※この作品はR-18です。

麻雀天使堕天計画   作:クラリス

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東横桃子-01(洗脳肉体操作羞恥撮影)

 鶴賀学園一年、東横桃子。通称――あるいは自称――ステルスモモ。

 彼女もまた、淫獄の古城に拐かされた少女の一人であった。多くの少女達と同様、想い人のため麻雀対決の日々を送っていた。

 しかし一点、他の少女達と違う行動を取っていた。

 それは、彼女の特性――人並み外れた影の薄さを利用したものだった。夜な夜な自分の部屋を抜け出しては、誰にも見つからないよう城の中を探索する。目的は勿論、この城の脱出方法を探るため。そして、想い人の彼を救い出すため。

 

(まともに麻雀をやってるだけじゃ、無理っす)

 

 連れ去られた美少女雀士達は大方その判断を下していたが、実際のところ別の方策を採れる人間は限られていた。桃子は、その限られた人間であった。深夜帯であっても、城内の廊下には見回りの人間達が歩き回っている。その中を、彼女は進んでいけるのだ。勿論、細心の注意を払いながらだが、多少の物音を立てても違和感を与えない。

 しかしながら、城内はどこまでも広い。ここ数日でかなりの部屋を回ったが、他に連れて来られているという仲間達の姿も見つけられていない。

 今日、桃子は思い切って遠出を決定した。いくらステルスといってもリスクは高まるし、明日の対局に差し支える可能性もある。だが、新たな情報を得るためには今一歩踏み込む必要があった。

 

(京さんのため、頑張るっす……!)

 

 鶴賀学園の紺のブレザーに身を包み、決意を秘めて桃子は廊下の隅を歩く。いつかの練習試合で自分を見つけてくれた彼に、桃子は強い執着を持っていた。

 不用心にも、扉の鍵はほとんど閉じられていない。一室一室、中を確認しつつ進むが今のところ人っ子一人見当たらない。

今回も外れかと思いきや――ここで桃子は人間の姿を見つける。だが、見つけた瞬間固まってしまった。

 

「んっ♡ んっ♡ ふっ♡ ふっ♡ ふっ♡ にゅあっ♡ 旦那、様ぁ……♡」

 

 巫女服姿の小柄な少女が、男と抱き合い腰を振っていた。その乙女の秘所に、太い肉棒が抜き差しされている。経験のない桃子にも、すぐに分かった。セックス、している。

 男の方を、桃子は知らない。だが、ツインテールの少女の方は見覚えがあった。インハイにも出場していた永水女子の副将、薄墨初美だ。小学生のような肉体は、しかし淫靡な汗を流し表情は大人の雌そのものだ。

 

「しゅごっ♡ これっ♡ 凄いのですよーっ♡ 旦那様、旦那様っ♡」

「ふふふ、ノってきたな初美……」

 

 対面座位で性交を続ける二人を見ていられず、桃子はすぐその部屋を出た。心臓が、痛いくらい鼓動している。

 

「はっ、はっ、はっ……」

 

 走ったせいで、息が荒い。落ち着くまで、時間がかかった。おそらくは、初美も彼を助けるためにこの城に来たのだろう。だが、麻雀で負けた結果があの状況。

問題は、初美が自分から情欲に身を任せていた事だ。初めからそうだったとは考えづらい。与えられる快感に、理性が負けてしまったのか。あれが自分の未来かと思うと、末恐ろしくなる。やはりなんとしても、このまま彼を見つけ出しなんとか救い出す手段を見つけなくてはならない。

 気を取り直して、別室に入ろうとする。しかし、桃子はさらに淫猥な光景を目の当たりにする。

 

「あ♡ あ♡ あ♡ レイジさん♡ レイジさん♡」

「宥ちゃん、宥ちゃん……」

「ん♡ ん♡ ん♡ あったかいの♡ レイジさんに抱き締められるの♡ あったかい♡」

 

 桃子も直接やり取りした事のある少女、阿知賀女学院松実宥。マフラー以外の衣服は全て剥ぎ取られ、真上からのし掛かる男に腰を振られている。じゅぽじゅぽと、淫らな水音が部屋に響き渡っていた。

