国際平和維持活動–––PKOという言葉は世界から消えた。
なぜなら、Keepすべき対象のPeaceが無くなったからだ。
世界は混沌で満たされ、常に争いが絶えなくなった。
常任理事国あたりはまだ平気な方だけど、発展途上国などは財政破綻などを起こして隣国に吸収されて行って、どんどんと国として規模が大きくなっていったんだ。これが急速に何度も繰り返された結果、中央政府の発令する法律は隙間が多く、地方の慣習性の方が強かったりと徐々に秩序が保てなくなっていくんだ。
格差社会の拡散が途上国をこうやって追い詰めていった。
今や世界では、格差という言葉では表せられないほどに低所得者と高所得者との差が激しい。それは差という物ではなく次元の違いと言って過言ではない。
金持ちが更に金持ちになる構図や、自分の懐しか考えていない政治家が打ち出す政策は富裕層のみを潤すにとどまった。
資源の枯渇や機械化、情報化。グローバル化による労働賃金の見直しや、それに伴い弱体化していく労働組合などがあり、中級労働者のほとんどが職を失った。
リッチはスーパーリッチになり、サラリーマンはニートになったわけだ。
うはうはになったスーパーリッチはしかしそこで気付くわけだ。おや、我が社の製品を買う消費者が消えてしまったじゃないかと。
金に物を言わせ良いものを作る事は簡単だ。しかしそれを消費するのがスーパーリッチだけだとすれば効率が悪い。もっと多くの金が欲しいんだ。スーパーリッチという人種は。
そこで考えた。金をばら撒こうと。
リッチになると感覚が鈍ると言うがまさしくそれを証明してみせたのがスーパーリッチ達だ。
労働では富を得られなくなった世界で富を得るには、資産が必要という構図が出来上がったならば、その資産を人々に与えようと。
いわば投資を市民に行ったわけだ。
投資の規模が大きければ大きいほどにリターンは大きかった。これがスーパーリッチ達の間で流行りゲームとなった。特定の地域だけがバブリーに経済が膨れ上がって行き、やがてそれは国を飲み込むほどにまで発展していく。
あるスーパーリッチは国家予算よりも多い富を築いたという笑い話がある。
そうして政治家を凌ぐ権力を持ったスーパーリッチが大挙していく中で、国という言葉は単なるデータフォルダとなっていく。
スーパーリッチのスーパーリッチによる、スーパーリッチのための世界。それがアメリカ大陸だ。ワシントンやリンカーンやフランクリン辺りを唸るほど飼っていた者勝ちだ。
そんなスーパーリッチは、今度は道楽で慈善事業をしだしたりする。アフリカや中東辺りで飢餓に苦しむ凄惨な現状を見て、これは大変だと自尊心を満たすためだけに大勢のフランクリンを指一つで動かしたりして、ナントカ団とか送るわけだ。
で、それが海賊とかに捕まって、身代金を払ったり払わなかったりするんだ。
今アジア近郊で熱い仕事が海賊だ。そういうスーパーリッチの手先を誘拐して脅せば一夜にしてリッチになれるからね。そういう仲間を見てどんどんと広がっていってアジア、アフリカでは賊が溢れている。中東ではテロリストが立派な職業になっていたりする。
そういう賊をスポンサードするスーパーリッチなんかもいてロイヤルティで儲かる仕組みもあるらしい。
今や世界はスーパーリッチの遊び場となったわけだ。
そうはさせじと対抗するスーパーリッチは軍隊なんかを金で動かしてナントカ団に同行させて賊を追い払おうとするんだけど、なんせ賊の後ろにもスーパーリッチがいたりで装備は最新の物を使っているんだ。
賊も侮れない存在となっていたりする。
元軍人のホームレスなんかも金の匂いを嗅ぎつけて海賊に就職したりして今もっともヒートしている社会問題なんだ。と言っても、この問題もスーパーリッチの遊びに過ぎない。
これが世界の現状。まだまだ語り尽くせてないけれど、どれだけクズみたいな世界になったかわかるでしょう。
金がある奴の天下なんだ。金のない奴はある奴の駒になって地球っている盤の上で踊らされるんだ。
軍人なんか、ブルーワーカーも同然さ。所詮は駒。政治家さんの駒から、スーパーリッチさんの駒になっただけさ。
尊敬なんかされない。尊敬されるのは、一丁前にジェントルマンの仲間入りをした将校クラスの駄々っ子達だけだ。
現場で動く兵卒なんかは、自分の持っている武器よりハイテクな武器を持っている海賊なんかに殺られて骸となって本国に帰ってくるんだ。滑稽だろう。
