急に戻ってきたマリアを心配して、モネがマリアの部屋を訪ねた。
ベッドに潜り込んでいるマリアに声をかける。
「大丈夫?マリア」
布団から覗かせたマリアの頬に赤く手形がついているのが気になったのか、そっと手を伸ばしてきた。
「大丈夫よ。モネ。若様の部屋で死んだ鼠を見てビックリして、パニックになりかけた時に若様が正気に戻してくれたの」
マリアは自分でも様をつけていないのに気付かなかった。
「え?まさか…」
モネの凍りついた表情にマリアは思わず笑みをこぼす。
「若様は私のトラウマなんか知らないはずよ。単に若様の選んだ部屋に鼠の死骸があったってだけのこと」
心配そうな表情のモネに落ち着かせるように言った。
「仮に若様の性格が悪くても、そこまで丁寧に嫌がらせなんかしないわ。それに、あの部屋は、だいぶ埃が被っていたし、最近は使われてなかったんじゃないかしら」
そして、マリアはやんわりとモネを追い出した。
「あまり思い出したくないから、一人にして」
「…。分かったわ。もう大丈夫だと思ったら、いつでも呼んで」
「ありがとう」
マリアが他人に弱いところを見せたがらないことを知っているモネは、部屋を後にした。
そしてマリアを探している者には幹部の力で、具合が悪いらしいと言って休ませることにした。
マリアは一人になって涙を流した。
自分が衝撃を受けたものでも失ったもののためではなく、悪魔の目と呼ばれ自ら愛情を放棄した幼少期のドフラミンゴのためだった。
何故あんな破綻した性格になったのか、人間を憎んでいるかのような残虐な振る舞いをするのか、理解できたような気がした。
自分にはどうしようもない身体的な特徴を理由に自分の存在を拒んだ人間への復讐のように思えた。(後に民衆から吊し上げを受けたことが決定的な理由であるのは、マリアは知らない)
ひょっとしたら、そんな目に産んだ両親さえも憎しみの対象なのかもしれない。
もしも、コラソンが彼の目のことを知っていたら、どうなっていただろう?
コラソンなら両親と同じように優しく受け入れ、彼を拒む者に立ち向かったかもしれない。
だが、そうはならなかった。彼の目のことを知らず、それによって形成されただろう残虐な性格を理解できず、二人の間にできた溝は埋まらなかった。
もしかしたら、ドフラミンゴがコラソンにも拒まれることを無意識に恐れたのかもしれない。
そうだとしたら、とても皮肉なことのようにマリアには思えた。
マリアは彼の宝石のような瞳を思い出した。口止めなどされなかったが、口外するつもりは全くなかった。彼女にとって初めて、一人でこっそり楽しむ宝物ができたのだ。
そして、微かな希望をマリアは抱く。
破綻した性格を直すことは不可能でも、彼の目は決して拒絶されるものではないと気づかせることはできるのではないか、と。
放棄した愛情を再びその手に戻したいと心から思った。
更にその瞳を堂々と見せて欲しかった。
翌朝、大変な事実に気がついたマリアは、心配して訪ねてきたモネに対し、幹部が使用人の心配などしなくていい、と逆に叱りつけた。
それから汚れてもいい動きやすいTシャツとショートパンツに着替え、両手に掃除道具一式を持ち猛然とドフラミンゴの部屋に向かった。
威勢よく扉をノックして返事も待たずに開ける。寝室に続く扉の向こうにドフラミンゴの気配を感じる。
扉の開くのとは違う方向に立つと同時に、扉が乱暴に開いた。どちらも寝起きのような姿だ。(ドフラミンゴは本当に寝起きだったが)
マリアはドフラミンゴの足跡だらけの床を確認して、へたりこんだ。
(やっぱり、ここも埃だらけ…)
その様子を見たドフラミンゴがジロリと睨み、不機嫌な声で言った。
「…。お前はつくづく、俺の安眠を妨害するのが好きらしいな」
座り込んだマリアは頭を上げてドフラミンゴをキッと睨み返す。
「好きじゃありません!そもそも、こんな埃まみれの部屋で安眠する方が間違ってます!」
「埃で死ぬヤツなんざ、いねェ」
「死ななくても、身体にいいワケありません!」
目を据わらせたマリアは立ち上がり、部屋の外に通じる扉を指差すとドフラミンゴに命令した。
「さっさと朝食を召し上がってください」
他人に命令されることなど滅多にないドフラミンゴは若干、気圧され気味になった。
「…。着替えくらいさせろ」
「どうぞご自由に」
さっさと寝室に入り込んだマリアはタオルで口を覆いながら返事をする。
