麻雀天使堕天計画 作:クラリス
今回の賭け麻雀のルールは、リクエストの中にあった麻雀ルールを参考にさせてもらってます。
二つに縛ったおさげを揺らしながら、神代小蒔は椅子から立ち上がった。袖を通すのは、彼女の象徴とも言える巫女装束。丈の長い緋袴は足首を隠しつつ、ウェストはきゅっと引き絞られ、楚々とした印象を与えながらも見事な体のラインを強調する。特筆すべきは、襦袢と白衣に包まれながらも存在を主張する豊かな乳房。雑誌に取り上げられる少女達の中でも、清楚な雰囲気とはアンバランスに性的魅力に溢れる彼女は、多くの男達から人気を博していた。あるいは、巫女という神聖な職務を犯す背徳感が牡達を滾らせるのだろう。もっとも彼女は、自身が欲望の対象とされているとは露とも知らず、被写体としての仕事をこなしていた。
インターハイ鹿児島代表、永水女子のエース。霧島神境の姫巫女。本来であれば、神境の奥で修行とお役目の日々を送っているはずの彼女は、今はどことも知れぬ古城の一室に囚われていた。
囚われの姫は、しかし王子の助けを求めてはいない。むしろその逆。失踪した彼女の想い人にして許嫁――これは小蒔の認識だが――を救うため、ここにいた。今も、顔を思い浮かべるだけで胸が高鳴る少年の存在。もう一度彼と会い、抱き締めて貰うため、日夜繰り返されている賭け麻雀に彼女は勤しんでいる。
初日、城主と呼ばれる男――人を嫌うことは滅多に無い小蒔が本能的に嫌悪感を覚えた――に説明されたこの城のルール。クレジットと呼ばれる独自の通貨は、点棒のやり取りのみでしか入手できない。膨大な釈放金を得るためには、繰り返し麻雀で正体の知れぬ男達と戦わなければならなかった。
なぜこのような迂遠なやり方を選んだのか、小蒔は理解していない。男達が自分の肢体に向ける視線の意味も、与えられた自室に仕掛けられた監視カメラも、気付いていない。だが、彼女は些末事には頓着していなかった。全ては、愛する人を救うため。そう言った意味では、この城に囚われた少女達の中で最も純粋に、鋭い刀のように彼を想っていた。
気がかりがあるとすれば、いつも脇に控えてくれていた六女仙がいないこと。この城に来てどれだけ彼女達に頼っていたか理解させられた。彼のために花嫁修業を始めていなければ、もっと苦労していただろう。
ただ、悪いことばかりでもなかった。
今日の対局に向かうため、自室を出る。
「おはよう、神代さん」
「あ……おはようございます、ケンジさん」
そこに控えていたのは、対局室までの案内人を務める男、三島ケンジであった。人の美醜に執着しない小蒔であっても、理解出来る甘いマスク。190cmに届く高身長に、がっしりとした体格。少女であれば、微笑みかけられただけでどきりとする二枚目であった。
本来であれば案内人は用も無しに小蒔に話しかけてはいけないのだという。だが、機械の扱いもままならない小蒔を見かねて助け船を出してくれたのをきっかけに、他の男達にはばれないように何かと話すようになったのだ。
いくら人が好い小蒔でも、この城の男を信用できるわけもない。だが、このケンジに対してだけは別だった。
元々彼は、麻雀の男子プロだったのだ。イケメン雀士として雑誌でもたびたび見かけ、小蒔は無自覚ながらも、「ちょっと良いな」と憧憬の念を抱いていたのだ。それが、突然の引退発表が行われたのが二ヶ月前。もっともその頃には京太郎しか目に入っておらず、多少残念だな、くらいにしか思っていなかったのだが――
