麻雀天使堕天計画 作:クラリス
関西随一の実力を持つ千里山女子。その名門校で、昨秋から今夏にかけてエースを務めていたのが園城寺怜である。病弱で色白、ほっそりとした体つきに、凍えるような瞳。しかし見目麗しい容姿は、麻雀雑誌でも人気の高い清水谷竜華に引けを取らない。もしも一年生時から注目を浴びていたなら、逆転している可能性すらあった。どちらかと言えば冷静かつマイペースなタイプで、意外と天然な竜華の突っ込み役に回ることもしばしば。
その彼女もまた、多くの少女達と同様、謎の古城での麻雀生活を強いられていた。
「ふぅ……」
全ては、恋い焦がれる少年を救い出すため。病身に鞭打ち、今日も彼女は千里山の制服で出陣する。
きっと、想いを同じくする清水谷竜華もこの城にいるはず。怜はそう確信しながら、しかし合流には至っていなかった。案内人や対局者達にクレジットを払えば、その情報も帰る可能性はあったが、怜は慎重だった。いつどのような形でクレジットを必要とされるか分からない。早々竜華が負けるとも思えず、余裕ができるまで温存を選んでいた。
怜自身、ここまでは危なげなく勝ち上がっていた。持ち込みクレジット制限やら脱衣麻雀やらを仕掛けられたが、鉄壁の守備力を持つ彼女を打ち崩すには至らない。ならば竜華も、簡単に膝を着くとは思えなかった。
口数の少ない案内人に連れられて、城の奥深くへと足を踏み入れる。
相変わらず重そうな扉を押し開き、怜は今日の対局室へ入った。
「えっ」
――瞬間、彼女は顔を凍り付かせる。
既に、対局者達は卓に着いていた。二人は見知らぬ男達。だが、丁度怜の対面に座る男が問題だった。筋骨隆々とした体に、岩のような顔。
「松谷……先生……っ?」
「久しぶりだな、園城寺」
かつて千里山女子で教鞭を執っていた体育教師、松谷。
怜にとっては、おぞましい記憶を刻まれた相手だった。
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一年前。まだ、怜がチームのエースに据えられて間もない頃。
怜は一人、体育教師の松谷に呼び出されて体育準備室を訪れていた。元々病弱で休みがちな彼女だったが、特に体育の授業は基本的に見学していた。そのため、座学による補講などを受けるのが通例となっていたのだ。
しかしこの秋、元々怜を担当していた女性体育教師が産休に入り、補講担当が松谷に変わったのだ。松谷はバレー部の監督としてスカウトされて千里山女子に最近入って来た、女子校としては珍しい男性体育教師である。
「失礼します」
「おお、入れ」
彼に関してはあまり良い噂を聞かないのが実情だが、直接言葉を交わしたことは片手で数えられる程度。怜は先入観を捨て、狭い体育準備津の中、彼の向かいに座った。今日は、これまでの補講状況の確認と怜の体調に関するヒアリングという名目で呼び出されたのだ。
「今日はすまんな、呼び出して。部活も忙しいだろうに」
「いえ、大丈夫です」
「で、早速だが授業についてだな――」
「それは――」
挨拶もそこそこに、二人は話し合いを始める。至極真面目な内容であった。やはり噂は噂、と怜はほっと安心した頃だった。
「しかし、まともに運動できない体というのも大変だろう」
「確かに、竜華達が羨ましい時あります」
「かなり体が凝り固まってるんじゃないか。一日麻雀ばかり打っているようだし。どうだ、ちょっとマッサージを受けていかないか」
「マッサージ……ですか?」
「肩を揉みほぐす程度だ」
