麻雀天使堕天計画 作:クラリス
この城に連れ去られた少女の中で、「この部屋」に一番に辿り着いたのは弘世菫だった。実力のみならず、運に恵まれていたと言えよう。同時にこの城の悪意と思惑が絡み合った結果でもあったが、ともかくとして――
「須賀君!」
「弘世さんっ?」
菫は想い人との再会を果たした。白糸台のワンピースタイプの制服を翻し、たまらず、菫は彼の体を抱き締めていた。少年は顔を赤らめ動揺するが、不安で震える菫を抱き締め返す。それだけで、菫は幸せだった。
二人はお互いの事情と近況を手早く話し合った。菫が麻雀の勝負で勝ち取った面会時間は長くはなかった。しかし、言葉の端々で労苦を感じ取る事が出来た。
「皆さん、俺のせいで……」
「須賀君は悪くない。君は被害者だ」
自分を責める少年を、菫は必死で慰める。
「でも、俺の前で……皆、男達に……」
しかし、彼の話した内容は菫にとってもショックだった。助けに来たはずの少女達が裏切り、彼の前で情事を見せつける。彼も憎からず彼女達を想っていただろう、ショックは隠しきれるものではなかった。その中に白糸台の面々がいなかった事を菫は喜んで良いものか悩んだが、ひとまずは安心する。
それから、菫はもう一度彼を抱き締めた。
「ひ、弘世さん……?」
「大丈夫だ。私は君を裏切らない。絶対に君を助けてみせる」
男子との触れ合いなどほとんどしてこなかった根っからのお嬢さまである菫だったが、この時ばかりは躊躇わなかった。想いを告げるには、このタイミングしかない。彼女もこの城での緊張に追い詰められて、衝動的な行動に走っていた。
長身の彼女が、背伸びする。唇を狙っていたはずが、最後の最後、羞恥から彼の頬に口付けていた。
「あ、あのっ……」
「皆まで言わせないでくれ」
恥ずかしさから、一歩下がって菫は俯き加減で言った。
「君の事に関しては、照にも負けたくないんだ」
「でも、俺は……」
「分かっている。君を慕う子は多い。だから……一緒にこの城を出て、それから答えがを出して欲しい」
しばらく彼は沈黙していたが、やがて、こっくりと頷いた。それだけで、菫には充分だった。
「もう一度言うぞ。私は絶対に君を裏切ったりしない。一緒に、この城を出よう」
「はい……!」
そのやり取りを最後に制限時間が来て、菫は彼の部屋を追い出された。しかし、充分だった。得られた勇気は、疲れていた体を癒してくれた。どんな相手でも、勝てる気がした。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
彼と別れ、今日の対局相手が待つ対局室を訪れた瞬間、菫は不快感で表情を歪めた。そこで待っていたのは、見知った相手だったのだ。昂揚していた感情に、一瞬で冷や水を浴びせかけられた気分だった。
「久しぶりだね、菫」
「武藤……シュウヤ……!」
若々しいスーツ姿の男。実年齢は、菫よりも一回り以上高い。若き実業家といった風貌に、女性受けの良い面。彼、武藤シュウヤは格式高い弘世家とも縁のある家系の出であった。その財力は、弘世家をも上回ると言われている。
その関係もあり、一度菫は彼との縁談が持ち上がった事さえあったのだ。当時そのようなものに興味はなかったため、菫ははっきりと断った。それに、シュウヤには女性に関する黒い噂が絶えなかった。見かける度に違う女性を連れていた。それ以上に、女としての直感が警戒すべき相手と告げていたのだ。見てくれの良さに騙されてはいけない、と。
「そんな怖い顔で睨まないで欲しいな。一度は婚約した仲じゃないか」