そんな彼と、まさかこんなところで出会えるとは予想しなかった。本来であれば他の例に漏れず危険視すべきなのだろう。しかし、軽妙なトーク力に決して小蒔に触れたりしない真摯な態度、さり気ない気遣いが、小蒔の警戒心を解くに至った。
それに加えて、
「ごめんね」
と、彼はいつも謝りながら対局室まで案内してくれる。引退などに関係があるのだろうか、事情に立ち入ろうにも、はぐらかされるばかりだった。ただ、一度だけ小蒔は彼が女性の名前を口にしているのを聞いた。――きっと、自分と同じような事情を抱えているのだ。それを察した小蒔は、これまで以上に彼に親近感を覚えた。憧れの麻雀プロに近づけた気がして、嬉しいようなこそばゆいような感覚を覚えていた。
対局室に向かいながら、ケンジから声をかけられる。
「今日の調子はどうだい?」
「はい、昨日もよく眠れました。順調です」
「なら良かった」
短いやりとりに、小蒔はほっとする。こんな得体の知れない城で話し相手もおらず、ずっと麻雀だけを打ち続けるのは精神を磨り減らすだろう。
既にこの城に来て六日目。ここまで小蒔は傷一つつかない完全勝利を収めていた。彼女が知る由も無いが、この城に連れ去られた少女の中で一、二を争う額のクレジットを稼いでいるのだ。まさしく牌に愛された少女と言えよう。
「頑張って」
「はいっ」
ケンジが扉を開き、小蒔は対局室に足を踏み入れる。扉が閉まり、隠れていくケンジの姿に小蒔は微笑みかけた。
気を取り直して、小蒔は卓と向かい合った。
既に待ち構えていた対局者は、全員初顔だった。ぺこりと一礼して、小蒔は卓に着く。
「神代小蒔さん」
「なんでしょう?」
対面の男に名前を呼ばれ、小蒔は小首を傾げる。男は淡々と喋り始めた。
「昨日までは普通の麻雀をやっていたらしいけど、今日は少し趣向を変えようと思ってる」
「趣向、ですか」
「そう。ここらで難易度アップだ。だが、もちろん君に悪い話ばかりじゃない。今日君が手に入れたクレジットを、倍にして渡そう」
「倍……!」
小蒔は歓声を上げる。彼の救出が速まる。どのみち拒否権などないのは彼女も承知であり、
「わかりました」
と笑みさえ浮かべて頷いた。瞬間、男達がほくそ笑んだのを小蒔は気付かなかった。ここまで罠らしい罠を仕掛けられてこなかった彼女は、麻雀に関して油断していたのは間違いない。
「ルールは簡単だ。牌を三秒以内に切らなければならない早打ち麻雀だ。切れなければチョンボ扱いで満貫払い。それから今日は、累積で5000点放銃する度ペナルティが発生する。何か質問は?」
「あの、ペナルティとはなんでしょうか……?」
「それは発生してからのお楽しみだ。まあ、そう構えなくて良い。そんな酷いものではない」
「……そうですか」
釈然としないながらも、小蒔は納得した。
それにしても一打三秒とはまた思い切ったルールだ。単純なミスも発生しかねない。だが、大した心配はしていなかった。この身に降ろす神々が、その程度に対応できないわけがない。あるいは自分の力を知ってそんなルールを用意しなのかも知れないが、見積もりとしては甘いと小蒔は断じざるを得なかった。
「では、始めようか。……その前に」
