モネがファミリーから姿を消して一月程たった、ある日。
夜更けにドフラミンゴの声が頭に響いた。
「俺は先に行く。そうだな…。お前らはマリアの様子がおかしくなったら来い。ただしマリアは連れて来るな。後で俺が迎えに来てやろう」
そう言うとドフラミンゴは一人、ドレスローザ王宮を目指して出掛けた。明らかに、マリアが彼の言葉を聞いていると、確信している口ぶりだった。
その直後、トレーボルに呼び出され、眠たそうにグズっている年下3人を相手にしていた。
そしてその後、マリアが再びドフラミンゴを感じたのは、どこかの一室の窓枠に腰を下ろしている姿だった。
体格のいい初老の男と話しているのが感じられる。
(何が始まるのかしら…)
幹部たちが、チラチラと不安気なマリアを盗み見ているのが分かる。自分の様子がおかしくなるのを待っているようだ。
体格のいい初老の男(リク王)は、兵士を町に派遣して金を集めさせていた。夜明けまでのタイムリミットに間に合うように。
しかし、最初から金など必要としていなかったのだ。
ドフラミンゴが指を盛んに動かし始めた。イヤな予感がして初老の男の気配を探り、マリアは凍りついた。文字通りドフラミンゴは裏で糸を引いて、初老の男を操り市民の虐殺を始めたのだ。
「マリア、どうしたの?」
シュガーが心配そうに尋ねる。顔色をなくしたマリアが目を見開き、ガクガクと身体を震わせ始めたからだ。
幹部たちはニヤリと笑い、立ち上がった。トレーボルがシュガーに声をかける。
「ベヘヘ…。シュガー。ドフィが呼んでる。出発するぞ」
「でも…」
「マリアなら、明日ドフィが迎えに来てくれるさ。心配いらないから。ンネ~」
トレーボルはシュガーの腕をつかみ、引っ張って連れて行った。
一人残されたマリアは悪夢を見る。操られた王と兵士は、罪もない市民や操られていない兵士を、涙を流しながら剣を振るって切り裂いていく。町の至るところで火の手が上がった。そのやり方は、まるでドフラミンゴが人間を憎悪しているようにも感じられる。
虐殺は一晩中、続いた。実状を知る由のない市民はリク王を恨み、憎み、蔑んだ。そして、ドフラミンゴを新たな国王として喜んで迎えた。
夜が明け、恐怖と残虐に偽善の皮をまとって出来た人間がマリアを迎えに来た。自室で布団を被って震えているマリアにノックもせず近付いて来る。
布団を勢いよく剥ぎ取り、猫なで声でドフラミンゴが話しかけた。
「約束通り、迎えに来てやったぞ。マリア」
恐怖のあまり、身体が硬直して動けないマリアを抱き抱え、さらに続けた。
「
更にドフラミンゴは歩きながら、マリアの耳元に優しく囁く。
「昨日のショーは面白かったろ。ン?」
マリアの脳裏に昨夜の虐殺の光景が甦り、鳶色の瞳から涙が溢れるのを、両手で覆い隠す。
何故この人はこれ程、残忍なんだろう?どうしてそれほど人間を憎んでいるのだろう?答えのない疑問が頭の中で空回りする。
ドフラミンゴは船を降り王宮までの道を、わざわざ強く死臭の漂うところを選んでいるかのように歩を進める。その臭気とともに、目を覆っていても頭に否応なく浮かんでくる散乱している死体が、マリアの脳裏に昨夜のことを思い浮かばせる。
ドフラミンゴはマリアのことを、両親をリク王に殺された身寄りのない娘だと市民に説明した。マリアは反駁する気力もない。ただ偽りの英雄が称賛されるのを、遠くに聞いていた。
王宮の一室に連れ込まれると、黒髪の同年代の女性がいた。
「こいつがマリアだ。能力者じゃねェが、見聞色の覇気を使える。お前の下で使えるだろう。二人いれば、この国のあらゆる出来事を把握できる」
ニヤリと笑い、ドフラミンゴは付け加えた。
「ちなみにこいつの趣味は俺のプライバシーの侵害だ」
ドフラミンゴはマリアをソファに置くと、手をヒラヒラ振りながら出て行った。
「じゃあな。俺は傷ついた国民でも慰めてこよう」
黒髪の女性は、怒りに燃える目でドフラミンゴを睨みつけた。
そして、探るような目付きでマリアを見る。話しかけたのは、黒髪の女性の方からだった。
「あなた、本当に能力者じゃないの?」
彼女のギロギロの能力で思考を読めないのは、初めてだったからだ。
マリアは混乱した。能力者でないことを不審に思われたことなどなかったからだ。取り敢えず時間稼ぎに女性が誰なのか尋ねる。
「申し訳ありません。取り乱してしまって…。私はマリアと言います。あの、お名前を伺っても…?」
ヴィオラはファミリーらしくないマリアの様子に、戸惑っていた。
「私はヴィオラよ。リク王の娘」
自嘲的に言うヴィオラにマリアは再び涙をこぼした。
「申し訳ありません。姫様の方が、お辛いのに…」
「姫様なんて言わないで。この国にはもう王女なんかいないのだから」