僕、帰ったら彼女にプロポーズするんだ。とか言ってフラグを立てた兵士は期待通りそのフラグに従って二階級特進して帰ってくるんだ。
今や軍人は、死ぬ確率がとんでもなく高い。
なり手が少なくなってスーパーリッチも悩み始めていたりするらしい。
でも、そんな事は頑なにU.S Armyと名乗っているアメリカ陸軍には関係なくて、
栗栖ベクターの所属している部隊に名前はない。
何故なら、そんな部隊は存在していないし、栗栖ベクターという一兵卒はとっくに死んでいるからだ。
書類上で。
だからアメリカはそんな部隊は無いって言うけど、実在はしている。
だから便宜上こう呼ばれる。
海賊よりもハイテクな装備を我が物顔で装備出来るし、練度も断然上。海賊なんか相手じゃない連中さ。
だから、白羽の矢が立って、今アジアにいたりするんだ。
闇夜に紛れて、遮光コーティングのされた戦闘服に身を包んだガスマスクのスペクター達が空から降ってきた。
中国がアジアの環境を荒らし続けた結果、今やマスク無しでは外を歩けない死の町となった日本。
人々はドーム型のコロニーの中で生活していて、スペクター達はターゲットがいるとされる高級コロニーの目の前まではるばるやって来たんだ。
この中に賊に車を提供しているとされるトモタ自動車の社長がいるらしい。
栗栖ベクターは、一瞬だけ感慨深そうに辺りを見回した。もっとも、顔色はガスマスクで見えないんだけどね。
遮光装置をオンにして、6人のスペクターはコロニーに進入していった。
※ ※ ※
さぁ、昔話の続きをしよう。
学力からして幹部候補生に余裕でなれるけれど、それを良しとしなかった。何故なら、応募資格に大卒の文字があったからだ。四年も俗世で時間を無駄にする気など、毛頭起きなかった。だから永続勤務コースで入隊した。
厳正な規律を重んじている自衛隊はとにかくガチガチで、無駄な所が細かったりする。訓練もそれが枷となって思いっきり隊員が技術を学ぼうとするのを妨害しようともする。
謎だらけの組織だった。日本の文化を軍隊に反映させるとこれほどまでに動きを重くするのかと。
あの物を大切にする姿勢。無駄でしかないと思った。
そして、反省という名の腕立て。
何が反省なのかさっぱりだった。
だいたいヘマをやらかすのは同期のクズ達で非はなかった。それでも連帯責任として全員で腕立てをするのだ。
言って分からないのなら体で覚えさせる。これが教官の口癖だったが、まったく共感できなかった。教官が教官だけに。
自衛隊は腕立てが大好きだ。事あるごとに腕立てを強要する。だが時に、正座をさせる事があった。
これにはさすがに根を上げた。
体力に自慢のある、ないに関係なく、この罰だけは平等に体に刻まれた。
その時ほど日本の文化を恨んだ時は無かったと後になって思う。
とりあえず理不尽を極めたような初期教育課程を終えて、特技教育課程に行くわけだ。
前線で戦いたかったので迷う事なく職種は普通科を選択した。
空挺団に行かないかと教官に言われたけども、そいつの言うことよりも信頼できる教官を追うように任地を希望した。
その部隊は山岳レンジャーの面影を残す、日本でも指折りの精強部隊だった。申し分ない。
初期課程と同じように理不尽な事を言われ、やらされ、あっという間に半年が経過していた。
とうとう部隊配属の発表がされる。
希望通り、信頼のおける教官の中隊に配置が発表され、一安心した記憶がある。
でも、配置前に教官に言われた。
「お前が望むような環境も、野郎も、恐らくはいないだろう」と。
実際、そうだった。
少しは期待をして入ってみれば、なんて言うことはない。
学生の延長線でやっているような薄っぺらい隊員しかいなかった。
暇さえあれば群れて騒ぐ。まるでオナニーを覚えた猿みたいにずっとそんな調子だった。
その風潮に馴染むことはやはり出来なかった。
さりとて、閉鎖された集団生活の中で一匹狼を気取るのも少しばかり
ほどほどに、付き合いをこなした。
世界共通で軍隊に喫煙者は多い。同じ部屋の先輩に連れられよく喫煙所に行った。事あるごとにタバコを吸う隊員ほど、不思議と体力があった。世間ではタバコは毒だなんだと騒いでいるけれど、中に居るとタバコは体力増強剤なのかと疑うほどにほぼ全員が吸っていた。
喫煙所で手ブラで立っているのも不自然なので、一応吸ってみることにした。
するとどうだろう。体の疲れ方が変わった。タバコはやはり準麻薬のようだ。
