麻雀天使堕天計画 作:クラリス
朝。原村和は、熱いシャワーを浴びていた。昨日対局中に気を失ってから、次に目覚めたのは城内に用意された自室であった。昨日の出来事はまるで夢のように思えて、現実感がいまいち沸かない。だが、気を抜けば味わわされた快感を体が思い出し身震いしてしまう。下腹部がじんじんと響き、指先が伸びそうになる。
(……こんなことをしている場合じゃありませんね)
本能的な欲求に逆らい、和は頭を振った。きゅっと蛇口を閉め、シャワーを止める。息を吐いてから、浴室を後にした。
着替えるのは、昨日も着ていた清澄高校の制服。京極の指によって、多少皺が寄っていた。頭に響くのは、自分が出したはしたない声。
『あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡』
羞恥で顔が真っ赤に染まってしまう。ようやく今になって、色欲に溺れた記憶がありありと浮かび上がってきた。振り払うように頭を振り、和は部屋を出る。
(今、助けに行きますからね……!)
案内人に導かれ、古城の中を進む。毎日あちこち連れ回されるが、まるで果てが見えない。この巨大さが、和達少女の不安を煽るのに一役買っていた。
特に今日は、長く歩かされた。渡り廊下を通り初めて屋外に出るが、左右は森に囲まれていてここがどこなのかはさっぱり分からない。それよりも問題は、進んだ先だった。
洋風の古城から一転して、建物の雰囲気が変わる。
「旅館……?」
和が呟いたとおり、観光地にあるような和風旅館のようだった。かつてインハイに向けて合宿を行った、あるいはインハイで寝泊まりした場所と雰囲気が似ている。ただ、大きさは別格であった。
「どうぞ、お入り下さい」
案内されたのは、「梅の間」と入口に表札がかかった部屋であった。本物の旅館と変わらない。
引き戸をくぐり、靴を脱いで室内に入る。襖を開けると、団体客でも泊まれるような広い和室が広がっていた。中央には四角のテーブル。そして――
「きょ、京極……さん」
「昨日振りだね、和ちゃん」
蛙顔の男、京極の姿があった。昨日のスーツ姿から一転、浴衣に身を包んでいる。まるまる太った体型は隠しようも無かったが。
本来であれば、嫌悪感しか覚えない相手。こんな人間と密室で二人きりと考えると、すぐにでも逃げ出したくなる。――はずが、彼の顔を見た瞬間、和は自分の胸がきゅんと締め付けられるのを感じた。
「今日も僕が君の監視員だ、よろしくね」
「よろしく……お願いします」
熱に浮かされたように頬を染め、和は頭を下げる。自分の変化に、彼女は戸惑いを隠せない。決してこんな男に抱かないような感情が、胸でぐるぐると渦巻いていた。和でなければ、この違和感に気付いた可能性は高かった。そうなれば、京極の能力を打ち破れたであろう。しかし、オカルト全てを否定する和一人では、できなかった。ある意味で、最悪の相性と言えた。
「今日も、ネット麻雀ですか」
「その前に、やることがあるよね」
「え……?」
戸惑う和をよそに、京極は言った。
「昨日、最後まで対局できなかったじゃないか。麻雀で負けるか、やり遂げられなければ罰ゲーム。最初に説明したとおりだよ」
そうだった。気絶して有耶無耶になってしまったが、彼らが見逃すはずも無い。
「何をさせるおつもりですか」
「そんなに身構えなくても良いよ。そうだね、ちょっと接待してもらうだけさ。まずはこれに着替えてよ」
京極が指差すのは、畳の上に置かれた浴衣だった。京極が着ているものと同じタイプ、ただカラーリングが赤で京極の青とは違う。浴衣を拾い上げ、和は京極に訊ねる。
「あの、どこで着替えれば良いんでしょう?」
「ここでだよ」
さも当然のことのように、京極は言ってのける。和は抗議の声を上げようとした。したが、
「……分かりました」
どういうわけか、素直に頷いてしまっていた。昨日は意地でも制服を脱ごうとしなかった。それが、今はほとんど抵抗がない。昨日、あれだけの痴態を見せてしまったからだろうか。あれだけ喘がされてしまったからだろうか。ちら、と京極を見下ろすとにやついた笑みで返される。