 

「どうだい宥ちゃん、気持ちいいだろ?」

「はいっ♡ レイジさんの♡ レイジさんのおちんちん♡ あったかくて♡ 気持ち良い♡」

「これが、好きなんだろう?」

「好き♡ 好きですうっ♡」

 

外見はお嬢さま然とした宥の相手が、見るからに軽薄そうな大学生風の男というのが桃子にとってまたショックであった。騙されて喰われた、という印象が拭えない。しかし宥は悦びの喘ぎを上げ続ける。

 

「レイジさん♡ レイジさん♡ レイジさん♡ あ♡ あ♡ ん♡ ん♡」

「イクのかい? 宥ちゃんっ」

「イク♡ イク♡ 宥イク♡ レイジさんに♡ 宥イカされるの♡ レイジさん♡ 素敵♡ 素敵すぎる♡」

「俺のこと、好きになってきたみたいだね」

「そ、それはあっ♡ それはあっ♡」

 

 それ以上見ていられず、桃子はまたも逃げ出す。狂気と色欲に塗れた城は、常軌を逸している。桃子は恐怖を覚え、逃げ出したい衝動に駆られた。だが、取り憑かれたように彼女は前に進む。

 

「やばいっす……! やばいっす……!」

 

 いつか、自分もあんな目に遭うのか。そう思うと、震えが止まらない。それを避けるためにも、何かしらの手がかりを探り当てなくてはならなかった。

 新たな扉に、手をかける。

 その先で見つけたのは、桃子にとってさらにショッキングな光景だった。

 

「んっ、ちゅうっ♡ んちゅ♡ 京極、様ぁっ♡」

 

 ベッドの上で、長いピンクの髪を揺らし、脂肪の塊のような男にキスをする少女。桃子も見知った相手――そして、直接戦った事もある友人。原村和だった。

 

「ちゅっ♡ んちゅっ♡ ちゅうっ♡ 京極様♡ 京極様♡ んちゅうっ♡」

 

 彼女も、同じ彼に想いを寄せていたはず。二重の意味でのライバルだ。だが今は、どう考えても好みではないであろう肥満体の男に唇を寄せていた。

 

(どうしてっ……!)

 

 漏れ出そうになる悲鳴を必死で抑え付ける。まさか、原村和まで男達の毒牙にかかっているとは思わなかった。すぐにでもこの場を離れたかったが、動揺を重ねた桃子は硬直したまま和達の様子を窺う。普通ならすぐにバレるであろう距離まで近づいていたが、桃子のステルス能力をもってすれば気付かれない。

 はずであった。

 桃子は失念していた。この目の前にいる少女には、自分の特性が通じない事を。

 

「んっ♡ ちゅっ♡ んちゅうっ♡ んっ、ふっ? あ、あれ……?」

「!」

「東横、さん……?」

 

 熱いキスにうなされながらも、桃子の存在に気付きこちらを振り向く。頭がぼうっとしているのが、それ以上の追求はなかった。

 しかし、それで充分だった。

 

「なんだって?」

「あっ……」

 

 肥満体型の男――和が京極と呼ぶ――も、こちらを振り向く。しっかりと、はっきりと、男はその視界に桃子の存在を捉えた。彼一人だけでは、不可能であったろう。だが、和による視線の誘導がそれを可能にした。

 結果は、言うまでも無い。

 

 ――桃子は後ろ手に腕を椅子に縛り付けられ、肥満体の男、京極に見下ろされていた。和も退室させられ、今は桃子と京極の二人きりだ。

 

「このっ、紐、解くっす!」

「あまり暴れると転げてしまうぞ。全く、ここまで堂々と城を歩き回るとはな。いや、流石と言うべきか。消える一年――東横桃子」

「う……」

 

 好色を隠そうともしない京極の目線に気圧され、桃子は抵抗を止め押し黙ってしまう。本能的に彼女は、そこに隠された何かを察する。その正体までは分からなかったが、恐怖に駆られるには充分だった。

 

