。傷が開く」
マリアの動きが止まった。
更に続けて言う。
「俺はインペルダウンに行く気はサラサラねェ。お前を呼んだワケの見当はついてるよな?」
(やっぱり…)
と思いながらマリアはコクリと頷いた。
「まさかとは思うが海軍に、お前の能力のことをバラしたりしてねェよな」
マリアは再び頷いた。
「いい子だ」
ドフラミンゴは満足気な声で言った。
と同時にマリアのスカートの裾から左手を差し入れる。
後頭部を押さえていた右手も徐々に下に移動していく。
マリアは抗うが、ドフラミンゴの力には敵うはずもない。
だが、ほんの一瞬動きが止まった。マリアの身体が傷に触ったのかも知れない。
その隙にベッドから滑りおりる。
マリアはドフラミンゴの上の囚人服の裾を持ち上げた。
そこから覗く包帯には少しだが血がにじんでいる。
「若様が無理するから!傷が開いたじゃないですか」
その視界に。
マリアを求め興奮状態にあるドフラミンゴの一部が、否応なく目に飛び込んでくる。
しばしの沈黙の後、挑戦的に忍び笑いを漏らすドフラミンゴに対し、マリアはため息をついた。
「絶対に動かないでください」
そう釘を差してマリアは囚人服から、それを開放した。
彼女を求めて、そそり立っているモノに軽く唇を触れ舌を使って、頬張る。
そのまま頭を上下に動かすと、すぐにビクビクとマリアの口の中に熱い液体が放出される。その液体を飲み干し、数回それを繰返した。
が、何度も繰り返したにもかかわらず、勢いは一向に収まらない。
いつの間にか上体を起こしたドフラミンゴが強引にマリアを引き寄せ、荒々しく口づける。そして、己の放った液体を絡めとるかのように、長い舌をマリアの口の中に這わせた。それに反応してマリア自身も、彼を受け入れる粘液が意思に関係なく分泌されていく。下着のわきからそこにドフラミンゴの長い指が入ってきた。
「フフフフフ…。お前も俺のことを欲しがってるんじゃねェか。ん?」
マリアは抱きすくめられたまま、彼の胸板に当てた自分の掌にきつく爪をたてる。
(ここで負けたらダメ)
彼女の豊満な胸は早鐘を打っているが、冷静な口調で話す。
「海軍大将、大目付、大参謀のお三…方を万全とは言えない体調でも相…手にできると言うのであれば、続…けてくださって結構です」
嬌声が出そうになるのを、必死にこらえる。爪をたてた掌には血がにじんできていた。
彼の指の動きが止まり、冷酷な声が降ってくる。
「ほぉ。手負いの俺じゃあ、あの三人の相手は無理だってンだな?」
マリアの身体はドフラミンゴを求めているが、ファミリーの幹部たちの顔を無理して思い浮かべ欲望を押さえ込む。
「本当にインペルダウンに行く気がないのなら、幹部の方たちと逃げるつもりなら今は傷を治すべきです」
「チッ!」
舌打ちとともにマリアは解放された。
「理想やら正論やらを振りかざすヤツぁ、反吐が出る」
ドフラミンゴはふてくされたようにベッドに身を投げる。
「ファミリーの命運は若様にかかっています。文句でも正論でも、敢えて言わせて頂きます」
マリアはそう言って身だしなみと息を整える。
足早に部屋を出て行こうとすると、後ろから冷たく剣呑な声が追いかけてきた。
「いいか。逃げられたら2~3日、使い物にならないようにしてやるから覚えとけ」
次の日、マリアは他の幹部たちのもとを順に訪れた。
グラディウス、セニョール・ピンク、ラオG、etc…。
とりわけシュガーの時は、さすがにマリアも感情を露にし、海兵たちも目頭を熱くしていた。
「何でマリアがここにいるの?」
とがった声でシュガーが言う。目には涙を浮かべている。マリアも目を潤ませた。
「すぐに来られなくて、ごめんね」
そう言ってマリアはシュガーを力強く抱きしめた。
「イヤ!!マリアなんか大っ嫌い!!離して!」
シュガーはそう言うと、わあわあ泣いてマリアにしがみついた。
「何でマリアだけ自由なの?!ズルいわ!」
「ごめんなさいね」
ひとしきり泣いて落ち着いたのか、シュガーは首をかしげ再び尋ねた。
「何でマリア、ここにいるの?」
「若様がね、ワガママばっかり言って海軍の人たちを困らせているから、呼ばれたのよ」