自然と本数も増えていき、タール数もあっという間に上がった。
一応タバコに負けないように体力練成は欠かさずに行った。結果的に体力が増した。こういうカラクリかと納得したのを覚えている。
酒の席も頻繁にあった。若い隊員は何かしらの余興をやらされた。それが苦心でしかなかったのは鮮明に覚えている。
当時の日本は、選挙権が18歳にまで引き下げられ、飲酒喫煙も同等に引き下げられていた。
別に法律的な問題はどうでもいいのだが、やはり閉鎖空間では娯楽品が限られてきて、自然と体に直に影響を及ぼすアルコールやニコチンに偏っていくわけだ。
軍人が麻薬に手を出すのも、仕方のないことなのかもしれないな。
そんな事を思う内に、後輩が出来て、レンジャー教育に行っていたりする。
限界のその先がレンジャー。石ころをダイヤモンドに変えるのがレンジャー。レンジャーレンジャーレンジャー。
まさしく生き地獄のような三ヶ月を耐え忍び、最終的にはレンジャー資格を取得できた。
最後の総合訓練の記憶はほとんどない。限界スレスレの、いや、あれは振り切っていたかもしれない。山の中で突然目の前に預けられていた施設の玄関が見えて、苦しみから逃れたくてそこに入ろうとするんだけど、ふと冷静に見てみると、扉なんかは当然なく、一歩踏み出せば崖から落ちるところに立っていたんだ。
喉も渇くし腹も減るし眠い。
傾斜は厳しいし荷物は重いし終わりが見えない。
途中から自分が何をやっているのか分からなくなって発狂した奴もいた。突然走り出したり泣き出したり。自分の名前を忘れる奴がいたり。
新隊員の理不尽なんか、スターバックスのキャラメルマキアートかと思えるほどだった。
それを入隊後一年で取って、さらに一年後に陸曹になって、と全てを最短で取得していったけれど、一向に戦地への派遣の話はなかった。ならばと特殊作戦群に配置希望を部隊に出した。
しかしタイミングよく、アメリカと合同で特殊部隊創設の話が舞い込んできていた。
非公式に暗躍するイリーガルスクワッド創設の話に、真っ先に食らいついた。
世界情勢が本格的に不安定になっていく中で、とうとう日本も本気になったらしい。
しかし、その部隊の応募資格には部隊長の推薦が必要だった。
個としての能力は抜群だが、協調性に欠ける。
という評価らしく、その推薦状を
しかし、特殊作戦群の方へは何故か書いてくれたらしく適性検査を受けることとなった。
頭の中がクエスチョンマークで一杯になったが理由などどうでもよかった。
千載一遇のこのチャンスを、逃すわけにはいかない。
そうして、見事なり得た訳だ。
特殊部隊の隊員に。
入隊後三年目で特殊作戦群に配置される。
そんな事はあり得ないの一言だったが、やはりと言うべきか条件付きの合格だったらしい。
五年の教育期間を言い渡された。
着々とカリキュラムをこなしていくが、海外での訓練中にあるエージェントが接触してきた。
曰く、君の事は知っている。
曰く、君みたいな兵士が欲しい。
曰く、だから一緒に来い。
向こうは名乗る事もせずに一方的に話を押し付けてきたがよくわからないままサインをした。
何故かって。脅されたからに決まっている。
密約を交わして、工作があって、口裏を合わせて、最終実地訓練で不慮の事故に遭い二回級特進。
そうして、第二の人生と言うべきか、アメリカの尖兵となったのだ。
この頃にはもう、スーパーリッチ達が姿を現してきていた。
アメリカ政府の対抗策としてGhostを創設したのだ。スーパーリッチの知りえないところに隠し、運用するために死人を集めたイリーガルスクワッド。
あの時既に、採用候補者だったと言うことらしい。
五年の期間を経て、合格の印が押されたという事だ。
何とも回りくどいやり方だったが、終わり良ければ全ていいのかもしれない。
栗栖ベクターは、こうしてスペクターとなるスタートラインには立てた訳だ。
さて、本日はここまで。
付き合ってくれてありがとう。
良き日を。
語り部:
あれですね。
めっちゃ突っ走りましたね。
何故かって。
自衛隊の事を知らないからに決まっているだろう。
こんなんかな〜って想像ですよ。
何てったって未来の話ですし、言うなれば全てでっち上げです。
なので、これらは全てフィクションです。実在する組織や人物とは何ら関係ありませんので、その点をお願いいたします。
一応気を遣って、トモタ自動車となってますが、心のなかでは、YoでいいですYo!