※この作品はR-18です。

麻雀天使堕天計画   作:クラリス

67 / 71
臼沢塞-01(イカサマ麻雀とセクハラ宴会)

 今夏インターハイ岩手代表、宮守女子。初出場ながら、団体戦二回戦まで進出し、一躍注目校として脚光を浴びた。

 その宮守女子を部長として率いていたのが、臼沢塞である。後頭部のお団子頭と切り揃えられた前髪、そしてモノクルがチャームポイントの美少女雀士だ。紺のブレザータイプの制服は、しっかり成長した彼女の乳房を隠し切れていない。さらに腰周りから臀部にかけての体のラインは、そこはかとなく色気を感じさせる。事実、全国に出場して彼女は多くの男性ファンを獲得し、麻雀雑誌のグラビアも飾った事がある。

 男性人気で言えば、宮守の中でも、巨乳の小瀬川白望や留学生のエイスリン・ウィッシュアートの方が強いだろうと塞自身予測していた分、意外な展開だった。だが、男から「そういう目」で自分が見られるのを塞が自覚したのは、全国に出場する前からだった。

 

「シロ達も、大丈夫かなー」

 

 想い人を救うため、拐かされたのは謎の古城。ここで、塞は非道な戦いに身を置いていた。おそらくは、同じ高校の仲間達もここに連れて来られている。恋のライバルではあるが、基本的には強い味方だ。しかし、合流には至っていない。クレジットを支払えばその機会も得られるだろうが、今は自分の生活の分と、彼を救うため最低限支払う分しか確保できていない。

 ここまで無事なのをまず喜ぶべきなのかも知れないが――噂では、幾人もの少女が既に憂き目に遭っていると聞く――このままではジリ貧である。

 

「上手く駆け引きできれば、きっと……」

 

 危険と知りつつも、レートを上げて戦う事も視野に入れながら、塞は対局室に向けて自室を出た。

 案内人に導かれ、辿り着いたのはいつもの対局室。

 だが、扉をくぐった先、待ち受けていた対戦相手はいつもと違った。無論、連戦連勝を続ける塞の相手は定期的に変わっている。これまでと違うのは、それが知った相手だったからだ。

 

「あ、貴方は……」

「久しぶりだね、塞ちゃん」

 

 ヒグマを思わせるような巨漢の、腹回りのだらしない中年男性。確か名前を、

 

「あ、明石、さん……?」

「覚えて貰えていて光栄だよ。今日の相手は私だ、よろしく頼むよ」

 

 紫煙をくゆらせ、意地の悪い笑みを浮かべる男は、塞にとって良い思い出の無い相手だった。あれは、宮守が全国出場を決めた頃だったか。麻雀の実績の無い宮守は、大会参加のために後援会を組織する事になった。その後援会の主宰として手を上げたのが、地元の有力者であるこの男、明石だったのだ。

 それだけなら、良い人で終わっただろう。だが、壮行会と題した宴会が、塞や顧問の熊倉さえも知らない内に企画されていたのだ。半ば無理矢理参加させられる事になった塞達は、そこで酔っ払った明石達にセクハラを受けたのだ。胸は突かれるし、尻にはソフトタッチされる。お酌を強要され、その間太股にも触られたりした。その場は何とか大事に至らず切り抜けたが、あの夏最低の思い出として塞の中に刻まれたのだ。もしもあの後、京太郎と出会っていなかったら、辛い夏で終わっていただろう。

 

「怖い顔してるね」

「……いえ。まさかここまで最低の人とは思っていなかったんで」

 

 最早塞は敵意を隠さず、堂々と毒づく。この男も、想い人を攫い卑劣な罠に嵌めた連中の一人。絶対に許せない敵だ。今も明石から送られてくる視線は、セクハラめいた色が濃い。もっとスカートの丈を長くしておけば良かったと思うが、この城で用意された宮守の制服は、普段塞が着ているものよりサイズが小さく、ぴちぴち気味である。ボディラインもはっきり浮き出て、彼女の恵まれた肢体は隠しきれない。

 

「おお、怖い怖い。まあ、今日は一つお手柔らかに頼むよ」

「そーですか」

 

 硬質的な声を出す塞に対して、終始明石はにやにや笑い穏やかな空気を醸しだしていた。

 

「今日のルールを説明しようか」

 

 そのまま明石が説明を始める。塞は斜に構えながら、耳を傾けていた。こんな男には、何があっても負けないという強い意志が発している態度だった。この時点で彼女は、意固地になっていた。