しゅるりと、胸元のリボンを外す。袖口から腕を抜き、セーラー服をまくり上げる。窮屈なバストを乗り越えて、晒されるのは白い肌。薄青色のブラは、豊満に過ぎる胸を隠しきれていない。
続いて青のプリーツスカートへと手が伸びる。僅かな間、躊躇いを見せた後、かちりとホックを外した。すとん、とスカートは畳の上に落ち、ブラと同色のパンツが露わになる。これもサイズが合っておらず、食い込みが激しい。
手に取ったのは、渡された浴衣。微かな違和感を覚えながらも、袖を通す。ぎゅっと帯を締め、室内の姿見で問題がないか確認する。
「えぇっ」
狼狽する和。当然であった。浴衣の布地はひたすら薄く、肌が透けて見えてしまっている。当然、下着までも。
「こっちに来るんだ」
「……、は、い」
京極に呼ばれ、声を震わせながら彼の隣に座る。
「あっ」
ぐい、と肩を引き寄せられる。
「対局が始まるまで、少し接待してもらうぞ。それが昨日の罰ゲームだ」
「せ、接待、ですか?」
「なぁに、ちょっとお酌をして貰えば良い」
既に呼び寄せていたのか、仲居の格好をした女性たちが料理と日本酒を運び込んでくる。仕事を済ませると、さっさと彼女達は出て行った。同性だろうと関係なく、ここには和の味方は一人もいない。
「さぁ、頼むよ和ちゃん」
箸を押し付けられ、和はしばらくそれを見つめた後、頷いた。京極の腕は、右肩に回されている。指先がちらちらと、胸元に触れる。普段の彼女なら、飛び退いて逃げ出していただろう。だが今の和は抗議せず、箸で白米を掴むと京極の口へと運んだ。
「ど、どうぞ」
「違うよ和ちゃん。もっと愛情たっぷりに頼むよ。笑顔で、ね」
「……あ、あーん♡」
言われたとおり、和は媚びるような笑顔を作る。それでようやく京極は、満足気に箸に齧り付いた。
「次も頼むよ」
「はい、あーん♡」
「美味しいよ、ありがとう和ちゃん」
「ど、どういたしまして」
繰り返す内に、徐々に和から抵抗感が消えていく。代わりに感謝されることに、充足感を覚えていた。抜け目なく、京極はその想いを増幅させる。
「っと、そのお魚、固そうだね」
「えっ、あっ、そうでしょうか」
「僕こういうの苦手でねぇ。そうだ和ちゃん、僕の代わりに噛み解してくれないかい?」
「えっ……――あ」
その言葉の意味を考え、咀嚼し、理解した和は――箸先に視線を落とす。ごくりと生唾を飲み込み、焼き魚を箸で掴み取り、まずは自分の口に運ぶ。もぐもぐと何度か顎を動かし、そして、
「んっ、むっ」
「ふ――」
自ら、京極に口を重ねた。舌を押し出し、京極の口内に焼き魚を送り込む。京極は和の唾液ごと、それを受け入れた。和にとっては、大切なファーストキス。それを、男に奉仕するためだけに彼女は捧げた。
何度も何度も、口移しで魚を運ぶ。気付けば、全ての料理をそうして京極に食べさせていた。お酒も同様で、初めて味わうアルコールの味に和は酩酊する。
「美味しいよ、和ちゃん」
「本当、ですかっ」
「うん。君の口が最高のスパイスだ」
「よ、良かった、です……♡」
頭を撫でられ、「はぅ♡」と和は切なげに声を漏らした。
たっぷり一時間以上かけて、和の口移しによる食事は終えられた。既に息は乱れ、体は震え、京極に支えられなければまともに座ってもいられなかった。
しかし、本番はここから。
クレジットを稼ぐため、
「今日もネット麻雀だ。でも、目隠しはしなくても良いよ。和ちゃんの思う通りに打ちなさい」
「え、は、はい。分かりました」
浴衣姿のまま、座椅子に座りノートパソコンと向かい合う和。何はなくとも、得意のネット麻雀だ。これで勝てないようでは、どうしようもない。
かちかちと、左手でマウスを動かす。
調子自体は、悪くない。クレジットは順調に稼げている。だが、同時に物足りなさを覚えていた。――否、これは、
(私、寂しがってるのでしょうか……?)
