麻雀天使堕天計画 作:クラリス
「よっし」
ツーサイドアップの髪を揺らし、新子憧は椅子から立ち上がった。伝統ある阿知賀女子学院の制服に身を包み、気合は充分。
彼に惚れた弱みで、憧も古城に連れ去られた少女の一人だった。過酷な麻雀ゲームに晒されながら、持ち前の気の強さと鍛えられた雀力によって、彼女はこれまでの試練を無傷で乗り越えていた。
小柄な体躯は、それでいて女性らしいラインを描く。街を歩けば誰もが振り向く、美少女と言って差し支えない容姿は努力の賜。肉付きの良いヒップが、短いスカートの上から見え隠れする。新子憧は、実に
男達から送られる性的な視線は不快でしかなかったが、恋の力がはねのける。この城で彼を助け出すことができたなら、振り向いてくれるかも知れない――なんて、乙女らしい希望もあった。同じ阿知賀女子の中でも、ライバルとなる少女もいるのだ。最近自分の体も成長している自覚があったが、肉体的な魅力で言えば、彼女達にあまり勝てる気はしない。
「宥姉や玄、大丈夫かな……」
しかし、敵愾心よりも憂慮が先に来る。先輩である松実姉妹もこの城に連れ去られて来ていると、憧は信じて疑っていなかった。どうにかして合流できる算段をつけられたなら、とは思うがこの城で融通を利かせるためのクレジットは、想い人を助けるのに使用してしまいまだまだ充分な貯蓄はなかった。
「とにかく、ここらでがっつり稼いでおきたいな」
麻雀で負けるつもりはさらさらなく、憧は出立する。今日の対局の始まりだ。案内人の背中を追い、いつもの対局室へと入る。そしていつも通り淡々と卓につくのが常であったが、今日は違った。
憧は目を見開き、驚く。
「あ、あんたっ」
「久しぶりだな、新子」
「榊っ?」
見知った顔が、そこにいた。耳にはピアス、金属製のアクセサリーをじゃらじゃら鳴らす。軽薄そうな態度の男は、かつての憧の同級生。阿太峯中学時代の、学友であった。
「なんであんたがここにっ!」
「親父のコネでね。お祭りをやってるみたいだから、参加させてもらったんだ」
にやにやと笑う榊という少年に、憧は苦虫を潰した表情を浮かべる。確かに彼は、地元阿知賀名士の家の生まれなのだ。加えて男前の面構えは、年代を問わず異性を惹き付ける。
しかし家柄に反して素行は悪く、たびたび問題を起こしていた。特に女性関係に対して非常に悪名を轟かせており、憧も何度も口説かれそうになった。全てはね除けたのだが、スキンシップと称して体に触られる事も多々あった。おかげで憧は、若干の男性恐怖症になってしまった。それを解消してくれたのが今の想い人ではあるのだが――やはり、他の男は苦手だ。特に、この榊は。
恐れを打ち消すように、憧は声を荒げて榊を糾弾する。
「あんた、やっぱりまともな神経してないわね。こんな犯罪に加担してっ!」
「おー、やっぱり怒った顔も可愛いな、新子。負けん気の強さは変わってないみたいで嬉しいね」
「な、何言って――」
「でも、あんまり反抗的な態度見せたらどうなるか――分かってんだろ?」
露骨な牽制に、憧は声を詰まらせる。人質にとられた彼を想えば、ここは従うしかない。
凄んでいた榊は、ふっと空気を緩めると、
「ともかく今日は麻雀を楽しもうぜ」
いけしゃあしゃあと言ってのけた。憧は飛び出そうになる文句を全て飲み込んで、卓についた。対面に、榊が座る。上家と下家も、城側の人間だ。いつもの一対三だが、緊張感が違う。榊はにやりと笑って、解説を始めた。
「今日は特別ルールだ。新子、お前が得たクレジットは最終的に十倍にして渡そう」
「……で、他には?」
自分に有利なルールだけを聞いて喜ぶほど、憧は単純ではない。榊の性格の悪さは、よく知っていた。
「新子はインハイ経験者だからな。俺達にハンデを貰おうと思うんだ。――局の最初に、ランダムで禁則事項を定める。お前はその局の間に禁則事項を破ったら、ペナルティを科す」
「禁則事項って、何よ」
「例えば、そうだな」
