麻雀天使堕天計画 作:クラリス
「あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ もう♡ もうだめ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡」
天蓋付きのベッドの上で、啼く少女が一人。長い黒髪を振り乱し、額には玉のような汗を浮かべ、悩ましげに目を伏せる彼女の名は、石戸霞。高校生離れした美貌と肢体を余すところなく晒す彼女は、男と対面座位の形で繋がっていた。ぐしゅぐしゅと、ペニスが抜き差しされる度に水音が室内に響く。
「だめ♡ だめだめだめ♡ もうだめ♡ 抜いて♡ 抜いて下さい、旦那様♡」
「なにがだめだよ、腰振ってるのはお前のほうだろうが」
「だって♡ だって♡ 旦那様の♡ 旦那様のが♡ 硬くて♡ 熱いから♡」
「ちゃんとちんぽって言えって言っただろう?」
「やうっ♡」
旦那様と呼ぶ男に、その見事に実った乳房を乱暴に持ち上げられ、それでも霞は嬌声を上げる。左の乳首にむしゃぶりつかれた瞬間、さらに甲高い声で悲鳴を上げた。
「あぅううぅっ♡ 舌が、あんっ♡ やめっ♡ 口の中で、乳首転がさないでっ♡ 弱いの♡ そこ弱いのぉっ♡」
「止めて欲しいならちゃんと俺の言うことを聞け、霞」
「はい♡ はいっ♡ 旦那様のおちんぽ♡ おちんぽに♡ 突かれるのっ♡ 好き♡ お願いしますっ♡ 突いてっ♡」
「ふふふ」
旦那様と呼ばれる男――ケンジは、妖しい笑みを浮かべながら、ずんずん腰を突き動かす。それがたまらないと言った表情で、霞はさらに乱れた。
「すごっ♡ すごいっ♡ あーっ♡ あーっ♡ っはぁ♡ 良い♡ すご、良いっ♡」
両腕をケンジの背中に回し、ぎゅっと体を密着させる。堅強な彼の肉体に安心感を覚えつつ、燃え上がるような恥部の快感に霞は身を委ねる。二十歳前の少女の肉体は、この城に引き込まれるまで外見は完成していても、中身はまだまだ未成熟であった。男も穢れも知らなかった。しかし今は違う。目の前の男に、全てを教え込まれていた。女としての才覚と性を、目覚めさせられたのだ。
「イクのか? なぁ、もうイッちまうのか、淫乱巫女さま?」
「はいっ♡ イキます♡ 霞は♡ 旦那様のおちんぽで♡ イッちゃいますっ♡」
「俺もそろそろ限界だ……! 全く、どこまでも締め付けやがって」
「あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ だって♡ だってぇっ♡」
「褒めてるんだよ、霞」
「っ♡ ありがとうございますっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ イク♡ イっちゃうっ♡ あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡ あ~~~っ♡」
一際高い喘ぎ声を上げ、ぴんと背筋を逸らし、霞は派手に気をやった。かつての貞淑な巫女は、その神秘のヴェールを剥ぎ取られ、妖艶な美しさを与えられた。同時に、ケンジも達する。ゴムを着けていたので直接注ぎ込まれはしなかったが、精液の熱を霞はしっかりと感じ取った。
「良かったぜ、霞……」
「う、うぅ……」
ペニスを引き抜かれ、全ての力を失った霞はそのままベッドに倒れ込む。ばさりと、美しい黒髪が白いシーツの上に広がった。眦からは涙が溢れ、止まらない。それが悲しみによるものなのか、歓喜からくるもなのか、もう霞自身にも分からなかった。
ぽんと、口を縛ったゴムが顔の傍に投げられる。つんと、精臭が鼻を突いた。