そわそわと、何かを求めるように右手が動いてしまう。今日は目隠しもしていないのに、どういうわけだろう。
「どうしたんだい、和ちゃん」
「あっ――♡」
脇から現れた京極が、和の右手を握り取る。途端に和は、微笑みを零していた。
「もしかして、今日も手を握っていて欲しいのかな?」
「そ、それ、は……」
「どうなんだい、答えを聞かせてくれよ」
「あぅ♡」
優しく手の甲を覆われ、和はもう耐えられなかった。
「私の手、に、握ってて、貰えませんか……?」
「頼むなら、相応の態度で。教えただろう?」
「い、いじわるしないで下さい……きょ、京極様。お願い、しますから♡」
「仕方ないなあ。ちゃんとクレジットは支払って貰うよ」
かくして、再び契約が結ばれる。
ずっとずっと手を握って貰うため、和は京極に貢ぎ続ける。だが、京極が要求するクレジット額は加速度的に高まっていき、麻雀での稼ぎが追いつかない。
「ま、また脱げば……?」
自ら和は浴衣の帯に手をかける。京極はそっとそれを制止し、
「今日はもっと僕に奉仕してもらおうかな」
「えっ、じゃ、じゃあ何をすれば……?」
「まあ、もう一度キスから始めようか」
「は、はいぃ♡」
先ほどの口移しで抵抗感を失っていた和は、あっさりと京極に唇を重ねる。くちゅくちゅと舌を絡ませ合い、唾液を交換する。
「ふぅーっ♡ ちゅるぅっ♡ はむぅっ♡ ――どう、どうですか♡ 京極様♡」
「じゅるぅ、ああ、美味しいよ、和ちゃん。随分キスも慣れてきたみたいだね」
「きょ、京極様が教えて下さったから……♡」
褒められる度に、和は喜ぶ。その喜びもまた、肥大化させられたものとは知らずに。
「はむっ♡ あむうっ♡ じゅるるっ♡ 京極様の口も♡ 美味しいです♡ じゅるっ♡」
「それは嬉しいな」
「ちゅうっ♡ 良かった♡ 良かったです♡」
対局中も、キスを続ける。当然ながら、まともに打てるはずがない。残り少ないクレジットはどんどん目減りしていく。
「胸も――良いよね?」
「はい♡」
和は京極の要求に、躊躇い無しに即応する。薄手の浴衣の上から、京極の手は和のバストを掴み取った。ブラも小さく、ほとんど直接触れられている感覚である。
「あーっ♡ あーっ♡ んちゅっ♡ ちゅるうっ♡ ぷはっ♡ ――お、おっぱいが♡ おっぱい、いじめないで♡」
「ふふふふ」
和の懇願に、京極は嗤う。意地悪く胸の上を体毛の濃い手が這いずり回り、ブラの肩紐が外れてしまう。透けた浴衣の上から、桃色の乳首が浮かび上がる。京極はにやりと嗤い、掌でその先端をこする。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ や♡ や♡ や♡ それ♡ や♡」
「和ちゃん、おま○こも触るよ」
「あっ♡ あっ♡ あっ♡」
和に答える余裕はなかったが、京極は答えを聞く前に浴衣をはだけさせ、太股へと指を這わせる。薄青色のパンツを少しだけずらし、秘所の筋をなぞる。
「ふぅーっ♡ だめです♡ だめですよ♡ そこはぁ♡ だめぇ♡」
「そんなこと言ってたら、もう二度と手を握ってあげないよ」
「……っ、そ、それもだめです♡ お願い、お願いしますからぁ♡」
「よーしよし、可愛がってやるからな」
「あふぅ♡ んちゅぅ♡ じゅるうっ♡ ――あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ すご♡ すごぉ♡ んーっ♡ んふぅっ♡ むちゅぅっ♡」
既に発見済みのGスポットを責められ、あっという間に和の頭は真っ白になる。何度もキスを繰り返され、乳首を弄くられ、嬌声を上げるしかない。
「それにしても、初めて会った時は冷たくあしらわれたのにねぇ。変わるもんだ」
「あ、あの時は♡」
「払いのけられた右手、痛かったなあ」
突然お尻に触れてきたのだ、和が拒否したのも当然である。