 

「まず、君はいつもと同じルールの勝負か、より高レートのハイリスクハイリターンなルールのどちらかを選べる。ただし、ルールの事前説明はなしだ。どっちが良い?」

「――……」

 

 塞は僅かな間逡巡する。クレジットは欲しいが、ルールの分からない勝負に乗っても良いものか悩むのは当然の事。

 

「分かったわ。乗る」

「良い覚悟だ」

 

だが結局、明石の挑発的な眼差しには応じる形になった。ここまで熾烈な戦いを勝ち抜いた自信もあった。

 

「なら、今日の相手はこの三人だ」

 

 明石の合図でぞろぞろと現れたのは、この城のどこにでもいそうな黒スーツの男達だった。明石が直接戦うのではないのか、と怪訝に塞は眉を寄せる。

 

「彼らは、イカサマを使う」

「は……? な、なによそれっ」

「そうがなりたてないでくれ、塞ちゃん。普通に打っていても途中で気付くだろうが、最初に伝えておくべきと思ってね。とにかく、これが今回のルールの前提だ。勿論無制限にイカサマはさせない。プレイヤーは全員、一局につき最大一回ずつ、イカサマをする権利がある。もし一局で二回以上イカサマをしたら、この勝負はそこで終了、君に5000万クレジットを進呈しよう」

「ごせんまん――」

 

 破格の報酬だった。しかし、

 

「あんたたちがそんなルール守る保証がどこにあるの?」

「あらゆる角度から、対局の様子をカメラで映している。彼らもこのカメラをくぐり抜けてイカサマをするのは不可能だ。一局終わる毎に、君はそれを確認する権利がある」

「ふぅん」

 

 イマイチ信用できなかったが、確かにカメラは用意されていた。提示されたペナルティの額も、相応と言える。だが、

 

「それだけなの? それじゃ、あんたらがイカサマできるってだけのルールじゃない。言っておくけど、私はイカサマなんてした事なんだから」

「勿論違うよ。いくらハイレートだからってこっちが有利なばかりのルールにはしないさ。むしろイカサマこそがこのルールの肝。君がイカサマをその場で見抜いたら、300万クレジットをプレゼントしよう」

「ああ、なるほどね……」

 

 つまり、いかにイカサマの現場を抑えるか、というゲームだ。一局終了後のカメラのチェックも、相手のイカサマテクを研究できる機会というわけだ。

 観察力には自信がある。防御を得意とする塞にとって、それは重要な能力だった。イカサマに関する知識も、やった事はなくとも、十二分にあった。

 

「良いわ。やったろうじゃない」

「ようし、早速始めよう」

 

 男三人と、塞は同卓する。すぅ、と塞は静かに深呼吸した。

 彼らは一つ、勘違いしている。例えイカサマをされたとしても、

 

「ツモ!」

「っ!」

「一本場……!」

 

 早々負けるつもりはなかった。そのくらいの実力差が、あるのだ。

 

(この程度でよくやる気になったわね)

 

 傲慢とも言える、塞思考。だが明石に対する怒りも相俟って、彼女は自分を絡め取る罠の存在に気付いていなかった。

 

「それロンです。二本場」

 

 さらに塞は、連荘を続ける。ゲームのペースは、今や彼女が掌握しつつあった。そしてついにというべきか、

 

「貴方、手止めて」

「っ? な、なにを……っ」

「その手、開いて」

 

 ツモろうと腕を伸ばした対戦相手の男を制止する。しらばっくれようとする男だったが、最後には観念したかのように掌を見せた。そこには、本来あるはずのない牌が握られていた。牌のすり替えか何かを、狙っていたようだった。

 

「これで300万クレジット――でしょ?」

「……ああ」

 

 冷たい声で塞が訊ねると、明石は苦しげに頷く。涼しい顔をしている塞だったが、内心小躍りしていた。このまま荒稼ぎしてやる、と息巻く。

 

「ツモ!」

 

 調子はうなぎ登りで、流局を挟みながら、最初の半荘が終わって塞以外焼き鳥状態だった。イカサマ発見もあり、この半荘だけでプラス350万近くの収支である。今までは、一日かけてもこんな大儲けはできなかった。塞の気分が高揚するのも、無理なかった。

 異変は、二回目の半荘東二局で起きた。

 

「ちょっと待って。手、開いて」

 