「大分絞り取られたな。どんどんいい女になっていくぜ、お前はよ」
「……ふん」
幾分冷静さを取り戻したからか、霞は表情を引き締め、自らを見下ろすケンジを睨み付ける。当のケンジは大袈裟に肩を竦め、
「ゴムを着けてと泣いてせがむから応じてやったのに、何だよその態度は」
「…………」
「しかもこんだけ乱れておいて、よくもまぁ何事もなかったかのように振る舞えるもんだ。大体俺はお前の旦那だぞ」
「やっ♡」
重力にも負けず垂れない巨乳に、ケンジの指が這う。一瞬嬌声を上げる霞だったが、なおもケンジを睨み付けようとする。
「体は堕ちても、心は屈さないってか? お前らは中々にしぶといな」
「当たり前よ……私が好きなのは、彼だけなんだもの」
「あれだけ旦那様旦那様と啼いておいて、よく言うぜ。――それによ」
「ん、ちゅうっ?」
急に身を乗り出してきたかと思うと、抵抗する暇もなく接吻を受ける。だが、霞は彼の体を押し返そうともしなかった。
「ふっ♡ じゅるっ♡ むちゅっ♡ じゅるるるっ♡ ――や、舌っ♡ 入れないでっ♡ むちゅうっ♡ にゅちゅっ♡」
キス一つで、霞は乱れてしまう。反射的に、自分も舌を突き出していた。目尻はとろんと下がり、口内から広がる快感へと身を委ねる。
「あむっ♡ んじゅるうっ♡ じゅるるるっ♡ んむうぅっ♡ ――ぷはっ♡」
「淫乱巫女が本性な癖に、偉そうに清廉ぶるなよ」
「はっ♡ はっ♡ はっ♡ ……ぶ、ぶってなんか、いないわ」
恥ずかしげに目線を逸らすが、紅潮した肌を隠しきれるわけがない。ケンジはその整った顔を悪辣に歪ませて笑い、
「そういうところも可愛いけどな。あんまり反抗的だと、大切なお姫様も無理矢理ヤっちまうぜ?」
「そ、それはだめっ!」
この城に来ている、かけがえのない妹分――神代小蒔。霞にとって、想い人と並んで守らねばならない人間。彼女にまでこの非道な男の魔手が伸びるのは許せなかった。もっとも実際は、その姫自身からこの男に身を寄せているのだが、その事実を霞はまだ知らない。
(絶対に、小蒔ちゃんには手を出させない……!)
その決意が、無駄なものとも知らず。そして、無自覚の嫉妬も混じっているとも知らず――あるいは、意図して無視しているのかも知れない――霞は拳を握りしめる。
「だったら、俺の言うことをちゃんと聞けよ。でないと、男の方も辛い目に遭うぜ?」
「……分かってるわ」
「なら良いけどな。――それじゃあ明日は、妾としての仕事ではなく、久々に打ってきて貰おうか。稼いでくるチャンスを与えてやる」
ケンジの口振りに、霞は眉を潜める。最近の対局相手は、もっぱらケンジが主であった。しかし今回は、相手が変わるようではないか。訝しげな霞の視線に気付いたのか、ケンジはにやりと笑い、
「ここらで逆転のチャンスを与えてやるよ。大切な王子様を助けられるかも知れないぞ」
「ほ、本当に?」
「ああ。嘘は言わないさ。ただ、これまでよりも辛い勝負になるかも知れないぜ。罰ゲームも含めてな。勝てるかどうかはお前次第だ。どうだ、やる気になったか?」
「……ええ」
彼と彼女を助ける手段があるというのなら、迷っている余裕はない。手持ちのクレジットが少ないのも、確かだった。
「それじゃあ、斡旋料だ。今日はもう少し楽しませて貰おうか」
「えっ、あ、んちゅう♡」
再び唇を重ねられ、霞はベッドの上で身を捩る。ぐちゅりと、股の間で水音がした。
「あむっ♡ んっふっ♡ やあっ♡ んちゅ、じゅる、じゅるるるっ♡ んーっ♡ ちゅ♡」
掛け布団の下に、霞は引きずり込まれていく。
「ほら、いくぞ」
「待って♡ 待ってぇ♡ ごむ、ゴムをっ♡ ゴムつけ、あ、あ、あ、あ♡ あ~~~っ♡」
