pixivに投稿しました同名タイトルの同一作品です。
既読の方はご注意ください
「恋って、したことある?」
「え……?」
枕を抱き窓から夜空を見つめる。
親友の部屋から見る夜空は、いつもと変わりない。
親友の表情に笑顔はなく、単純な疑問の色が出ている。
「……ううん、ないよ」
「そっか」
「アンは?」
「ない」
「……してみたいの?」
「うーん」
アンは首を捻り、
「……そうかも?」
とキョトンとした顔だった。
(アン、自分の出した答えが意外だったみたい)
「……そうなんだ。でも、アンは誰と?」
「……誰と?」
「誰かと恋をしてみたいんじゃないの……?」
グレアからの疑問に、アンは夜空からグレアへ視線を移す。
「……グレア」
「だめ」
「えー」
「ごまかさないの」
「ぶーぶー」
グレアが母、アンが娘のように口をとがらせてすねる。
(そう言ってくれるのは、嬉しいけどね)
グレアは微笑む。アンから好意を告げられるのは単純に嬉しい。
恋愛については二人とも経験がなく知識にも疎い。同性同士の恋愛ならばなおさらだった。
自然グレアとアンの関係も深層意識はともかくとして、命よりも大事な親友という域に収まっている。
時々アンはグレアへ欲求が暴走することもあるが、今回はからかい半分であることを双方わかっていた。
「でもなぁー、してみたいなぁー、恋」
「ふーん……それじゃあ」
グレアから身近な男性たちの名前が挙がる。しかしアンは気のない返事で、
「うーん、パス」「いい人だけどねー」「そういうのじゃないかなぁ」
とバッサリだった。グレアも「まあ、そうだよね」と言ってみただけだった。
名前が挙がったのは数多の学友達、恋に恋をしたアンにとっては対象がぼやけている。
「グレアはどう?」
「え、わたし?」
「気になる人とかいるの~?」
アンがにんまりと微笑み、グレアは「え、そ、そんなの……」と恥ずかしがって縮こまっている。
が、当の質問したアンは、
(……いるって言ったら、どうしよ)
慌てるような怒るような独占欲がふつふつと沸いてきて、つい目元と口元が一文字になっていく。
グレアはいざ自分が恋をするという状況を相手不明のまま想像をしてしまい、顔を赤らめてしまう。デートをしたり、抱き合ったり、そういった事は知識としてはある。
「い、いないよ」
「そっかー! えへへ……」
アンはほっとしたように口元を綻ばせる。
だがアンの問いは、グレアの思考に新しい風を呼び込んでいた。
(恋、か)
グレアの脳内にめぐるマナリアの男子生徒たち。先ほどアンへ告げた時と同じ男性陣は、どうもグレアにもピンとくることはなかった。
「私たちって、男の友達少ないってわけじゃないと思うけどねー」
ぐっと伸びをするアンに、グレアも「そうだね」と同調する。
「そういえば」とアンははっと気づいたように声を弾ませると、
「グレアって前団長さんと船乗った時、新しい友達できた?」
「私が、お父さんに会いに行ってた時の事?」
「そうそう! 行きはあんまりそんな雰囲気じゃなかったと思うけど、帰りは色々あったんじゃない?」
「そう、だね……」
グレアは半竜半人、竜が父で人が母。母は既にこの世になかったが、父は竜の国の故郷で、竜と人との交わりの禁忌を犯した咎で幽閉されていた。
それをグレアは『夢』で察知し、父と母の馴れ初めの真実を知り、竜の国に赴いて父を救った顛末は、アンも聞いている。
騎空団長グランはグレアをグランサイファーに乗せ、グレアの旅の翼になってグレアの育った家、竜の国へと導き、グレアの竜人としての覚悟を見届けた。
グレアにとっては自身のルーツを辿りながらの小冒険、ある種悲壮な覚悟を持って臨んだが、父との再会を終えた後は喜びと共に穏やかな船旅だった。
「実は、ね……」
グレアは頬を赤らめて、大好きな思い出を語った。
ある日空を行くグランサイファー食堂にて響き渡る、心安らぐプロの音曲。
「え?」
この騎空団には多種多様な人物が所属していると知っていたとはいえ、突然始まった至玉の演奏会に、グレアは頭が真っ白になって立ち尽くしてしまった。
そんなグレアの手をグランが引いていき、最前列へと案内する。
演奏者は十天衆ニオの琴を始めとして、バイオリンのセレフィラ、エルタのチェロの三重奏。
「すごい……!」