 またもやイカサマを仕掛けられる事に気が付いた塞は、下家の男に声をかける。彼はふん、と鼻を鳴らして、あっさりと手を開いた。

 

「どうしたっていうんだよ」

「う、嘘っ!」

 

 がたん、と椅子を蹴って塞は席を立つ。そこには、握られているはずの牌がなかった。

 

「いちゃもんつけるのは良くないなあ」

「ち、ちが……だって……く……」

 

 言い訳しようとする自分の口を、塞は必死で止める。気が逸りすぎた。イカサマをしていると、勘違いしてしまった。

 

「まあまあ、塞ちゃんを責めるのは止してくれ」

 

 男達に睨まれる塞に助け船を出したのは、明石だった。しかしにやにや笑う彼からは、悪意しか感じられない。

 

「この場合、逆に塞ちゃんにペナルティだ。300万クレジット、マイナスだよ」

「な……っ、そ、そんなにっ」

「イカサマを見破ったら300万なんだ。お手つきをしたら同じ額引かれるのは当然だろう。とりあえず、今の君のプラス分から引いておくよ」

 

 反論はできなかった。残り50万。これを大切にしていかなければならない。しかしここから男達の反撃が始まった。

 

「ツモだぜ」

「な、は、はや……っ」

 

 塞を上回る速度で和了してきたのだ。いくら防御重視の打ち筋の塞とは言え、この程度の相手に遅れを取るとは思えない。まさかと思ってカメラを確認すると、

 

(やられてるっ)

 

 一回だけだが、手の内に牌を握り込み、山の牌とのすり替えがあった。やはり彼らは、積極的にイカサマを行っている。次は絶対に見破ってやる、と塞は決意を新たにする。そうすれば、状況はまた有利になる。

 いや、ここは必ず見破らなくてはならない。いくらこのレベルが相手でも、イカサマをされると辛い事が判明した。しっかりとイカサマを咎めて、彼らの手を止めねばならない。

 

「……待って!」

 

 次の局、今度こそ塞はイカサマの現場を抑えた。男の腕を掴み、手を止める。

 

(これで……っ!)

 

 無理矢理男の手を開かせる。これで逆転――のはずだった。

 

「え、ええっ」

「おいおい、どうしたんだよ」

 

 意地悪く男が嘲笑う。その手の中には、今度も牌はなかった。

 

「これでマイナス300万。一気にマイナス260万と少しだね」

 

 ぽん、と明石に肩を叩かれ塞はびくりと体を震わせる。この城で、クレジットを失う事は即ち地獄行きというのは、最初の説明であった。こんな形で頓死するとは、思いも寄らなかった塞は、背後の明石へと声を荒げる。

 

「ま……待ってっ」

「うん? どうしたんだい、塞ちゃん」

「ちゃ、チャンスを……もう一回、チャンスをもらえない?」

 

 交渉の余地は残されているはず。この城のルールの説明で、その話もあった。対局だけが、クレジットを稼ぐ方法ではないと。当然それは、「女」として屈辱的な手法になるのだろうが、このまま諦めるわけにはいかなかった。

 

「一度だけじゃなくとも、幾らでも上げるよ。塞ちゃんが望むなら、ね」

「……っ」

 

 耳元で囁かれ、塞の背中に怖気が走る。息が臭い。生理的に無理な相手だ。しかし、今彼に逆らうわけはなかった。

 

「塞ちゃん、あの壮行会で僕に腰とお尻触られて、すっごく嫌そうな顔してたね」

「あ、当たり前でしょ……!」

「というわけで、今から塞ちゃんの腰とお尻は僕のものだ。300万クレジットで買うから、セクハラし放題の僕専用のケツ奴隷って事で」

「な……っ、は、はぁっ?」

 

 思わず怒気と困惑に満ちた声が出た。あまりにも無茶苦茶な要求だった。しかし、

 

「まだ、続けたいんだよねぇ?」

「……っ!」

 

 ぷるぷると肩を震わせる塞。その言葉には逆らえない。対戦相手の男達のにやにやとした笑みが、腹立たしくてしょうがない。だが、最後には、

 

「分かったわよ……!」

 

 応じる事しか、できなかった。明石はにやりと醜悪な笑みを浮かべると、

 

「じゃあ早速」

「んうっ」

 

 塞の背中と背もたれの間に、そのごつい手を突っ込む。そのまま彼女の腰周りを、ゆっくりとさすり始める。

 