「貴方と婚約などしていない! ……まさか、こんな悪事に荷担していたとは。信用できない男と思っていたが、ここまでとは」
「傷付くなあ。悪事なんかじゃないよ、俺達は君達に本当の幸せを教えてあげようとしてるだけだよ」
「何が本当の幸せだ」
全く悪びれる様子のないシュウヤに、菫は歯噛みする。この城は弘世家さえ圧倒的に上回る権力が働いていると察していたが、そこにこの男が一枚噛んでいる事までは読めなかった。親から紹介された経緯もあり、ここまで屑だとは思っていなかったのだ。
「今日の相手は、貴方で良いんだな」
「ああ。元婚約者のよしみだ。お手柔らかに」
「ふん」
鼻を鳴らして、菫は卓に着いた。この男と余計な話をするつもりはなかった。いつものように、麻雀で圧殺するだけ。そのつもりだった。
シュウヤを含めた三人の対戦相手達も卓に着く。対面に座ったシュウヤを射貫くような眼光で、菫は睨み付けた。しかし、シュウヤはどこ吹く風だった。
「今日は少し特殊なルールで打って貰うからね」
「特殊……?」
「シャープシューターの異名を取った君の実力を見せて貰う。まず、この場ではツモ和了は全て禁止。ロンのみ認められる。そしてここからが重要な点。毎局、僕ら三人の中に一人だけ『外れ』を設定する。その『外れ』からロンしてしまった場合、ペナルティを受けて貰う」
「誰が『当たり』か『外れ』かは、私には分からない……ということだな」
「そう。代わりに『当たり』を引けば、クレジットは三倍にして渡そう」
菫は眉を潜めた。運否天賦の要素はあるが、三分の二の確率でのリターンは大きい。問題は、シュウヤが語るペナルティの内容だ。しかしシュウヤは、肩を竦めて言った。
「君を傷付けるようなペナルティはしないさ。軽いものだ。それからもう一つ。長考は二分までだ。一秒でも超えたらその度に8000点支払って貰う。このルールで半荘四回戦を戦って貰うよ」
「……良いだろう」
シャープシューターとしての矜持を刺激され、菫は了承する。ペナルティなど関係なく、射貫き続けるつもりだった。
シュウヤ達対戦相手三人に、それぞれコインが配られる。一つだけ裏面が獅子の紋様が描かれており、それが「外れ」の証しとなる。
「それじゃあ始めようか」
シュウヤの宣言により、対局が開始される。三対一対戦で不利なのは確かだが、菫は相手にほとんど和了させるつもりはなかった。全国最強の白糸台で、部長を務めた自負。怪物や牌に愛された少女達とも渡り合ってきた自信があるのだ。
「ロン」
実際、菫は第一局、圧倒的な速度で和了した。狙ったのは、シュウヤだった。
「良い度胸だね。俺が『外れ』だとは思わなかったのかな?」
「最初に射貫くのは貴方と決めていたからな」
「そこまで俺が読んでいたとは思わないのかな?」
「関係ない。どうなんだ、結果は」
「……当たりだよ」
やや不満気にシュウヤはコインをめくる。そこには何も描かれていなかった。ほっと一息つきながら、菫は卓の下で握り拳を作った。この調子でクレジットを稼げば、また想い人の彼とも再会できるだろう。
「ロン……!」
「ちっ」
立て続けに菫はシュウヤから和了する。今度もコインは当たりを示していた。さらに手応えを感じて霞は調子づく。
「ロンッ」
が、しかし。三度シュウヤを狙い撃ちした結果。
「おっと、今回は『外れ』だよ」
「む……」
コインの裏には、獅子が描かれていた。ペナルティで何をされるのか、と身構えていたら、目の前に出されたのは一杯の水だった。
「これは……?」
「それを飲み干して貰うよ」
「……毒でも入っているのか」