彼女の受難は、まだ始まったばかりだった。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
翌日、石戸霞はいつもの巫女服ではなく、久しぶりに永水女子の制服に袖を通して戦いの時を迎えた。といっても、オリジナルの制服ではないだろう。しかし精巧に作られた白とピンクのセーラー服は、本物と言って差し支えなかった。ただ、意図してか霞のサイズに合っていないものを宛がわれたようだった。胸周りがきつく、ただでさえ規格外の巨乳が強調されてしまっている。スカートの丈も幾分短くされていた。
(気にしている余裕はないわね)
ケンジの――忌むべき男の口振りから、今日の対局はこれまでとはどこか違うものになるだろうと予想された。今更、男達の好奇の視線に恥じらいを見せて思考を鈍らせるわけにはいかなかった。もう生娘ではないのだ――それを自覚すると、ますます惨めになるのだが、やはりそれも気にしていられない。
案内人に連れられて入った対局室は、何てないいつもの洋室だった。室内の真ん中には、自動卓が一つ。他の対局者達はまだ来ていないようだった。普段なら待ち構えているところだ。訝しげに霞は視線を彷徨わせている内に、扉が開かれた。
「え……?」
「貴女は……」
入って来た人物と顔を合わせて、霞は狼狽する。自分と同じ年頃の少女。似た配色のセーラー服。肩ほどまでに伸ばされたブロンドは美しいが、どういうわけが右目だけを伏せた姿は特徴的だ。胸の大きさこそ霞に負けるが、高校生離れしたプロポーションは男が好むもの。特に、肉付きの良い脚部が眩しい。
「風越女子の、福路さん? どうして、ここに……」
直接顔を合わせたことはなかったが、霞は彼女の事を――風越女子キャプテン、福路美穂子の事を知っていた。インハイ長野個人代表。その勇名は、全国に轟いている。
「貴女こそ、永水女子の石戸さん……ですよね」
そしてそれは彼女も同じだったらしい。名前を呼ばれ、霞はどきりとする。何か答える前に、再び扉が開かれた。
「あっ」「わっ」「あれっ」
三人の少女の驚く声が重なる。
次に入って来た少女も、霞は顔と名前は知っていた。今年度のインハイ女子団体で決勝まで残った阿知賀女子、その先鋒――
「松実さんっ」
「福路さんっ」
松実玄だった。亜麻色の長い髪を揺らし、彼女は口を丸く開けていた。――どうやら、福路美穂子とは顔見知りらしくお互い指を差し合い固まってしまった。
玄は高校二年、霞や美穂子より一つ年下のはずだが、彼女達に負けないプロポーションを誇っている。クリーム色のブレザーに、朱色のミニスカートの制服は霞達とは異なり現代風の制服だ。ただ、ミニスカートは超ミニと言って差し支えないほど丈を短くされている。おそらくはこの城の者達の仕業なのだろう。
「松実、玄さん?」
「は、はいっ。貴女は……あ、確か永水の大将の……すごいおもちの……」
「石戸霞よ」
名前を呼ぶと、玄も霞の存在に気が付いた。そしてどうやら、顔も知られていたようだ。名前を名乗り、霞はぺこりと頭を下げる。監視員の男達は、自己紹介に口を挟まなかった。
この時点で、三人はおおよその事情を察した。自分達の置かれた状況が、同じであることを。自分と同じように、多くの少女達が「彼」を救うためにこの城で戦っていることは知っていた。
重々しい雰囲気が、三人の間に落ちる。霞にとって、二人は恋敵になる。だが同時に、共に想い人を救うという共通の目的を持った仲間でもあるのだ。城の人間達の意図は分からないが、ここは貴重な情報を共有できる場ではないかと考え、霞が二人に声をかけようとする直前、