だが、
「はっ♡ はっ♡ はふぅっ♡ ――ちゅるっ♡」
今になって、和は京極の右手に舌を這わせる。懺悔するように、治療するように。
「そ、その節はっ、申し訳、ありませんでした♡ 謝りますから♡ 許して♡ 許して下さい♡」
「うんうん、良いよ良いよ。許して上げる」
「はぅうう……♡」
頭頂部を撫でられ、くすぐったそうに微笑む和。京極はにやりと笑い、愛撫を再開した。
「――あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ なんで、こんな♡ こんな♡ 凄いのぉ♡」
「それはきっと、和ちゃんが僕のことを好きだからだよ」
「え……?」
思ってもみなかった可能性に、和は戸惑いの声を上げる。僅かに浮かび上がったその疑問。その可能性。――好きな男は、彼一人のはず。彼一人だけだったはず。
「和ちゃんは初めて会った時からずっと、僕のことが好きだったんだよ。手を払いのけたのも、照れ隠しだったんだろうね」
「て、照れ隠し……?」
「でなきゃ、謝らないよね?」
――そうか。そうなのか。自分の気持ちは、そういうことなのだろうか。
浮かび上がった、あるいは無理矢理引き出された「好意」という感情。それが勘違いであっても、京極は心を支配するほど大きなものにしてしまう。
「す……き……」
「なにか言ったかい?」
「な、なんでも……――あぅうっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ だめ、だめですぅ♡ 京極様♡ 京極様、京極様、京極様ぁ♡」
「またイクのかい? イクのかい、和ちゃんっ?」
「はい♡ イキます♡ 京極様に♡ イカされちゃいます♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ イク♡ イクイクイク♡ イクぅぅぅぅ♡」
二度と上げたくなかったはずの喘ぎ声を、堪らず上げて。
京極の丸い体に、和は全てを委ねていた。
左手で握っていたはずのマウスは、とうの昔に放り出されており、しかしネット麻雀の対戦は繋がったまま。ツモ切りを繰り返すだけになっていた和のアカウントは、他の対戦相手達に嬲られるようにクレジットを奪われていた。
『ロン』
最後に振り込みをして、現在の手持ちクレジット全てを吐き出す。
「ゲームオーバーだ、和ちゃん」
「あ、ふぅ……♡」
絶頂の余韻に浸っていた和は、すぐに状況を飲み込めない。パソコンのモニターを、無為に眺め続ける。
「それじゃ、今日はこのまま罰ゲームと行こうか」
「は、い……その、また、ご接待、ですか……?」
「いいや、二日続けての罰ゲームだからね。もうちょっと厳しく行こう」
嗜虐的な笑みを浮かべ、京極は和の耳元で囁いた。
「AV撮影会だ」
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
清澄の制服に着替え直し、和は京極に連れられて部屋を移動する。まるで恋人のように腕を絡め、ぽーっと熱に浮かされたように京極の顔を見上げていた。
連れ込まれたのは、ダブルベッドが鎮座する薄暗い部屋だった。京極に促されるまま、すとんとベッドの縁に座る和。目の前には、ビデオカメラが設置されていた。それだけではない。ありとあらゆる角度から、カメラが和を狙っていた。
「え、えーぶい、ってなんですか……?」
ようやくまともに意識を取り戻した和が、京極を見上げながら訊ねかける。何て無いことのように、京極は答える。
「アダルトビデオのことだよ。和ちゃんのえっちな映像を今から撮るんだ」
「えっちな、映像って」
「僕と和ちゃんが愛し合う姿さ。――構わないだろう?」
「あ……♡」
和の頬に、太い京極の指が触れる。安心と幸福を与えてくれる手。愛し合う、その意味をきちんと理解した上で、和はこっくりと頷いた。