奥にある窓から差し込んでくる朝日の中、埃が幻想的に舞う。
(まったく…。よくこんなところで寝られるわ…)
マリアは呆れながら奥に向かい窓を開けた。
すると後ろで扉の閉まる音が聞こえた。
ドフラミンゴは昨日とは別の理由で彼女を試したくなった。
数えきれないほど女を相手にしてきたが、
それが初回限定なのか、マリアの体質なのか試したくなったのだ。
書斎に続く扉を閉め、そのことに気づいたマリアがこちらに来るのを止めニヤリと笑った。
「フフフフフ…。俺の安眠を妨害しやがったら、罰を受けるのを忘れたのか?」
「朝っぱらから悪ふざけはやめてください!」
タオルで覆われて声は響かない。
「悪ふざけ…?フフフフフ…。俺は悪ふざけは嫌いでなァ」
ドフラミンゴがマリアをベッドに押し倒すと、更に埃が舞う。
動きやすい服は、脱がしやすくもあった。
ショートパンツと一緒に下着も脱がされ、足を広げさせられたマリアは声を上げるが、やはり声はくぐもる。
「やめてください!」
しかし、ドフラミンゴは露になった場所に長い舌を這わせる。
背筋がゾクゾクとして快感を予想させるが、弱々しいながらも抵抗した。
「私は、朝食を、召し、上がって…と…」
太腿を押さえられ足の自由がきかず、蹴ることもできない。(できたとしても、やすやすと止められるだろうが)
上体を起こし彼の頭を押さえつけ、何とか行為を阻止しようとする。
しかし。
「まずは食前のデザートだ」
と意味不明なことを言われ、自分が分泌した粘液を啜る音が聞こえた。
その場所から湧いてくる心地よい感覚に力が抜けてくる。
頭を押さえられる力が弱まった。
粘液を啜るのを止め、舌を中に入れる。
鼻先に見える突起物を指で弄ぶと、甘い声が聞こえる。と同時に。
舌を引き抜かれそうな感覚がドフラミンゴを襲う。
(体質か…)
舌を中から出すと、ドフラミンゴはニヤリと笑った。
押さえつけている脚からも既に抵抗が感じられない。
自分も服を脱ぎマリアの上にのし掛かる。
マリアのTシャツと下着も脱がし、豊満な胸にも長い舌を這わせた。
ドフラミンゴの舌が入り込んでいた場所が、自分の意志と関係なく動き、そこから目眩く快感が湧き上がってくるのをマリアは感じた。
それとともに、身体中の力が抜けていく。彼が服を脱いでいる隙に逃げることもできない。それどころか、ショートパンツに続いてTシャツまでも脱がされ、一糸まとわぬ姿にされてしまった。(口を覆っているタオルは別)
全身に力が入らないうえ肩をがっしり押さえつけられ、彼の頭が胸に近づいてくるのを見ても抵抗できない。
彼の舌に蕩ける意識の中でも、二人が動く度に舞い上がる埃が気になった。
彼は別に大丈夫そうだが、自分は埃よけに口を覆っているのに、ドフラミンゴは何の対策もしていない。
確かに埃で死ぬ人はいないとは思うが…。無駄と思いつつ、提案してみる。
「あの…。せめて掃除が終わってから…」
マリアのトロンとした目の中に心配そうな色が浮かんだ。
もちろん、そんな言葉は一蹴する。
「終わってから掃除しろ」
押さえつけなくても、抗うことがなくなった身体をじっくり味わう。
適度な弾力の豊かな胸を揉みしだき、更にマリアの力を奪った。
「じゃあ、これで口を覆って…」
自分の口を覆っていたタオルをドフラミンゴに差し出してきた。
そんなものには目もくれず、逆に自分の口で彼女のそれを覆う。
ドフラミンゴはマリアの口の中を蹂躙しながら、自分の鍛えられた腹筋の上部をマリアのトロトロの部分に押しつけた。
そして身体を移動させ、濡れた腹筋をマリアの顔の前に見せる。
「自分で汚したところは自分で始末しろ」
マリアが彼の背中に腕を回し、濡れた辺りを舐め始めたのを確認して、自分の怒張した部分をマリアに突き立てた。
「あっ…!やぁっ!!」
自分のやや酸味の感じられる粘液を舌で拭き取っていたら、いきなり貫かれ思わず声をあげる。無意識に彼を抱きしめ、繋がった部分が再び勝手に動き出すのを感じた。
その動きとともに得も言われぬ快感が沸き起こる。
恍惚とした意識の中、手をほどかれベッドに戻されると、今まで自分の中にあった彼の一部から白く濁った熱い液体がマリアの胸から腹にかけて、飛んできた。
何も考えられず、ただ機械的にドフラミンゴに渡そうとして拒否されたタオルで栗の花の匂いの液体を拭いた。
脇腹を伝ってベッドにも大分、滴り落ちたが、どうせ洗うのだからとぼんやりした頭で考える。
