麻雀天使堕天計画 作:クラリス
古城に連れて来られ四日目、松実玄は初めて姉と別れ一人で麻雀を打たされていた。この謎に包まれた城で一人きり、というのはかつてない心細さを彼女に与える。ずっと、誰も来ない部室で待ち続けたあの日々よりも――あるいは、それとはまた違う不安があった。加えて、共に卓を囲む男達の視線。幼い頃より女子校育ちで男性の視線に晒される経験の少ない玄であったが、自らの胸やお尻に向けられる情欲を意識しないわけがなかった。
自身の肉体への自己評価は、玄の場合さほど高くない。身近にいる姉や、幼馴染である原村和――彼女もここに来ているのだろうか――の存在が大きい。しかし傍目から見れば、年齢の割に充分膨らんだ乳房、ミニスカートとニーソックスの狭間に見え隠れする健康的な太股、黙っていれば清楚な美少女という容姿、どれをとっても男受けする要素を孕んでいた。
一日打ち続け、今でさえも感じる邪な欲望。敢えて玄は気付かない振りをして、牌をツモる。
「ツモです。2100・4100」
「ちっ」
これで、玄の勝利は確定する。これまでの三日間同様、大黒字で一日を終えた。その場でクレジットは精算し、自らの生活費と少々の蓄え以外は、全て彼の解放のために支払う。
「ありがとうございました」
頭を下げる必要のない相手だが、それでも玄はきっちりと挨拶をする。お嬢様学校できちんと躾けられた証拠だった。
それにしても、と玄は今日の対局を思い返す。
一度だけ、妙なルール変更があったのだ。その半荘だけ、特定のプレイヤーが一位になった時に玄へボーナスのクレジットが渡されるというルールだった。玄はそのルールに則り、ツモ和了を放棄し、わざと放銃した。結果きちんとクレジットは支払われ、今日の大黒字の礎となったのだ。ほとんど玄しか得をしない理由の本当の意図を、当然彼女は知らない。
その裏で、姉が誤解を――否、騙されているとは知らない。
「ま、いっか」
細かいことは気にせず、玄は自分の部屋に帰ろうとする。宥に良い報告ができると玄の足取りは軽くなっていた。
しかし、彼女を止める声があった。
「待ちな」
玄の対面に座って打っていた、スキンヘッドの男が声を掛けてきた。麻雀にもろくすっぽ集中せず、玄の胸元ばかりを見ているような打ち手である。今更何の用かと、玄は眉を潜めた。
「面白いもんが見られるそうだ」
「面白いもの……?」
さらに玄は怪訝そうに呟く。別の男が取り出したのは、ノートパソコンだった。開かれた画面には、動画が映っていた。
玄の、時間が止まる。
『あっ♡ あっ♡ んっ♡ んっ♡』
『良いのか宥ちゃん、なぁ!』
『んっ――♡ んっ――♡』
そこにいたのは、半裸で乱れる一組の男女。男の方は知らない。だが、女性の方はよく知る人物――姉の、松実宥だった。上半身はブラジャーだけで、それも肩紐が外れてカップを保っていない。まくりあがったロングスカートの下にはいつものタイツを着けておらず、白い肌を覗かせる。
『ぁ♡ ぁ♡ ぁ♡ ぁ♡ や♡ や♡ や♡』
その見事な肉体のあちこちを男の手と舌が這いずり回り、宥に熱の点った声を上げさせていた。さらには、
『んんっ♡ ぁん♡ んむっ♡』
何の遠慮もない接吻を、浴びせかける。二人の口の間で、くちゅくちゅと水音が響く。僅かに唇が離れた瞬間も、舌と舌が絡み合っていた。
「お……おねーちゃん!」
ようやく我に返った玄が、パソコンのモニターに食って掛かる。だが、スキンヘッドの男がそれを押し止めた。
