麻雀天使堕天計画 作:クラリス
その日の朝、新子憧は自分を犯した男・榊から一つの提案を受けた。
「クレジットを失ったお前への逆転のチャンスをやるよ」
「……ふん」
どうせろくでもない提案であることは、分かっている。だが、受けるしかない。この状態から彼を救うためには、手段を選んでいられなかった。
今日はいやらしいメイド服ではなく、阿知賀の制服を着せられる。いつもの対局室を出て、城の中を地下奥底まで連れて行かれる。かなりの距離があり、歩いている内に不安になってきたが、やがて目の前に大きな扉が現れる。それを前に、憧は生唾を飲み込んだ。異様な空気が伝わってくのだ。案内人が扉を押し開くと、眩い光に彼女は一瞬目を瞑る。光に慣れてきて目を開けると、そこにあったのは豪奢な雀卓だった。
しかし、異様なのはその周囲。ぐるりと窓ガラスがはめられ、さらに向こうに部屋がある。そこには正装した男たちが醜悪な笑みを浮かべてこちらを眺めていた。観客、という事だろう。反射的に、憧は自分の体に腕を回してスカートの裾を直していた。
戸惑う憧だったが、さらにいつもと違う事態が訪れる。部屋には憧が入って来た扉以外にも三つの扉があり、そこが開かれ、現れたのは――
「嘘……」
自分と同じ、女子高生雀士たち。それも知った顔がいた。
「し、渋谷さんっ?」
「貴女は、阿知賀の新子さん……?」
白いワンピースタイプの制服に身を包んだ眼鏡をかけた女子高生――白糸台高校中堅、渋谷尭深。彼女とはインハイ団体戦で死闘を繰り広げた。
「それに、確か貴女たちは……」
「ど、どうもー。愛宕絹恵です」
関西の名門、姫松高校の副将・赤フレームの眼鏡をかけるのは愛宕絹恵。白のブラウスに紺のスカート姿は、引き締まった肉体と大きな胸が強調されている。無理に浮かべる笑顔の挨拶からも、戸惑いの色が濃い。
「東横さんまで……」
「お、お久しぶりっす」
最後の一人は、かつてインハイで特訓に付き合ってくれた、長野鶴賀の「消える一年生」、東横桃子だった。最後に会った時よりもさらに成長したであろう胸をゆさりと揺らし、恥ずかしげに顔を背けている。
「その……新子さんたちも……?」
「は、はい……」
「そうです……」
「うん……」
尭深の窺うような問いかけに、憧は顔を赤くしながら頷く。それだけで、お互いの事情は知れた。もっと深く話し合いたいところだが、それは許されなかった。
「私の名前は武藤。今日のルールを説明させてもらうよ」
彼女たちの前に現れたのは、スーツ姿の青年だった。尭深が頬を朱に染めて俯くのを、憧は見逃さなかった。どうやら彼女の相手がこの男だったということを、察する。
「今日は丸一日使って、東横桃子さん、渋谷尭深さん、愛宕絹恵さん、新子憧さん、君たち四人で打って貰う。最終的に一位になった者には相応のクレジットと、叶えられる範囲で一つ望みを叶えてあげよう。ただし、二位以下には順位に応じた罰ゲームが待っている」
「罰ゲームの内容は?」
勝者一人の厳しい条件に、焦った憧は詰問する。しかし武藤は余裕たっぷりに笑う。
「それは秘密だ。だが、四位になった者は二度とチャンスは与えられないと思ってくれ。君たちは一度負けているんだ。この勝負は、温情というものだよ」
などと嘯かれても、納得できるものではない。見知った相手を蹴落とさなければならないのだ。四人の間に罅が入るのを、憧は敏感に感じ取った。
「単に四人で勝負するということですか? 他にルールはありますか」