目をキラキラとさせるグレアに対し、グランはここに他の団員やオーケストラの演奏者が加わることもあるとつけ加える。
「そしたら次の日に団長さんが、船の倉庫からアップライトピアノを食堂に運んでくれてね……!」
倉庫で長く保管されていたもので、手入れはしたものの、調律はまだだった。幸い楽器類に明るい団員達が集まって調律を行う中、グレアも輪に入れてもらって鍵盤を弾いて確かめる。
「あの、弾いてみても、いいですか……?」
グラン含め周りの団員達も肯定する。グレアと他の団員達が音曲を奏で、自然、食堂の席が聴衆で埋まり始める。
グレアはグランを連弾へ誘った。かつてグランがマナリアを訪れた時、アンとグレアに挟まれて三人で連弾をした思い出がある。
(楽しいな……なんて素敵なんだろう)
グレアは目をつむり演奏世界に浸る。この船の上では、グレアを奇異の目で遠ざけるような人は存在しない。種族の違いを気にする者などおらず、星晶獣が当たり前のように皆とくつろいでいる。
(団長さん……)
グレアが薄く開いた横目でグランを見る。自分とそう年は変わらないはずなのに、隣で鍵盤を奏でる彼は、これだけの団員たちを束ね、様々な未知の世界を冒険している。
そんな彼が、グレアの見た夢のために船を出し、故郷と竜の国に赴き、危険を顧みずに竜人の宿命を見届けてくれた。
かつてアンに語ったグレアの将来。ピアノの演奏家になりたい。
グレアはピアノの研鑽を欠かしたことは無いし、漠然とした将来ではなく明確な目標として定めていたが、その目標の一歩内側に、今日初めて踏み込んだような気がすると、団員たちの拍手をもって実感していた。
隣で微笑むグランをグレアは見つめながら、もう一つの自身の目標を思い出す。
自身の半竜としての力で、多くの人を助けていく。助けられた分、恩返ししていく。
グレアが誰に助けられたかと言われれば、もちろん親友アンと、マナリアの多くの友人たち、そして大切な家族が思い浮かぶ。
そして、目の前のこの少年。彼には助けられるばかりで、グレアは何か返すことができただろうか。
そんなことを、食堂で演奏を終えたばかりのグレアは思っていた。
だが、当のグランはというと、再びグレアの手を握り、
ありがとう、とグレアに告げた。
「え……?」
グレアがいてくれて、ここで一緒に演奏してくれて、同じ時間を過ごせて、楽しくて嬉しい。グランは屈託のない笑顔でグレアへ告げる。
「そ、そんな、私の方が、団長さんに助けられてばかりで……!」
(あ)
グレアの脳裏にアンと過ごした日々がフラッシュバックする。こんな時言うべき言葉は他にある。
「……私も……私も、団長さんと一緒に演奏できて、楽しくて、嬉しい……! ありがとう、団長さん……!」
この手の温もりと共に心に刻まれた喜びを、グレアは生涯忘れることはないだろう。
グランの手が離れる。
(あ)
グレアは一縷の寂しさと共に、この空間にグレアはいつまでもいられないことを思い出した。
これはマナリアに着くまでの一時の幸せ。島につけばグレアは学園に戻り、グランは空の旅に戻る。
グレアは学生の本分を全うするため、グランはイスタルシアを目指すために。
グレアは別に、マナリアに帰りたくなくなったわけではない。マナリアはアンとみんなが待っている大好きで大切な場所だ。
(だけど)
「団長、さん」
グランが振り返る。
「私、ね。夢、目標があるの。学校を卒業したら、プロのピアノ演奏者になりたい」
グレアならきっとなれる、応援している。と、グランから暖かい言葉がすぐに返ってくる。
「ありがとう……。もし、私がプロのピアノ演奏者になったら……また、ここで、弾かせてくれる……?」
グランはグレアに正面から相対し、手を出して指切りを誘う。
「え……?」
なら、グレアがピアノ演奏者になってグランサイファーにまた来るまでに、今度はこの船に音楽室を作って、グランドピアノを用意する。
互い互いの約束に、グレアはグランと小指を絡ませて応えた。
「うん、約束……だね、団長さん」
グランと、呼んでほしい。
「え!? あ、そ、そう……グラン、さん。ううん……」
グレアは深呼吸し、ゆっくりと優しく鍵盤を弾き始めるようにして、
「……グラン」
話し終えたグレアは深く息をついた。紅が差した頬とほのかに微笑む唇が、月光を反射している。
(グ、グレアが……!)