榊が差し出してきたのは、十数枚のカードの束だった。
「一枚引いてみろ」
「……じゃあ、これ」
言われたとおりに、カードを引く。そこに書かれていたのは「ポン」の二文字。
「次の局、お前がポンを宣言したらペナルティを科す。故意であろうと過失であろうとな」
「ペナルティって、何よ」
「それはやってみてからのお楽しみだ。――さぁ、始めようか」
ふん、と憧は鼻を鳴らす。自分の得意とするところは鳴き麻雀であり、ポンを封じられるのは辛い。しかし、榊は大した打ち手ではないことを知っている。
(このくらいのハンデで止めようなんて、笑わせるっ)
最短最速で和了を目指し、
「ツモっ! 2000・4000!」
軽快に決めてみせる。対局者達全員から、大したプレッシャーも感じられない。今日は良い稼ぎ時になりそうだと、心の中でほくそ笑んだ。
「それじゃ、次のカードを引いて貰うぜ」
「じゃ、これで」
次の縛りは、「チー」。またも鳴きを封じられたが、大した問題ではなかった。
「ロン! 3900!」
「やっぱりやるな、新子」
「ふん」
振り込んでおきながら、榊は随分余裕ぶっていた。クレジットはたらふく持っているということだろうか。
(それなら全部、奪い取ったげるわっ)
余裕たっぷりに、次のカードを憧は引く。ポンかチーか、はたまたカンか。しかし予想を裏切り、書かれていたのは「ロン」だった。
「むっ」
これには憧も顔を顰めた。ツモ和了しか認めないということか。
(ま、良いでしょ)
この程度では、止められない。実際、この局も憧が和了してみせた。
風向きが変わり始めたのは、次の局だった。カードを引いた憧が、顔を顰める。
「縛りは……ポンと、ツモ? 複数とかあるのっ?」
「当然だろ。一局に禁則は一つとは言ってないぜ」
「それはそうだけど……」
片手を縛られた状態ならまだしも、両手を縛られた状態ではかなり動きが制限される。それでも簡単に負けるつもりはなかったが、現実はそこまで甘くない。
「ツモだ」
案の定、速度で間に合わず榊に和了されてしまう。普段よりも苛立ちながら、憧は点棒を渡す。落ち着けと自分に言い聞かせるが、その後も榊達のペースが続いた。
(ツモかロンを封じられると辛い……!)
歯噛みする憧。じわじわとだが、確実にクレジットが削られる。今日は持ち込みのクレジットも制限され、いつまでこの対局が続くか分からない現状、下手をすれば箱割れしかねない流れだった。
ツモってきた牌を見つめて、すぅ、と息を吸う。この局、「ツモ」は縛られている。しかし憧は、
「……ツモ!」
和了宣言をし、牌を倒した。ひゅう、と榊が口笛を吹く。
「今局はツモが縛りの対象だって、分かってるんだろ?」
「分かってるわよ。ペナルティ上等よ」
「良い意気込みだなァ」
にやりと榊は笑い、憧を指差す。
「最初のペナルティは軽いところから行こうか。今から俺のことは『ご主人様』と呼べ」
「……ばっかじゃないの」
「呼び間違えたら、ペナルティ追加だからな」
にやにやと笑う榊に、呆れながら憧は溜息を吐く。どこまでねじ曲がっているのだろうか、この少年は。
「分かったわよ、『ご主人様』。これで良いんでしょ?」
「反抗的なのも悪くないが、ご主人様にはそれなりの態度を示せよな」
「誰があんたなんかに」
精神的に屈辱的なペナルティだったが、同時に「この程度なら」と憧は考えてもいた。今も苦しんでいるであろう想い人を救うこと、きっと同じ立場で戦っているであろう仲間の事を思えば、何てことはない。些細な事だ。
次の局も、ロンとチーが縛られる。だが、憧は、
「ロン!」
「おっと、怖い物知らずだな」
榊から直撃を奪い取る。
「ペナルティなのは承知なんだろ?」
「当たり前よ」
「それじゃ、次はそっちの部屋に着替えを用意してるんだ。それに着替えて来い」
「……ふん」
また面倒な要求を、と思いながら憧は指差された別室に移動する。更衣室大の部屋に用意されていた衣装を見て、彼女は眉を潜めた。
(最低……!)