疑わしげに訊ねたのは、尭深だった。彼女の懸念には、憧も同意する。彼らの事だ、何か意地の悪いルールがあると考えた方が良い。そしてその予想は、当たっていた。
「良い質問だ。今日はそれぞれペアの相手と組んで、打って貰うペア麻雀だ。ペアの相手とは一巡毎に打牌する役を交代する。話し合っても良いが、最終的にはその巡の者が選択の決定権を持つ。鳴きに関しても、次にツモする者が選ぶことができる」
一巡毎に打つのを交代するペア麻雀――憧はほぼ経験がないルールだった。しかし、ペアの相手が重要だということは分かる。ここに集められた女子高生雀士は四人、彼女たちはライバルであり組まされることはないだろう。つまりここは――
「よろしくな、憧」
「……っ!」
「おいおい、そんな睨むなよ。あれだけ俺を求めてきた癖に。今日は味方同士だ、よろしく頼むぜ」
肩を叩いてきたのは、榊だった。憧は何も答えず、そっぽを向く。あの時は、どうかしていたのだ。許されるのなら、もう二度と顔を合わせたくなかった。
他のペアも、続々組まれていく。
渋谷尭深は、ルール説明を務める武藤。まだ子供の榊とは違い、やり手の若手社長という社会人の風貌だ。彼に肩を抱かれ、尭深は顔を真っ赤にして縮こまってしまっている。やはりそういう事なのだろう、と憧は奥歯を噛んだ。これから敵同士とは言え、同じ女として同情しないわけがない。
その隣では、愛宕絹恵のペアが現れる。こちらはかなり体格の良い、梅木と名乗るスポーツマンタイプの男だった。イケメンだというのに、爽やかさなどはほとんど感じられず、絹恵の頭に手を乗せる姿は不穏さえ感じられる。
最後の東横桃子の相手は、京極というでっぷりと太った中年男だった。愛嬌のある笑顔を見せているが、その目は女を品定めするような光しか宿っていない。事実彼の手は桃子のお尻周りをまさぐって、堂々とセクハラしていた。桃子は顔を真っ赤にしてその手を払いのけようとするが、執拗に狙われ続け意味をなさなかった。
最低最悪の戦いを予感しながら、憧は武藤の説明に耳を傾ける。
「それから、半荘一回毎にラスを引いた者は、その場で別途罰ゲームを受けて貰う。今日一日でどれだけ半荘できるかは我々次第だが、覚悟しておいてくれたまえ。――では、開始といこうか」
武藤の合図で、8人は席に着いていく。
今日はいつもの一人用の椅子ではなく、横並びのカップルシートである。しかし小さめに設計されているのか、憧は榊と密着する形となってしまう。周囲の観客から注がれる視線が、憧の羞恥心を刺激する。
「も、もうちょっとそっち詰めなさいよ……!」
「これが限界だっての。そう嫌がるなよ、今日はペアなんだから、仲良くやろうぜ」
ぞわぞわと鳥肌が立つ。こんな男に肌を許したというのが、屈辱でならなかった。他のペアも同様で、密着した状態で対局は始まった。
(勝ちたい……けど……)
彼女たちは、彼を巡るライバルであると同時に彼を助けるための同志でもあるはず。この勝負で負けた者は、助かる機会は失われるだろう。迷いと躊躇いが、憧の中に生まれる。そしてそれは、他の三人も同じなのだろう。少女たちの間に漂う気まずい空気。
それを裂くように、
「ツモぉ。好発進だね、桃子ちゃん。チームワークの勝利だ」
「う、ぅ……」
桃子のペア、京極が明るい声で和了宣言する。桃子は京極を睨み付けるが、複雑な表情をしていた。彼女はこれで、一歩勝利に近づいたのだから。
(そうだ……!)