「おお、揃ってるじゃん」
部屋の奥の扉から、どこか幼げな声と共に、一人の男が現れた。その姿を認めた瞬間、霞だけでなく、美穂子と玄も反射的に顔を歪めた。
一言で言い表すなら巨漢。だが、その体のほとんどが脂肪で出来ていると言っても過言ではない腹回り。顔も含めて肌全体が脂ぎっている。どんな環境で生活しているのだろうか、漂ってくる異臭が鼻を突く。ニキビだらけの顔つきも醜男と言うにふさわしく、霞達の本能が忌避感を訴えかけていた。
(旦那様とは全然違う……)
そこまで考えて、はっと霞は頭を振った。確かにケンジは美男子であるが、比べる相手が想い人の彼ではなく、どうしてあの男なのか。胸の内に生まれた不快感は、霞自身を苛んだ。
そんな霞の思いをよそに、醜男は霞達を指差し、にたりと笑う。
「美穂子ちゃんに、玄ちゃんに、霞ちゃん……注文通りだね、うん。みんな良い仕事するなぁ」
「あの」
一人満足気にしている男に向けて、おずおずと切り出したのは美穂子だった。ゆさり、と胸を揺らして彼女は一歩前に出て彼に声をかける。
「今日の対戦相手は……あなた、なんでしょうか」
「そうだよ、美穂子ちゃん。それから玄ちゃんと霞ちゃん……僕と四人で打つんだ」
霞は眉を潜めた。常に多対一を強いられていたこれまでの状況とは、全く異なるルールだ。彼を助ける側が三人――男達は一体何を考えているのか。
「ルールはちゃあんと説明してあげるよ。今日は持ち点10万点で、四回半荘プレイして貰うんだ。その最終順位に応じて、君達が欲しがってるクレジットをプレゼントしてあげる。一位には、なんと500万クレジットだ」
「……っ!」
少女達三人が、目の色を変える。皆、彼を救うため、そしてこの城で過ごすためのクレジットを渇望していた。
「本当……なんですか?」
玄の念押しにも、男はしっかりと頷いた。それから彼は付け加える。
「だけど、分かってるよね? 悪い順位を取ったら、その分だけ罰ゲームを受けて貰うよ。特にラスを引いたら――とっても辛い事になるかもね」
脅しとも言えるその言葉に、霞達三人は声を詰まらせる。だが、文句をつける少女は一人もいなかった。この城のルールを、三人が三人とも熟知していた。
「良い目だよ、三人とも。それからルールはもう一つ。一局終わる度に、その局で失点したプレイヤーはペナルティを受けて貰うよ。最初は軽い奴で、徐々にレベルを上げていくから気を付けてね」
男はにっこり笑う。造形ではなく、霞には、それがとても醜いものに思えた。
「最後に自己紹介。僕の名前はアキト。年は霞ちゃんと美穂子ちゃんと同じだからさぁ、仲良くしてよね。玄ちゃんは後輩になるんだなぁ。可愛がってあげるね」
少女達三人の背筋に、ぞぞぞ、と悪寒が走る。人を見た目で判断してはいけない、とは言うが最早嫌悪感を隠しようもない。
きゃっきゃと笑うアキトの姿は幼いと霞は感じていたが、まさか同い年とは思わなかった。齢を重ねたような外見と子供っぽい言動が妙にちぐはぐだ。霞らとはまた違った意味で、世間から隔離された状態で――あるいは世間を拒絶した状態で――育った男。この城で出会ったどの男よりも、危険な香りがした。
「さぁ、始めよう」
アキトの合図で、場決めが始まる。出親は霞、その下家にアキト、対面は玄、上家は美穂子。
(親……様子見はしたくない。だけど)
理牌しながら、霞は考えを巡らせる。アキトの腕は未知数だが、美穂子と玄はいずれもインハイ出場者で油断ならない相手だ。元々霞の基本は防御スタイル。無理に攻めるのは悪手ではなかろうか。
(――違う)