「さて。君みたいな悪い子には、お仕置きが必要だな」

「お、おっぱいさんみたいなこと、させるつもりっすか」

「あれは彼女が麻雀で負けた結果だ。安心したまえ、あくまで我々は君達の得意とする麻雀で勝負をする。――だがまあ、反抗的な態度をとられるとこちらも困るからね。首輪をつけさせてもらうよ」

「首輪……?」

 

 訝しげに桃子が首を傾げる。京極はコップに水を入れると、そこに複数の粉末を入れてかき混ぜた。何だそれは、と桃子が訊ねるよりも早く、口をコップの縁で塞がれていた。

 

「ん、これ、やっ」

「飲め」

「ん、んっ、んっ~~~」

 

 流し込まれる不気味な薬品入りの水を、零しながらも無理矢理飲まされる。苦しみながらも、気付いた時には飲み干していた。

 

「ごほっ、ごほごほごほっ」

「よく飲みきったな」

「な、何を飲ませたん、っすかっ……」

「ちょっと興奮する薬と、ちょーっと意識にクるヤツをね。僕の能力が効きやすくなって、ふかーいところまで作用するようになるのさ」

「のう、りょく……?」

「お、もう効いてきたかな? 流石即効性。ああ、もう細かい事は気にしなくて良いからね」

 

 その言葉も、桃子の耳まで最後まで届かなかった。視界はぼやけ、京極の顔もよく分からなくなる。吐く息はどうしようもなく熱く、荒くなっていく。

 

(なんなんっすか……コレ……)

 

 疑問は湧き上がるが、それ以上頭が回転しない。京極が近づいてきても、桃子は身を捩って逃げる素振りさえ見せなかった。

 

「どれ」

「っ? んっ、ふっ」

「おお、これはこれは」

 

 制服の上から、その巨乳を京極の掌によって鷲掴みにされてしまう。同世代の原村和が群を抜いてグラマラスな肉付きをしているだけで、桃子も充分豊満な肉体を有している。やや影があるものの美少女と言って差し支えない面もまた、男を惹き付けていた。

 腕を拘束され物理的に払いのけられない状況であったが、それでも蹴り飛ばすくらいの抵抗はできたはずである。通常であれば、椅子が倒れようとしても桃子はそうしていただろう。無遠慮に乙女の胸を揉むなどもっての外なのだから。しかし、桃子は抵抗しなかった。ぎゅ、ぎゅ、と握りしめるように胸を揉まれても、熱い息を吐くばかり。視線は中空を彷徨い、瞳は京極を映してすらいない。

 

「良いね、桃子ちゃん。和ちゃんにだって負けてない体だよ」

「んっ、う、ふっ、ん……♡ 胸、だめ、っす……」

 

 声からも、力が失われていく。京極は、彼女の目をじっくりと覗き込んだ。きぃん、と妙な音が桃子の耳の中で響く。

 

「気持ち良いだろう?」

「気持ち、良い……?」

「ああ、胸がとっても気持ち良いはずだよ。ほら」

 

 桃子の胸をまさぐる手が、ブレザーの中に差し込まれる。今度はブラの上から、胸を刺激された。

 

「んっ、んっ、んっ、んっ♡ なにっ、なんなんっすかっ♡ こ、れっ♡ んっ、んっ♡ んっ♡ んっ♡ んっ♡」

「もう君はこれから離れられないんだよ」

「んっ♡ んっ♡ んっ♡」

 

 きぃん、と妙な音がまた聞こえた。桃子は何も答えられなかったが、与えられる快感に抗えず身を任せるしかできない。パンツが湿っていくのを自覚しながら、はしたなく股が開いていく。

 

「そう、その調子だ……僕の言うことに従っていれば、もっと気持ち良くなれるよ」

「あなたに……?」

「そうだよ……君は、僕の命令に従うと幸せになれるんだよ」

 

 京極の支離滅裂な言葉が、妙な音と共に桃子の意識に刷り込まれていく。繰り返し、繰り返し擦り込まれていく。

 