どれだけ引き延ばそうとも、自分が打てる機会は普段の半分。男たちをコントロールできない以上、無理矢理にでも勝負の火ぶたは切られてしまう。初めから結果を軟着陸させるのは無理であり――
「ポンっ」
「それ、チーや」
少女たちは、積極的に戦いへ参加していく。殴り合いが始まった以上、最早お互いを慮る余裕は無かった。半荘一回目の東場が終わる頃には、信用という言葉は失われていた。
そして南場に移行し、異変は起きた。
「っ? な、なにそれっ!」
「おいおい、どうした憧。血相変えて。手牌がバレちまうぞ」
「あんた……!」
憧のペアである榊が、わざわざ手の中の暗刻を崩したのだ。安牌でもなんでもない、手を遅くするだけの無意味な一手。
「ええっ」
「ちょ、ちょっとなんなんっ?」
さらに同じ事態が、尭深と絹恵たちのペアでも発生したようだった。下手なりに今までまともに打っていた男たちが、明らかに手を抜いている。
しかしながら、桃子のペアである京極はまともに打っていた。このまま行けば、彼女の一人勝ちは自明の理。
「どうして、こんなことをするんっすか……」
「良いだろう、他が仲間割れしてるなら桃子にとってはお得じゃないか」
「だ、だけど……」
当の桃子も困惑しているようだったが、憧たちにとっては関係のない話だった。この事態をなんとか打破しなければならない。怒鳴りつけようと憧はすぐ隣の榊を睨み付けるが、彼のにやにや笑いを見て察する。勘の良い彼女は、男たちの要求に気付いてしまう。
「どうした、憧? 何か言いたい事でもあるのか?」
「……次からは、ちゃんと打ってよ」
「もう分かってんだろ? そりゃお前の態度次第だって事に」
ぐっと、憧は声を詰まらせる。予想は、当たっていた。
そして回ってくるのは、自分のツモ順。ただし、ここで牌を切るのは榊の番だった。やはり彼は、有り得ない牌に手を持って行こうとする。
「ま、待って……!」
「どうした? 決定権は今俺にあるんだけどな。――まあ、ルールだ。相談ぐらいなら聞いてやるよ」
「お願いだから、私の言う牌を切って……!」
「だからそれは、お前の態度次第だって」
想いを同じとする少女たちが見ている。彼女たちのペアの男も見ている。さらにその周りには、悪意のある観客たちがいる。だが、それでもやらざるを得ない。榊を満足させなければ、待ち受けるのは負けの未来。
「く、ぅう……」
一度呻く憧だったが、やがて観念し、
(ごめん、京太郎……)
心の中で彼に謝ってから、榊に向けて身を乗り出す。
「ちゅ――」
初めは、唇と唇が触れ合うだけのキス。わ、と絹恵や尭深たちからも驚きの声が上がった。弁明する暇は無かった。榊がこの程度で満足する訳がないと、憧は知っているのだ。唇をさらに押し付け、舌を突き出す。
「ん、んっ、んっ」
榊の顔など見たくも無く、憧は目を閉じる。しかし逆にそのせいで、その姿は恋人への女子からの積極的な口づけにも見えてしまう。榊はがっちりと口を閉じており、憧の舌の侵入を拒んでいる。だからといってここで止めても、意味が無い。憧は榊の首に腕を回し、さらに強く舌を差し込もうとする。
「んうっ、むぅっ、ん、うぅ……っ、んむっ」
ようやく榊の口内へ舌が入ったかと思うと、今度は彼の舌に絡め取られてしまう。相変わらずのキスのテクニックに、憧は上気しながら彼の舌技に答えようとしていた。
「ん、ちゅ、んむっ、あむ、れろぉっ、ん、んっむっ」
最早周囲の視線を気にする余裕もなくなっていた憧は、口元から唾液を零しながらも榊とのキスに興じる。そうして三分以上、唇を重ねていただろうか。
「ふ……はぅ……っ」
榊の方から唇が離され、二人の唇に淫靡な唾液の橋がかかる。ぷつん、とそれが切れた瞬間、憧は物欲しそうな表情を浮かべていた。敢えて誰もその事は指摘せず、ようやく榊は自分の牌を切った。それは一応、憧の望む牌だった。
「ろ、ロン……!」
「あっ」