がらがらとキャスターが引かれ、対面の男の背面に、巨大なテレビモニターが移動してくる。何事かと、小蒔が眉を潜めていると、モニターの画面が明るくなった。
「君と同じようにこの城で戦う少女達がいてね。今日はその一部を見ながら対局して貰おうと思う」
「私と同じ……」
「そう。君と同じく、須賀某君を助けようとしている少女達だ」
ずきり、と小蒔の胸が痛んだ。――彼を想う少女達が他にもいるというのは、知っていた。だがこうしてはっきりとその事実を突き付けられると、全く嫉妬を覚えずに済むわけにはいかなかった。しかし同時に、ある種の仲間意識も感じる。同じ彼を想う少女。同じく彼を助けようとしている少女。それは、如何な娘なのか。
画面を食い入るように見つめ、小蒔は――言葉を失った。
『あっ♡ あんっ♡ あぁ♡ や♡』
画面に映し出されたのは、栗色の髪を振り乱し喘ぐ少女。ふっくらとした肉体は白く、まるで陶磁器のよう。首元には朱色のマフラーが巻かれているが、そこから下は赤いビキニタイプの水着だけだ。
場所は、プールサイド。下にマットレスを引き、その場に彼女は押し倒されていた。彼女に覆い被さるのは、同じく上半身裸で短パン水着姿の金髪の男。そこまで歳は離れていないだろう、大学生らしい風貌だった。
男の手は、ビキニの上から少女の豊満な胸を鷲掴みにしていた。男は囁くように、少女に話しかける。
『寒くないかい、宥ちゃん』
『ぁ♡ ぁ♡ ぁ♡ 大丈夫♡ 大丈夫です♡ レイジさんの手♡ あったかいです♡』
『なら良かった』
『ん♡ んっ♡ はいっ♡ ありがとう♡ ございます♡』
いくら性的知識に疎い小蒔でも、男――レイジに愛撫され、宥という少女が悦んでいるのは理解出来た。だが、おかしい。彼女は自分と同じで、彼を想い彼を助ける人間ではないのか。そんな疑問をよそに、映像は流れていく。
『あっ♡ だめ♡ そこ♡ 気持ちよすぎて♡ またダメになっちゃうの♡』
『良いんだよ宥ちゃん、ダメになって。俺が宥ちゃんを守るからさ』
『れ、レイジさぁん♡ お願い♡ このままだと私♡ 本当にダメになっちゃう♡ あったかい♡ あったかすぎるの♡』
甘えるように、媚びるように、自らを抱きすくめる男に宥は嬌声を上げる。さらに男の手が、ビキニのボトムへと伸びる。水着の上から宥の秘所を、レイジはなぞる。
『ぁんっ♡ そこ♡ だめ♡ 一番♡ だめなのに♡ 気持ちよく♡ なっちゃう♡』
『なって良いんだよ、宥ちゃん。誰も見てないから。俺だけしか見てないから』
『でも♡ でも♡』
『気にしなくて良いんだ。――だから、ねぇ、キスしてくれよ』
『んっ――』
男の要求に、宥は何の躊躇いも無く唇を重ねた。さらに舌を男の口に抜き差しする。自分の知識に無いディープキスに、小蒔は目を白黒させる。
『んむぅ♡ あむ♡ じゅるる、んんっ♡』
うっとりとしながら宥が顔を引いたときには、男のものと混じり合った唾液が泡立っていた。それら全部飲み込むように、今度は男の側から接吻をしかける。宥は瞳を閉じて、あっさりと受け入れた。
『んじゅ♡ あむ♡ んんっ♡ ――あふっ♡ ……良い、です。レイジさんのキス、すごい、良いです……上手……』
キスの余韻に浸りながら、宥は男を褒め称える。レイジも軽く肩を竦めて、
『宥ちゃんも上手くなったよ。これなら誰としたって喜ばれる』
『ほ、他の人となんて……』
『あれ、京太郎君とはしたくないの?』