「あなたの、命令に……」

「そう。君の体は、僕の命令に絶対服従になるんだ」

「ぜったい、ふくじゅう……」

「それが、君の幸せなんだ」

 

 いつの間にか、内容が京極にとって都合の良いものに変わっていた。だが胸を揉まれながら、桃子の体は確かに悦び、脳裏にはその言葉が刻み込まれる。決して取り除く事のできない、呪縛が。

 

「ふっ、ふっ、ふっ……♡ ん、あ、ふぅ……♡」

「君がどう考えようが、何を思おうが、僕には逆らえなくなるんだ……それが君の幸せになるんだ……分かったかい? 分かったなら、返事を」

「わ、分かった、っす……私は……あなたに、逆らえないっす……」

「よし。念のため、もうちょっと色々仕込んでおこうか」

「んっ♡」

 

 京極はそう嘯いて、今度は二つの果実を同時に揉みしだく。桃子は文句一つ、言わなかった。執拗なまでに、彼の愛撫と囁きは続いた。たっぷり二時間以上、桃子は京極の「能力」に、無自覚のまま晒され続けたのだった。

 

「今夜の事は、君はすっかり忘れてしまう……良いね?」

「分かったっす……」

「よし。もう眠って良いよ」

 

 そのやり取りを最後に、桃子の意識はブラックアウトした。

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 翌朝、目覚めた桃子は首を傾げた。昨夜の記憶が全くない。しかしきちんと寝間着に着替えており、最早慣れ親しんだベッドで起床した。体にも特に不調は無い。

 違和感だけが、残っている。確かにいつも通り、城の中を偵察したはずなのだ。少なくとも、すると決めていたはずだ。だが、結果がどうしても思い出せない。あるいは麻雀で疲れ果て、そのまま泥のように眠ってしまったのか。

 

「時間だ」

「わ、分かったっす」

 

 案内人に呼び出され、一旦桃子は思考を打ち切った。制服に着替え、自分の部屋を後にする。今は、目の前の対局に集中しなくてはならない。もしも負ければ、彼女達のように――

 

「……?」

 

 彼女達のように――何だろうか。今、自分は何を考えていたのか。しかし、回答する者は誰もいない。拭いきれない違和感を抱えたまま、桃子は対局室に向かう。

 今日は、これまでと違う場所だった。かなりの距離を歩かされ、辿り着いたのは学校の校舎を模した建造物。本物ではないと説明を受けなければ、桃子は完全に勘違いしていた。それほど精巧な作りであった。

 校舎の中に入り、連れられたのは教室。

 そこで待ち受けていたのは、肥満体の男と教室とは不釣り合いな雀卓だった。

 

「京極だ。よろしくね、桃子ちゃん」

 

 こくりと、桃子は頷く。初めて対局する相手――のはずだ。心にひっかかりを覚えながら、桃子は卓に着く。できる限り、自分の印象は残さないように注意を払う。彼女の素の雀力は決して低くなく、ステルスを生かせば早々敗北を喫することはない。その自信があった。

 桃子の対面に座る京極はにんまり笑うと、ルールの解説を始める。

 

「今日はボーナスデーだ、桃子ちゃんが得た点棒の100倍のクレジットをプレゼントしよう」

「ひゃくばい……」

 

 これには桃子も驚く。だが、美味しい話には必ず裏があるというもの。喜んでばかりはいられない。

 

「ただし、代わりに一つ君にルールを課す。もしも君が誰かに振り込んだ場合、君のイメージビデオを撮影とさせてもらう」

「いめーじびでお……ってなんっすか」

「君の魅力を伝えるビデオの事だよ。君はとても素晴らしい美少女なのに、全然目立っていないからね。それを皆にしっかり伝えたいんだよ」

 

 ぞわりと、桃子の背筋が凍る。なおもイメージビデオの意は分からなかったが、京極に言い知れない恐怖を覚えたのだ。

 

「あ、あのっ」

「君は細かい事を気にしなくて良いんだよ」

「はい…………え、あれ」

 

 京極の言葉に、桃子は素直に頷いていた。それは、彼女の意思に反していた。困惑している内に、京極は説明を続けた。

 