少しの間、怜は迷ってから、
「お願いします」
と頷き、松谷に背中を向けた。教師として、彼女は松谷を信用していた。
「じゃあいくぞ」
「ん、ふ――」
強い力で制服の上から肩を押され、堪らず怜は吐息を漏らす。だが、くすぐったくはなかった。むしろ凝り固まった肉が解れていくのを感じ、松谷に体を預けていく。
「大分凝っていたみたいだな。かなり固いぞ」
「ふ、ぅ、……そ、そうみたい、やな」
「もっと力を抜け。背中も押すぞ」
「ぅ、ふぅっ」
指の腹で押され、さらに息を漏らす。
「気持ち良いか?」
「は、はい……気持ち良いです」
下手をすればセクハラに引っかかりかねない質問にも、怜は素直に答えていた。確かに、松谷のマッサージは気持ちが良かった。
すっかり固い筋肉が解れ、怜はお礼を言おうと、松谷に向き直ろうとし、
「え――っ?」
椅子を蹴った松谷に、押し倒されていた。がたがたと椅子が狭い室内を転げ回る。背中から松谷にのしかかられ、身動きが取れない。
悲鳴を上げそうになった。だが、
「むぅーっ!」
松谷のごつごつとした手で、口を塞がれてしまう。呻き声は、しかし狭い室内に響くばかりで遠くまでは届かない。
「暴れんなよ、大人しくしろ」
「むぅー! むぅーっ!」
「大人しくしないと頭かち割るぞ」
暴れようとする怜であったが、どすの効いた松谷の声にぴたりと抵抗を止める。恐怖を感じる男の腕力に、はったりではないと察する。
「へへ……」
しかし慎重にも、松谷は怜の口を塞いだまま次の行動を起こす。マッサージをしていた手が触れたのは、
「むぅぅーっ!」
怜の胸だった。竜華に比べれば控え目であるが、少女としては充分に膨らんでいる乳房を、制服越しに松谷は揉みしだく。怜は悲鳴を上げるが、くぐもった声にしかならない。
「見た目以上にあるじゃねぇか」
「ん、むぅっ」
「大人しくしてろって言っただろ。俺のテクなら、すぐに気持ちよくなれるぜ」
要らぬお世話である。しかし制服と下着の上からでも松谷の手は的確に乳首の位置を探しだし、ぐにぐに押し潰す。これまで味わったこと無い刺激に、怜は目を白黒させた。混乱の最中、スカート越しに、お尻に熱いものが当たっているのを感じる。
(もしかして、これっ……)
涙目になる怜に、松谷は愉しむように囁く。
「下手に動いたら突き刺しちまうぞ」
「むぅっ」
「怯える顔も可愛いぜ、園城寺。初めてお前と会ってから、ずっと目をつけてたんだぜぇ。一目惚れってやつだ。まだ幼い体に俺を刻み込めるかと思うと、たまらねぇよ」
「……っ!」
怜の背筋に悪寒が走った。教師が生徒に投げかける言葉では無い。こんな男を、一時でも信用してしまうとは。
「んむぅーっ!」
一際大きく、怜は悲鳴を上げようとした。スカートの中に、松谷の手が侵入してきたのだ。
「ミニスカなんか履いてよぉ、誘ってんのかぁ?」
否定したくても、声にできない。押し倒されたまま、下着の中にまで松谷の指が入り込む。無遠慮に、松谷は怜の割れ目をなぞり上げた。
「むぅ、むぅーっ!」
「どうだ園城寺、こっちも解してやるからなぁ」
このままでは、犯される。自身に迫った危機に、怜は身震いする。
(誰か、助けて――)
全身を松谷にまさぐられながら、怜は請い願った。いつの間にか口はハンカチで拘束され、両手で胸を揉まれている。もう叫びを起こす気力すら起きず、されるがままになっていた。
――しかし。
「怜ー? どこにおるんやー?」
聞き馴染んだ声が、体育準備室の中にまで届いた。
(セーラ……!)
