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---シュウ---
翌日、つらい作業を行う僕。部屋には僕と兵藤君の二人だけ。
「兵藤君、宿主に入るまでは外部との会話はできない。神器内部でオーフィスとロセだけが話相手になる。あと、新機能を入れて置いた。禁手化すると、君は実体化でき、そして戦え、触れ合える。短い時間だけどな」
兵藤君は無言で頷いた。僕は彼から神器を取り出し、ロセの魂を収めた器を入れた。次に…うっ…冷徹になりきれない。涙があふれ出てきた。
兵藤君はそんな僕を笑顔で見ていてくれている。
「ありがとうございます。新機能を付けてくださって。僕の為に涙までいただいちゃって。シュウさん、あなたに出会えて良かったです。僕は大丈夫ですから、お願い…うっ…します」
兵藤君も涙を堪えきれずにいる。くそっ…今回の任務は失敗だ。こんな事になるなんて。
兵藤君の身体から神器と駒を取りだし、駒を神器へ収めた。魂の抜け殻となった身体を、空間の裂け目の倉庫にしまった。
さて、行くか…
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小猫と黒歌チームと共に、アーシアに宿る「黄金龍君」ファーブニルと使い魔ラッセーのオーラを探す。アーシアのオーラよりもドラゴンのオーラの方が探し易いからだ。
今回の作戦には、ギャスパーも来たがったが、朱乃さん達のガードを頼んだ。ベースキャンプが見つかる可能性もあるから。
匙王の城から感じる目的のオーラ。空間を裂いて、城に侵入して、ある部屋に入った。
「誰?」
「バイパー…」
僕達の侵入に驚くアーシアとゼノヴィア。
「アーシアに贈り物だ。拒否は認めない。兵藤君の入った神器だ。頼む受け取ってくれ」
「兵藤君?…兵藤…兵藤一誠…一誠?…イッセー…」
『アーシアたん、それを受け入れるんだよ。アーシアたんが一番大事な者だから』
ファーブニルの声がした。
「私の一番大事な人?…思い出せない…うっうっうっ…」
アーシアの琴線に触れる物があったのだろう。大きな瞳から涙が零れ落ちている。
「ちぇっ…来やがったかぁ。小猫、黒歌、時間稼ぎを頼む。ライザーとリアスだったら逃げろよ」
「「了解(にゃん)!」」
「私も行く。私は何かとんでもない事を、してしまった気がしてならない。罪滅ぼしになるとは思えないが、アーシアの事を頼むぞ、バイパー」
ゼノヴィアも得物を手にして小猫達とともに扉の外に出た。
「ラッセーの名前の由来を覚えているかい?アーシア」
「えっ?ラッセーの…雷撃と…イッセーさん…イッセーさん?」
僕は、新しく作った、記憶を呼び覚ます術式プログラム『メモリーリロード』をアーシアに向けて発動させた。デュリオ兄ちゃんの神滅具のような広域的な効果はないが、2,3人なら効果は出る魔術である。
「あっ…」
アーシアの周囲を走馬燈が取り囲み、記憶を呼び起こして行く。
「イッセーさん…イッセーさんはどうしたんですか?なんで神器になんか入っているんですか?」
アーシアの記憶は甦ったようだ。
「兵藤君は暗殺された。過去の時間軸で、彼が生を受ける前に、彼の両親が殺されてしまった。彼はもうこの世界に魂がないのだ。招魂できなくて、すまない」
僕はアーシアに謝った。彼女の大事な人をロストさせてしまったから。
「イッセーさんは誰に殺されたんですか?」
「匙だ。アイツは旧魔王派と手を組み、過去に戻れる能力持ちに依頼したんだ。ソーナを手にいれるためだけの理由でだ」
「そんな…ひどい…」
彼女の中で何かのスイッチが入ったようで、表情に精気が戻って来ている。
「私にイッセーさんをください。一緒に戦いたいです」