「もしも君がハコになるか、イメージビデオの撮影が全て終わったら、その時点でゲームセット。罰ゲームだからね」

 

 罰ゲームがあるのは織り込み済みだ。桃子はこくりと頷く。だが、未だそれが実行された事はない。受けなければ良いだけの話――ではあるが、今日はいつにもまして不気味だった。

 しかし、

 

「気にしなくて、良いんだよ」

「はい…………」

 

 重ねて京極に言われ、桃子はやはり素直に頷いていた。

 

(ど、どうしてっすか)

 

 困惑はさらに深まっていく。自分の意思とは関係なく、京極の言葉に納得してしまっていた。拭いきれない違和感と、自身に起きている理解できない現象。

 

「さぁ、始めるよ」

 

 しかし今は麻雀に集中しなくてはならない。打たなければ、彼を救えない。

 序盤から、桃子は決して派手ではないがしっかりと点棒を稼いでいく。敢えてある程度目立ち、途中から「消える」準備も仕込みながら。

 

(この調子なら、今日も問題なさそうっすね)

 

 不安は杞憂に終わり、桃子はほっと安堵の息を吐く。ステルスモードにさえなってしまえば、このレベルの相手は話にならない。どれだけ自分を意識しようとも、彼は認識できなくなる。

 ――はずだった。

 

「桃子ちゃん、ここからは発声しながら牌を切ってね。ちゃんと切るときは音を立てて。目立たないなんて、考えちゃダメだよ」

「はい…………」

 

 またも素直に頷いてしまい、桃子は、

 

(っていやいや! そんなことするわけないっす……!)

 

 気を取り直す。いくら何でも従えるわけがないし、従う義理もなかった。全て無視して、対局の続きに向かう。が、

 

「九萬っす…………」

 

 ぱちん、と大きな音を立てて牌を切っていた。切ってから、愕然とする。何が起きたのか、思わず声を上げようとして、

 

「対局に集中するんだよ、桃子ちゃん」

「はい…………」

 

 京極の一言に、黙らされる。しかし心の中では、彼女は激しく叫んでいた。明らかな変調。明らかに何かがおかしい。

 

(なんでっ、どうしてっすか!)

 

 動揺を重ねた結果、桃子は不用意に牌を切ってしまう。

 

「ロンだよ」

「あっ」

「ようやく振り込んだね。さあ、立った立った。桃子ちゃんのイメージビデオの撮影開始だ」

 

 京極が指差すのは、教室の中央。机は移動させられ、まるで円形の舞台を作られている。そこを取り囲むのは、本格的な撮影機器群。何台ものカメラが用意されていた。

 言われたとおりに桃子は教室中央に立ち、男達の視線とカメラのレンズに晒される。

 

「東横さん、表情が硬いよ。笑って」

 

 カメラマンの男から指示されるも、桃子は仏頂面のままだった。わざわざ彼らに愛想を振りまくつもりなどない。

 

「桃子ちゃん、笑うんだよ」

「はい…………」

 

 しかし、京極が口を開いた途端桃子は華やかな笑顔を浮かべた。尊敬する先輩や片想いする彼にしか向けないような、まさに乙女の笑顔だ。

 

(やっぱり、おかしいっす……!)

 

 その表情とは裏腹に、桃子の心の中は大波乱だ。体がこれっぽっちも言うことを聞かない。頭では京極の指示など絶対に受け付けたくないと思っているはずなのに、気が付けば勝手に肉体は反応してしまっている。まるで、そうするのが幸せだと言わんばかりに。

 

「もっと笑って笑って。男に媚びるように、ね」

 

 京極の無邪気な命令に、さらに桃子は笑顔を深める。上目遣いでカメラを見つめ、どこか恥ずかしげに、しかし嬉しそうに。そんなつもりは、全くないと言うのに。

 

「じゃあ次は自己紹介だ。カメラに向かってスカートをまくり上げて。できる限りえっちにやっていこう」

 

 そんな命令、有り得ない。聞くはずが無い。が、

 

「はい…………」

 

 桃子は笑顔のまま頷き、丈の長いスカートの裾に手をかける。

 

(ちょっと、ちょっと待つっすっ!)