もう一人の親友。男勝りの女の子。いつもやかましい声が、安心感を与えてくれる。一方で松谷は、思い切り舌打ちを打って怜から手を離した。
「邪魔が入ったな。今日のところは見逃してやる」
「う、うぅ」
「もしも誰かに言ってみろ。この写真をばらまくぞ」
「――っ!」
見せられたのは、バレー部の少女達の写真。ただの写真ではない。誰も彼もが、あられもない姿でベッドの上に転がされていた。中には、怜と仲の良い友人までいる。
ハンカチを取り払われても、怜はもう悲鳴一つあげなかった。大人しく、乱れた制服を元に戻す。
「行け」
「……」
無言で、怜は体育準備室を出る。近くにいたセーラに声をかけられ、共に麻雀部の部室へ行く。――何でも無い風を、装いながら。泣き寝入りを、覚悟しながら。
ぐちゅりと、パンツの中で水音がする。
刻まれた記憶は、どこまでも深く。
園城寺怜の内に眠る、被虐資質を目覚めさせていた。
その後、竜華の奮闘により誰も泣くことなく松谷は千里山女子を去ることになった。しかし、松谷はその恨みをぐつぐつと滾らせることになる。
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対面に座った松谷と顔を合わせると、どうしても怜は当時の記憶を思い出し、顔を背けてしまう。
「そんなに嫌がることは無いだろう、園城寺」
「あんたなんかと二度と会いたくなかったわ」
淡々と言い放つ怜であったが、心臓は痛いほど脈打っている。あの時感じた雄の臭い。力強さ。無理矢理昂ぶらされた、愛撫。全てが怜の心を苛む。
「連れないな。一緒にお勉強もしただろう?」
「反吐が出たわ」
「その口の悪さも懐かしいな」
ともかくだ、と松谷は肩をすくめる。
「今日の麻雀ルールを説明しておくぜ」
「また脱衣麻雀でもせぇっちゅうんか」
「いやいや、今日は名付けてマッサージ麻雀だ」
ぴくりと、怜が眉を潜ませる。マッサージという単語と、この松谷という男。またもや悪夢のような記憶が浮かび上がり、気分が悪くなった。
「なにをさせるつもりや」
「俺とお前の間で点数のやりとりをした時、点を渡した方が渡された方にマッサージをするんだ。つまり、クレジットにおまけがつくわけだな。マッサージする場所はランダムで決めて、1000点につき一分行う。100点以下は切り上げだ」
「……よく分かったわ」
マッサージでもなんでもさせてやる。この男を傅かせ、忌まわしい記憶を打ち払ってやる。そう気合を入れて、怜は牌を手に取った。
(京太郎と竜華にもう一度会うんや)
それまでは、負けられない。
千里山のエースとして、全力を尽くす。彼女の持つ一巡先を見通す力は、素の雀力が低くとも、他を圧倒する。
「ツモや! 1000・2000!」
「流石だ、園城寺。速すぎるぜ」
クレジットを吐き出しながら、にやにやと松谷は笑う。それから彼は、トランプほどの大きさのカードの束を取り出した。
「一枚引け。裏面にマッサージする場所が書いてる」
「……ほな、これで」
たまたま目に付いたカードを、怜は引く。書かれていた文字は、「手」だった。
「二分間、手をマッサージ、だな。ほら、手ェ出せ」
「なんでやるほうが偉そうなんや」
文句を言いながらも、怜は掌を差し出す。そこに、松谷のごつごつとした指が触れた。ぴくりと、怜の頬が歪む。
傅かせると息巻いたものの、触れられるだけでも不快だった。
ぎゅ、ぎゅ、と松谷の指に怜の小さな掌が押されていく。
「ん……っ」
不快のはず――が、松谷のマッサージは巧みだった。的確に、力強く気持ち良いところを突いていく。あの体育準備室でも、そうだった。この男の技術だけは、本物だった。
「よし、二分だな」
「……ふん」
大したことなかったわ、と言わんばかりにひらひら手を振って、怜は松谷から離れる。だが、内心どきどきしていた。準備室の床が、フラッシュバックする。
次局も、怜は和了する。