今すぐにでも部屋を飛び出して榊に文句を言ってやりたかった。だが、それは許されない。既に覚悟は決めた、はずなのだ。
手早く着替えて、対局室に戻る。
榊が用意していたのは、黒のメイド服であった。しかし、ただのメイド服ではない。ビキニ水着を模したメイド服だった。胸部はほとんどブラジャーと変わらず、エプロンドレスがかかったスカートは太股が見えるほどのミニ。いずれも白のフリルがあしらわれている。首元には赤いネクタイ、頭部には白いカチューシャ。脚は黒のオーバーニーソックスで包まれ、ガーターベルトで吊している。お臍は当然見えており、マニアックなエロティシズムを掻き立てる。
「よく似合ってるぜ、新子」
「あんたに褒められたって、嬉しくともなんともないわよ」
顔を赤らめ、スカートの裾をできる限り伸ばしながら憧は憎まれ口を利く。卓につくと、男からの容赦ない視線が突き刺さる。胸元を腕で隠しながら、憧は牌を掴み取った。
まだ、耐えられる。こんなペナルティに、屈してなるものか――憧は気合を入れ直す。
上手く禁則をすり抜けながら、和了する。
「ツモ! 1000・2000!」
「ロン! 3900!」
しかしながら、ハンデはさらに重くなる。引いたカードを見て、憧は呻き声を上げる。
「ポン、チー、ロン縛りって……」
「言い忘れていたが、どんどん新しい禁則カードを入れてるからな」
「な、なによそれ」
憧の抗議は通じるはずもなく、榊達は淡々と次の局の準備にかかる。
圧倒的に、速度が足りない。こんなルールで早和了など目指せるわけもなく、榊達にクレジットを奪われてしまう。
「くっ」
「ほら、どうしたよ。残りのクレジット、やばいんじゃないか?」
「うるっさい!」
怒鳴り声にも、榊は肩を竦めるばかり。焦燥と苛立ちばかりが募っていく。
またも縛りの内容は、ポン、チー、ツモとハンデが重い。しかし憧は、全て無視した。
「チー!」
「おっ」
「ポン!」
牌を晒し、加速し、
「ツモ!」
得意の早和了で相手の親を蹴る。榊に大物手の気配があった。冷静さを欠いたところがあるとは言え、判断として間違っていないと憧は思っていた。――この時点では。
「それじゃ、三回分のペナルティだな」
「えっ? さ、三回っ?」
「当たり前だろ、ポンもチーもツモもしたんだから」
榊が席を立ち上がり、憧に近づいてくる。その眼に宿った暗い光に、憧はたじろいだ。椅子の上で、逃げるように身を捩る。
「な、何するのよ」
「ペナルティに決まってるだろ。三回分だからじっくりやらせてもらおうか」
「や、きゃっ、何するのよ!」
腰に手を回されたかと、抱き起こされる。いわゆるお姫様だっこの形となり、憧は榊の腕の中で暴れそうになるが、
「落ちたら危ないぞ、しっかり掴まってろ」
正論に、黙らされてしまう。地に足つかない不安定な体勢、男の力強さに、どうしてもどきどきしてしまう。中学生の頃、あからさまにボディータッチされたときは突き飛ばして終わったが、今の状況ではそれも叶わず。結局、憧はそのまま別室に連れ込まれ、ベッドの上に降ろされた。
「あんたねっ」
飛び起きて抗議しようとする憧だったが、
「あうっ」
肩を掴まれ押し倒されてしまう。ベッドを背に、榊の顔を見上げる。歪んだ笑みに、憧は恐怖を覚えた。榊の手が、憧の髪をかき上げ頬に触れる。
「その格好、すっげぇ似合ってるぜ」