 

 心の中では叫び藻掻くが、腕は勝手に動いていく。じわり、じわりと誘うように、スカートが捲れ上がっていく。絶叫してこの暴挙を止めたかったが、それは叶わない。

 ついに、カメラの前に薄紫色の下着の一部が晒される。見えるか見えないか絶妙なところで手は止まり、代わりに桃子の口が、やはり彼女の意思とは関係なく開いた。

 

「鶴賀学園一年、東横桃子っす♪ 私は人より影が薄くて全然目立たないんっすけど、この映像で皆の記憶に残れたら嬉しいっす♪」

 

 思ってもいない言葉がするすると出てくる。さらに桃子はブレザーをはだけさせ、白シャツのボタンをいくつか外す。パンツと同色のブラと、白い胸の谷間が現れた。両腕で下から持ち上げ、桃子はその巨乳を強調する。

 

「どうっすか♪ おっぱいには、結構自信あるっす♪」

 

 あまりにもデタラメな自らの行動に、桃子は卒倒しそうになる。だが、貼り付いた表情は笑顔のままだ。そして撮影はまだ終わらない。京極からの指示が飛ぶ。

 

「もっともっとアピールするんだ。桃子ちゃんは影が薄いんだから、人より頑張らないとだめだよ? そうだね、次はお尻だ」

 

 何をバカな、と桃子は声を出そうとし、

 

「んっ♪ 私の事、ちゃんと見てるっすか♪」

 

 実際に出てきたのは、媚びるような甘い声。一台のカメラに向かってお尻を突き出し、円を描くように振る。スカートは再び捲り上がって、パンツと桃尻がカメラに晒された。

 

(こ、こんなのダメっす……っ!)

 

 ただでさえ何人もの男に見られているというのに、その痴態が全て記録されているなど信じられない。いくら赤面しても足りないほどの羞恥心が彼女を襲うが、撮られる表情は淫靡ささえ伴う笑顔だった。

 体は勝手に動き続け、学習机に胸を押し付けてみたり、床に転がって太股を晒してみたりとセックスアピール尽くしであった。勿論、全て桃子の意思とは関係ない。

 

「もっと私を、見て下さいっす……♪」

 

 たっぷり一時間かけて、ようやく一回目の撮影が終了する。

もう良いよ、と京極が終わりを告げた瞬間、桃子の体に自由が取り戻された。当然ながら、桃子は京極に噛み付く。

 

「あんた、私に何をしたんっすか……!」

「何って、どういうことだい?」

「とぼけないで欲しいっす! あんたの命令で体が勝手に動いてっ」

「僕と君は初対面なのにどうしてそんな事ができるんだい? 訳が分からない事でクレームをつけていたら、危うくなるのは君と彼の立場だよ?」

 

 ぐっと、桃子は声を詰まらせる。想い人を引き合いに出されれば、何も言えなくなってしまう。それに、京極とは確かに初対面のはずだ。何かされる隙など無かった――はずだ。どうしても拭いきれない違和感があったが、具体的にどうとは言えない。

 ただ、自分の体に異変が起きているのは確かだった。早々納得など出来ないが、京極は平然とさらに残酷な事を告げてくる。

 

「そうそう、ちなみにこの撮影の様子は、然るべき場所で公開生放送してるからね」

「な、生放送っ?」

 

 散々煽られていた羞恥心が、さらに高まる。桃子のステルスは、カメラを通されれば通じない事は証明済みだ。今の恥ずかしい姿が、顔も知らない人間達にまで見られている――ぞっとしない話だった。

 

「何かアクシデントが起きたら、とっても面白いだろうね」

「……っ」

「ほら、次の局だよ」

 

 もう、振り込んではならない。罰ゲームまでの猶予など考えてはいけなかった。慎重に、細心の注意を払って、桃子は麻雀を打つ。

 

(ステルスにさえなればっ……!)