最大の躊躇いの理由は、別にある。それは、美穂子も玄も関わりの薄い相手だが、大元では仲間にくくられる。今クレジットを欲しているのは、そして彼を求めているのは確かだ。しかしそのために、彼女達を蹴落とすような真似が許されるのだろうか。
ちらりと二人の顔を窺えば、いずれも苦渋の表情を浮かべている。霞でなくとも、想いが同じである事は分かった。
三人が三人とも、どう立ち回るべきか悩んでいた。
重い空気の中、機嫌良さそうに打つのはアキト一人だけ。静かに局は進み、結局、流局となった。
「テンパイ」
霞が牌を晒すと、アキトも共に牌を前に倒した。
「僕もテンパイ。美穂子ちゃんと玄ちゃんは?」
「……ノーテンです」
「私も」
二人は牌を伏せ、罰符を支払う。瞬間、アキトが醜悪な笑みを浮かべた。
「じゃあ、二人ともペナルティーだっ」
「えっ」
「何を驚いてるんだよ。罰符で失点しただろ。言っとくけど、どんな形でも失点したらペナルティだからねぇ。気を付けるんだよぉ」
勝ち誇るアキトに、美穂子と玄は言い返さない。この城の理不尽は体感済みなのだろう。この程度は、まだ普通だ。
「最初のペナルティだから、そんなに意地悪はしないよ。そうだね、今から二人とも、僕の事を様付けで呼ぶんだよ」
「あ、アキト……様?」
「そうそう、その調子」
玄が躊躇いがちに呼ぶと、アキトは満足気に何度も頷く。しかし美穂子が何も言わないで居ると、途端に、
「――美穂子ちゃあん」
「は、はいっ」
冷たい、蛇のような声を発した。
「ちゃんと、呼ぶんだよ?」
「わ、分かりました……アキト、様」
「うんうん、それで良いんだよ」
またもやアキトの空気が一変する。その落差に薄ら寒いものを感じながら、霞は賽を振った。
次の局、和了したのは美穂子だった。アキトからの直撃。
「やられたなぁ」
などと嘯きながら、アキトは点棒を渡す。彼だけは失点してもペナルティはない。理不尽なゲームはこれまでも体験してきたが、一人安全な場所にいるアキトへの嫌悪感は高まるばかりだった。
ともかくとして、少女同士は探り合い序盤は静かな立ち上がりとなった。そして指針は決まった。
(狙うべきは、この男から)
アキトを窺い見て、霞は決意する。誰にもペナルティを与えず、点数を稼ぐにはこれしかない。霞と同時に、美穂子と玄もその戦略に切り替えたようだった。
しかし、いくら実力者と言っても一人だけを狙い撃ちにして和了するのは難しい。加えて言えばこの状況、予想されていたとしてもおかしくなかった。
「ノーテン」
「僕もノーテンだ」
東二局、誰も和了せずまたもや流局。ノーテンだったのは、今度は霞とアキトの二人だった。霞が罰符を支払い、
「霞ちゃんも、様付けで呼んでね」
「……ええ、アキト様」
「霞ちゃんは純粋な巫女って感じで、素直だねぇ。小蒔ちゃんの方も欲しかったけど、全然霞ちゃんで良かったよぉ」
小蒔の名前を出され、霞は心の中で歯噛みする。こんな男に穢されてなるものか、と決意を露わにして次の局を迎えようとする。が、そこで待ったがかかった。
「――美穂子ちゃん、玄ちゃん」
アキトが、二人の少女の名前を呼ぶ。彼は少女達の晒された手牌を指差し、
「二人とも、和了れたのに見逃したね」
「そ、それは……」
「良いんだよ別に。僕から直撃を取ろうって腹だろう? 友達想いなんだね。でも、このままだと派手な動きがなさそうだからなぁ」
一度言葉を句切って、アキトは少女達に舐め回すような視線を送る。そして、
「報償を追加しよう。一位を取った人には、君達が会いたがってる彼に会わせてあげる」
「ほ、本当なのっ!」
気が付けば霞は、身を乗り出して訊ねていた。美穂子や玄もほとんど同時に声を上げていた。