「3000・6000!」
「随分と良い調子じゃないか。ほら、カードを引け」
「……ん」
引いたカードに書かれていたのは、「肩」。怜は表情を歪ませる。
「ほら、背中を見せろ」
「……これって、拒否できへんの?」
「マッサージはルールだ。受けろ」
渋々、怜は椅子を回して松谷に背中を向ける。何の遠慮も無く、あの、ごつごつとした手でがっしりと掴まれた。
「あ、ふっ――」
「また随分と凝ってるな。三分間じゃ足りないぜ」
「ふ、うっ」
この城に連れて来られて、過度の緊張を強いられる生活を送っていたのだ。不安や彼への想い。体が悲鳴を上げてもおかしくなかった。
松谷への嫌悪感はいささかも衰えていない。マッサージが上手くなければすぐにでも払いのけたいところだ。だが、体を休める良い機会なのも確かである。
(……利用するまでや)
そう割り切って、怜はマッサージを受け入れる。受け入れてしまう。
肩の凝りを解きほぐすだけでは無く、徐々に徐々に、松谷は怜の肉体を昂ぶらせていく。性感マッサージの第一段階。
ぽん、と怜の肩を叩き、
「よし、次の局を始めようか」
松谷は先を促す。クレジットの損失など、知らないように。
「ロンや、12000」
「っとぉ、やられたなぁ」
「……」
わざと降り込んだように見えるのは、穿ちすぎだろうか。
怜は淡々と、カードを引く。次は、
「背中か。そこのベッドに寝転がれ」
不快感と恐怖を覚えながらも、部屋の隅に設えられたベッドに、怜はうつぶせになった。
「変なとこ触ったら許さへんで」
「心配するなよ、マッサージだけだ」
「んっ――」
セーラー服の上から、背中を押される。
「ふっ、うっ」
「こっちも中々凝ってるな」
「あっ、はっ……♡」
僅かに、怜の声に甘い色が混じった。にやりと松谷はほくそ笑み、集中的に狙い撃つ。
「あ、んっ♡ ……ふ、ぅっ、あぅ♡ ……や、ん♡ ……あふっ♡」
マッサージ自体は気持ちよく、夢現になりながら怜はそれを受け入れる。色気のある声を漏れ出させ、頬を紅潮させる。
(なんやろ、これ)
熱いお風呂に浸かった時と、似た気分。頭がぼうっとしてしまう。
「十二分経っちまったな」
「あ……」
あっさりと、松谷は引いていった。
どきどきしながら、次の局へと怜は向かう。
「……ロン」
「またやられちまったなぁ」
へらへらと笑う松谷に苛立ちを覚えながら、怜は乱暴にカードを引いた。今度は肩か、また背中か。――しかし、全くの予想外であった。
「おお、臀部ね。もう一度寝転がれ」
「で、臀部って、お尻っ?」
「そうだよ。ほら、早く」
「そ、そんなんっ」
「嫌、とは言わせねぇぞ。麻雀ルールがこの城の絶対なんだよ。愛しの彼が守られているのは、そのルールのお陰ってことを忘れるな」
ぐ、と怜は拳を作り。想い人の顔を、思い浮かべる。
ゆっくりと、再びベッドにうつぶせになる。ぎしりとベッドのスプリングが悲鳴を上げ、背後に松谷が乗ってきたのが分かった。
「は、ぅうっ……」
ミニスカートの上からお尻を鷲掴みにされる。
「去年触ったときも思ったが、胸よりケツの方が肉付き良いな」
「そ、そんなん、言わんといてっ……」
「褒めてるんだよ」
ぐにゅぐにゅと、松谷の指が埋められる。その度に、怜の口から浅い息が漏れ出た。
「あ、ん♡ ふ、ぅうっ♡ ――あ、や、な、なにしとるんっ!」
「スカートをめくっただけだろうが、ぐだぐだ言ってんじゃねぇ」
「ぱ、パンツ、み、見やんといて……っ♡」
「赤とは中々気取ってるじゃないか」
「やんっ♡ や、やらしいこと、せんといてっ」
「マッサージだよ」
パンツの上から、松谷はさらにお尻を責め立てる。
「ふ♡ う♡ ふぅ♡ うふぅ♡」
シーツを噛み、口を塞ごうとする。だが、出てくる息を止められない。早く、時間が過ぎ去って欲しい。大物手を和了したことに後悔したのは、初めての経験だった。
「とりあえずここまでだな」