肩で息をしながら、絹恵たちの捨てた牌で和了する憧。この中で一年生は自分だけ、実力で劣っているとは思わないが、優勢とも思えない。和了できる時に和了らなければならなかった。だが、
「おいおい待てよ憧、次の順番は俺だぜ」
「は、はあ? それがどうしたの?」
「だから、俺がロンを宣言しなくちゃいけないんだよ。分かるか?」
「あんた、ねぇ……!」
怒りに打ち震える憧だったが、ここで突っぱねるわけにもいかない。もう一度目を瞑り、榊の唇に口付ける。
「むぅ……っ、ん、む、んうっ、あむ、れろ、んじゅっ」
今度は、最初から積極的に舌を絡められる。さらに榊の舌が、憧の口内に入り込んでくる。歯茎の裏から、口内全体を舌先でなぞられ、背筋がぞくぞくと震えた。肉体内部からの責めは、容易に憧を昂ぶらせていく。
「んじゅ、ん、むうぅっ、んちゅ、ちゅうううっ」
唇全体を吸われ、びくびくと全身を痙攣させる。軽く絶頂に至ったのは、傍目にも明らかだった。
「ふは……っ、はぁー……っ♡ はぁー……っ♡ はぁー……っ♡」
「それ、ロンだ」
キスから解放され、夢見心地で荒い息を吐く憧をよそに、榊がようやくロンを宣言する。榊の腕の中で呆ける憧の姿は、絹恵たちに恐怖を抱かせる。自分たちが勝つために、何をしなくてはならないのか――それが示された結果だった。
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「武藤、さん……」
「どうしたんだい、尭深」
桃子や憧に差を離され始め、尭深は焦っていた。以前の対局の結果、想い人に嫌われてしまったのかも知れない。しかしそれでも、彼を助けたかった。彼と再会したかった。こんなところで、男達に嬲り者にされたくなかった。
そのために、シュウヤに媚びへつらう。矛盾した選択だが、今はそうするしかなかった。このままでは、足を引っ張られ続けて負けてしまう。
「お願いします……私の言うとおりに、打って下さい……」
「そうして欲しかったら、新子憧さんを見習う事だね。俺もできるなら尭深が負けるところは見たくないよ」
「う……」
困り顔を深くして、尭深は躊躇いを見せる。一方シュウヤはおいで、と言わんばかりに自分の膝を指差す。観念した尭深は、彼の膝の上に移動する。厚い胸板に背中を預けると、風呂場や電車での恥辱を思い出す。顔が熱くなる尭深だったが、シュウヤの手は動き出さない。彼の求める事を、尭深自身で為さなければならない。
震える手で、シュウヤの手首を握り取る。ゆっくりと持ち上げ、自分の胸元へと彼の掌を持っていく。ふっくらとしっかり成長した自らの乳房を、シュウヤが気に入っているのを尭深は知っていた。
「武藤さん、その、あの……」
「どうして欲しいか、言ってごらん」
「……私の胸、好きに、して下さい……いっぱい、可愛がって下さい……」
背後でシュウヤが嗤うのを、尭深は感じ取った。同時に、ぐにゅりと乳房の形を歪められる。
「んぅっ」
「なんだ、ブラを着けてないじゃないか。初めからそのつもりだったのかい?」
「ち、ちが……っ」
かああ、と尭深の赤面が深くなる。しかし、シュウヤの指摘は半分当たっていた。彼女なりに、彼を愉しませる準備をしていたのだ。
「それでも型崩れしない立派な胸だね。やっぱり俺の尭深は素晴らしい」
「ん、ぅうっ、ん、んっ……♡ だ、誰が貴方の、ものだなんて……ん、んっ♡」
他の少女達の前で、堂々と胸を揉まれる。しかも初めから吐息は熱く、感じているのがバレバレだった。重量感たっぷりの脂肪がシュウヤの指に蹂躙される度、他の少女達からも悲痛な視線が注がれる。悶え苦しむ様は、他人事ではない。
「は、ぅう……っ♡ そ、それ……、そこ……っ♡ ん、んうっ♡」
「こうやって後ろからされるのが好きなんだよね、尭深は。電車でもお風呂でもそうだったもんね」