アンはわなわなと震える口元を手で押さえると
(グレアが恋しちゃってるうぅーーー!?)
「どうしたの?」
「え、い、いやっなんでもっないよ……!」
(……グレア、もしかして自分に気づいてない? 私の、早とちり……?)
アンの表情が落ちつくと、グレアも特に気にせず、
「そう……? ……ふふ、もしまた船に乗る機会があったら、今度はアンと一緒に行きたいな」
「そう、だねぇ……む」
アンの眉が逆ハの字に歪む。
「むぅー……! 私もグレアの故郷行きたかったなー! 船も一緒に乗りたかったなー! 団長さんたちとピアノ弾きたかったなー!」
アンがすねるモードに入り、グレアの両の掌をつかんでは軽くぶんぶんと左右に揺らす。
グレアは困ったように笑うと、
「もう……。でも次はいつ来てくれるかわからないし、私達も学校があるし……」
「むぅー……!」
グレアは口には出さなかったが、アンは王女でもある。グレアやツバサと違い、おいそれと学校を離れて空の旅へ、とは行けない。
言われずともアンはわかっている。
「お正月とかは団長さんたち来てくれるのになー……」
「おこたでのんびりしたの、懐かしいね」
(空の旅、か)
アンは瞳を閉じる。夢想するは一面の蒼空と雲を裂く騎空艇。
甲板にて先頭に立つのはグランとルリア。そして旅を支えるは数多の人々と、アンとグレア。
風の島、火山の島、海の島、森の島、騎士の島、霧の島、船の島、別空域のアンが想像もできない未知の島々。
数々の冒険と様々な出会いがそこにあるだろう。そしてどんな困難が待ち受けようと、私とグレアならば、そして団長さん達とならば、決してくじけずに乗り越え、楽しく旅を続けられるだろう。
「アン?」
「決めた」
「え?」
アンは目を開く。にぎにぎしていたグレアの手を祈る様にして自身の顔の前に持ってくると、
「グレア、一緒に短期留学しよう。団長さんの船へ!!」
「……え……えぇえ……?」
アンにも勝算はあった。先に短期留学していたツバサ達が学期末に戻ってきた際、その成績が改善されていたこと。グランサイファーには王族が諸国を遊学するために在籍していたなどという話もあるほか、グラン自身が様々な国のパイプ役、国境を越えた特別な存在として認知されている。
アンがグラン達と関係を深めておくのは将来的に必ずプラスになる。というのは英霊や両親を納得させるための建前半分本気半分として、グレアと一緒に空の旅に行くのは、学校を卒業したらもっと難しくなる。グラン達だっていつ違う空域に行ってしまうかわからない。ならば思い立ったが吉日! というわけで、アンは関係者各位に連絡、説得。
グレアとアンは今、グランサイファーにいた。
「ほっほう……ここが団長さんとグレアが仲睦まじく共同作業をした曰くつきの……」
「ちょ、ちょっとアン、言い方……」
ちなみにオーウェンは航行中に魔物が来襲した時の迎撃準備や各種分担を熱心にラカムやオイゲンから聞いて回っていた。
アップライトピアノを前にはグラン、アン、グレアの三人。ランチにしては遅い時間で人はまばら、ローアイン等料理班も洗いものを終えて今はいない。
「ね、ね、さっそく三人で弾こっ。団長さんもうまくなったんでしょ?」
二人に比べればグランは遠く及ばないが、元々音楽を操るジョブもマスターしているゆえ楽譜は読めるし、またアンとグレアと会った時に楽しみたいがためにそこそこ練習の時間は取っていた。
しかしグレアはアンの提案に対して、
「ねえアン、実は聞いてほしい曲があるんだけど、いいかな?」
「え? いいけど……」
はて、グレアからこんな提案は珍しい。今日は何か特別な日だったっけ? とアンは思うものの思い当たらない。
さらに珍しかったのは、ピアノ椅子に座ったグレアの隣に当然のようにグランが座り、グレアと視線を交わしながら鍵盤に手を置いていた。
「いくよ、グラン」
グレアの言葉にグランは頷き、呼吸を合わせて弾き始める。
(これ、聞いたことない曲だ。もしかして、グレアが作曲した、新曲……?)