「く、ぅ、ん……こ、の……っ」

「ああ、対局は続けて良いよ。大丈夫、牌を覗き込んだりしないから安心してね。僕は宮守女子のファンだからさ、純粋に傍で応援したいんだよ」

「ふ、ふざけるなぁ……っ、くぅ……っ」

 

 バカにするような言動に憤りを覚えながらも、腰をまさぐる手つきが気になってしょうが無い。過去の宴会では即座に払いのけたが、それができないのが悔しくて仕方なかった。

 結局明石の言うとおり、腰をまさぐられながら対局が再開する。数十万の残されたクレジットで、戦わなければならない。もう余計な失点はせず、早く今日の対局から抜け出したかった。しかしそんな弱腰の思考で、勝てる相手でもない。

 

「ロン!」

「あっ」

「どうしたよ、最初の勢いは」

 

 ついに塞は放銃してしまう。イカサマ使いの三人を相手に、どんどん状況は劣勢になっていく。加えて、

 

「んぅぅっ? ちょ、ちょっと……!」

「ん? どうしたんだい、塞ちゃん?」

「く、くぅ……っ、ん、うぅ……ふぅ……っ、ぅ……」

 

 じわじわと明石の手が腰から下に下がっていき、彼女の見事なヒップラインへ到達していた。尻臀を直接揉んではこないが、スカートの上からさわさわと撫で上げられる感覚は塞を赤面させる。明石はとぼけた態度を崩さず、それが塞の怒りをさらに募らせる結果となる。対局への集中力は、確実に落ちていた。

 

「ふ……ぅ、ぅ……つ、次……っ、ん、う……」

 

 男にここまで好きに体に触れられるのは、塞にとって初めての経験だった。想い人になら許しただろうが、こんな中年親父に好きにされるのは屈辱でしかない。だが、初経験の塞には分からなかったが、明石の手つきは巧みであり、確実に彼女の性感帯を探り当て、じわりじわり侵食するようにそこを刺激していた。

 

(なんなのよ、もう……っ)

 

 男達がイカサマをしているのは間違いないが、塞がそれを暴こうとしても現場を抑えられない。――男達が塞の視線や動作を読み、わざとイカサマをしたフリをして彼女のミスを誘っているのだが、この時点では塞は気付いていなかった。巧妙に仕組まれた心理的罠に彼女はまんまとはめられ、怒りと侮りを誘発させられていたのだ。

 

(今度こそ……っ!)

 

 逆転の一手を打つために、イカサマを仕掛けた下家の男の手を取る。しかしながら、

 

「残念、俺はまともに打ってるぜ」

「そ、そんな……っ!」

 

 そこに、すり替えの牌はない。絶望する塞の耳元で囁くのは、やはり明石だった。なおも塞のお尻を触りながら、

 

「どうする? 続けるなら、そうだな。今度は太股でどうだい?」

「……っ、わ、分かったわよ、それで良いわよっ」

「最初は見逃したけど、ちゃんと宣言してもらわないと。――ってね」

「……!」

 

 さらに塞の怒りを誘う要求をしてくる。ぷるぷると肩を震わせ、顔を真っ赤にしながら、しかしここで道を閉ざすわけにもいかず、塞はそれに応じる。

 

「い、今から私の太股は、あ、明石さんの、ものです……! 壮行会の時は、触って貰えませんでしたが……っ、今日は、た、たっぷりいっぱい、セクハラして下さい……!」

「よしよし」

「くぅ――っ」

 

 短めのスカートと黒のソックスの間、ほどよく肉付きの良い白い肌へ、明石の右手が触れる。さわさわと撫でられる感触が、あまりにもおぞましい。左手は引き続き腰周りを撫でられる。

 

「ふぅ、ん、くう……こ、このっ」

「どうしたんだい? 怒った顔して、君のお尻も太股も今は僕のものだよ? セクハラし放題なんだから」

「こ、この、く……っ、ん、うぅ……っ」

 

 怒鳴りつけたい気持ちを我慢し、塞は対局に集中しようとする。しかしにやにや笑う対戦相手達が自分の痴態を視姦している事を自覚すると、さらに羞恥心が煽られる。

 

「ん、んぅ……っ、ん、う……そ、こぉ……っ」

「お、ここかな? ここが塞ちゃんの弱いところかな?」

「ち、ちが、ん、んぅ……、ふ……♡」

 