「おっと。慌てるなよ松実玄。壊されちゃ敵わない、弁償代払えるのか?」
「……っ!」
ぎり、と奥歯を噛み締め玄は男を睨み付ける。こんな感情は、生まれて初めて味わった。
「おねーちゃんに、何をしたのっ!」
「別に俺達はなにも。強いて言うなら、こいつだな」
スキンヘッドの男が指差したのは、画面の中で宥の体を貪る男。
『良いのかい、ねぇ、良いのかい宥ちゃん!』
『ない♡ よくなんか♡ ないです♡ んっ♡ あぁ♡ 気持ちよくなんか♡ ないです♡』
整えた金髪に、左耳のピアス。明らかに軽薄そうな出で立ちは、本能的に玄を不快にさせる。そんな男が箱入り娘の姉を良いようにしている様は、胸の奥をざわめかせる背徳感があった。もう見ていられず、玄は顔を背ける。
「お前の姉はな、脱衣麻雀に負けたんだよ」
「え……?」
「高レートのゲームだったらしくて、勝負に出たんだろうな。それに負けたペナルティで、今この有様ってわけだ」
「酷い……!」
姉がこんな連中に早々負けるわけがない――玄自身がその手伝いをしたとは露とも知らない――が、事実として敗北したのだろう。悔しかった。
「おねーちゃんを、助けて!」
「あ? だったら姉の負債分支払ってもらわないとな。だけどお前の手持ちのクレジットじゃ足りないだろうよ」
「うっ」
その通りだった。支払いは今し方終わっている。この連中が、返してと頼んで素直に返すとは思えない。
「それともなにか? お前が姉の代わりに体で支払ってくれるのか?」
にやにやと、三人の男達は笑う。それも、考えないわけではなかった。ずっと姉を守ってきた身として、現状は許されない。だが、そうしてしまえば今度は姉が自分を想って涙するのも知っていた。安易に身代わりになるとは言えない。
しかし、そうなればもう選択肢は一つしか無かった。
「も、もう一度私と戦って下さい!」
「今からか? もう夜も遅いぜ」
「お、お願いしますから……!」
賭け麻雀の延長戦を申し出る。玄の下げた頭をにやにや笑いを浮かべながら見下ろし、スキンヘッドの男は言った。
「でもお前と打ってもつまんないからなー。ドラは来ないし、和了できないし。」
「それは、その」
「いやいや、別に負けるのが嫌ってわけじゃないぜ。そこまで子供じゃない。ただもうちょっとゲームに変化があったほうが面白いって思ってな」
男の言わんとすることが分からず、玄は心配げに小首を傾げた。男はぱちん、と指を鳴らして、
「こうしないか。お前が連荘する度、俺達の命令に従って貰う。命令はランダムに選ぼう。ま、お前がゲーム勝ち続けても俺達も楽しめるって寸法だ」
「……その、命令って、どういう」
「今から紙にでも書こうか。それを伏せたままお前に引いて貰う。直前まで分からないわけだな」
不安しかない。想い人を拉致し、自分達を拐かし、それに全く悪びれる様子の無い相手だ。どんな非道な命令を下されるか、分かった物では無い。
そんな玄の心配を敏感に感じ取ったのだろう。男は大袈裟に肩を竦めた。
「あまり心配するなよ。そうだな。俺達からお前に触れるような命令は書かない。それでどうだ。というか、そうでないと延長戦なんて付き合わないぜ」
十秒ほど玄は黙考し、
「分かりました。お願い、します」
男の提案を、受け入れた。
かくして、まさかの延長戦が始まった。宥の艶姿を晒すモニターが閉じられ、しかし玄はほっと一息などつけるはずもない。今こうしている間にも、宥の身は危険に晒されているのだ。
男達が、紙に命令を書き終える。全員の含み笑いが、不気味だった。