「ごめんなさい」
パタパタと涙をこぼすマリアに、ヴィオラは初めて苦笑とはいえ、わずかながらも笑顔を見せた。
「あなたは謝ってばかりね。マリア」
ため息とともに呟くようにヴィオラは付け加えた。
「ドフラミンゴもファミリーも信用できないけど、あなたは信用できるわ」
「ありがとうございます。ヴィオラ様」
マリアは涙をぬぐって頭を下げる。
そして、回らない頭を一生懸命動かす。
(能力のこと、ごまかさなきゃ…)
すぅ、と息を深く吸うとマリアは話し始めた。
「まず、能力と覇気は似て非なるものだと認識ください」
ヴィオラは更に戸惑って聞いた。
「どういうこと?」
「つまり覇気で探ることは、能力を使うよりも探りやすいのです」
マリアは一か八かの賭けに出た。
「例えば…、私は大地や大気に同化していても、本人がどこにいるのか気配を感じることができます」
ピーカのことを思い浮かべてマリアは言った。
「ヴィオラ様はそれを見ることができますか?」
「…。それは分からないわ」
マリアは頷いた。
「それが能力と覇気の違いなのです。ただ、能力より覇気の方が優っているとは思わないでください」
「なぜ?」
ヴィオラは興味を抱いて聞いた。
「多分、ヴィオラ様は目で見えるように能力で、遠く離れたものや壁の向こうの様子を見ることができるのだと思います。でも私は基本的に、動けるものしか探ることができないのです」
「どういうこと?」
ヴィオラは数刻前にした同じ問いを繰り返す。
「私には、動けるもの…、生きている動物の気配しか感じられません。そこに何か物体があっても私には分からないのです」
「あなたと私とでは 感じ方が違うのね」
「覇気を使うと、能力は通用しない。そして、私は常に覇気を使っている状態にあるようなのです」
「あるよう?自分のことが分からないの?」
マリアは困惑したような顔になる。
「ファミリーに…ある人に会ってから、その人だけは集中しなくても気配を感じるようになったのです。それまではそんなことはなかったのですが…」
マリアはあえて固有名詞は使わなかった。ヴィオラには言わなくても伝わるだろうと思ったし、聞きたくない名前だろうとも思ったからだ。
思ったとおり、ヴィオラは顔色を失った。
「何故かは、分かりません…」
「とにかく、あなたは覇気を使っているから、私の能力が通じないというのね」
ヴィオラは半信半疑の眼差しでマリアを見つめた。
マリアも演技ではなく、本当に自信のない表情をした。
「そういうことなのだと思います」
「…。ごめんなさいね。私、あなたの思考を読んでいたの。でも読まなくても、あなたの考えていることは何となく感じられるわ。私を哀れんでるってこと」
「哀れんでいるだなんて!そんなこと、ありません!ただ、どんな人でも不幸に陥れられていいとは思えないだけです」
「ありがとう。マリア」
心からの言葉に思わず本心から、ヴィオラは謝意を伝えた。
王宮には、たくさんの部屋があった。その中で気に入った
マリアは、プライバシーの侵害なら正々堂々とやれ、というワケの分からない理由でドフラミンゴの部屋の掃除を命じられた。その部屋は書斎だったのか、本棚が並んでいた。そして、あまり使われていなかったようで、埃が薄くまんべんなく積もっていた。
にも関わらず、ライティングデスクに長い脚を投げ出し、ライティングチェアにそっくりかえってドフラミンゴがうたた寝していた。顔の上に読みかけの本が乗っかっているが、規則正しい呼吸は多分、寝息だろうとマリアは思った。
起こすと、何を言われるか分からないので、音をたてないように気を配りながら掃除を始めた。
まずセオリー通り、相当埃がたまっているだろうと思われる本棚の上から始めようと用意した脚立を立て掛け、登っていった。そして、いきなり視界に飛び込んできた鼠の死骸に硬直し、反射的に後ずさろうとしてバランスを崩した。
異様な気配にドフラミンゴが目を覚まし、硬直したまま脚立を踏み外したマリアに駆けより、抱き止めた。
安眠を妨害され、不機嫌なドフラミンゴもマリアの尋常でない様子に眉をひそめる。
息づかいが荒く、額には脂汗を浮かべている。自分が蹴り飛ばした脚立に目をやり、マリアを床に置いてから立ち上がった。背の高い彼は脚立を使わずに本棚の上を見ることができる。
(こいつか…)
ドフラミンゴは鼠の死骸をつまみ上げ、換気のためマリアが開けていた窓から放り投げた。さっきよりもおかしくなっている息づかいのマリアの頬を張る。
「しっかりしろ!」
頬を張られた痛みと彼の声に、マリアの目が生気を取り戻してきた。そして、ドフラミンゴを見つめると、まぶしい笑顔になる。
「若様の目、綺麗…」
(しまった!)