激しく繊細な動作の中で白と黒が絶え間なく交差する。
アップテンポでありながら旋律は優しく温かい。
アンが目を閉じて脳裏に浮かべるのは、空を駆ける竜の娘と、王女の物語。
竜と人の血を引く少女は孤独な音律から抜け出て暖かさを知り、王女は血筋ゆえの周りの遠慮の中で真の友情を知った。
生まれの呪いを祝福に昇華し、色づいた二人の景色に吹いた一陣の風。
自分たちとそう年は変わらないのに、自由と冒険を御旗に空を駆ける一人の少年団長。
今グランとグレアが連弾で奏でるピアノソナタは、マナリアの音楽室に比べれば反響は薄く、強弱の幅も狭くトリルの反応も鈍い。二人の演奏分担もグレアに比重が大きかった。
それでもなお、二人がアンのために、この瞬間のために音楽のサプライズプレゼントを送ってくれていることは、アンの心に感動を起こしていた。
(あぁ……いいなぁ……)
アンの中で大好きなグレアへの想いがあふれ、そしてグランへの感謝の気持ちがあふれる。
二人が弾き終わって立ちあがり、いつまでも拍手しているアンへ向き直る。グレアは頬を紅く染めながら、
「どう、だった? アンがこの船に来た時、サプライズで曲をプレゼントしたらどうかなって……グランが提案してくれて。演奏、楽しんでもらえたかな?」
アンの返答は、飛びこむような抱擁だった。グレアとグランの首に手をまわし、抱き着かれた二人は驚きの表情を浮かべながらもアンを支えるように受け止める。
「もうっ、さいっっこうだよぉ! ありがとうグレア、団長さん! 二人共すっごく素敵な演奏で、本当に泣いちゃうくらい嬉しいよ……!」
事実、アンの目尻には雫が浮かんでいた。
「グレアが作曲したの?」
「私と、グランでね。アンとグランの三人をイメージして、グランから聞いた空の旅の話や、冒険をテーマにして、手紙でやりとりしながら一緒に作ってみたんだ。聞いてて楽しくて、それで優しい曲になってほしいなって……」
「もうバッチリ! すごい、私たち三人の旅のテーマソングだね! 団長さんもありがとう、あ、ごめんね。つい抱き着いちゃって……あはは……」
アンはいつもの調子でグレアに抱き着いたものだから、異性でありほぼ同年代の少年のグランに抱き着いたことに対して、今になって恥ずかしくなってしまって離れた。
グランも少し恥ずかしそうに頬をかきながら『気にしないで』と声をかけ、アンに喜んでもらえたことにほっとした様子だった。
(すごいなぁー団長さん。この船の騎空団長で、強くて優しくて、グレアとも一緒に曲を作っちゃうくらい仲良くなってて……)
アンから見える景色には、グレアとグランが頬を染めながら見つめ合い、微笑み合っている。
「もしかしてグレア……マナリアを卒業したら、この騎空団に入っちゃったり? 旅の騎空士にして、ピアニスト……すっごい似合ってるかも!」
グレアは驚いた様子で、
「ええ!? それって、私が騎空士になるってこと……? でも……」
グランはアンの言葉に同調した。グレアが団の仲間になってくれれば、こんなに嬉しい事はない。グレアは微笑みながらも、
「ありがとう……まだそうなるかは決められないけど、グランがそう言ってくれるなら、考えてみるね」
グランは頷いた。学校を卒業しても、グレアは様々な未来を選ぶことができる。候補のうちに入っているだけでも光栄なことだと、グランは言った。
(様々な未来かぁ……)
微笑み合うグレアとグランを、アンは憧憬の念を込めて見つめていた。
もしマナリアを卒業したら。アンの道は決まっている。