 太股の内側、脚の付け根に近いところを刺激され、塞は奥歯を噛み締める。さらに丹念に撫でられていたお尻も、知らぬ内についに弱い力ながら揉まれ始めていた。僅かながら、塞の口から漏れ出るのは甘い息。無自覚だが、明石の手によって確実に感じさせられていた。さらに集中力を削がれた彼女は、まともな判断力を失っていく。

地味に対局で点数を稼ごうにも、イカサマに速度で負けてしまう。ならばイカサマの現場を抑えて逆転するしかない、と思考が硬直化していた。

 

「おいおい、またかよ」

「あ……っ」

 

 だが、その目論見も当然のように破れ去る。四度目の、イカサマの現場抑えに失敗。

 

「次は、胸だね」

「……っ! う、うそ……っ」

「嘘じゃ無いよ? まあ、ここで諦めてゲームセットという手もあるけど?」

「くぅ、ふぅっ、ん、うぅ……っ、ん、くぅ……っ」

 

 尻と太股を撫で続ける明石を恨めしげに塞は睨むも、事実上採れる選択肢は存在しない。

 

「わ、分かったわよ、それで、良いわよ……っ、ん、んふっ」

「それだけじゃ、ないだろう?」

「……っ、今から私の胸は、明石さんのものです……っ! いっぱい、触って、揉んで、セクハラして下さい……っ、ん、ふ、くぅ、こ、これで良いんでしょ……っ? ん、ふぅっ」

「ああ、ありがとう。そこまでしてもらいたかったんだね」

 

 蹴り飛ばしたい気持ちを、抑え付ける。そうした瞬間、負債をそのまま背負わされるのは目に見えていた。

 ふひひ、と鼻息を荒くしながら、明石は一旦尻と太股から手を離す。そのまま塞の背後に回ると、椅子越しに腕が回される。

 

「あふうっ」

 

 覚悟していても、制服の上から乳房を掴まれた瞬間、塞の口から悲鳴が漏れた。白望ほどではなくても、立派に成長した胸は形も良く密かな自慢だった。いつか、想い人の前で晒す事を夢見ていた。それが今、一番嫌いと言って過言ではない相手に触られている。直接的に揉まれず、最初にお尻を触られていた時と同じように撫でられるのがまた、塞を苛む。このソフトタッチに、塞の体は順応し始めていた。

 

「ふ、く、ん……っ、ふ、ぅ……っ、んうう……っ」

 

 しかもこの様を、イカサマ男達に見られている。すぐにでも逃げ出したかったが、胸を掴まれた今それも許されない。それ以前に、逃げ出す先などどこにもない。

 

「ん、ん、ふぅ、んっ、んっ、ふぅ……んっ♡」

「早くツモりなよ、臼沢さん。お前の番だぜ」

「わ、分かってる、わよ……! んふ、くぅっ♡ ん、ぅう、くう……」

 

 卓への集中を阻害するように、要所要所で塞の胸を揉む明石の手つきは力強くなる。完全に翻弄されていた。時折、隠しきれない瞬間的な喘ぎ声が入り乱れる。その声を聞かれている自覚が、塞の心を苛む。本当なら聞かせて良いのは、想い人の彼だけなのだ。あまりにも悪逆非道な状況に、塞はもう涙を流したかった。

 そして――塞は、乳責めから逃げるように、イカサマを指摘する。

 

「悪いな」

「あ……」

 

 当然のように、現場は抑えられなかった。

 

「さて」

「く、ん、ぅう、ふう、あんっ、ちょ、乳首、触れてる……っ、ん、うっ」

「次はそうだね。塞ちゃんのおまんこにしよっか」

「っ! そ、それは……ん、んぅぅ、ふうぅ……く、だ、だめ……う、ふ……っ♡ くうぅ、ん、だめ……っ」

 

 モノクルの奥の瞳を伏せ、胸を揉まれながら熱い息を漏らし、それでも拒絶の言葉を放つ塞。絶対に、許されなかった。そこだけは、それだけは。

 

「でも、このままだと塞ちゃん負けちゃうよ?」

 

 太股にも手を伸ばし、内腿から股にかけて人差し指を這わせながら、背後から明石がいやらしく訊ねてくる。下手をすればそのまま秘所へ指が触れそうな勢いだった。

 