「あんたなんかに褒められても、嬉しくともなんとも無いわよっ」
「須賀なら良いのか?」
「ふきゅっ」
いきなり想い人の名前を出されて、憧は赤面する。
「な、なに言ってんのよ!」
「俺がどれだけ口説いてもなびかなかったお前が男に惚れるなんて、にわかに信じられなかったけど本当らしいな」
「……ふん。あんたよりよっぽど上等な人間よ、アイツは」
榊を腐すことで溜飲を下げようとした憧であったが、逆に榊は嗜虐的な笑みを浮かべるばかりであった。
「好きな男ができたお前を嬲るのも、面白いけどな」
「――、や、やっ!」
ビキニの上から、榊の胸が触れる。逃げ出そうにも、押し倒された体勢では叶わない。ぐにゅり、と榊の指が沈んでいく。メイド服の生地は薄く、感触がそのまま伝わり合う。
「やめっ、ん、やめてよっ!」
「ペナルティの一環だ、大人しくしろ。逆らったら須賀の腕でも切り落とそうか」
「あんた……!」
「ご主人様、だ」
眼前で凄まれて、憧はびくりと体を震わせる。男が苦手云々のレベルではなく、単純に恐怖心を煽られる。元々トラウマを植え付けられた相手なのだから、なおさらだ。
しかし、胸に触れる手はそれとは裏腹に実に優しげなタッチだった。痛みを与えない丁度良い塩梅で、触られ馴れていない憧の乳房を解きほぐすように揉み上げる。
「ん、ふっ」
「中学の時よりも随分大きくなったんじゃないか。もう手に余りそうだぜ」
「…………」
「何とか言えよ」
「あぅっ、んっ――お、大きくなったけど、それが何よ」
目元に涙を溜めつつも、憧は榊をぎろりと睨み付ける。ペナルティは受け入れたが、この男を受け入れるつもりなど毛頭なかった。
「恋心が体に変化をもたらしたってか」
「あっ、んっ、し、知らないわよ、んんっ、そんな、んっ、ことっ」
気付けば両胸を同時に責められていた。真っ赤にした顔を榊から背け、何も感じていないフリを決め込もうとする。だが、
「あっ! な、いやっ!」
「いやいや、ほんっとでかくなったな」
榊がビキニの中に手を突っ込み、直接胸に触れる。咎める隙はなかった。
「うっほ、すっげぇもちもちした肌だな。吸い付いてくるみたいだぜ」
「やめ、止めてよっ、こんなのっ、あっ、やっ、あっ」
「気持ちよさそうな面しておいてよく言うぜ」
「してない、そんなのしてないっ、やっ、やめっ――あぁっ」
指先で、乳首を抓まれる。こりこりと指の腹で刺激され、憧は「あふぅっ」と悩ましげな吐息を吐いた。
「ど、どこっ、触ってる、のよっ、やっ」
「お前の可愛いところだよ。――須賀には、触らせた事があるのか?」
「ふっ、うっ、し、知らない、わよっ」
「知らないってこたぁないだろ。ペナルティだ、答えろ」
「…………ないわよ」
不承不承、と言った様子で憧は答える。その回答に気をよくした榊は、からからと笑った。
「じゃあ、俺が初めてお前の胸に触った男ってわけだ」
「…………」
「どうなんだよ」
「あうっ」
ぐにゅり、と胸を潰され答えを促され、憧は仕方なく頷く。
「そ、そうよ」
「もっと、丁寧に答えろ」
「んっ、はうっ、やっ、て、丁寧って――」
「今の状況を、説明しろ」
ペナルティという名の強要は、榊が望むような答えを口にしなくてはならない。その事を、頭の良い憧はすぐに察した。察したからと言って、すぐに答えられるわけではなかったが――自分のプライドよりも、想い人を優先するのは彼女にとって当たり前の選択だった。