何か仕掛けてくるのか、と危惧した玄だったが、昼間と敵の腕前は変わらない。簡単に男達の親を飛ばして、自分の親番でも、
「ロンです」
和了した。連荘――玄が百点棒を卓に置くと同時に、
「忘れてないよな? 引いて貰うぜ」
男が、命令を書いた紙が詰まった袋を寄越してくる。玄は僅かに躊躇いを覚えてから、思い切って紙を引いた。
内容は――
「須賀君の好きなところを言え……?」
「なんだよ、恋話かよ」「誰だよ書いたの」「こういうのが良いんだよ」
囃し立てられ、玄はむっとなる。何がそんなにおかしいのか。しかし、口答えできる雰囲気ではなかった。
「ほら、早く言えよ」
ごくりと生唾を飲み込んでから、玄は答えた。
「……インハイであんまり活躍できなかった私を、慰めてくれたんです。他校の、敵だったのに。ずっと私の話を聞いてくれて、そんな優しいところが好きで……」
「青春だねー!」「羨ましいよ」「ガキだな」
大切な思い出が汚された気がして、玄は正直苛立った。何気なく次の局の準備を始めながら、玄は決意する。叩きのめしてやる、と。麻雀でこのような気持ちになるのは初めてだった。
「ツモです!」
「あー、またやられたな」
ふふん、と玄は鼻息荒く勝ち誇る。そうだ。この調子で宥の負債を帳消しにするのだ。
ともかくとして、連荘したので次の命令を引く。また下らないことを訊ねられるのか、と思ったが――
「え……?」
玄は、自分の目を疑った。スキンヘッドの男が、玄の手からその紙を奪い取る。
「お、これこれ。こういうのが良いんだよ。ほら、分かってるな? 拒否権はないぜ、松実玄」
ぐっ、と玄は言葉を詰まらせる。何も反論できない。今、自分は二人の大切な人を人質に取られている。反抗などできようものがなかった。
ゆっくりと、玄はスカートの裾に指をかける。既に、自分の顔が真っ赤に染まっているのが分かった。
思い切って、などできるわけがなく。ゆっくり、ゆっくりと、玄はスカートを持ち上げた。
『そのミニスカをたくしあげろ』。
紙に書かれていたセクハラ命令に、玄は目を瞑り逃げるように男達から顔を背ける。だが、全員の視線が自分の股間に集中しているのが分かった。
露わになるのは、純白のパンティ。玄がこの城に持ち込んだ、数少ない私物である。指先が震え、たくし上げられたスカートもそれに合わせて揺らめいていた。
「眼福眼福」「結構食い込んでるじゃん、誘ってるのか」
喜色に塗れた男達の声は、耳に入らないようにする。だが、カメラのシャッター音は無視できなかった。
「ちょ、なにをしているのです!」
「触らないとは言ったけど、撮らないとは言ってないしな。ただスカートをたくし上げたお前が悪いんだよ」
全く男達は悪びれる様子はない。玄は逃げるようにすぐ椅子に座った。
「つ、次っ」
「ちっ、しゃーねーな」
男達は見かけ不満気に卓につくが、本心では愉しんでいるのがすぐに分かった。玄は何も考えないようにして、牌をツモる。女子と男子の差もあるが、それ以上に地力に隔たりがある。彼らが相手なら、余程運が悪くない限り玄はテンパイまでもっていけた。
だが、和了する直前、玄は躊躇いを覚えた。
(また、いやらしい命令を受けたらどうしよう……)
女子として、当然の悩み。しかし、彼女に実質的な選択肢はなかった。
「ロンです……!」
どれほどのクレジットを積めば、宥を救えるのかも分からない。今はとにかく勝ち続けるしかなかった。
次の命令書を引く。
思わず、ぐしゃりと握りつぶしたくなった。
「お、どうしたんだ?」
「…………っ」