「そんなものは入ってないから安心してくれ」
などと言われても、安心できるわけがない。かと言って、飲まなければシュウヤに何を言われるか分かったものではなかった。男達がにやにやと見つめてくる中、意を決して菫はコップに口をつけた。香りはほとんどなかったが、やや甘いジュースのようだった。だが、これと言って変わった飲み物には思えなかった。
「これで良いのか」
「ああ。充分だ」
シュウヤの意図が読めず菫は不快感を露わにするが、追求しても答える気配はなかった。今は対局に集中するしかない。
とりわけ何も起こらず、シュウヤとの対戦は続いた。内容自体は、菫のワンサイドゲームだった。一方的に、男達を射貫き続けた。同時に、「外れ」も引き当て何度か得体の知れない水を飲まされていた。
半荘二回を終え、それも問題ないかと思われた頃――変調は起きた。
「ん、っう……?」
突然の発汗。視界がぐわんと揺れる。体が熱い。気分が悪いわけではない。しかし、体の底で疼く何かが確かにあった。
「なん……だ、これは……っ」
「おっと、効いてきたようだね」
「なに……?」
「君が今まで飲んでいた液体は、遅効性の媚薬だ。酩酊する効果もあるから気をつけてくれ。結構な量飲んだからここからますます辛くなっていくと思うけど、頑張ることだね」
説明するシュウヤの声が酷く遠くに聞こえる。もはや異変は疑いようがない。全身の肌が敏感になり、衣擦れする度に悶えそうになる。見るまでも無く、乳首はこりこりに勃ってしまっているだろう。さらには、
(濡れてる……っ)
頬を紅潮させ、菫は俯いた。このような男達の前ではしたない痴態を晒し、羞恥心が煽られる。しかも、どんどん体は熱くなっていく。シュウヤの言うとおりだった。
「は……っ♡ は……っ♡ は……っ♡」
「一瞬で色っぽくなったね」
「うる、さい……! それ、ロンだ……!」
「おお怖い。だけど残念。また『外れ』だ」
「そん、な……!」
また、例の媚薬を突き付けられる。これ以上飲むのは危険だと、体が訴えていた。だが、シュウヤ達の視線がそれを許さない。仕方なく、菫はコップ一杯を飲み干した。瞬間、さらに体の熱が上がった気がした。
これ以上は飲めない――が、和了をやめれば男達からの逆襲が待っている。和了りつつ、当たりを引き続けなければならない。ならば、と菫は取引をもちかける。この城のルールだ。
「は……っ♡ は……っ♡ クレジットは……支払う……っ、は……っ♡」
「うん?」
「は……っ♡ だから、誰が『当たり』か教えろ……っ!」
高圧的な態度を崩さないとは言え、菫は忌むべき相手に頼み込む屈辱に喘ぐ。しかし、あっさりとシュウヤは首を横に振った。
「その申し出には応じられないな」
「なんだと……っ、クレジットなら――」
「クレジットなんか要らないよ。代わりに、君の胸を揉ませてくれたら教えてあげよう」
「なっ……」
感情が怒りで沸騰しそうになる。しかし、それよりも体の疼きが酷かった。自分でも肉体を触りたいという欲求が、強まっている。ごくり、と自然に生唾を飲み込んでいた。今はこれ以上、媚薬を飲まされるのを回避しなくては――という自覚なき言い訳が、菫を突き動かす。正常な判断を下せる状態ではなかった。
「良い、だろう……っ、胸くらい、揉ませてやる……っ!」
「格好良いよ、菫。そうでなくちゃ」
近づいてきたシュウヤが、菫の腕を取って彼女を立ち上がらせる。そのまま菫の背後から、抱きすくめるように腕を伸ばした。
「ちょ、こんな、ところで……っ」
「見られながらというのも楽しいよ?」