「お、お願いだから、他の事ならなんでも、するから……っ、ん、くう、あ、んっ♡ ふ、くぅ、また、乳首……、ん、ふぅ……っ、だから、だから……っ」

「んー、そうだねぇ。じゃあ、あの時の事を謝ってくれたら考えないでもないけど?」

「あ、あの時……? んく、ん……っ」

「壮行会の時、僕の手を払いのけて冷たい目を向けてきたじゃん。あれだけ援助してあげたのにねー、酷いよねー、塞ちゃんは。本当はそんな子じゃないよねぇー?」

 

 ぎり、と塞は歯噛みする。あの時の事で、謝る事など一つも無い。塞はそう思っている。いくら後援会の援助が必要だったとしても、セクハラなど許されざる行為だ。しかも明石は、白望にも豊音にもエイスリンにも胡桃にも、ちょっかいを出していた。腹立たしいでは済まない。だが、現状の自分の立場を思えば、それを訴えかける事などまるで無意味だった。

 

「あ、あの時は……ご、ごめんなさい……あ、謝ります……く、ん、ふぅ……全面的に、私が、間違ってました……っ、ふぅ♡ ん、く……っ」

「自分の非を認めるんだね」

「は、はい……っ、ん、くぅ、ふ……っ、ん……っ」

「じゃあさ、今なら拒否しないよね?」

「え、え……?」

 

 塞が背後を振り返ると、明石はこれまでで一番楽しそうに嗤っていた。

 

「なんでも言う事、聞くんだよね?」

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 対局は中断され、塞は別の部屋に連れて来られた。そこは今まで、この古城の中で見たこともない部屋だった。まるで、旅館の宴会会場のようなだだっ広い和室。用意されているのは、お膳に載せられた料理とお酒。

 似たような光景に、塞は見覚えがあった。あの日、あの壮行会と称された宴会の会場も、これと同じような部屋だった。違うのは参加人数くらいである。あの時は後援会のメンバーが勢揃いし、宮守女子も全員参加してどんちゃん騒ぎであったが、今は明石と自分の二人きり。静寂が、空恐ろしかった。

 

「こっちに来て」

「……は、い」

 

 こっくりと頷いて、明石の隣に座る。いつぞやの宴会でも、同じポジションに呼ばれた。しかし、

 

「んぅっ」

「ふふふーっ」

 

 制服越しに、腰に手を回されても、塞は払いのけなかった。以前はこの時点で手を振り払い、逃げ出した。しかし今、それは許されない。腰もお尻も太股も、そして胸も明石に「支払っている」。そして、この二人きりの宴会で、塞は彼のためにコンパニオンとして働かなくてはならないのだ。明石の命令には逆らえない。それが負債を支払う条件だった。

 

「お酌してね」

「分かってる、わよ……っ」

「そういう口の利き方も良いよね。その内自分から敬語使い出すのが良いんだよねぇ」

 

 誰がそんな事をするものか、と心の中で毒づきながら、明石のコップにビールを注ぐ。商売女のような行為を強要されても、塞は唯々諾々と従うしかない。

 

「はい、どーぞ」

「口移しで飲ませて」

「は、はあっ?」

「どういう声を出してるんだい。後援会の会長に対する態度じゃないよねぇ」

 

 殴りたい衝動を必死で堪える。顔を真っ赤にして、黄金色のビールに視線を落とす。アルコールなど、口に含んだ事さえなかった。ましてや、それを口移しなど――ぎゅっと、膝の上で拳を作る。その間も、明石はスカートをまくり上げショーツの上から塞のお尻を撫でていた。

 

「く、ぅう……っ、ふ、ぅう……ぅ」

「ほら、早く」

「……、分かった、わよっ」

 

 半ば自棄になって、ビールを口に含む。その勢いのまま、明石に唇を重ねようとする。だが、その直前でぴたりと止まる。ファーストキスを自分から、こんな男に捧げる勇気は中々持てるものではない。

 

(須賀君……、くぅ……っ)

 

 思い浮かべるのは、想い人の顔。彼を想えば、こんな真似ができるはずもない。

 だが、痺れを切らしたのか、

 

「んぐっ?」

 

 明石の側から、唇を重ねて来た。夢見ていた甘い幻想が、一瞬で打ち砕かれる。下で口をこじ開けられ、口内のビールが吸い取られていく。

 

「ごくっ、ごくっ、ごくっ」

「ううううぅっ」

 