「わ、私は……好きな人に、じゃなくて……さ……ご、ご主人様に、胸を揉まれてます……あっ、やっ、……は、初めて胸を、揉ませた相手が、ご主人様です……んっ、あっ♡」
「もうちょっと色っぽく言えたら良かったが、ま、最初からはそこまで期待してねーわ」
軽く言いながら、榊は愛撫の動きを激しくしていく。彼の性経験は同年代の中では別格であり、この城の大人達と遜色ないレベルの技量を誇っていた。未経験の憧も、知らず知らずの内に昂ぶらされていた。
「はぅっ、あっ、そこっ、だめっ、んっ♡」
顎を突き出し、憧は熱い息を吐いた。目は閉じられ、悩ましげに口をすぼめる。
「それじゃ、最後のペナルティだ」
「へっ……? ん、なに、冷たっ」
両の乳首に、固いなにかが押し当てられる。テープらしきもので、ぺたりと貼り付けられ、ようやく榊の手が引いた。
「な、なにこれっ……!」
「今日は一日これを着けて過ごせよ。外したらペナルティ追加だからな」
緩んだビキニの紐を結び直しながら、憧は顔を真っ赤にさせて自分の体を見下ろす。乳首あたりに、楕円形の膨らみが出来ていた。
「ほら、次の局を始めるぞ」
マイペースに、榊が部屋を出て行く。歯噛みして、憧は彼の後を追った。胸の奥に抱える疼きは、気付かない振りをした。
何もなかったかのように、続きが始まる。その前に、禁則を決めるカードを憧は引いた。
そこに書かれていたのは、今までと毛並みが違った。
「発声禁止……? どういうこと?」
「文字通り、声を出したらペナルティだ。ただし、鳴きと和了の宣言は例外。楽な縛りで良かったな」
不安を覚えながらも、確かに、と憧は内心頷く。お喋りな関西人ならともかく、普通は対局中、黙っておくものだ。
「チー!」
鳴きを解禁された憧は、テンポよく加速する。ペナルティはともかく、クレジットの稼ぎで負けるわけにはいかなかった。
(よっし……!)
あっという間にテンパイし、そして榊が無造作に捨てた牌を見逃さない。憧はロンを宣言しようとし、
「んんんっ?」
突然乳首に走った衝撃に、背中を仰け反らせた。
「なに、えっ……あっ!」
思わず声を出してしまった事に気付いた時には、遅かった。榊を初めとする男達が、にやにやとこちらを見ていた。悔しげに、せめて一矢報いるように和了宣言する。
「……ロン、よ」
「それとペナルティ、だな」
乳首に仕込まれたのは、ピンクローターだった。知識としては知っていたが、初めて味わう感覚は憧にとって未知のもの。狼狽えるのも、致し方なかった。
憧に近づき、榊が取り出したのは――またもやピンクローターだった。
「ちょ、なにを――」
「大人しくしてろ」
「やめっ、止めてよっ」
スカートの中に、無造作に手を突っ込まれる。女の子にとって大事な場所に、榊はたやすく侵入してきた。彼の胸を突き飛ばそうとするが、膂力で勝てるわけはなかった。
「んっ、止めてってばっ、あっ、ん、ふぅっ」
下着の中にも榊の手が侵入してくる。節くれ立った指先と、乳首に押し当てられたものと同じ硬い無機物の感触。それが、秘所の入口に差し込まれるのを憧は感じ取った。
するりと榊の指が、引き抜かれる。
「ちょっと濡れてたな。さっきの胸、よっぽど良かったみたいだな」
「ば、ばっかじゃないのっ、そんなわけないでしょ!」
顔を真っ赤にして否定する憧だったが、怒鳴る力はない。自覚があったのだ。この腹立たしい男に、感じさせられた――認めたくない事実。