「なにを、ばかな――うんんっ♡」
白い制服の上から、シュウヤの手が胸に触れる。それだけで、菫は顎を上げて喘いだ。チーム虎姫の後輩達に比べればやや小振りだが、充分に実った二つの果実。お嬢さま育ちの彼女が、決して男に触れさせた経験のない場所。その乙女の柔肌に、制服越しとは言え嫌悪する男の手が徘徊する。なによりも菫自身耐えがたいのは、
「んっ♡ んっ♡ んううっ♡ なんだっ♡ なんだこれはっ♡」
どれだけ抑えようとも、喘ぎ声が漏れ出てしまう事だった。思わずシュウヤの手を取って振り解こうとするが、男の力には敵わない。さすられるだけでこの有様。
「すっかり発情しているな」
「はっ♡ はっ♡ 発情、なんてっ♡ 私は、していな――ああっ♡」
ぎゅっと、両脇から抑えられるように胸を潰される。瞬間、菫は嬌声を発していた。疑いようもなく、発情していた。今更ながら飲まされた薬品の危険性を思い知らされ、菫は眉をハの字に曲げる。しかも問題は、まだまだ体の熱が上がっている事だ。
「んっ♡ んんっ♡ そこ、や、揉むなっ♡」
「揉んでも良いって許可は取っただろう」
「そうだ、がっ♡ うんんっ♡ こ、れっ♡」
どんどん胸にかかる手の力が強まっていく。菫は目をぎゅっと瞑ってしまい、視界を閉ざしてしまっているが、制服の形が崩れるほどに揉みしだかれているのは分かった。
「う、ふぅっ♡ やめっ♡ もうっ♡ もう良いだろうっ♡ やめろっ♡」
「このままだと溜まったままで逆に辛いだろう。一回くらいイっておいたほうが良い」
「い、いって……? んっ♡ んっ♡ んっ♡ や、めっ♡ ~~~~~っ♡」
一際強い衝撃が、菫の脳髄を貫く。その勃起した乳首を、指先で突かれたのだ。爪先立ちになりながら体を痙攣させ、頭が真っ白になる。次の瞬間には意識を取り戻したが、軽く絶頂に達したのは間違いなかった。
「……はっ♡ はっ♡ はっ♡ はっ♡」
「お疲れ様。続きに移ろうか」
「あ……」
シュウヤの手が、すっと引き抜かれる。菫はどことなく物足りなさげな表情を見せたが、すぐに首をぶんぶん振って気を取り直した。こんな事に流されてはいけない。菫はそう自分に言い聞かせるが、席に戻る彼女の足取りは頼りない。五分にも満たない愛撫で下着はぐしょぐしょになっており、そのまま椅子に座るのもはばかられた。
「気の強い菫も良いけれど、今の菫も可愛いよ」
「ふざ……けるな……っ」
声にも力が入らない。睨み付けようにも、視線が定まらない。軽く絶頂に達したお陰か先ほどよりも幾分か落ち着いたが、それでも体の疼きは完全には収まっていなかった。
「『外れ』は俺だ。狙うなら、他の二人だね」
取引は成功したが、果たして有効だったか菫には判別できなかった。もちろん無事に射貫く事はできた。だが当然、次の局には誰にどのコインが渡ったのか分からなくなる。
「どうする、菫。もう一度取引するか?」
「はっ……♡ はっ……♡ はっ……♡ う……」
「ちなみに、そろそろ一日の限界摂取量超えそうだよ。そうなると……」
「なると……?」
「一生悶え続ける事になるかもね」
恐怖が菫を支配する。あまりにも非道な手だった。彼女にとって、最早選択の余地はない。
「取引に、応じる……っ」
「違う違う、そうじゃない。君は頼むほうだろ。自分の体を触ってくれって言えよ」
「……っ!」
ゆっくりと、しかし確実に菫の心をへし折ろうとしている。おぞましいほどの執念を感じ、菫は怖じ気づく。だが、言わざるを得なかった。
「私の体を触ってくれて構わないから、お願いだ……っ、教えてくれ……っ」