「あふ……」
ようやくマッサージが終わると、怜は枕に顔を埋めた。
「ほら、早く立て。眠ってんじゃねぇぞ」
「う、うぅ」
スカートを整えながら、怜はベッドから立ち上がる。ふらりと体がよろめいた。松谷はただおもむろにお尻を弄っていたのでは無い。確実に怜の性感帯を刺激していた。
そこからも、怜は和了し続けた。その度に腕、肩、背中、またお尻とあらゆる場所をマッサージされる。対局の後半になると、既に怜の意識は朦朧としていた。
「ろ、ん……」
「またやられちまったな」
それでも何とか和了する。
「マッサージする場所は……膣か」
「は……?」
自分で引いたカードを、信じられないものを見るような目で怜は見る。ぐい、と手を引かれて、気付けばベッドの縁に座らされていた。
「あっ」
ミニスカートを正面から捲り上げられ、怜は短い悲鳴を上げる。拒絶しようにも、力が入らない。赤の下着をずらし、松谷の指が遠慮無く割れ目をなぞった。
「あぅっ♡ あ、あかんっ♡ こんなん、マッサージとちゃう♡」
「うるせぇ。前も触っただろ、気にするなよ」
「や、嫌や♡ やめ、やめっ、ああぅっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
あっという間にぐちゅぐちゅと水音が響き渡るようになる。既に高められていた性感が、あっさりと松谷の指を受け入れていた。
「前回はここまで出来なかったからな。どうだ、園城寺、気持ち良いか?」
「んっ♡ や♡ こんなん♡ こんなん♡ 気持ちよくなんか♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
「こんなに悦んでいてよく言うぜ」
「や♡ やめて♡ もうやめて♡ マッサージ♡ もうええから♡」
「後五分もあるんだ。たっぷり味わえ」
「そ、そんなぁ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ やめ♡ やめて♡ 松谷先生♡」
しかし、松谷は容赦なかった。ひたすらに怜を責め続けた。制限時間が終わった頃には、だらしなく口から唾液が漏れ出ていた。
「ほら、次だぞ」
「あ、うぅ……♡」
卓に着いても、集中できない。一巡先が、全く見えない。
(そ、そんな)
元々の地力では女子の中でも平均以下。そして怜は知らなかったが、他の対局者達は男の中でも精鋭揃いであった。そして三対一の状況。
「ツモだ!」
「ロン!」
「ツモ!」
未来を見ることが出来ない怜に、勝ち目はなかった。
「ロンだ」
「あっ」
ついに、直接松谷に振り込んでしまう。今度は怜が、マッサージをする番であった。
「肩揉んでくれよ、園城寺」
「……ぐ」
こんな男のために働くなんて、嫌だった。だが、ルールはルール。どうしようもない。ここで払いのければ、彼らが危ない。
「もっと強い力で、体重かけろ」
「は、はい……」
いつか、京太郎と結婚したら。仕事に疲れた彼のために、マッサージをする日が来るかも知れないと想像したことだってある。なのに現実は、あまりに酷かった。涙さえ浮かべながら、怜は松谷に奉仕した。
しかしその後も、怜はクレジットを失い続けた。松谷に支払う度、マッサージを強要された。
疲労困憊になった彼女は、力尽きるのと同時、手持ちのクレジット全てを失った。
「この城に来て初めての全失点だな」
「う……」
「罰ゲームだぜ、園城寺」
にやりと笑う松谷の顔を、呆然と怜は見上げていた。
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怜が連れて来られたのは、「学校」だった。そう表現するほか無い。どれだけお金がつぎ込まれたかも分からない、さながら本物の校舎だった。
「イメクラのスケールアップ版みたいなもんさ」
自慢気に松谷は言うが、怜は答えない。答えられない。