玄の背後から、スキンヘッドの男が紙を覗き込む。彼は、「ははぁ」と笑った。
「中途半端な言い方だったら、何度でも言い直させるからな」
「そ、そんな」
「ほら、早く言えよ」
命令書に書かれていたのは、「次の文章を色っぽく読め」というものだった。完全に弄ばれているのを自覚するが、やはり玄に他に道はなかった。
「く、玄はぁ……え、え、えっちなことが、大好きな女の子、なんです。おじさん達のお……お、おち○ぽを、玄のあそこに、ず……ずぽずぽ、突っ込んで、下さい」
言い切ってから、激しい後悔に襲われた。しかし男達に、容赦は無い。
「やり直しだ」
「え、そ、そんなっ」
「声詰まらせまくって色っぽくも何ともねーよ。そういうのも悪かないが、もっと言い方あるだろうよ。言っただろ。何度でも言い直させるって」
玄は、スカートの脇で拳を作った。言い返したい。けれども、それでは何も進まない。手をこまねいている内に、姉への暴虐が続けられるだけだ。
「く……玄は、えっちなことが、大好きな女の子なんです。おじさん達の、お、おち○ぽを、玄のあそこに、ずぽずぽ突っ込んで下さい」
「やり直しだ。まだ照れが入っている。媚びるように言うんだよ」
こんな名も知らぬ男達に何故そこまでしなくてはいけないのか。憤りを覚えながら、しかし玄はもう自棄になって笑顔を作った。そこまで言うなら、満足させてやろう。そんな気持ちさえ芽生えていた。
「く――玄はぁ♡ えっちなことが大好きな女の子なんですぅ♡ おじさん達のおち○ぽをぉ♡ 玄のあそこにずぽずぽ突っ込んで下さいぃ♡」
「やりゃできるじゃねぇか」
褒められたところで、何も嬉しくなかった。何か大切なものを失った気がして、涙を流しそうになる。それでも、卓に向かわなければならなかった。
一度玄の連荘はここで途切れるが、
「……ツモです」
南場の親でまたも玄は連荘を始める。自分の親がこんなにも嫌だと思うのも、初めての経験だった。
「次の命令は、何だ?」
震える指先で、紙を開く。中身は、
「て、手コキしろ……?」
「ああ、それ書いたの俺だ」
玄の上家に座っていた小柄の男が立ち上がる。彼はそのままズボンのジッパーを降ろすと、既にいきり立ったペニスを晒した。
「きゃっ」
「きゃっ、じゃねーよ。さっさと頼むぜ、そろそろ夜も遅いんだ。あれ、それとも手コキも分からないのか?」
「……」
言葉と行為は知っていた。チームメイトの新子憧――そう言えばやはり彼女もここに来ているのだろうか――や、姉の宥と雑誌をめくって勉強したことがある。いつか、彼にして上げる日が来るのだろうか、なんて夢想しながら。
だが、現実はどこまでも残酷だった。
「俺達からは触らない。ちゃんとルールには則っているぜ」
「分かって、います」
玄は、男の前に跪く。
握りしめるまで、かなりの時間が要った。男達はあえて黙って見守った。雑誌で読んだ知識を総動員し、輪を作った手を上下に動かす。
「おっおっおっ、良いぜ、あー、良い。女子高生にやらせるってのはほんと良いぜ」
聞きたくも無い男の嬌声に、玄は沈黙を守った。肉棒はどこまでも熱く、玄の意識を苛んでいく。
「ぅ――おっ」
「や、いやああぁぁっ」
ぶるぶると男のペニスが震えたかと思うと、白濁液が一気に飛び出した。容赦なくそれは玄の頭に降り注ぎ、彼女の亜麻色の髪を汚す。
「ちょっと早漏すぎるだろ」「情けねーな」「いやいやこいつの手すっげーすべすべして気持ち良いって」
玄の人権など無視した会話が、頭上で行われる。肩を震わせながら、玄は男達に頼んだ。彼らしかいない。