急に彼の名前が出て、小蒔の心臓がどきりと跳ねる。画面の中の宥も、男の胸の内で物寂しげに俯く。
『それは……したい、ですけど……』
『もしかして、そろそろ俺のこと好きになってくれたのかな?』
『ち、違いますっ! 私が好きなのは、須賀君だけで……』
否定の言葉は尻すぼみになり、レイジはにやにやと宥の頭頂部を見下ろす。
『昨日はベッドの上であれだけ好き好き言ってくれたのになぁ』
『だ、だからそれは! その、好きな人とは違ってっ……』
『違う? じゃあ何が違ったの? 何が好きだったの? 言ってみて。言わないと、彼をいじめちゃうかも』
その言葉に、またもや小蒔はびくりとした。そんなことは許されない。映像の少女も、葛藤しているようだった。顔を紅潮させたまま、あちこちに視線を彷徨わせて、最後には観念したのだろう。レイジから目を背けながら、言った。
『せ……セックス、です』
『誰との?』
『れ……レイジさんとのセックスが……好きなんです』
それが、性行為を差す言葉だと小蒔も知っていた。だがセックスは、愛する者同士で行われるものだと小蒔は教えられた。少女が好いた男は京太郎。だが、体を重ねたのはレイジという男。明らかに矛盾している状況に、まともな神経をした小蒔はついていけなかった。
『よく言えました。ご褒美だよ』
『あ♡』
小蒔が困惑している内に、男の愛撫が再開される。
『ぁ♡ ぁ♡ やだ♡ もう♡ レイジさん♡ 酷い♡』
『酷くなんかないだろう。毎日こんなに気持ちよくしてあげてるんだからさ。お礼くらい言って貰いたいね』
『はい♡ ありがとう♡ ありがとうございます♡ レイジさん♡ んん♡ むぅ♡ ――だめ、キスダメ♡ むふっ♡』
唇を何度も重ねながら、男の愛撫はさらに加速する。
『ぁ♡ ぁ♡ ぁ♡ ぁ♡ ぁ♡ ぁ♡ ぁあ♡ ぁぁぁあああ♡ イク♡ 宥イク♡ またレイジさんに♡ イカされちゃう♡』
ぴん、と宥の体が反り返り――収まったかと思えば、ぐったりと彼女の体は脱力した。何が起こったのか、小蒔には理解出来ない。さらに次の瞬間には、
「きゃっ」
男が水着を降ろして、その凶暴な逸物を晒す。悲鳴を上げたのは、小蒔だけだった。卓を囲っている男達と画面のレイジはにやにや笑い、宥は恍惚とした表情でそれを見つめていた。
ぐい、とレイジは宥の左足を掬い上げて水着をずらす。宥に抵抗はなかった。横たわった宥の秘所に、
『いくよ』
『……はい♡』
短いやり取りの後に、あっさりと突っ込んだ。宥のあそこはあっさりとそれを飲み込み、
『あ♡ あ♡ あ♡ これ♡ この姿勢♡ 良い♡ 良いです♡ 硬い♡ レイジさんのが♡ 硬くて♡』
『俺の、じゃなくてちゃんと言うんだ。教えたでしょ』
『はい♡ レイジさんのおち○ぽが♡ 硬くて♡ おっきくて♡ 気持ち良いんです♡』
『宥ちゃんは素直で教え甲斐があるよ』
『だって♡ だって♡ レイジさんが♡ 上手すぎるから♡ あ♡ あ♡ や♡ いや♡』
男のピストン運動に合わせて、宥は鳴く。見ていられない、というのが正直な小蒔の気持ちだったが、視線を剥がせなかった。
『どうだ宥ちゃん、気持ち良いかっ?』
『はい♡ 気持ち良いです♡ 好き♡ これ♡ やっぱり好きです♡ レイジさんに愛されるの♡ 好き♡』
『何度でも、何度でも愛するよ。俺はずっと宥ちゃんが好きだったんだから。心の底から愛してるから』