ふと気付くとドフラミンゴが脱衣場を兼ねた洗面所の扉を開け放し、顔を洗っている。反射的に飛び起き、口を覆うために数枚持ってきたタオルをひっつかみ、彼に駆け寄った。
ドフラミンゴがそこら辺にある埃まみれのタオルを手にしたのを、ひったくった。
濡れた顔で今回は
「綺麗な目が台無しになりますよ。若様」
思いがけなく彼の目を見ることができ、るんるんとした足取りでマリアはベッドの方へ戻っていった。
そのおかげで、いつの間にかTシャツとショートパンツが枕の下に隠されていたのも、汚れないようにしてくれたのだと(無理矢理)好意的にとらえることができた。
むっつりした顔つきのドフラミンゴが洗面所から出てきた。
マリアが差し出した服を着て、部屋を出る。
ファミリーの集まる食堂に着いた。
「あれ~?今朝は珍しく早いね~。ドフィ」
「マリアに掃除の邪魔だと追い出された」
その場にどっと笑いが起こる。
「ドフィを追い出すたァ、マリアもなかなかやるじゃねェか」
「若に命令なんて、私には考えられないざます」
モネがそっと席を立ったのを、ニヤニヤ笑ったドフラミンゴが止める。
「マリアの手伝いでもしに行くつもりか?やめとけ」
「そうだな。どうせ『幹部が使用人の手伝いなどなさらないでください!』って怒鳴られるのがオチだ」
セニョール・ピンクの言葉にデリンジャーもからかうような口調で付け加える。
「そうよぉ。でもそれ、ここで見れなきゃ、つまんないわぁ」
マリアとモネのやり取りは既に幹部の間でもネタになっていた。
「モネはマリアには甘いんじゃねェか?妹のシュガーには厳しいってのに」
「そうよ。あたしにも、もう少し優しくしてくれても、いいと思うんだけどな~」
「あんたは厳しいくらいが丁度いいの!」
モネはそう言ってプイッと出て行った。
1ヶ月この王宮にいたモネはドフラミンゴが選んだ部屋が、どこにあるか把握していた。そこに通じる廊下にロープが張られている。
そこには、鬼の形相のマリアのイラストと『次の者、立入禁止』と書かれていて、ドフラミンゴとシュガーとデリンジャーの顔の可愛いらしいイラストがあった。
更に脇には『ここからはタオル着用のこと』とタオルの山がある。
クスッと笑ったモネはロープをくぐり、そのタオルで口を覆い埃が出てきている部屋に入った。
「私は入っていいのよね。マリア」
モネが声をかけると、奥の部屋からマリアが顔を覗かせた。
部屋中を舞う埃 の中、覗かせた顔に納得した顔つきのマリアが頷く。
「見物ですか?モネ様」
モネは顔をしかめた。
「様はやめてって言ってるでしょ」
「かしこまりました。モネ様」
クスクス笑ったマリアが答える。
それに対し、モネは涼しい顔をして言った。
「部屋の掃除でもしたら、ファミリーのボスのいい点数稼ぎになるんじゃないかと思ってね」
「そんなことで点数稼ぎになるとは思えませんけどね」
マリアはニッコリ微笑んで答える。と、額を押さえ瞑目し溜め息をつく。
「あ!なんか書いてある!」
「いい。とっとと行け」
モネの耳にも話し声が聞こえてきた。
ドフラミンゴが先に口を開いた。
「何で自分の部屋が立入禁止なんだ」
「もちろん、掃除が終わってないからです」
「埃で死ぬヤツなんざ、いねェって言ったろ!」
その脇でシュガーとデリンジャーがはしゃぐ。
「ここが若様の部屋か~」
「ちょっと汚れ過ぎ?」
それをモネが上手く誘導した。
「あんたたち若様とお城、探検してきたら?」
ドフラミンゴが不機嫌そうな声で言う。
「じゃあモネ。お前が案内しろ」
モネが躊躇していると、思わぬところから援軍があった。
「案内されたら探検にならないでしょ?きっと面白いわよ~。シュガー」
マリアがシュガーをたきつける。案の定、シュガーがはしゃぎだした。
「お姉ちゃんの案内なんか、いらな~い。探検に行こう!」
シュガーとデリンジャーはドフラミンゴのズボンを引っ張り、来た時と同じく賑やかに出て行く。残った二人は、掃除をしながら離れていた1ヶ月間を埋めるように話に花を咲かせた。
が、マリアはドフラミンゴの目のことと、彼との秘め事についてはモネにも言わなかった。彼の目はマリアだけの宝物だし、ドフラミンゴは特定の女と関係を持つような人間ではなかった。自分にもすぐ飽きて単なる使用人に戻れるだろうと思ったのだ。
今度は情けないミンゴを書いてみようかな~。
でもまた、期待はずれになるかな~。