「やっ♡ い、言わないでっ、ん、うっ♡ こ、こんなところでぇっ♡ ん、うぅっ♡ う、んぅっ♡」
「こんなところだから良いんじゃないか」
いやらしいシュウヤの手は止まらない。他の少女と男達に視られながら、尭深の胸は形を変え続ける。口から漏れ出る吐息にも、熱が籠もっていく。
「ふぅ……っ♡ ん、ぅう……っ♡ くう……っ♡」
「我慢しようとする尭深も可愛いよ」
「ちが……、ん♡ 我慢、なんて、んうっ♡ や、もう、や……♡」
愛撫によって昂ぶる肉体。霞む視界。乳首を虐められる度に、心が折られていく。シュウヤが指示を聞いてくれるようになった事だけが救いだった。だが、彼女にとっての恥獄はまだ始まったばかりだった。
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憧・榊ペアと尭深・シュウヤペアも、まともに打ち始めた。桃子・京極ペアは最初から本気で勝負を仕掛けてきている。
こうなると、不利になるのは絹恵である。隣に座る梅木の横顔を盗み見すれば、腹立たしい程にやにや笑っている。自分も彼女達と同じ真似をしろ、と言う事だろう。だが、それはあまりにも屈辱的だ。
「どうした絹。調子が出ていないじゃないか。お前も名門姫松のレギュラーなんだろ? 易々と負けるわけにはいかないじゃないか」
「こ、コーチが真面目に打ちさえすれば……っ」
「言ったな? 俺が真面目に打てば、この半荘、勝てるんだな?」
「えっ、そ、それは……」
威圧するような物言いに、絹恵は物怖じする。梅木の考えが読めなかった。
「とりあえずはお前の言うことを聞いてやる。ただし、お前がこの半荘でトップを取れなかったときは――」
「と、取れへんかったら……?」
「半荘終了時に罰ゲーム追加だ。いいか、二位でも三位でもダメだ。勿論ラスを引いたら、その分の罰ゲームもあるぞ」
苦々しい宣告を払いのける手段を、絹恵は持っていなかった。
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男達がまともに打つようになって、勝負は混迷を極めた。しかし、有利なのはやはり最初から何の妨害も受けていない桃子であった。逆に、キスと胸への愛撫で集中力を乱された憧と尭深は、点数を落としていた。
「う……」
「残念だったな、憧」
結果、最初の半荘から、憧はラスを引いてしまう。トップは桃子、二位は絹恵、三位は尭深という結果だった。
「この半荘の罰ゲームは憧と――」
「それから約束を守れなかった絹だな。さあて、何にするか」
男達からの通告に、憧と絹恵は歯噛みする。だが、ここで抵抗できるわけもない。最低、と憧は呟くが、その言葉は絹恵にしか届かなかった。
「梅木さん、ここは俺に任せて下さいよ」
「ほう。ま、ラスを引いたのは榊の相棒だしな。頼むわ」
「へへ、ありがとうございます。――おい、アレを持ってきてくれ」
そして榊が持ってこさせたのは、憧も見覚えのある衣装だった。黒の、ビキニ水着を模したメイド服である。ブラの布面積が小さく、胸が零れてしまいそうになる。スカートの丈も短いため、食い込みの激しいショーツも見えてしまう。それが二人分。当然憧自身と、絹恵用のものだった。
「この場で着替えろ」
それもまた、当然の命令だった。悔しさに顔を真っ赤にしながら、憧は桃色のカーディガンに指をかけた。隣では、絹恵がブラウスのリボンを震える指で抜き取っていた。現役女子高生二人のストリップショーに、男達はご満悦の様子だった。尭深と桃子は、耐えられないと言った様子で顔を背ける。だが、それは彼女達の未来の姿でもあった。
「あれ、これ、どこ留めるん……?」
一度着替えた経験のある憧は、ある程度すんなり着替え終える。しかし絹恵は戸惑っていた。縋るような目で見られるが、憧は、
「……っ」
「新子、さん……」