『だめ♡ そんなこと♡ あ♡ 言わないで♡』
『これだけしてもやっぱり、宥ちゃんはあいつのことが好きなのかな』
『あ――』
ぴたりと男の動きが止まり、切なげに宥は声を切る。そんな彼女の顔を、男が覗き込む。
『どうなのかな』
『…………レイジさんのことは、嫌いじゃなです。でも、ごめん、なさい』
『また振られたかー。だけど初印象から大分良くなったかな。嫌われてたもんねー』
『えっ、あっ、そ、それはっ……な、慰めてくれたから……ご、ごめんなさい』
『良いよ良いよ、気にしなくて。それに、まだまだ俺達にはたっぷり時間があるからね』
『あっ♡』
男のピストンが再開され、硬くなっていた宥の表情が一瞬で蕩ける。本当に好いていないのか、小蒔には疑問だった。
「――そろそろ良いかな」
宥の喘ぎ声をバックに、対面の男が話しかけてきた。はっと、小蒔は視線を画面から降ろされる。
「このままゲームを始めるよ」
「で、でもっ、これじゃあっ」
「集中できないなんて言い訳はさせないからな」
反論を封じられ、小蒔は顔を俯かせる。しかし、
『あっ♡ あっ♡ あっ♡ 良い♡ レイジさん♡ 良いです♡ それ♡ 好きです♡』
少女の嬌声は、どうしても耳に入ってくる。にちゃにちゃとした水音も、レイジの楽しげな声も。どうしても気になって、画面の方に視線が引き寄せられてしまう。
「やるぞ」
「は、はいっ」
だが、そんな甘えは許されなかった。この三秒麻雀に、今は集中するしかない。
小蒔はその一心で、牌をツモり続けた。だが、思考する時間などほぼなく、切ってから過ちに気付くことのほうが多い。元々神をその身に降ろしていなければ「普通の頑張り屋さん」なのである。しかしそれを差し引いても、ミスが目立つ。ちゃんと手順通りに切ってさえいれば、今頃和了していたはずの河に、小蒔はもどかしさを感じる。
一方で、男達は順調だった。
「ロン!」
「えっ」
「ま、ザンクだ。あと1100点で一回目のペナルティだな」
あっさりと、小蒔は振り込んでしまう。しかも河を見れば、ミスらしいミスもなく真っ直ぐテンパイ形まで伸びていた。気配を読む余裕すらなかった。
(この人達……!)
彼らが三秒麻雀のルールに打ち慣れているのは、明白だった。男子と女子で隔たりのある実力差を、埋めにきている。
ここは一刻も早く眠りに落ちて、神を下ろすしか無い。
だが。
『あっ♡ あっ♡ あっ♡ 良い♡ レイジさん♡ もっと♡ もっと♡ これ♡ 良いの♡』
「――、う」
宥の嬌声に意識を引っ張られ、小蒔は覚醒したまま打たされる。自然といつの間にか眠ってしまうのが常だが、とてもそんな気配はなかった。
(どうしよう、どうしよう……!)
混乱は焦りを生み、焦りはさらなるミスを犯させる。三秒ルールだけを守ろうとしていたら、とてもまともに打てなかった。
「ロンだ」
「あっ」
「安手だけどな、1500。まあこれで累積5400点の放銃で、ペナルティ一回目だ」
「そ、そんな……」
小蒔の表情は悲嘆に暮れ、指を震わせる。今も顔を上げれば、
『や♡ あ♡ ん♡ ああ♡ レイジさん♡ レイジさん♡ あっ♡ やっ♡』
少女が、犯されていた。この結果が、賭け麻雀に彼女が負けたことに由来するのは小蒔にも何となく察せられた。自分もあんな目に遭うのか――そう思うと、恐怖を拭えない。
(助けて……!)