僕は、あの神器『一誠の魂(ソウルオブイッセー)』をアーシアに授けた。
「禁手化すると、イッセーが実体化できて、一緒に戦える。オーフィスも一緒にいるから、魔力もオーラも尽きることはないと思う」
「イッセーさんに会えるんですね。イッセーさんと一緒にいられるんですね」
「あぁ。イッセーの泥臭くて熱い想いを、継いでくれ。行くぞ、アーシア。リベンジをするぞ」
「はい!」
アーシアは黄金の鎧を纏った。「黄金龍君」ファーブニルが鎧化したようだ。
「ラッセー、お前の力も貸せ」
僕はラッセーを蒼い翼にして、鎧に装着させた。そして、扉の外へ向かう。外ではゼノヴィアが、ボロボロになって戦っていた。ゼノヴィアに記憶の呼び起こしをし、
「アーシア、ゼノヴィアを回復して」
「はい!」
ゼノヴィアの抜けた穴を僕が埋める。妖刀村雨を手にして構えた。聖水を滴らせた村雨で、悪魔共を屠っていく。
「小猫、下がれ、回復してもらって来い」
「了解!」
「黒歌、妖術、仙術をフルバーストして」
「了解にゃん!」
---ゼノヴィア---
記憶が甦ってきた。そうだ…イッセー…思い出した。なんで、こんな大事なヤツの事を忘れていたんだ?イリナ…謝って済むことではない。私はなんて事をしていまったんだ。シスターグリゼルダ…私は見殺しにしてしまった。あんな大切な人達を…私の手は血で染まり、地獄へ行くんだろうな。記憶を戻してくれたバイパーに感謝だな。納得して地獄に行けそうだ。
ふと、アーシアを見ると精気が漲っていた。アイツがいるのか?
「なぁ、アーシア、イッセーは?」
「私の中にいます。神器としてですが、私の元に帰ってきてくれました」
「そうか…アイツは…」
イッセーがいるんじゃ、無様な姿は見せられない。回復されて、前線に戻る。
---シュウ---
ほぉ…やっと、主役の二人が来たか。威風堂々とした佇まいのリアスとライザーがやってきた。
「この城に乗り込むとは、よい度胸だな。だが、我ら二人がお前らを消滅させてやる」
僕はあの魔術を発動した。
「「えっ!」」
脳裏に浮かぶ映像を見て、驚いている二人。まともに戦ったら、この世界は消えるからなぁ。リアスの滅の力と僕の無の力がぶつかったらねぇ。
膝から崩れ落ちるリアス。両手で頭を抱えて号泣しだしたライザー。昔の仲間を狩ってしまった後悔でもしているのか。
「イッセーはどこ?ねぇ、教えて、バイパー…」
泣き叫ぶリアス。
「イッセーは殺された。リアスと初夜を迎える瞬間に」
「そうだ。これからって時に、イッセーは消えたのよ。なんで?」
「過去の時間軸において、イッセーを身籠もる前の両親が殺されたんだ。イッセーはもう、この世界の時間軸には存在できないんだ」
「そ、そんな…」
号泣しだすリアス。
「なぁ、誰が俺達にこんな惨い仕打ちをしたんだ?」
ライザーがきいてきた。
「悪神ロキの呪いが生きていて、ソーナのイッセーに対する想いを許せない匙に、強大な力を与えたのだ。黒幕は悪神ロキ、実行者は匙元士郎だ」
「あいつ…」
「記憶から抜け落ちたイッセーの記憶の代わりに、匙の記憶が充填されて、記憶の欠落を補っていたんだ」
「許せない…私達はお兄様達を失脚させてしまった…朱乃、イリナに刃を向けてしまった…許せない…悪夢なら醒めてよ」
僕は、祝福の聖剣を取り出し掲げて黙祷をした。リアスとライザー、ゼノヴィアに纏わり付く闇のオーラを浄化するために。
「リアスよ、この悪夢から目覚めても、今迄の行いが悪夢となって甦るんだよ。取り敢えず、今は安らかに眠れよ」
闇のオーラが浄化されて、その場に倒れる三人。リアスは優しい顔つきに戻り始めた。
「さて、アーシア。匙の所へイッセーを連れて行くぞ!」