笑顔がまぶしいのではなく、サングラスが外れて物理的にまぶしいだけだったのだ。珍しく取り乱し、慌ててサングラスを探すドフラミンゴをマリアのうっとりとした声が追い打ちをかける。
「今は
ようやくサングラスを探しあて、それをかけるとドフラミンゴはマリアを見て言った。
「俺の目を綺麗だなんて能天気なことを言いやがったのは、母以外で初めてだ」
『あなたの目は、とても綺麗よ。ドフィ…』
その言葉とともにやさしい笑顔の母親と、隣で同じような笑みを浮かべて頷いている父親の姿がドフラミンゴの記憶に甦る。そして、すぐ幼なじみの言葉にかき消された。
『お前の目は悪魔の目だえ!近寄るんじゃないえ!』
『ホント気味が悪いアマス。さっさとうちを出て行くアマス』
「両親以外のヤツは悪魔の目だの、気味が悪いだの、真っ当な感想を述べてたがな」
無理に作ったような笑みにマリアの胸は痛んだ。
「それはきっと若様の綺麗な目に嫉妬して言ったに決まってます」
その言葉に再び母の声が甦る。
『…。だけど綺麗なものはとても妬まれやすいの。だからもったいないけど、隠しておきましょうね』
その言葉に背いて、幼なじみにサングラスを取って見せたのは、自分だった。
マリアはおずおずと尋ねた。
「…。コラソンもそんなことを?」
「なんで急にコラソンの名前が出る」
マリアには『両親』以外と言い、『家族』とは言わなかったことが腑に落ちなかったのだ。コラソンが人を傷つけることを言うとは思えない。
「コラソンは俺の目のことは知らねェ。ヤツの前ではサングラスを外したこたァ、ねェからな」
不機嫌な声でドフラミンゴは答えた。
自分のコロコロ色を変える瞳を見て驚かないどころか、綺麗などと言って受け入れる女を試してみたくなった。どこまで自分を受け入れるのか。どうせひどい仕打ちを受けたら、綺麗な目も恐怖へと変わるだろう、と。
「さて…。俺の部屋には機密書類が山ほどある。そいつが外部に流出したら、一大事だ」
急に話題を変えたドフラミンゴにマリアは不思議そうな顔をした。ドフラミンゴはもういつも通りの彼だった。残酷な三日月の笑みを浮かべて続けた。
「お前がこの部屋を出る時は、機密書類を隠してねェかチェックする」
「チェック…?」
「服を脱いで裸になれ。断れば隠し持ってるものとして強制的に身体検査をしてやる」
マリアは今のところ書類等を触った覚えはないが、彼の言うことももっともだと思った。
「かしこまりました。若様」
妙に大胆なところがあるマリアは、さっさと服を脱ぎ始めた。
脱いだ服に書類などないことを見せたが、ドフラミンゴは更に続ける。
「女は体にも隠し場所がある。そこもチェックする」
そう言うなりドフラミンゴはマリアを引き寄せ、彼女の下腹に手を伸ばした。
恥ずかしさのあまり顔を伏せるマリアの顎を上げ、強引に口づける。
指に絡まる粘液が音をたてるほど分泌されてきた。それに反応して彼の一部も変化する。
ドフラミンゴは凶暴な笑みを見せた。
「ここからは俺の安眠を妨害しやがった罰だ」
言い終わらないうちに彼の変化した箇所をマリアの中に突き立てた。
マリアは突然、自分を貫通するような感覚と鋭い痛みに悲鳴をあげた。だが、その感覚の奥にそれとは異なるものが感じられた。
更に深く突き立てようと少し引き抜いた彼自身に、初めて男を受け入れた鮮やかな証がまとわりついているのを見て、ドフラミンゴは満足気な表情になった。
もう一度より深く突き立てると、いきなりわしづかみにされる感触が襲ってきた。直後にまるで別の生き物のように彼を絶頂へと導こうと動いているのを感じた。
マリアもまた痛みの奥から味わったことのない快感を覚えた。彼と繋がっている部分が自分とは違うもののように感じる。
初めて男を受け入れた小娘に、いきなり絶頂に達せられることに妙な敗北感を感じたドフラミンゴは、達する前にマリアを解放した。鮮やかな赤に染まった自分自身の先端からは、絶頂に達するのを堪えた液体が滲んでいる。
マリアは不意に自由になって、戸惑いを感じた。
「もういい。さっさと部屋を出て行け」
不機嫌な声にマリアは更に戸惑ったが、服を着ると言われた通り部屋を出た。
彼の目のことでまた嫌な記憶を思い起こさせてしまったのかもしれない、と部屋を追い出された理由を考えていたため、痛みをあまり感じなかった。ぼんやりしたまま自室に戻ったマリアはベッドにもぐり込んだ。
スミマセン。次はもっとエッチシーン増える予定です。(汗)苦手な方はすっ飛ばしてください。原作シーンは多分ありません。