「媚びが足りないが、まあ許してやる」
シュウヤの物言いが、どんどん尊大なものになっていく。紳士面が剥がれ落ち、雌を屈服させる雄の顔が現れ始めていた。
再びシュウヤに腕を取られ、立ち上がらされる。屈辱でしかないが、反抗する気力がまるで湧いてこない。振り解きたい筈なのに、菫の雌の本能が雄を求めてしまっていた。もっとも、それを菫自身が認められるはずがなかった。
「あ……っ♡」
背後から伸びてきたシュウヤの指先が、菫の首筋をなぞる。それだけで彼女は体を震わせた。さらにシュウヤは遠慮なく、またもや制服の上から彼女の胸を掌で包み込む。
「んっ♡」
制服の下でブラが肌を擦り、たったそれだけの感触が菫を悦ばせる。人生で味わった事のない種の快感。彼を想って行った自慰で感じた絶頂など、お遊戯に過ぎなかった。世界にこんなものがあるなんて、菫は知らなかった。
「んっ♡ んっ♡ んっ♡ ふっ♡ うっ♡ んっ♡」
さわさわさわ、とシュウヤの手が虫のように胸を這う。奥歯を噛み締め喘ぎを押し殺そうとするが、既に限界に近かった。菫が悶えている内に、首元からシュウヤの手が制服の中へと突っ込まれる。今度はブラの上から、左の乳房を掴まれた。
「んううっ? な、や、なにをっ♡」
「こっちの方が気持ち良いぜ」
「そ、そんなことっ♡ い、要らな――っ♡ あうっ♡ うっふぅっ♡ んんううぅっ♡」
悔しいが、シュウヤの言うとおりだった。より刺激が直接的になり、快感は何倍にも膨れ上がった。目尻に涙が溜め、幼い子供のように、菫はいやいやと頭を振る。
上半身ばかりに気を取られている内に、シュウヤのもう片方の手はロングスカートの裾を捲り上げていた。そのまま、下着の上から尻臀をぎゅっと掴まれる。
「んうっ? んっ♡ やあっ♡ ど、どうしてっ♡ そこっ♡ お尻っ♡ 約束とっ♡ 違っ♡ 胸ってっ♡」
「体を触るって言っただろ? ケツくらいで文句を言うな」
「んっ♡ んっ♡ ふざっ♡ ふざっ♡ けるなっ♡ んんっ♡ お尻っ♡ お尻っ♡ んうううっ♡ 胸、胸もっ♡ 同時っ♡ 同時はやめろっ♡」
「おいおい、何様だ。俺に命令できる立場だと思ってるのか」
「んっ♡ ふぅっ♡ んううっ♡ やめっ♡ やめろっ♡ んっふぅ♡ ふぅううっ♡ やめろとっ♡ 言ってる……っ♡ ――んっふううううっ♡」
思い切り胸を潰され、菫は二度目の絶頂を迎える。一度目よりもずっと深く、脳髄が痺れる甘さを伴っていた。
「はーっ♡ はーっ♡ はーっ♡ はーっ♡」
「お、またイったか?」
「イってない……っ♡ はーっ♡ イってなんかいないぃ……っ♡ はーっ♡ はーっ♡」
「派手にアクメ顔晒しておきながらよく言うぜ」
気丈にも菫は快感を否定しようとするが、シュウヤの体に全体重を預け、脚を愛液が伝う状況では何の説得力もなかった。普段凜々しく引き締まった表情は、とろんと緩みきってしまっている。全国最強校を率いた少女は、男の手の内で弄ばれるばかりだった。
ひとまず満足したのか、シュウヤは菫を解放して取引に応じる。しかし、折角誰が「当たり」か分かっても、菫はそれを生かし切れなかった。
「ロンだ、菫」
「あっ……」
「まさかシャープシューターが俺みたいな素人に振り込むとはな。お笑い種だぜ」
雀士としての矜持も侮辱され、菫は歯噛みする。最大の問題は、ここでシュウヤの連荘を許してしまった事だ。最早一刻も早くこの対局を終わらせたかったが、まだ半荘丸ごと一回以上残っている。このまま耐えきれるのか、菫に自信はなかった。
「さて次の局だが、取引はどうする?」
「…………しない……!」