シュガーの顔を両手で包み込み、同じ目線でふふっと笑ってマリアは答えた。
シュガーもクスクス笑った。
「マリアは若様の取説だもんね」
「生意気なこと言わないの」
マリアはシュガーの鼻を軽くつついた。
二人とも、ここにモネがいたら…と考えていたが、口にはしない。
「若様、元気?」
「そうね。ワガママ言えるぐらい元気になったわ」
「他の幹部たちは?」
「みんな無事よ。まあ、ちょっと怪我してる人たちもいるけど…」
「ふぅん…」
シュガーがあまり興味がないように答えるのを潮時とばかりに、海兵が咳払いをして声をかける。
「申し訳ないが、そろそろ時間が…」
シュガーは思わず、マリアの腕にしがみついた。
「また、来る?」
マリアはシュガーを柔らかく抱きしめ、背中を軽く叩いた。
「海軍の人がいいって言ったらね」
「イヤ!いいって言わなくても来て!」
「そうね。私もそうしたいけど、そうすると若様に迷惑がかかるかも…」
マリアがそう言うと、シュガーはマリアから離れ、泣きそうな笑みを浮かべた。
「じゃあ我慢する。若様のこと、ちゃんと面倒みてあげて」
「ありがと。許可をもらったら、すぐ来るわ」
マリアはシュガーの頬に軽くキスした。
最高幹部の時と同様、ドフラミンゴの部屋でつるの立ち会いのもとで面会の内容を報告した。ドフラミンゴの機嫌が悪いように、つるは感じたが、マリアは機嫌をとるでもなく、普段通り接している。
と、その時。珍しく緊張した面持ちのセンゴクが顔を覗かせた。
「おつるさん、ちょっと…」
「何だい。何かあったのかい?」
無言で手招きをして、二人は隣の部屋へと消えていった。
マリアは隣の部屋との間の壁際で意識を集中させる。
どうやら、不審な船が近付いて来ているらしい。大将・藤虎をこの船に残し、二人はそれぞれ護衛船で警護にあたることにしよう、と話している。
早速この事実をドフラミンゴに伝えようと、ライティングデスクの上からメモを一枚、破り取った。
彼の部屋に入る口実のために残しておいた物を取りだそうと、ドフラミンゴのベッドのマットレスの下に手を差し入れ、探っていると。
「探し物はコレか?」と声が降ってきた。
ハッとして上を見上げると、ドフラミンゴがニヤニヤしながら右手に持っている物を振ってみせる。
「返してください!私のペンです!」
「お前の…?俺のペンに見えるが…」
「若様の部屋のゴミ箱に捨ててありました!まだ使えるので、頂いたんです…」
「そうか。ゴミ箱に落ちてたか。だが勝手に使われちゃァ困るなぁ。マリア」
この前、自分を拒んだ意趣返しとばかりにマリアをからかう。
「若様!」
マリアの剣幕にただ事ではないことを察したドフラミンゴは黙ってペンを渡した。
マリアは覇気で得た情報をメモに走り書きした。
それを黙読し、ドフラミンゴがキラリとサングラスを光らせた。
そして低い声で言った。
「奴らが船を離れたら、すぐ教えろ」
「かしこまりました。若様」
マリアが部屋を出ると、藤虎とバッタリ出会った。
藤虎はちょうど隣の部屋の扉を開けようとしていた。
「おや。娘さん、どうかしやしたか」
マリアは、とっさに疲れた表情をした。
「いえ。大丈夫です」
「そうですかい」
と言いながら、つるの部屋の扉に手をかける。
「入ってよござんすか」
「お入り」
その声とともに藤虎は扉を開けた。
藤虎の脇にいるマリアを見て、つるが声をかける。
「おや、マリア。まだいたのかい?」
「申し訳ありません。なくしてたと思っていたペンを取り戻すのに、ちょっと手こずってたので…」
マリアはつとめて、してみせた疲れた表情とともに、胸ポケットにしまったペンをみせた。
「あの、報告は…」
『ちょっと』ではなく、『だいぶ』手こずったのだろうと勝手に解釈したつるは特に報告を求めなかった。
「ああ、いいよ。別に大したことじゃないだろうから」
「有り難うございます」
ほっとした表情を浮かべ、マリアは頭を下げた。
あとは、つるたちが船を離れらる時を待つだけだ。
マリアの能力は次に出てくる通り、あまりにもベタなので、あまり期待しないでください。(汗)