アンの提案により三人で連弾をしようとしたところでグレアがお花を摘みに行き、席にはアンとグラン二人が残された。アンは少し声を潜めて言う。
「もしグレアがその気になったら、団長さん、グレアの事、よろしくね」
グランはもちろんと即答し、また、その時にはアンも一緒にいてくれたら嬉しいと言う。アンは困ったように笑い、
「またまたぁ~。そう言ってくれるのは嬉しいけどね。私はマナリアの王女だから。卒業しても寂しくないって言ったら嘘になるけど、それでも卒業した後のことも楽しみなんだ! 大切なマナリア魔法学園のみんなとグレアと団長さんたちと過ごした私が、マナリアに何ができるかな、てね」
アンの言葉と笑顔には、本音と王族たる覚悟がうかがえた。グランの仲間にも、現在進行形で治世を行う王族も多数いる。彼らと今のアンの姿が重なり、アンもまた可憐な少女でありながら、英霊に認められた責任ある立場なのだと、グランは今更ながらに思い直した。
しかしグランからすれば、それでもアンとグレアには離れて欲しくないという、おせっかいな想いがどうしても沸き起こっていた。グレアと話をすれば常にアンのことを気にかけているし、アンもまたそうだ。二人は親友というよりも家族、いやそれ以上の愛情をもった関係なのではないか。
二人のために、何かできることはないだろうか。グランは数秒の思考の末提案した。
以前、アンは外交使節として各国を飛び回ることも多いと聞いた。魔法学園を卒業したら、その機会も多くなるだろう。その時は……アンの護衛を、グランサイファーに任せてもらえないだろうか。もしグレアも団に入っているならば、アンとグレアは長く二人で過ごすことができる。
「え……」
アンはキョトンとした顔で聞きいり、その光景を瞬時に脳裏に浮かび上がらせていた。もしもにもしもを重ねた、可能性の低い無意味な想像かもしれない。
しかしそれでも、学園を卒業した後でも、互いの立場を忘れなくても、グレアと一緒にいられる時間を長く作れる可能性があるのなら、目の前の少年がそのための手助けをしてくれるなら。
アンは、絞り出すように声を出した。
「本当に、いいの?」
グランは頷いた。アンとグレアは団に所属はしていないものの、それでも大切な友人であることに変わりはない。二人のためにできる努力は惜しまないと、グランは正直な気持ちを伝えた。
また、アンのハッピーバースデートゥユーは毎年聞きたいし、と付け加えて。
アンも微笑みをこぼし、
「ふっふーん、ご指名とあればいつでも聞かせてあげるよ。……ありがとね、団長さん。私もあきらめずに、できることを考えるよ。団長さんが協力してくれるのってすごく心強いから、私も応えないとね」
アンは言葉を区切ってグランから視線を外すと、頬を紅く染めながら少し声をひそませ口を尖らせつつ、
「ね、ねー団長さん……。私もその、グレアみたいに、団長さんのこと、名前で呼んでも、いいかな……?」
グランは微笑んで了承した。アンはパッと表情を明るくして、
「ありがとー! えへへ、よろしくね、グランっ。あ、グレア帰ってきた」
三人で連弾するため椅子をつめようと、アンとグランは座りながら動く、その過程でアンとグランの側部が密着した。するとアンは、
(あ、あれ!?)
ドキン、とアンの心が跳ね上がり体の温度が上がった。服の上からはわかりにくい筋肉質なグランの男体を、アンの中の無意識が急速に意識し始める。
(あ、あれ? 団長さんと連弾するの初めてじゃないのに、私、急に……?)