 ぴったりとくっついた唇に目を白黒させながら、ビールを飲まれていく感覚に身悶える。少しでも隙間ができないようにと、明石は塞の唇を丹念に食む。息が苦しくなってきてようやく、全てのビールを明石が飲み干し唇は離れた。

 

「はっ、はっ、はっ、く、くぅ……っ」

 

 ぽろぽろと涙を零す塞。覚悟はしていても、許容できるわけではなかった。しかしまだまだ彼女を襲う恥辱は止まらない。

 

「今度は僕が飲ませてあげるね」

「え、えっ?」

「ほら――」

「んむぅっ」

 

 今度は明石がビールを口に含むと、塞の唇を奪う。ファーストキスに続いてセカンドキスも奪われるが、悲しみに浸る暇もなかった。

 

「んくっ、んくっ、んくっ、んくっ」

 

 苦い、馴染みのない味の飲み物を無理矢理送り込まれる。さらに脇の下に左腕を回され、乳房を揉まれる。送られる刺激は、知らずおぞましさよりも甘美を感じるものになっていた。

 

「んむ、く、んむうっ、んちゅ、んっ」

 

 全てのビールを飲まされた後も、唇は重ねられたままだった。それどころか、口内に舌を差し込まれ口内を蹂躙される。胸を揉む手にも、どんどん力が込められていた。塞の手はそれを止めようと明石の手に重ねられるが、引き剥がすには至らない。

 

「んむ、んむっ、ちゅうっ♡ んむっ、んちゅうっ♡」

 

 頭がぼうっとする。目の前にある明石の顔が認識できない。鼻を突く中年男の異臭だけが、塞を不快にさせていた。だがそれよりも、アルコールによって酩酊させられ、与えられる快楽に身を委ねるようになっていた。知らず知らずの間、差し込まれた明石の舌に、恐る恐るではあるものの自らの舌を突き合わせてしまう。

 

「ちゅう、んっ♡ ん、ん、ん、くぅ、むぅっ、ちゅうっ♡ くぅ、んむ、ふ、ふ、ぷは……っ」

「ご馳走様~」

「あ……ふ……」

 

 頭が回らない。慣れない――というより初めてのお酒に、完全に潰されていた。

 

「まだ眠っちゃ駄目だよ」

「あぅっ♡」

 

 胸を揉まれて、明石の腕の中で塞は身悶える。

 

「現役女子高生雀士のコンパニオンなんて、中々用意できないからね」

「はふ、はふ、はふ……っ♡」

「いっぱーい、愉しませて貰うよ」

 

 屈辱的な物言いに塞は明石を睨み付けようとするが、最初の勢いは最早微塵も感じられない。反抗的な姿勢を見せようとした瞬間、

 

「ふぅぅぅっ♡」

 

 スカートをまくり上げられお尻を触られ、がくりと全身から力が抜けてその場に突っ伏す。彼女自身も知らなかった、臀部の弱点。それを、明石は完全に暴き出していた。

 

「ほーら、ちゃんとコンパニオンとして僕を愉しませなきゃ。塞ちゃん、頑張ってー」

「こ、この、ん、んー……っ♡ だ、だめぇ……っ♡」

 

 前のめりに倒れ伏せ、突きだしたお尻を虐められ、塞はその場で悶える。明石を愉しませようと言っても、まず立ち上がる事さえままならない。

 

「早くしないと、僕の気が変わっちゃうよ? ここで犯しても良いんだからね」

「っ、や、い、いや……っ」

「ならほら、立って立って」

「う、うぅ……何をすれば、良いのよ……」

 

 そうだねぇ、と明石は一度悩む素振りを見せてから、思いついたように膝を打った。

 

「とりあえず、制服貰おうかな。ほら、ストリップしとこ」

「は、は……?」

「綺麗な女の子の体見てるだけで、食欲も湧くんだよね。ほら立って。僕の前で制服脱いでね」

 

 最悪の気分だった。頭はくらくらとして上手く働かない。アルコールによって、思考は全て狂わされている。だが、肉体は開発されつつあり、下腹部は謎の熱を帯びていた。

 ふらり、と塞は立ち上がる。まるで夢遊病者のようだった。明石の前に立つと、胸元のネクタイに指を伸ばす。躊躇いながら、彼女はそれをしゅるりと抜き取るのだった。




というわけで初宮守は臼沢塞。彼女はやっぱり腰からお尻のラインが美しい。最近既存キャラ多かったので少しフレッシュに、基本に立ち返りたいと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。