瞼の裏で、彼の顔を思い浮かべる。彼以外の男に肌を許すなんて、許せるはずが無かった。
「そんなに緊張する必要は無いぞ、神代小蒔さん」
「え……?」
「ペナルティの内容は、君に危害を加えるものじゃない」
どういう意味か、と小蒔が訊ねるよりも早く。
喘ぎ声を上げる少女の動画が、ぷつんと途切れた。次にモニターが映したのは、また別の少女。――小蒔のよく知る、少女。
白いセーラー服に、ピンクのプリーツスカート。腰程までに落ちたポニーテールは見間違えようが無い。目元には、赤いフレームの眼鏡。
一つ年上の、お姉さんの一人。いつも静かに皆を見守ってくれている少女。六女仙の一人。
狩宿巴だった。
「ペナルティは、彼女に受けて貰う」
にやりと、対面に座る男は嗜虐的な笑みを浮かべた。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
狩宿巴もまた、小蒔と同様に拉致され古城に連れて来られた少女の一人だった。
自らが仕える小蒔の許嫁を奪い返すため――という名目はあるが、彼女もまた彼に魅せられた少女の一人だった。――正確には、六女仙全員が憎からず彼を想っていた。彼には自分達を惹き付ける何かを持っているのだろうか、と巴は客観視していたが、彼が攫われたと聞いてじっとしていられなかった。
今日まで、小蒔と同じように彼女は賭け麻雀でクレジットを稼いできた。だが、今日は全く別のゲームが提示されたのだ。
即ち、小蒔の麻雀に身を任せるというゲームに。
彼女が受けるペナルティを肩代わりすることで、クレジットを受け取る。簡単な話だった。巴は、このルールをすぐに了承した。自分が打つよりも、よっぽど小蒔に任せる方が勝算があると彼女は理解していた。
通されたのは、古城らしからぬ和室だった。久しぶりに嗅ぐ畳の臭いに懐かしさを覚えながら、小蒔の麻雀を観戦していた。
そして、小蒔は点棒を失った。
「立て」
短く命令され、巴は立ち上がる。用意されたのは、対局を観戦していたものとは違う、別の大きなモニターだ。その上には、カメラらしきものが据え付けられている。
「テレビ電話機能がついているんだ」
この和室に入ってからずっと、巴を監視していた男に説明される。男は仮面を被っており、口元以外の顔を窺い知ることが出来ない。とても不気味だった。
画面が映し出される。真正面に見えたのは、
「姫様っ」
『巴ちゃん!』
大切な姫君だった。思わず、お互い名前を呼び合う。こんな形で彼女と再会することになるとは露とも思わなかった。
「では、ペナルティだ」
「あっ」
仮面の男が、背後に近寄る。身構えるよりも早く、
「きゃっ」
セーラー服をまくり上げられる。薄紅色のブラが露わになり、それもあっという間に外され畳の上に落ちてしまう。小蒔に見られてしまっているこの状況に、巴は逃げ出したくなった。だが、それが叶うわけもない。
ねちょり、という音が聞こえた。何をしているのかと仮面の男へ振り返ろうとし、
「んうっ!」
乳房を抱え込むように掴まれ、巴は悲鳴を上げた。男のごつごつとした手の体温とは別に、冷たさを感じる。
「や、やめ、なんですか、これ!」
「ちょっと特殊なローションだ。まずはこれを上半身に塗りたくる」
「な、や、さ、触らないで!」
「文句を言うなら、振り込んだお姫様に言うんだな。――ここで抵抗すれば、あの娘にペナルティを受けて貰うぞ」
「う……」
仮面の男に脅されると、巴に抵抗する理由はなくなった。上げかけた拳を、すとんと降ろす。テレビ画面の向こうでは、小蒔だけでなく共に卓を囲んでいる男達がこちらを見つめていた。
(見られてるっ……!)
全て露わになった乳房を、誰とも知れない中年達に。いつか彼とホテルで、と夢見ていた巴だったが、一瞬にして蹂躙されてしまった。
「比較的小さいように見えたが、存外あるじゃないか」
「あぅっ」
男の手が動き、ねちゃねちゃと、ローションが水音を立てる。
指摘通り、この数ヶ月で巴のバストは成長を遂げていた。好きな男が出来てホルモンが促進されたのか、止まったと思った成長が再開されたのだ。極端な霞や初美はともかく、年下の小蒔や春と比較して小振りな胸に若干のコンプレックスを抱いていた巴は、密かに歓喜していた。それが、こんな形で晒されるとは思いも寄らなかった。
「良い形だ」
「んっ、ふぅっ」
くい、と乳首を抓まれ、僅かに漏れ出るのは歓びの声。
(な、なに今のっ……?)
動揺する巴をよそに、ローションは塗りたくられていく。脇の下も、脇腹も、おへそも、背中も、
「あっ」
完全にセーラー服取り払われ、肩から始まり、二の腕から指先まで、たっぷり十分以上かけて隅々までローションは行き渡った。
「はぅ、ふっ……♡」
男の手が離れ、ローションが糸を引く。
既に、巴の体から力が抜け始めていた。
永水祭りの始まり。