「さぁ、次だ」
榊に促され、カードを引く。
「す……スカート? なによ、これ、どういう意味っ」
「文字通りだよ。この局、スカートを脱いで貰うぜ。脱がなきゃ、またペナルティだ」
悪趣味なやり方に、憧はまた憤りを覚える。覚えるが、抗議には至らない。次に来るペナルティが、これよりマシとは思えなかった。
「ふ……うっ」
深呼吸をし、覚悟を決め、ホックを外してスカートをその場に落とす。露わになったのは、扇情的な黒のランジェリー。先ほど入れられたピンクローターが、艶めかしい。にやにやと笑う男達の視線から逃げるように、憧は席に着いた。
対局自体は、淡々と始まった。しかし、
「んっ、やっ、んん♡」
乳首に着けられたローターが、動き出す。断続的に振動は続き、いつ動くか分からない恐怖が憧を苛む。そんな自分の様子を嘲笑う榊達が、許せなかった。どろどろになった感情に怒りまで交わって、対局に集中できない。
「んっ、むっ、ふ、う…………~~~っ? んんんんっ♡」
今度は、股間のピンクローターが動き出した。弱いところを直接責められ、憧は椅子の上で体を揺する。下着が男達の視線に晒されても、気にする余裕はなかった。
「ツモだ」
「あ……」
そうこうしている間に、和了されてしまう。
スカートを履き直し、次局が始まっても憧は調子を取り戻せない。乳首と秘所へのローター攻撃に加えて、禁則で鳴きが封じられるともうどうしようもなかった。どれだけ半荘を重ねても、切り上げる気配はない。時折反撃しても、トータルのクレジットは徐々に減っていく。ここにきて、天秤は榊達に傾いていた。
「ふぅっ♡ ふぅっ♡ ふぅっ♡ ふぅっ♡」
ローターでいたぶられ、すっかり頬を上気させた憧。絶え間なく吐き出される息は熱く、甘い色を伴っていた。
やり返さないと、箱を割る。先ほどよりも強く危機感を覚える憧だったが、縛りを破った時のペナルティが恐ろしかった。
「は、このままだとゲームが終わっちまうぜ。須賀も残念だったな、見捨てられるなんてよ」
「わ、私は見捨ててなんかいないわよっ」
「いずれにせよ、このままだと助けられないぜ。まあ、他の女が頑張ってるかも知れないけどな」
ずきりと、胸が痛む。他の女性と抱き合う想い人を想像し、握り拳を作る。このまま榊に負けるのも、許せなかった。
次の禁則も、ポンとチーが許されなかった。
しかし憧は、
「チー……!」
禁則を破り、攻めに転じた。
「おっと、やる気じゃないか」
「当たり前よ……! ツモ! 12000!」
盛り返す一撃を決め、憧はほっと安堵の息を吐く。だが、問題はここから。榊はクレジットを渡しながら、にやっと笑う。
「じゃあ、ペナルティだ」
「……今度は何よ。またこの変なの着けさせる気?」
「とりあえず、部屋を移そうか」
憧の腕を引き、榊は彼女を立ち上がらせる。
「また変なことする気……?」
「これでも配慮してやってるんだぜ、他の男がいたらお前も恥ずかしいだろ」
「スカート脱がせておいて何言ってんのよっ」
「おっと、俺だけが相手なら良いのか?」
「そんなこと言ってないでしょ!」
苛立たしげに吠える憧だったが、容赦なくベッドに座らされる。うう、という呻き声は無視された。
「触りたかったら、触れば良いでしょ……」
捨て鉢気味の発言だったが、声は弱々しい。指先が震え、目の下は真っ赤になっていた。