 

 もう絶対に京極の命令になど従わない。発声もしないし、静かに牌を置く。そのつもりで、桃子は席に着いていた。

 だが、そんな決意を嘲笑うかのように、

 

「三索っす…………」

 

 やはり口は、ひとりでに開いてしまう。それでも地力に勝る桃子は中々振り込まなかったが、長い対局である。そして彼女を、自分の身に何が起きているか分からないという動揺が襲い続ける。さらには――京極と言う男に対して、言い知れぬ恐怖を感じていた。

 結果として、彼女は逃げ切れない。

 

「ロンだよ、桃子ちゃん」

 

 人を小馬鹿にしたような京極の顔が気に喰わず、桃子は彼をぎろりと睨み付けるが、

 

「君にはそんな顔は似合わないよ? ほら、笑って笑って」

「はい…………」

 

 彼にそう指示されると、自然と表情を綻ばせていた。ここまでで充分分かっていたが、桃子は改めて理解する。今、自分の肉体は京極の命令に逆らえないのだと。この状態では、麻雀でも勝ちの目はないはず――が、逃げ出す事も、中座する事もできない。どうしようどうしようどうしよう、と桃子の頭の中は大パニックだが、やはり京極の命令に従い席を立っていた。

 京極の先導で場所を移動し、来たのは体育館だった。

 

「今度は体操着での撮影だからね。まずは着替えようか」

 

 京極が指差したのは、女子更衣室だった。逆らえない桃子は、一人その中に入っていく――が、京極を含むカメラマン達も堂々とその後に続いた。

 

「な、なんで入って来てるんっすか!」

「勿論撮影のためだよ。着替えもちゃんと撮らないとね。見ていてあげるから」

「できるわけっ――」

「桃子ちゃん、着替えるんだ。媚び媚びでね」

「はい…………」

 

 こくりと、頷いていた。

 

(こ、こっ、この――っ!)

 

 激憤は決して外に出ず、顔に貼り付くのは笑顔だ。ロッカーから取り出されるのは、準備よく「東横」と名前が書かれた体操着と赤いブルマだ。よく見れば、他の名前が書かれた体操着も吊されていた。内心ではぞっとしながら、桃子は笑顔を振りまきカメラの前に立つ。

 

「東横桃子、脱ぐっす♪」

 

 心の悲鳴は音にならない。あっさりとブレザーを脱ぎさって、更衣室のベンチにはらりと落とす。しゅるりとネクタイを外すと、ブレザーの上に重ねて落とした。シャツのボタンを外す動作にも、淀みはない。あっという間に、上半身は薄紫色のブラ一枚になってしまう。さらにはスカートのホックも簡単に外し、すとんと落とす。下着だけの姿を不特定多数の人間達に晒しながら、桃子はノリノリでその場でスピンする。

 

「どうっすか♪ もっと、見て欲しいっす♪」

「良いよ良いよ桃子ちゃん。どうせなら、ブラジャーかパンツのどちらかも脱いでおこうか」

「分かったっす♪」

(できるわけないっす!)

 

 抵抗は無意味だった。指が、ブラのホックにかかる。ぱちんと音を立て、あっさりと外されて薄紫のブラは床に落ちるスカートの上に重なった。

 その豊満な胸を、桃子は申し訳程度に手で隠す。彼女はにこっと笑い、

 

「これでどうっすか♪」

「眼福眼福」

 

 中々着替えは始まらず、舐め回すようにカメラが桃子をとり続ける。ほとんど生まれたままの姿を余す事無く撮られ、しかし桃子は微笑み続けた。

 

(こんなの、こんなのぉっ)

 

 心中の叫びは強まる一方だが、どういうわけか体は火照っていく。桃子の意思も京極の命令も関係なく、確かに彼女は興奮していた。

 ようやく着替えが終わった頃には、桃子の吐く息は熱くなっていた。

 

「さあ、撮影開始だ。準備は良いかい?」

 

 だが、ペナルティはここからだ。好色そうな京極の目に嫌悪感を覚えるが、

 

「大丈夫っす♪ 一杯、撮って欲しいっす♪」

 

 桃子は明るく頷くのだった。

 

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