これ以上、この男に体を触られるのは危険だ。元々触られたくもない。菫はそう判断した。ここで媚薬を飲まされる事になって、後に引くことになってもそちらほうがマシだと考えたのだ。
「良い度胸だよ、菫。その気の強さは嫌いじゃないぜ」
「お前に褒められたところで嬉しくともなんともない……!」
もう負けまいと、菫は再び対局に集中する。快楽でふらふらになりながら、見事にシュウヤ達を撃ち抜く。だが、全ての局が無事に終わる事は有り得ない。
「おっと、『外れ』だったな」
「くっ」
飲まされ続ける媚薬。シュウヤの愛撫である程度発散させられたかと思ったが、そんなものは焼け石に水の状態だ。奥からどんどん熱と液が湧いて出てくる。
「はっ♡ はっ♡ はっ♡ はっ♡ はっ♡」
何もされてなくとも、菫は舌を突き出し喘ぐ。美少女雀士の艶姿に、居合わせた経験豊富な男達も興奮を隠しきれない。ただ一人シュウヤが、獲物を前に舌なめずりをしていた。
永遠ほどにも長かった対局も、残すところあと二局になる。ようやくここまで来た、と菫は朦朧とする意識の中、安堵する。しかし最終局を迎える前に、菫が撃ち抜いた相手――シュウヤは、「外れ」だった。
「飲め」
「分かって……いる……っ」
コップを持つ手が震える。もう、体力自体ほとんど残されていなかった。それでも菫はぐい、と一気に媚薬を煽る。
「よ、し……!」
後一局だ――そう気合を入れて第一打を捨てようとしたところで、菫の意識は途切れた。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
「あ、う……?」
次に菫が目覚めた時も、彼女はまだ対局の椅子に座っていた。周囲には、三人の男達。対面には、憎き相手シュウヤ。ぼんやりとしながらも、状況をすぐに把握しようと頭を必死で働かせる。しかしその前に、シュウヤがにっこり笑いかけてきた。
「おはよう、菫」
「え……? わ、私は……」
「薬の飲み過ぎで意識を失っていたんだよ。大分待たされた」
「す……すまない、続きを――」
「おいおい何言ってるんだ、お前が点棒全部吐き出して終わりだよ」
え、と菫は目を瞬かせる。だが、シュウヤは構わず続けて言った。
「二分の制限時間を過ぎると罰符払い。最初に説明したルールだ。三時間は待たされたからな、手持ちのクレジットは全部吐き出すだろ」
「そ、そんなルールがまかり通るわけが……!」
「俺は最初に制限時間を過ぎる度に、って言ったぜ。牌を切らなければ二分ごとに罰符払いが発生するんだよ」
理屈の上ではそうかも知れない。だが、薬を飲まされ半ば強制的にブラックアウトさせられ、この結末を受け入れられるほど菫は諦めが良くなかった。
「ふざ、けるな……!」
「ふざけるな、と言いたいのはこちらだが。ルールを守れないと言っているのはお前のほうだぜ」
「認められるわけが、ないだろう……っ! もう一度、戦え……!」
「良いだろう」
あっさりと認められ、逆に菫は驚いてぽかんと口を開く。この男の事だから、頑と譲らないかと思っていた。
「ただし、条件が二つある」
「条件、だと……?」
「本来ならここで即座にお前に罰ゲームを与えても良いところなんだからな。そのくらいは飲んで貰うぜ」
それ以上は、菫に逆らう余地はなかった。
一度対局室を出て、連れて来られたのは城の一室。その奥に鎮座するベッドに、シュウヤは腰掛けた。そのまま彼はズボンを降ろすと、張り詰めた怒張を露わにする。思わず菫は顔を顰め視線を逸らそうとするが、黒光りするそれをちらちらと盗み見ていた。