「あの、何か拭くものを……」
「あ? そんなのねぇよ。拭きたければお前のパンツで拭いとけば? すげー綺麗だったじゃん、あれ」
「…………」
結局玄は、髪に白濁液をまとわせたままゲームを続けることとなった。鼻を突く牡の臭いはどこまでも濃い。
(臭い、とれなくなったらどうしよう)
そんな不安が、湧き立つほど。早々にゲームを切り上げて、シャワーを浴びたかった。それでも連荘を狙う献身は、簡単には真似できないだろう。
「ツモ、です……」
発声に気力がない。
「昼間はあれだけどや顔だったのに、元気ないな」
「折角上がったんだから、もっと景気のいい顔しとけよ」
あまりの白々しさに、吐き気がした。だが、もっと胸を詰まらせるのはここからだった。引かされた命令書には、
「それは俺だな」
今日一日、執拗に玄を狙っていたスキンヘッドの男のものだった。玄の手から、紙がこぼれ落ちる。今度はスキンヘッドの男が、己のペニスを取り出していた。
「フェラチオも、分かってるだろ? 経験は?」
「……ない、です」
「じゃあ、教えてやらないとな」
再び跪いた玄の前に、ペニスの先端が突き出される。
「キスしろ。挨拶だ」
ファーストキスの相手が、名も知らぬ男のペニスになるとは思いも寄らなかった。
(おねーちゃん、京太郎君……力を、貸して)
最後に、彼女達の顔を思い浮かべ。
「……んっ」
「おっ」
思い切って、玄はペニスに口付けた。
「唾液を口に貯めてから、ゆっくり包み込め」
「こ、こう、ですかぁ、んむっ、じゅるうっ」
「そうだ。その調子だ。手で金玉に触れ。優しくな」
「ん、じゅるる、あむっ、は、はいっ」
言われるがままに、男のペニスを愛撫する。くわえ込み、舌を這わせ、何度も何度も鈴口にキスをする。その度に、口が汚れていくようだった。鼻を突く男のフェロモンが、玄の頭をぼうっとさせる。
じゅるじゅる、にちゃにちゃ、ぐちゅぐちゅと、水音だけが部屋に響く。他の男達も、玄の奉仕姿に勃起し見守っていた。
「良いぞ、玄。その調子だ。才能があるぞ」
「あむっ、んんっ、さ、才能なんて……じゅるるぅっ」
「初めてでこんな風に吸い付ける女もそうはいない、ぞっ、はぁっ」
スキンヘッドの男からも余裕が失われ始める。自らも腰を動かし始め、玄を慌てさせた。
「ちょっ、あむっ、やっ、んむっ」
「良いぞ、玄……ああ、いくぞっ」
「やっ」
ぶるぶるとペニスが震え、経験から反射的に玄はペニスから離れようとする。が、男にがっしりと頭をつかまれ 固定されてしまう。本来なら契約違反であったが、玄に指摘する余裕はなかった。
「んっ――!」
「うぉお……」
そのまま音は玄の口内で果てた。射精の時間は永遠にも感じられ、精液は余さず玄の口に注がれる。たっぷり一分後後、ようやくペニスは引き抜かれた。玄の唾液と精液が入り混じった液体が、ペニスに纏わり付いていた。
「げほっ、げほっ、にが、げほっ!」
玄の口から、白濁が流れ落ちる。
「初めてで飲み込むのは流石に無理か。まぁその内慣れるだろ」
慣れるような事態が、この先に待ち受けているのか。実感のない恐怖が、玄の中に湧き上がる。そんな彼女に構わず、男達は何事もなかったかのように卓に着き始めた。
「さぁ、続きをやろうぜ」
玄は、ふらりと立ち上がる。姉達を、救うために。
憔悴したまま、玄はその日自分の部屋に戻った。姉を助けるクレジットが貯まったのか、確認する余裕もなかった。ただただ、「おねーちゃんに、渡して」と言い残して逃げたのだ。熱いシャワーが、こんなにも心地良い日が来るとは思わなかった。