絹恵を無視した。最早彼女は敵――手を差し伸べて、自分の決意が鈍るのが嫌だった。だが、その行為は絹恵の敵意も助長する。本来目的を同じとする味方同士のはずの少女達は、男達の策略によってまんまと引き裂かれていく。
ようやく絹恵も着替え終わり、二人のビキニメイドが完成する。再びそれぞれの「ご主人様」の隣に座り、麻雀が再開された。
「ほら憧、またご主人様って呼ぶんだぞ」
「な、なんで、そんなのっ」
「罰ゲームの一部だよ。ほら、言う事聞いて欲しけりゃそれなりの態度を見せろよな」
「く、くぅう……っ」
卓の下で拳を作り、憧は悔しがる。しかし、慣れた命令でもあった。彼女は榊好みの声の出し方を知っている。
「ご、ご主人様……♡」
「なんだよ」
「い、淫乱メイドの憧のお願い、聞いて下さい……っ♡ 私と一緒に、麻雀を打って下さい……っ♡ 大好きな、ご主人様ぁ……♡ お願いぃ……♡」
しなを作り、他の少女達に軽蔑の眼差しを向けられても、憧は榊へ媚びへつらう。これには彼も満足したのか、にやりと笑う。
「仕方ないな。そうだな、ちゃんと打ってやる。だけど、さっきの梅木さんとこと同じように、トップ取らないと罰ゲームだ」
二度続けての罰ゲームは嫌だ――そう思いながら卓につく憧だったが、隣に座る榊の悪辣な手は止まらない。腕を首に回され、ビキニブラの上から胸を揉まれる。それが当たり前のような行為だった。しかも、適当に触っているようで的確に憧の性感帯を刺激してくる。
「ん……っ♡ ん……っ♡ あ……っ♡ んぅ……っ♡」
「どうした憧、手が止まってるぜ?」
「だ、だって、ご主人様……っ♡ やめ、やめ……っ♡ んぅ、んぅ……っ♡」
「嬉しい癖によ、ほら、俺達の主従関係を見せつけてやろうぜ」
「ちが、そんなのとっ♡ ちが、ん、んうぅ……っ♡」
結局、憧はその半荘ラス回避こそしたものの、三位で終える事になる。四位は尭深。二位は絹恵。そしてトップは再び桃子だった。
「…………」
こうなると、敵意を向けられるのは桃子である。一人だけ、無傷のまま。しかもセクハラも受けていない。彼女自身、居たたまれない様子で顔を俯かせている。しかしそんなものは、少女達の溜飲を下げるには至らない。
「まずは、四位の尭深の罰ゲームだな」
シュウヤの言葉に、尭深はびくりと肩を震わせる。尭深を膝に載せたシュウヤは、粘着質のある笑顔を浮かべながら彼女の頭を撫でる。
「俺の尭深に、いきなり酷い事はしないさ。まずは他の娘達と同じ服に着替えて貰おうかな」
「はい……」
力なく項垂れ、尭深は目の前に用意されたビキニメイド服に手をかける。自分と同じ格好になる彼女を見ても、憧はちっとも嬉しくなかった。
絹恵もそうだったが、胸の大きな尭深がビキニメイド服を着ると、乳房が溢れ出そうになる。再び尭深はシュウヤの膝の上に載せられ、胸は彼の手に支えられる。恥ずかしそうに彼女は身体を縮こまらせ、さらにシュウヤは覆い被さっていく。
「さて、次は憧の番だな」
「う……こ、今度は何を……」
「ご主人様を愛するメイドの本分を見せつけてやろうぜ」
そう言って、榊はズボンのファスナーを降ろす。あちこちから、少女の悲鳴が上がった。いきり立つ勃起を、唇を真一文字に引き結んで見つめていたのは憧だけだった。
「とりあえず、一発満足させてくれ。やっぱりお前は良いぜ。もう我慢できねぇよ」
「く、ぅ……」
「ほら、挨拶はどうした。教えただろ?」
背中に多くの視線を浴びながら、憧はその場に膝を着く。教わった作法通りに、ビキニメイドは三つ指をついて、
「ご主人、様……今から、憧が奉仕させて頂きます。たっぷり、愉しんで下さい……っ」
「おう、頼むぜ、淫乱メイド」
「……っ」
絹恵や尭深、桃子には負けるものの、充分に育った乳房を持ち上げる。その胸の谷間に、榊の逸物を挟み込んだ。両サイドから力を加えて圧迫する。
「い、いかが、ですか……っ♡ は、は……っ♡ ご、ご主人、様……っ♡ ふ、ふぅ……っ♡」