「その口でしゃぶれ」
「なっ……」
「俺を満足させろ。それが一つ目の条件だ」
「ふざけ――」
「そうしなければ、お前が彼を助ける事は二度と叶わないぞ」
逃げられない理由を持ち出され、菫は握り拳を作った。わなわなと漏れ出そうになる怒りを抑え、ゆっくりと一歩ずつシュウヤの前まで近づき、跪く。ロングスカートに皺が寄るが、気にしていられない。
髪をかきあげ、シュウヤのペニスに口を近づける。フェラチオという行為は、お嬢様の菫も知っていた。当然実践経験はなかったが、この状況でこの男に教えを請うなどできるはずがなかった。
「ん――ちゅ」
「おぉ……」
亀頭の先端に口付けた瞬間、征服欲を満たしたシュウヤが醜悪な笑みを浮かべる。なるべく彼と目を合わせないよう、俯いたまま菫は亀頭を口に含んだ。
「あむっ……」
「ようし、よしよし。そのまま唾液をたっぷりまぶして舐め上げろ。丁寧にな」
「ん、っむぅ……むっふ、じゅるう……」
堪えきれなかったのか、シュウヤから指示が飛ぶ。彼の言うとおりにするのは癪だったが、早く行為を終わらせたい菫は指示を受け入れた。
「むっふ、んっふっ……」
「思いっきり吸い付け。バキュームだ、わかるか?」
「ん、っふう――じゅる、じゅるうううううっ♡」
臭い。熱い。苦しい。悪い夢を見ているようだ。女を道具としか見ていないような、最低男の性器を口にしなくてはならないなんて。奉仕しなくてはならないなんて。あらゆる悪態と罵倒を強靱な精神力で封じ、菫は一心不乱にペニスをしゃぶる。今は、想い人の方が大切だった。
それよりも問題なのは、薬によって昂ぶらされた体が一向に元に戻らない事だ。しかも、雄の臭いに中てられてさらに興奮しているのが自分でも分かる。あまりに危険。早く引き返さなければ、取り返しの付かない事になる。分かっているが、引き返す道がない。
(こいつぅ……っ♡)
ならば早く果てさせればと奉仕に耽るが、一向にシュウヤはイク気配がない。それどころか――
「ふっ♡ んっ♡ ふううっ♡ じゅるうっ♡ んじゅっ♡ んっ♡」
「お、もしかして菫、お前……」
「じゅるるっ♡ じゅるっ♡ んっ、んっ、んっ♡ んっふぅうううっ♡」
びくん、びくん、とペニスを含んだまま菫は体を震わせる。
「はははは、しゃぶってイったか。随分出来上がってるじゃないか」
「ふっ♡ うぅ……♡ むっふぅ……♡」
「ちんぽ舐めながら睨んでも可愛いだけだぞ? しかしこれじゃいつまでたってもイケないなぁ。もっと練習が必要だぞ、菫」
そんな練習は要らない、と言い返したかったが口に含んだペニスのせいで出来なかった。
「その辺はおいおい教えるとして――今はとりあえず、こうしようか」
「んぷっ♡ ――な、なにを……! やっ、やめろっ」
一度ペニスを引き抜かれたかと思うと、ベッドの中に引きずり込まれる。シュウヤは仰向けに寝転がり、彼の股間に菫は顔を近づけさせられる。逆に、菫の下半身はシュウヤの顔の上に位置する事になった。
「このままもう一度しゃぶれ」
「う、うう……」
「しゃぶれ」
有無を言わさない口調に、菫は再びシュウヤのペニスを口に含む。一方シュウヤは、菫のスカートを捲ると、無遠慮に下着を下ろした。
「っ? ぷは、や、何をやっているっ」
「気持ち良くしてやるから安心しろ。うっわ、ぐっしょりじゃねぇか」
「や、や、やっ……!」
乙女の秘所を、見られている。しかも相手は、想い人などではない。ショックを隠しきれない菫だったが、
「しゃぶれって言ってるだろ」
「ひゃんっ♡」