しかし、目が覚めても姉の姿は無かった。
ごくごく当たり前のように案内人が現れ、今日の対局の開始を告げられる。
「お、おねーちゃんはどこにいるのですっ!」
案内人にも、対戦相手にも玄は訊ねかけた。しかし、彼らは一様に含み笑いを浮かべるばかりである。
どこかおかしい。いや、この城は初めから全てがおかしい。けれども、この現状は輪を掛けて酷かった。
どこからか、昨日戦った――そして、玄を辱めたスキンヘッドの男が現れる。
「お、おねーちゃんをどこにやったのです!」
「だから俺は松実宥には関わってないんだけどな……ま、今回は知ってるけどな」
「お、教えてください!」
たまらず玄は男に詰め寄った。男は肩を竦めると、
「ほら」
と、一枚の写真を玄に渡した。
そこに映っていたのは――
「え……?」
ベッドに横たわり眠る宥と。
「京太郎君……?」
姉妹共通の想い人が半裸で、眠る宥の髪に触れていた。顔に影が差してはっきりと見えないものの、この金髪と体格は、彼そっくりだった。
「ど、どういうこと……?」
「昨日お前が稼いだクレジットな。確かに松実宥に渡したぜ。でもお前かなり頑張ってくれたおかげでな、余ったんだよ。そのクレジットで、あの女、『須賀京太郎に会う』ってサービスを使ったんだよ」
「……嘘」
玄の言うとおり、大嘘である。宥は、そんな選択肢があること自体知らないし、事実京太郎と会ってもいない。――だがそれを、今の玄が確かめる術はなかった。
「嘘じゃねぇよ。そういうサービスあることはお前には知らせてなかったが、宥は知ってたんだ。そこで妹が稼いできてくれたクレジットを、使い込んでも分かるまいとちょろまかしたんだろうな」
玄にとっては、手酷く裏切られたとしか捉えようが無い。力なく、その場にへたり込む。対局を開始する合図にも、答えられなかった。
「なぁ」
スキンヘッドの男が、玄に耳打ちする。
「お前も、須賀京太郎に会いたくないか?」
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
ゆっくりと、玄の意識が覚醒する。この感覚は、最近も味わった。――そう、あの城に連れて来られて目覚めた時と同じ感覚だ。また、薬で眠らされたのだろうか。
上手く頭が働かず、目覚めて直ぐは、玄はぼんやりとしていた。だが、がたがたと振動する音、人の話し声、外の空気の匂い――はっと気付く。
電車の中だった。車両自体は見慣れないが、つり革の広告には週刊誌の文字が踊っている。日本だ。身に纏っているのは、今朝着た制服。思わず玄は腰を浮かせて声を上げそうになり、
『動くな、騒ぐな。その時点で連れ戻すと言っただろう』
いつの間にか左耳につけられたイヤホンから響いた声に、動きを止める。
そこでようやく、全て思い出したのだ。
姉への陵辱。
姉からの裏切り。
あのスキンヘッドの男の提案。
須賀京太郎に会わせてくれる、と言ったのだ。代わりに、今日の勝負を放棄しろ、と。そしてその負けのペナルティを乗り越えたら、会わせてくれると言ったのだ。
だがその結果、こんなところに放り出されるとは玄は思いもしなかった。――いや、と彼女は頭を振る。確か、多少なりとも説明された。一度城に出すが、こちらの命令には絶対服従という条件をつけられたのだ。
『立て』
イヤホンから漏れる声は、誰のものかも分からない。だが、従うしかなかった。
『前の車両に移動しろ。三つ先だ』