「嘘はつかない。そのくらいの権限は僕にはある。君達も最初に会ったでしょ? この城の城主様。――美穂子ちゃんは、もっとお世話になったみたいだけど」
名前を呼ばれた瞬間、美穂子は赤面して自らの体を抱いた。それだけで何をされたかおおよその検討が霞にはついたが、彼女に同情ばかりしていられなかった。
「僕はね、彼の親類なんだ。この城の中でも、かなーり高い権力を持ってる。会わせてあげるくらいなら、造作もないよ」
心の支えとなっている、彼の存在。その彼に会える。望んで望んで、果たされなかった夢。喉から手が出るほど欲しい特典だった。
しかしそれでも迷う心はある。彼女達を蹴落とす真似をして良いのか。ちらりと視線を送り、そして霞は体を震わせる。
美穂子も玄も、疑惑の眼差しをこちらに向けていた。しまった、と霞は焦る。アキトの言った特典に食い付いた姿を見せてしまった。加えて言えば、彼女達が食い付いた姿を見てしまった。疑惑の種は、植え付けられた。
次局、目に見えて少女達は迷いを見せた。牌をツモる動作すら、鈍い。結果、
「ロンだ!」
「あっ」
「やった! 玄ちゃんから和了ったぞ!」
三人の中で一番防御が薄く、手が窮屈な玄が振り込んでしまう。まるで子供のようにはしゃいで喜ぶアキトに霞は軽蔑の視線を送る。しかしそうしてばかりもいられなかった。
「じゃあ、ペナルティだねぇ。二回目だし、慣らし運転と行こうか」
「……今度は、なにを?」
恐る恐る訊ねる玄の表情には、怯えが多分に見られた。霞は膝の上で拳を作った。
「汗かいちゃったからさぁ。拭き取って」
「そ、それだけなのです?」
拍子抜けしたように訊ねる玄だったが、
「うん。君のパンツでね」
続けられたアキトの言葉に、固まってしまう。構わずアキトは続けた。
「この場でパンツを脱いで、それで汗を拭き取って。体も首も顔もね」
「……そ、そんなのっ」
「ペナルティは絶対だよ」
ぐ、と玄は言葉を詰まらせる。霞も美穂子も、助け船を出したかった。だが、出せなかった。自己保身と分かっていたが、余計な事をすれば自分にまで火の粉がかかりかねない。――この時点で、三人の道は別たれていた。
「分かり、ました……」
顔を真っ赤にしながら、玄はスカートの中に指を入れる。こうして男の前で脱ぐのは初めてではないと、霞には理解できた。
玄は自らの桃色の下着を引き抜き、大仰に座るアキトに近づく。汗だけでなく、脂で全身がてかてかと輝いている。薄い下着一枚で拭き取れる量ではないだろう。しかし、玄はやるしかなかった。
「良い匂いだよぉ、玄ちゃん」
「……!」
アキトの首元から、玄は自分の下着を這わせていく。さらに腕、震えながら体にも。同じ女子として、霞は玄に同情するしかなかった。
「その調子だよぉ、玄ちゃん、ほらもっと強く」
「う……」
全て拭き終わった頃には、玄のパンツはぐっしょり濡れていた。
「履き直すかい?」
いやらしくアキトが問いかけるが、生理的に無理であろう。ぶるぶると玄は首を横に振る。するとアキトはひったくるように下着を奪い取ってしまう。
「あっ」
「それじゃあこれは僕が貰っておくねぇ」
苦情は、どう足掻いても届かない。ノーパンになった玄は、自分の席に戻る。――これが、慣らし運転。まだ一回目の半荘が始まったばかりだ。少女達は、怖気を覚えていた。
美穂子と玄を、慮る余裕は既に失われた。目的も、与えられてしまった。
霞は「勝つ」ために動き出す。一位になるのだ。
だが、事はそう上手く運ばない。
「ロン、です」
「!」
「ごめん、なさい……!」
口火を切ったのは、美穂子だった。霞は彼女の手に、振り込んでしまった。安手であったが、それよりも大切なのは、
(もう、引けない……!)