懸命にパイズリ奉仕をしながら、上目遣いに榊を見つめる。その瞳には、媚びの光が多分に含まれていた。
「まだまだだ、これだと他の娘達にしてもらいたいくらいだぜ。あっちはもっと胸も大きいからなあ」
「だ、だめっ♡」
その制止の言葉は、思考せずに出てきた。言った憧本人が、一番驚いていた。榊も少し驚いた様子で、
「なんだ? 嫉妬しているのか? 大好きなご主人様だもんなあ」
「ち、違うわよ、そんなはず、ない、でしょ……」
「おいおい、随分自信なさげじゃないか。それじゃ須賀の野郎も浮かばれないな」
「あ、あいつの事は言わないでって――んぅっ♡」
ブラの上から乳首を突かれ、反論の言葉は途切れ、憧は身悶えする。
「ほらほら、もっと頑張らないといつまでも終わらないぞ。他の奴らに迷惑じゃないか。そうだなあ、後十分以内にイかせられなかったら罰ゲーム追加だ。梅木さん達にもお前に奉仕して貰うってのはどうだ?」
「う、うそ、そんなの……っ」
「口を動かす場所が違うぞ。手も動かせ」
「く、ぅう……っ、ふぅ、あむっ♡」
意を決し、谷間から覗く榊の亀頭を口に含む。いつまでたっても慣れない臭いに顔をしかめながらも、竿を胸でぐいぐい挟み込む。
「んじゅっ♡ じゅる、じゅるるっ♡ んじゅうっ♡ むじゅうっ♡」
「おいおい、がっつきすぎだろ。お前のスケベな音、皆に聞かれちまってるぜ?」
「んじゅ、じゅるるっ♡ んじゅ、じゅうっ♡ ――ぷは、やめて、そんなこと、言わないで……っ♡」
「おい、何休んでんだ。ご主人様に逆らう気か?」
「……っ、も、申し訳、ありません……はむっ♡」
謝罪させられ、衆人環視のパイズリフェラに涙しながら、それでもメイドの憧は奉仕する。はしたない水音が部屋に響き渡り、ぽたぽたと唾液が落ちていく。他の男達の囃し立てる声が、煩わしかった。
「やっぱりまだまだ調教が足りないな、これじゃイけねぇよ。情けねぇメイドだな。皆の前で恥ずかしいじゃねぇか」
「んじゅっ♡ じゅるじゅるるっ♡ んじゅうっ♡ ――あふ、そ、そんな……っ♡」
「こういう時、どうすべきかは分かってるよな? 淫乱メイド。マジで時間以内にイかせられなかったら、キッツい罰ゲーム与えちまうぞ?」
「う、うぅ……」
一度、ペニスから離れる憧。躊躇いながら、両手を卓につき、お尻を榊に向ける。――本当に、ここで。他の男達や、少女達にも視られながら。本来なら耐えられない恥辱。だが、今の憧には選択肢はなかった。榊は、いつも自分の予想を超える非道な真似をしてくる。
「ご、ご主人、様……っ」
「どうした、憧?」
「わ、私の……っ♡ 淫乱メイドのあそこを使って……っ♡ 満足して下さい……っ♡」
「あそこ、じゃないだろ?」
「……っ♡ お、おまんこっ♡ ご主人様のっ♡ ご主人様のおちんぽでっ♡ 私のおまんこっ♡ 一杯、一杯突いて下さいっ♡」
半ば自棄になって、憧は叫んだ。大切な麻雀卓を前に、最低な言動。他の少女達に軽蔑されても、文句は言えない。しかし、彼女に選択肢はなかった。
「仕方ねぇな」
「あっ♡」
ぐい、と腰を掴まれ、ショーツをずらされる。既に濡れ始めていた秘所に、榊のペニスが宛がわれた。
「挿入れるぞ」
「あ、あ、あ、あ~~~っ♡ ん、んううっ♡ ご、ご主人様の、おちんぽ……っ♡ 入って、来たあ……っ♡」
最早、慣れ親しんだ男のペニス。悔しかった。本来なら、受け入れるべきは想い人のもの。しかし、そうではないというのに、きゅんきゅんと下腹部は悦びに鳴いている。
「相変わらず良い締め付けだぜ、憧」
「はーっ♡ はーっ♡ はーっ♡ ほ、ほんとう……っ? 良いの……っ?」
「ああ、やっぱり俺達の相性は良いみたいだ」
「あ……♡」
後背位で榊と繋がり、髪を撫でられ憧はうっとりと目尻を落とす。動かさなくても、榊のペニスが挿入されているだけで、頭の中から大切なものが抜け落ちてしまう。
「俺達の愛し合う姿……見て貰おうぜ」