「いや、今回は俺は手ぇ出さないさ」
「……じゃあ、なにを……」
「オナニーしろ、ここで」
ぴたりと、憧の動きが止まる。なななな、と動揺するが声が声にならない。
「オカズは俺だ。色っぽく、本気で、イっちまうまでやれ。オナニーくらい、経験あるだろう?」
「……最ッ低ッ!」
枕を投げつける憧だったが、榊は簡単に払いのけてしまう。それからピンクローターを無造作に作動させる。
「んんんっ♡ や、んんうっ♡」
「やれ」
「……こ、このぉっ……!」
「須賀が、どうなっても良いのか?」
「あんた……!」
瞳を潤ませて、憧はシーツを握りしめ、最後は首を傾けた。やるしか、なかった。
震える手を持ち上げて、自らの乳房に触れる。
「んっ……」
くにゅ、と胸が歪む。普段よりも、柔らかく感じた。榊の視線は、気にしない事にした。ぐにゅり、ぐにゅり、と両胸を揉んでみせる。
「あふ、ん、ふっ」
「ちゃんと俺を想ってやれよ」
「……、ご主人、様ぁっ」
投げ槍に口にしようと思って呼んだはずが――意外にも、熱っぽくなってしまう。既に、体は出来上がっていた。
「んっ、あっ、だめ♡ ご主人様、だめ、やめて♡ 胸、だめ♡」
機械的な自慰行為で誤魔化す事も、できたはずだった。しかし火がついた心が、それを許さない。にやにやと笑う榊の目が、許さない。
「どういう妄想してオナってんだ?」
「……ご、ご主人様に、無理矢理手籠めにされるメイド……」
「へぇ、中々良い妄想じゃないか」
「ん、あ、ふぅっ♡」
自分で説明させられ、憧はさらに羞恥心を掻き立てられる。いつもは想い人と優しく愛し合う自分を想像しているのに。
彼女を苛むのは、その時よりも昂ぶっているという事だ。
「ん、ん、んっ♡ だめ♡ ご主人様♡」
どんどん行為に熱が入っていく。榊の視線も、気にならなくなっていく。自分の世界に、没頭していた。
右手が、ミニスカートの中に伸びていく。秘所の入口にある、ピンクローターに触れた。
「んっ――♡」
それを、自分の手でぐりぐりと動かす。眉をハの字にして、憧は艶めかしい声を上げた。
「ご主人様っ♡ ご主人様っ♡ あっ♡ あっ♡ んぅっ♡ だめ♡」
信じられない刺激だった。信じられない昂ぶりだった。今までにない快感に、身を悶えさせる。乳首に着けられたピンクローターも、押し込むように弄る。
「すご♡ やめ♡ だめ♡ ご主人様♡ もう♡ だめぇっ♡」
「良いのか、新子?」
「うん♡ ん、ん、んっ♡ イク♡ イクイクイクっ♡」
一人での行為で、ここまでたやすく達した経験は初めてであり。
榊が見下ろされながら、憧はベッドの上で体を身悶えさせた。絶頂の余韻にびくびくと体を震わせ、口元から唾液がこぼれ落ちる。ミニスカートは捲り上がり、ぐっしょり濡れた黒の下着が晒される。ビキニも激しい手の動きでずれ、乳首を覗かせていた。――その痴態全てを、榊に晒していた。
動けない憧の体を、榊は抱き上げる。再びお姫様だっこの形になるが、今度は憧は暴れなかった。暴れる元気もなかった。
そのまま榊は、憧の唇に自らの唇を重ねる。
「んっ――♡」
通常なら、振り払っていただろう。だが、今の憧はたやすくそれを受け入れた。受け入れてしまった。
「ふ、ぅ……♡」
気持ちよさそうに目元をとろんと落とし、憧は榊の舌を受け入れる。
二人の対決は、まだ終わっていない。