開戦の合図ということだ。美穂子は謝ってはいるが、そんなもの何の意味もない。
「おっとっとー。今度のペナルティは霞ちゃんだね。そうだねー、何だか最近はすぐ汗掻いちゃって。霞ちゃんも僕の汗を拭き取ってくれない?」
「そ、それは……その」
霞は視線を自らの下半身に落とす。だが、アキトは首を振った。
「今度は霞ちゃんの生乳が良いなあ」
「なっ、生乳ってっ」
「ブラも外したおっぱいでって意味だよ。ほら、早く脱いで脱いで」
無邪気にアキトが笑う。迷う時間さえ、与えてくれない。
霞は席を立ち上がると、アキトの近くまで歩み寄る。そして、セーラー服の裾を掴み、僅かに躊躇いを見せた後、ゆっくりとまくり上げた。清楚な純白のブラジャーが、衆目に晒される。美穂子達は視線を逸らしているが、霞にはその行為が酷く無責任なものに感じられた。
高校生離れした巨乳を包む特注のブラに、霞は指を掛ける。フロントホックを外し、意を決して取り去った。ケンジ以外の男にまで晒さなくてはならない羞恥に、顔を真っ赤にして身悶えする。
「すっげー。でけぇー。大分いじられてるかと思ったけど、乳首も凄く綺麗じゃん」
彼に褒められたところで、何も嬉しくなかった。早く終わらせたい霞は重い乳房を両手で持ち上げると、自分からアキトへと近づく。
「失礼、しますね……アキト様」
「んっふ」
アキトの顔が、胸の谷間に埋まる。鼻息がかかり、霞は眉をハの字にした。にゅるりとした液体の感触が、おぞましい。それでも霞は指示通り汗を拭こうと、両手を動かし乳房をアキトの顔に擦りつける。
「んっ、あっ、んんっ♡」
その感触に、霞は熱い息を漏らし始める。元々胸は弱点だった。それが、ケンジの手によって徹底的に開発されてしまっていた。このような行為でも、霞の胸は敏感に感じてしまう。更に加えて、
「ちゅるっ」
「や♡ あっ♡ だめ、舐めないでっ♡」
胸の谷間でアキトが舌を動かした。ざらざらとした油っぽい刺激が、より霞を苛んでいく。アキトの悪行はこれだけで終わらなかった。
「んんんんっ? やあっ♡ あ、あ、あ、あ、あ♡」
アキトの両手が胸の先端に伸び、乳首をいじり始めたのだ。
「だめ、そんなこと♡ 認めてない♡ あ、あ、あ、あっ♡」
「お礼だよ、霞ちゃん。それと、僕への口の利き方はもうちょっと考えた方が良いよ?」
「……っ、ご、ごめんなさい、アキト様っ、あっ♡ あっ♡ あっ♡」
「ほら、もっと胸使ってしっかり拭いてよ」
「は、はいっ♡」
自分の両手に力を込めることで、より胸への刺激が強まる。
「あ、あ、あ、あ、あ♡ ~~~っ♡」
軽くであったが、霞はその場で達してしまう。へたりこみそうになりながら、何とかその場に踏み止まった。
「っぷはっ。気持ち良かったよ、霞ちゃん。霞ちゃんも喜んでくれたみたいだねぇ」
谷間から引き抜かれたアキトの顔は、実に満足そうであった。よろめく霞の体を、飛び出てきた玄が支えた。
「あ、ご、ごめんなさい。ありがとう」
「いえ……」
「お疲れ様。ああっと、このブラは記念に貰っとくね」
咎める暇も無く、アキトは純白のブラジャーをポケットの中に入れる。霞はセーラー服を降ろして胸を隠すが、勃起した乳首ははっきりと存在を主張していた。
ふらふらとしながら、ノーブラ制服姿の霞は自分の席に戻る。美穂子は、ずっと視線を外したままだった。少なくとももう、霞は彼女を信用することはできない。
「さあ、次だ次。もっと楽しませてよねぇ、三人とも」
アキトとの対局は、まだ始まったばかりだった。