ぱちんとお尻を叩かれ、情けない悲鳴を上げてしまう。その反応に気をよくしたシュウヤは、何度も菫のお尻を叩いた。
「あっ♡ いたっ♡ いたっ♡ やめっ♡ やめてっ♡」
「止めて欲しかったら、さっさとしゃぶれ」
「分かった、分かったからっ♡ いたっ♡ いたいっ♡ んっ♡ んむっ♡ じゅるるるっ♡」
その痛みが誘う魔性から逃れるように、菫はシュウヤのペニスに吸い付いた。すると今度は、股の間にざらつく感触があった。舌で舐められている、と気付いた時には恥丘に吸い付かれていた。
「んうっ♡ んううううっ♡ んむうううっ♡」
「舌を休めるな」
「んっ♡ じゅるっ♡ じゅるるっ♡」
いわゆるシックスナインの体勢で、二人はお互いの性器を刺激しあう。勿論菫にとっては不本意な行為だ。だが、シュウヤのペニスは明らかに大きくなり、絶頂に近づいている。最低最悪だが、チャンスを掴むために手段を選んでいられなかった。
「んちゅっ♡ んむっ♡ ふっむっ♡ じゅるうっ♡」
「ふふ、良いぞ、菫……」
乙女の入口を、舌先でこじ開けられる感触。そのまま膣内を徐々に徐々に蹂躙される刺激。あっという間に、菫は絶頂に導かれた。
「ん、ふ、ふうううううっ♡」
「イキすぎじゃないか、菫」
だが、シュウヤはまだ果てない。余裕を持って菫を嘲笑う。
ぐったりとした菫を自分の膝の上に乗せ、彼女を背後から抱きすくめた。
「ほら、頑張らないといつまで経っても俺をイカせられないぞ」
「あ……う……♡」
「休憩か。仕方ない、その間は俺がお前を慰めてやるよ」
さらりと、シュウヤは制服を脱がさないままブラジャーだけ抜き取ってしまう。そのまま菫の胸を、揉みしだく。
「あっ、あっ、あっ♡ だめ、だめだっ♡ 胸は、もうっ♡ だめだっ♡ やめろっ♡」
「もっと素直になっても良いんだぞ、菫」
「だ、誰が――ん、ふ、んんっ♡ や、そ、そこっ♡ そこはっ♡」
今度は、シュウヤの指先が乙女の入口に差し込まれる。ぐしょぐしょと水音が響き、あっという間に大洪水の有様となった。
「ほら、もっと喘げよ」
「こ、こんなことで私を支配できると思ったら大間違――あうううううっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ んううううっ♡」
もう何度目か分からない絶頂を味わう菫。完全に、シュウヤの掌の上で弄ばれていた。反撃に転じる力は残されておらず、条件を達成できない。
「ほーら、まだ元気は出ないのか? 俺の方が疲れてしまうぞ」
「あっ、あっ、あっ♡ こんなのっ♡ こんな、薬を使ってっ♡」
「どうあろうと、今俺の手で感じまくってるのは事実だろうがよ」
「んっ、んっ、んっ♡ そこ、胸♡ んっ♡ お尻もっ♡ だめだっ♡ やっぱり同時は♡ だめだっ♡」
悪辣なシュウヤの物言いにも、反論できない。翻弄されるばかりだった。
「ああ、今の内にもう一つの条件を言っておこうか」
「あっ♡ あっ♡ じょ、条件っ? あっ♡ あっ♡」
「条件は二つと言っただろう。そう――次の対局でお前が負けたら、俺と婚約し直して貰う。結婚だ」
「け、結婚っ? そ、そんなのっ♡ そんなのっ♡ 認められるわけがっ♡ んっ♡ んっ♡」
「嫌なら勝てば良いんだよ。ま、その前に今俺をイカせられなければいつまで経っても始められないわけだが」
「んっ♡ んっ♡ んうううっ♡ やめ、乳首、やめっ♡ ~~~~っ♡ あああぁあああっ♡」
シュウヤの腕の中で、菫はイキ続ける。何度も、何度でも。絶望が待ち受けるシュウヤとの再戦のため、彼女は必死で彼のペニスへと手を伸ばした。