西日の差し込む教室は、本物にしか思えない。並べられた机も椅子も、教卓も、真っ新では無く使い込まれた痕があった。雰囲気作りに余念がない。その教室に千里山の制服姿の怜が足を踏み入れれば、疑う余地はいくらかも無くなる。
だが、教室の隅に並べ立てられたビデオカメラ。さらにカメラマンが数人。
怜に課せられた罰ゲーム。
それは、少し特殊な撮影会だった。
「台本は読み込んだな」
「……くだらんかったわ」
「おいおい、折角俺が書いた脚本だぜ。文句を言うなよ」
反論する権利のない怜は拳を作り、顔を俯かせる。嬉しそうに松谷は頷き、「始めるぞ」と周りの男に声をかけた。
松谷の書いた筋書き通りに演技をする怜を、撮影する。それが、この撮影会の主旨。
主演女優は怜。主演男優は、松谷。この二人だけの、演劇だ。
教室に佇む怜に向かって、シャッターが切られる。じぃっとビデオカメラが回された。その視線を感じ、頬を染めながら、怜は向かいに立つ松谷を見上げた。
「せ、先生……」
台本に書かれた台詞を口にする。やや固かったが、棒読みというほどではない。
「きょ、今日は、いきなり呼んでごめんな」
「気にするな、どうしたんだ?」
とぼけた様子で、松谷は言う。ぎゅっと一度怜は目を瞑り、「これは演技や」と自分に言い聞かせる。
「私、ず、ずっと先生のこと、す……好きやったんや。ほ、ほんまに好きなんや。先生と、付き合いたいんや」
「おいおい園城寺、俺とお前は教師と生徒だ。付き合えるわけないだろう」
「せ、せやったら……わ、私に思い出、くれん?」
怜の動きが止まる。台本に指定された次の行動は、あまりに酷であった。だが、眼前で笑う松谷が逃げを許さない。
そっと、スカートの縁に指をかけ。
怜は、それを持ち上げる。当然、履き替えたライムグリーンの下着が晒される。一斉にシャッターが切られ、ビデオカメラの注目が集まるのが分かった。
「お、お願い、やから……♡」
媚びるように、怜は懇願する。だが、松谷は首を横に振った。これもまた、予定の内。
今度は、セーラー服のリボンを抜き取った。襟のホックを外し、ゆっくりと怜はそれを脱ぎ捨てる。
さらには、ブラのフロントホックに指が伸びる。躊躇いは大きかった。だが、やはり松谷の視線が許さない。かちり、と音を立てホックが外れると、ブラ紐が緩む。
決して巨乳ではないが、しかしほどよい大きさと形を両立させた胸が露わになる。両手を交差し、胸元を隠して――怜は、笑った。台本にあるとおり、笑わされた。
「せん、せ……♡」
「仕方ないな、園城寺」
「あっ」
ぐい、と体が引き寄せられ、
「お前がそこまで言うなら、愛してやるよ」
「……、ん……っ」
雄の臭いに、怜は顔を顰め。
重ねられる唇から、逃れられなかった。
「んむっ♡ ちゅううっ♡」
ファーストキスで思い切り吸い付かれ、怜は体を震わせる。ごめんな京太郎、という謝罪は誰の耳にも届かなかった。
「おん、園城寺ッ……!」
血走った目で、松谷は怜の体を抱き締めると何度も何度も彼女にキスをする。
「あむ♡ やめ、んちゅ♡ はふうっ♡ こ、こんなのぉっ♡」
「ずっとお前をこうしたかったんだぜ、はは、最高の日だ……!」
「な、なんで私を、んむっ♡」
「前に言っただろ、一目惚れしたって……! 一度は諦めたが、お高く止まったお前から告白させるなんて、気分も良くなるぜっ」
卑劣かつ一方的な欲望。
だが、松谷の執心は本物であった。
「園城寺、園城寺、園城寺ィっ!」
「痛、んちゅ、じゅるううっ♡ あむ♡ ――はふっ♡ おし、お尻触らんといて♡ む、胸も♡ 潰れて♡ むちゅ♡ き、キスも♡ あむぅっ♡ ――あ、あかんのにっ♡」
「今日は、お前の隅々まで調べ尽くして撮り尽くしてやるからな……! 楽しみにしてろよ……!」
「そ、そんなん♡ いや♡ 嫌や♡ んむ♡」
撮影会は、まだ始まったばかりであった。
次回は撮影会続き+マッサージ麻雀後編。