「わかり、ました……」
「ようし、じゃあ始めようか」
「あっ♡」
京極の膝の上に、和は乗せられる。
「カメラに向かって、笑いかけて」
「は、はいっ♡」
背後からかけられる京極の命令に、和は素直に従う。それから、纏わり付くような声で京極からの質問が始まった。
「和ちゃん、今いくつ?」
「じゅ、十六です」
「高校はどこ?」
「長野の、清澄高校です――んっ♡」
掬い上げるように、胸を揉まれる。切なげに眉を潜めるが、「笑え」という京極の命令に従って口角を釣り上げる。
「週に何回オナニーしてる?」
無遠慮な質問が飛び出て、和は狼狽するが、
「……っ、ご、五回、です」
真実を答える。
「うひゃー、まあ好きそうな体してるもんねぇ。誰を想ってしてるの?」
「お、同じ部活の……す、須賀京太郎君、です」
「ふぅん、彼のことが好きなのかな?」
「……は、はい」
やや戸惑いながら、和は頷く。好き――そのはず。恋している、はず。なのに、昨日よりもずっと、その想いがあやふやだ。別の人間に対する肥大化した感情が、それを和の心の端に追いやっていた。
「ちなみに彼とは付き合ってるの?」
「い、いえ……」
「じゃあセックスもしてないの?」
「し、してません……」
顔を赤らめ、和は頷く。指を和の胸に埋めながら、京極は質問を重ねた。
「じゃあ、和ちゃんは処女なんだよね?」
「……っ、は、はい」
「じゃあ今から和ちゃんは、大好きな須賀君とは違う男に処女を捧げちゃうわけだ」
「うぅぅ」
和は喉を鳴らし、顔を俯かせ、間を置いて。
「そ、そうです……♡ わ、私は今から、京極様と、せ、セックス、します……♡」
「嬉しいよ、和ちゃん。インターミドルチャンピオンの処女を、僕のものにできるんだから。ごめんね、和ちゃん。僕が須賀君じゃなくてさ」
「い、良いんですっ♡」
京極の謝罪に、和は被せる。彼に謝らせたくない、そんな気持ちが働いていた。
「わ、私、私はっ……その、京極様のことも――……好き、ですから」
生まれて初めての、愛の告白。いつか、ロマンティックな情景を背に、彼にしたかったもの。あるいは、彼から受けたかったもの。そんな大切なものを、あれだけ嫌悪していた相手に捧げている。その違和感にも、和は気付けない。
「僕も和ちゃんのことが大好きだよ。一目見たときから、ずっとこうしたかったんだ」
「あ――♡」
京極の言葉を受け、幸せそうに和は笑う。
「それじゃあ、そろそろ始めようか」
「あふぅぅっ♡」
ぐにゃりと、和のバストが捻り上げられる。先ほどの愛撫で既に性感は昂ぶっている。スカートをまくり上げようとする京極の手も、形だけ止めようとするが彼女の腕には初めから力が籠もっていない。
「んふっ♡ そこ♡ そこは♡」
「そこじゃない、だろう」
「おま○こ♡ おま○こだめです♡」
「だめじゃないでしょ?」
「はい♡ 気持ち良いです♡ 凄い♡ 気持ち良いです♡ 胸も♡ おっぱいも♡ 良い♡」
ベッドの上に、愛液がこぼれ落ちていく。ぎしりとベッドのスプリングが悲鳴を上げ、和の体は押し倒されていた。醜く太った男にのしかかられる美少女という構図。見るもおぞましい状況だが、少女の表情は緩んでいる。
「初めて会った時は許されなかったセクハラも、今はやりたい放題だね」
「ご、ごめんなさいっ、本当にあの時は申し訳ありませんでしたっ♡」
「ああ、大丈夫大丈夫、もう気にしてないよ。さっきも謝ってもらったしね」
「ありがとう♡ ありがとうございます♡ ――んちゅうっ♡」
お礼のキスを、和の側から与えていく。二人の間で熱いヴェーゼがかわされ水音が響く。京極は和の唾液を吸い取り、和は京極の唾液を舐め取る。
「ちゅるぅ♡ あふっ♡ はふぅぅ♡ ――きょ、京極様♡ 京極様♡」
「どうしたんだい、和ちゃん」