言われるがままに、玄は歩く。本当は、助けを呼びたかった。だが、車両内の人はまばら。それに加え、
『妙な行動をとったら、惚れた男も姉もお前のお友達も、全部終わりだぞ』
人質がいるのには、変わりなかった。
前に進めば進むほど、人の数が増えている気がした。そして、
『そこだ』
指定された車両は、思わず玄が顔を顰めるほど人で溢れていた。主に、スーツ姿のサラリーマンが乗客のようだ。
『後はそこにずっといろ。逃げたり反抗したりした時点で終わり、愛しの彼にも会えないぞ。じゃあな』
ぷつん、と通信が途切れる。玄はまたもや理解出来なかった。一体この車両に入って何がどうなると言うのだろう。だが、足を踏み入れるしか道は無い。
扉を開けて、目標の車両に入る。むわっとした熱気が、玄を襲った。
「あっ」
人波に流され、玄は車両の中央にまで移動する。完全に、サラリーマン達に囲まれてしまった。身動き一つ取れなくなり、玄は言いようのない不安に襲われる。
(なに、これ)
がくがくと、脚が震えた。この満員電車の中で何が始まるのか――なんとなく、想像できるようになっていた。
最初は、僅かな違和感だった。
「っ?」
お尻に、何かが触れた。だがこのすし詰め状態、誰かの手が触れてもおかしくない。そう思い込むようにし、
「んっ」
今度ははっきりと、スカートの上から圧迫感があった。それも一瞬で、消えてしまう。ここで終わればやはり勘違いと納得せざるを得なかったろう。
だが。
「ゃ――」
玄の口から短い悲鳴が上がる。さわさわと、確かに人の指がスカートの上に這い回っていた。
本来であれば、痴漢だと叫ぶ場面であろう。だが、それはできない。「ずっとここにいろ」、という命令を受けたのだ。
(そういう、ことっ……!)
玄は歯噛みして、耐える。スタンションポールをぎゅっと握りしめ、紅潮させた顔を俯かせる。
しかし当然ながら、背後に立つ男からの責めはこんなものではなかった。
「あっ」
後ろでスカートが捲り上げられるのが、分かった。すぅっと風が流れ込んでくる。
(パンツっ……見えてるっ……!)
今日着用しているのは紅い、経験に乏しい玄でもどきりとする扇情的な下着だった。男の手は、そのパンツの上から玄のヒップを鷲掴みにする。
「んっ」
「柔らかいね」
「ぇっ」
まさか痴漢から話しかけられるとは思わず、玄は戸惑いの声を上げる。耳元で囁かれると、首筋がぞくぞくと震えてしまう。
「抵抗しないんだね。どうして?」
「ど、どうしてって――」
「分かってるよ。誘ってるんでしょ? こんないやらしい下着つけてさ」
「ち、違うのです……!」
騒ぎは起こせない。か細い声で否定するが、それが逆に誘っているように聞こえてしまっていた。
「ま、無駄話は止めようか。一緒に楽しもう」
「あ――」
サラリーマン風の男の指が、玄のお尻に沈む。あまりの弾力に、男がほう、と感嘆の息を漏らす。
さらにじっくり、ゆっくり男の手は玄のお尻を這いずり回った。
時に揉み、
「んっ」
時にソフトタッチし、
「ん……」
時にヒップラインを指先でなぞる。
「ん……っ♡」
尻への愛撫が始まって二分で、玄の声に甘い色が混じり始めた。その変化に、未だ玄は気付いていない。そして背後にいる男が、この界隈でも有名人であることも。
「え……?」
さらに、股下に冷たい風が入ってきた。いつの間にか、パンツが少し下ろされていた。そこに直接、
「あん♡」
男の手が触れる。冷えた手に、玄の体は稲妻に打たれたように仰け反った。
(な、なに今のっ?)