「あ……っ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
そして榊のストロークが始まると、もうだめだった。抵抗する力を失い、彼女にできるのは必死で卓を掴むだけ。
「どうだ、良いだろう、憧っ?」
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ んっ♡ んっ♡ んっ♡ だめっ♡ だめっ♡ 良いっ♡ 良すぎてっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ だめっ♡ だめになるっ♡ こんなのっ♡ こんなのっ♡ いけないのにっ♡」
「淫乱メイドには相応じゃねぇか。はははっ」
ぱんぱんぱん、と突き込まれる淫靡な音が木霊する。ぐちゅぐちゅと泡立って溢れ出すのは、愛液だった。人の目のつくところで、完全にセックスしてしまっている。おかしいはずなのに、あってはならないはずなのに、見られてはいけないはずなのに――しかし、憧はどうしようもなく感じていた。ご主人様の突き込みに、負けていた。
「やっぱりお前は俺のメイドだな。好きなんだろ? 俺が。あいつよりもな」
「違っ♡ 私が好きなのはっ♡ あいつっ♡ あいつだ――んううっ♡ 奥っ♡ 奥突くのっ♡ だめっ♡ だめっ♡」
「突かれたくなかったら、正直になれよ。前みたいに、ちゃんとご主人様に愛を囁け」
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ う、うぅっ♡ んっ♡ んっ♡ ……す、すき……♡」
「あ? なんだ、はっきり言えよ。聞こえねぇぞ」
ぐ、と一度言葉を詰まらせて、
「すき……っ、あっ♡ あっ♡ あっ♡ ん、ん、ん……っ♡」
「もっと大きな声で」
「す、すきっ♡ ごしゅじんしゃまっ♡ しゅきっ♡」
「ははは、やっぱり心変わりしてるんじゃねぇか。ほらほら、突いてやるぞっ」
違う、これは違う、言わされてるだけ――憧は誰に対するわけでもなく言い訳する。あるいは、自分に言い訳する。そうでもしないと、自身を保っていられなかった。
「新子さん……」
「そんな、酷……」
「最低っす……」
しかし、周りの少女から投げかけられる言葉が憧を苛む。彼を裏切った罪を自覚させられ、しかし、ますます膣の締めつけは激しくなる。
「おっ、ノってきたな、憧……っ」
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ だめっ♡ もうだめっ♡ イくっ♡ イくぅっ♡ あーっ♡ あーっ♡ ご主人様、ご主人様♡ 私♡ もうだめなのっ♡」
「ああ、俺もイくからな……!」
「だめっ♡ 膣内はっ♡ だめぇっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ だめだからっ♡」
「大好きなご主人様の精液なんだ、どこでも受け入れろよ」
「だめ♡ だめだからっ♡ あっ♡ あっ♡ ふぅっ♡ ふぅっ♡ ご主人様♡ ご主人様♡」
一際強く、憧は身体を震わせ、
「イくっ♡ ご主人様にっ♡ イかされるっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あ――っ♡」
皆が見守る中で、派手に絶頂した。引き抜かれたペニスから発射された精液が、彼女のお尻にかかる。
「ふ、はぁ……♡」
その熱を感じながら、憧はその場に崩れ落ちた。あまりの快感に、腰砕けになっている。だが、
「まだ対局は始まったばかりだぞ」
「ふ、ぁ……ご主人、様……♡」
榊に、椅子に座らされる。夢現のまま、
「んちゅ♡ ちゅうっ♡ じゅうっ♡」
彼に唇を重ねられ、舌を絡ませる。
憧の様子に戦慄しながら、他の少女達も卓についた。そう、榊の言うとおり、まだ勝負は始まったばかりだった。