「いっぱい、いっぱいセクハラ、してください♡ 和は♡ 和は京極様なら、いくらでもセクハラされても嬉しいです♡」
「なるほど、和ちゃんは僕のセクハラ奴隷ってことだね」
「はい♡ 私は、私は♡ 京極様のセクハラ奴隷です♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡」
胸に吸い付かれ、和は髪を振り乱し悶え苦しむ。
一旦、和を組み敷いていた京極が離れる。浴衣を脱ぎ捨てると、勃起したペニスを和に突き付ける。
「これが、今から君の処女を貰うペニスだ」
「ぁう……♡」
「準備は良いかい」
「……ぅう」
京極はコンドームを装着し、和の秘所にペニスの先をあてがう。既に濡れそぼったそこは、いつでも男を迎え入れる準備が整っていた。つん、つん、と挨拶をするように膣の入り口をペニスはノックする。
「和ちゃん」
京極は、促すように和に呼びかける。こっくりと彼女は頷き、
「……来て、下さい♡」
「ああ」
「あっ――♡」
ずぶずぶ、と和は京極のペニスを飲み込んでいく。たった一度の経験、未踏の処女地。制服姿のまま、和はそれを貫かれた。
「つ、う――!」
「大丈夫かい、和ちゃん」
「あ……は、はい……はっ、はっ、はっ」
「ゆっくり息をするんだ」
落ち着かせるように、京極は和の頭を撫でる。右手がぎゅっと握られる。与えられる安堵と信頼、幸福感。肥大化されたそれらが、痛みを追いやっていく。代わりに感じるのは、
「あ、ぅっ♡」
快感のみ。
「動くよ」
「あ、ちょ、まっ……――あっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡」
ずんずんと、京極のピストン運動が始まる。制服美少女は、裸体の丸豚男に突かれて啼いて悦んだ。
「良い♡ 良いです♡ 気持ち良いです♡」
「これがセックスだよ、和ちゃん」
「セックス♡ セックス♡ セックス良いです♡ 京極様とのセックス♡ すごく良いです♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡」
蟹挟みで、和の脚が男の腰を固定する。逃がさないと言わんばかりに、強い力だった。
「まず一発だ……っ、イクよ、和ちゃんっ」
「あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ わ、私も♡ あっ♡ あっ♡ イキます♡ また♡ イキます♡」
「イケ、和ちゃん!」
「あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ イクイクイク♡ イクぅううううっ♡」
絶叫と共に、和はイキ狂う。同時に京極も果て、コンドームの中に精液をぶちまけた。ぬぷりとペニスを引き抜き、ゴムを外す。口を縛り上げ、和にそれを見せつける。
「すっごく絞り取られたよ、和ちゃん。良かったよ」
「う、嬉しいですぅ……♡」
「それじゃあ、もう一回行こうか」
「あっ♡」
新しいゴムを着け直し、京極はペニスを和の中に埋めていく。二回目ということもあり、一回目よりもあっさりと和は受け入れていた。
「あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ もっと♡ もっとぉ♡ 好き♡ 好きです♡ セックス♡ セックス好き♡ 私♡ 京極様が♡ 大好きです♡」
「嬉しいよ、和ちゃん、僕も君が大好きだよっ!」
「私も♡ 私も嬉しいです♡ 京極様♡ 好き♡ 好き好き好き♡」
恥ずかしげも無く、カメラの前で和は告白する。制服は汗ばみ、肌にはりつく。漂わせる色気は、どこまでも深い。
にやりと、京極は酷薄な笑みを浮かべた。
今がその時だと、彼は和の耳元で囁いた。
「和ちゃん」
「は、はいっ?」