戸惑うよりも早く、男の手は玄のお尻を蹂躙していく。ぐにぐにとお尻は形を変え、かと思えば柔らかいタッチに戻り、安心したと思えば強い力で掴まれる。すっかりその動きに翻弄された玄は、困惑と急激に昂ぶる体の熱に驚いていた。
「ぁ♡ ん♡ んん♡」
声が、出てしまう。
他の乗客に気付かれたくないと、玄は左手で口を押さえていた。右手はしっかりとポールを掴んだままで、彼女の脇ががら空きになる。
その隙を狙ったのだろう。
すっと、男の両手がヒップから背中を駆け抜け、玄の胸部へと伸びた。
「ゃっ」
やだ、と大声を上げそうになり、玄は噛み殺す。制服の上からでもはっきりと存在を主張する巨乳を、掴まれていた。姉には一歩劣るとは言え、高校生としては充分な大きさ。張りも形も、負けやしない。それを、男は掬い上げるように愛撫する。何度も何度も、繰り返し。
「ぁ♡ ん♡ ゃ♡」
噛み殺せなかった声が、玄の口から漏れ出始めた。制服の上からでは刺激が緩和されているはずが、男は的確に玄の弱点を探し当てると重点的に責め始める。
「んん♡ な、なんで♡ ぁ♡ ゃ♡」
あまりの昂ぶりの速さに、玄自身がついていけない。亜麻色の髪を振り乱しそうになり、必死で頭を固定する。目はぎゅっと瞑られ、足元の光景すら覚束ない。
「だめ、そこ♡ ぁん♡」
制服の上から、乳首を探し当てられる。ベストにシャツ、ブラのカップすら関係なく、男の指先は玄の性感を貫いていく。
上の方に気を取られれば、
「やん♡」
今度は再びヒップを掴まれてしまう。口で噛む制服の袖は、既に唾液に塗れていた。
「ぁ♡ ぁ♡ ぁ♡ ぁ♡」
姉そっくりに喘ぎながら。
「ん♡ ん♡ んんっ――♡」
松実玄は、生まれて初めての絶頂を覚えた。痴漢にイカされたという事実に、しかし今の玄はついていけない。
「あっ♡」
ポールから腕が離れてしまい、痴漢男に背中を預けてしまう。だが、がっしりとした牡の体に包まれると、彼女の牝の本能が安堵の息を零させた。
そして、落ちた右手はそのまま背後の男に向かう。――触れたのは、いきり立った硬い棒。
男の手が添えられ、玄はそれを握らされる。はぁ、はぁ、と玄の口から漏れるのは熱い吐息。悲鳴を上げる余裕も無かった。
「あっ♡」
玄がペニスを握ったまま、愛撫は再開される。後ろから首筋にキスをされ、男の左手は豊満な胸に伸び、右手は桃尻に沈んでいく。
「ぁ♡ ぁ♡ ぁ♡ ぁ♡ ぁ♡ や♡ やなのに♡ なんで♡ すごい♡」
もう、声を我慢できなかった。情けなく口は開き、噛み締めていた左手も落ちていく。
「だめ♡ だめ♡ こんなの♡ だめなのに♡ 痴漢に♡ イカされちゃうなんて♡ やだ♡ なのに♡ たす、助けて♡ 誰か♡ きょ――♡」
最後まで、彼の名前を呼ぶことは叶わず。
「んんんんんっ――♡」
名も知らぬ男の手で、玄は二度目の絶頂を迎える。これ以上無い、というくらいに体を反り立たせる。
だが、彼女の受難はまだ始まったばかりだった。
松実姉妹はどっちもエロくていけませんね(褒め言葉
次回で松実姉妹編も一旦終わり。その後は永水とかアコチャーとかになりそうかもです。
Twitterでリクエストをとっています。気軽にリプライ下さい
@krarisss
リクエスト受付内容(いずれも複数回答可、全てに回答頂かなくても良いです)
1.登場して欲しい咲キャラ
2.賭け麻雀のルール(脱衣や飲薬といったえっちなルール)
3.女の子が汚されるシチュ(痴漢や、プレイ内容、古城という舞台に拘らず)
4.登場して欲しい寝取り男の設定(イケメン、キモオタなど)
5.寝取り男のタイプ×咲キャラの組み合わせ
6.好きな寝取られシチュ
7.既存のシチュやキャラで気に入ったもの
8.その他自由に
特に、美穂子の「愛撫されながら麻雀」とか、玄の「勝てば勝つほど罰ゲーム」みたいなお 2.賭け麻雀のルール を超募集してます。