「目覚めて」
きぃん、と妙な男が和の耳に響き。
――全てが、元に戻る。京極の力が、解除される。
肥大化された安堵、安心、幸福感、好意、恐怖。その全てが本来あるべき形に戻り、本来あるべき感情が和の元に戻ってくる。
「……え?」
自分の上で、腰を振っている男が信じられない。自分の秘所に、抜き差しされるペニスが信じられない。胸から、口から、肌から、秘部から、与えられる快感が信じられない。
「……ぃ、や」
「どうしたんだい、和ちゃん」
「――いやああああああああああああああああああああっ!」
飛び出たのは、耳をつんざく悲鳴。
どうして、この男が。この醜悪な蛙面の男が、自分にまたがっているのか。どうしてそれを、自分は受け入れてしまったのか。
全く、何もかもが信じられなかった。
「やだ、やめて♡ やめてください♡ 抜いて♡ 抜いてぇ♡」
「心にも無いことを言うなよ和ちゃん。さっきまであれだけ僕のこと好き好きって言ってたのにさ。僕のセクハラ奴隷とも言ってたよね」
「嘘♡ 嘘です♡ 言ってない♡ そんなこと言ってません♡ 貴方なんか♡ 貴方なんかぁ♡」
「これだけ甘い声出して何を言ってるのさ。――大体、このカメラが証人だよ?」
「~~~っ♡」
撮られている。この痴態を、この状況を、全て撮られてしまっている。
動揺する和の隙を突いて、京極は腰の動きを加速させる。
「っ♡ あっ♡ あっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ だめ♡ 突かれるの♡ 突かれるの弱いんです♡」
「気持ち良いんでしょ?」
「気持ちよくなんか♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ ないです♡ ないのに♡」
「正直になりなよ、さっきみたいにさ」
「うぅっ♡ あっ♡ あっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ んちゅ♡ はむぅ♡」
京極からのキスに、目をとろんとさせる。
嫌なはずなのに、嫌悪感しか覚えないはずなのに、和は快楽を覚えていた。
「もう一回イクよっ」
「だめ♡ だめ♡ だめえっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
「和ちゃんもイキそうなんだろっ」
「イキません♡ 貴方なんかに♡ イカされたくない♡ だめ♡ おま○こだめ♡」
「我慢は体に良くないよ、ほらっ」
「あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ やぁっ♡ もう♡ もう止めて♡」
これまでが遅く感じるほどのピストン運動に加え、セーラー服の下に入り込んだ指が乳首を弄る。何も考えられなくなった和は、嬌声を上げるしか無い。
「須賀君、須賀君須賀君須賀君っ! お願い、須賀君っ」
「彼はここにはいないよ、僕と愛し合うしかないんだよ」
「いや、いやいやいや♡ あーっ♡ あーっ♡ いやぁぁああ♡」
「ほら――イケっ」
「あううううううっ♡」
これまでで一番深い絶頂を味わい、和は背中を仰け反らせる。
――イって、しまった。深い後悔に襲われながら、和は枕を涙で濡らす。
しかし真に彼女が不幸なのは、これが撮影会であること。あらゆるシーンを撮るため、京極は和を犯し続けた。
「あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡」
「ほら、まだまだイクぞ!」
数時間後。
使用染みコンドームが散乱したベッドの上で、和は呆然と天井を見つめていた。
(須賀、君……咲、さん……)
呼びかけても、大切な人達は現れない。現れる余地はなかった。
次は怜か憧書きたいですよね。でも休憩入るかも。