「じゃ、さっそく始めようか。グランもリラックスしてね」
グレアが優しい声を出しながらアンと二人でグランを挟み連弾態勢へ。少し緊張の面持ちのグランの顔を、グレアは至近距離で見つめている。
そのグレアの顔は、アンが初めて見るような幸せでありながら積極的な表情。アン自身も、同じ表情をしているかもしれない。
(……あっちゃー……これ、まずいかも……)
不思議な感情を自覚した時、それでもアンは微笑んだ。今はこの時間を、大好きなグレアと――なグランを間近で感じながらピアノを弾くことができる。この幸せをかみしめながら、連弾を開始した。
端的に状況を説明すると、アンとグレアとグランは閉じ込められている。
事の発端は遺跡調査依頼。古代マナリアに関連するというこの遺跡において、現地調査チームに加え護衛としてグランの騎空団が同行、アンとグレアとオーウェンも本人たちの希望(特にアン)によって護衛隊に入り、魔物との戦闘では獅子奮迅の活躍を見せたが、突如として発動した遺跡のトラップによってアン、グレア、グランは個室に閉じ込められてしまった。
「団長殿! 姫様とグレア君を!」
トラップで扉が閉まる瞬間、グランはアンの護衛騎士たるオーウェンから二人を任された。
幸い三人にケガはないが扉が開く気配はなく、魔法が使われているからか命のリンクからルリアの気配は感じるものの、連絡が取れない。
しかし、三人は落ち着いていた。グレアは魔法陣が描かれた扉を撫でながら、
「この扉壊せそうだけど、どうする?」
「うーん、ちょっと待ってね、解読できると思う……えーとなになに……」
グランは扉を二人に任せ、周りを警戒していた。壁や柱に魔物の痕跡があったからだ。しかし痕跡はかなり古く、気配は感じられない。
本を手に口元に指をあてて魔法陣とにらめっこしていたアンは、「ふむふむ……」と首を上下させた後、
「この部屋……魔物の飼育施設みたい。雌雄を閉じ込めて、繁殖と実験を行ってたんだって。すごい……雌雄の入室を判断して自動で閉じ込める……へーどこでそんな機能を……」
「えーと、それで、アン?」
「あぁごめんねグレア、グラン。結論から言うと、人が入っちゃったときの避難口があるって書いてあるよ。ただ扉が閉まっただけじゃなくて、転移もしちゃってるみたいだから、扉を壊しても別の部屋に行くだけみたい。どうしよっか」
グレアとアンの視線がグランへ向く。こうした状況ならば、グランの判断を仰ぐのが最善だと二人が判断した。その責任をグランは感じ、方針を伝える。
遺跡調査チームの前情報とアンの解読を照らし合わせれば、侵入者を排除するトラップに引っかかったのではなく、今三人は実験施設の事故に巻き込まれた状況。ならば案内に従えば、元居た場所に戻れる公算が高い。またこの部屋は広くて全様が見渡せないが、現時点で生物の気配はない。
ここはアンが解読した情報通り、避難口に進もうと伝えた。
「了解しましたグラン隊長! ふふ、しばらくこの三人で冒険だね」
「アン、真面目にしないと。また前みたいに子供になっちゃうかもしれないよ」
「わかってるってー」
グランが前、アン、後方にグレアと続く。部屋は大型の魔物に対応した繁殖部屋だったのかしばらく歩いても全様がわからない。
全員が緊張感は保っているものの、そこまで危機感はもっていなかった。生物がいる場所には痕跡や臭いが残っているものだが、ここにはまるでない。放棄され、生物がしばらく生活していないことは容易に想像できた。
すると道の半ばで、新しい魔法陣が壁で発光しているのが見えた。アンが「任せて」と解読を試みる。
「ふむふむ……えーと、現在の部屋の収容状況……雌の竜種1匹、雄の未知の生物1匹……んん?」
「竜種に未知の生物……」
グランとグレアは警戒度を強めた。魔物や星晶獣の中には長く休眠するものや食事や排泄を必要としないものもいるからだ。
しかしアンは不思議そうな声で続ける。
「えーと収容経過時間は……13分って書いてある。あ、今14分になった。これって、私たちが部屋に来た時間と同じくらいじゃない?」
「確かに、それぐらいかも……あれ、もしかして……雌の竜種って、私の事?」
「古い遺跡だから、不具合が起きてるって可能性もあるけどね。雄の未知の生物っていうのも気になるし……人間はカウントしてないのかな?」
グランは、自身の手のひらを見て、首を振った。とにかく今は進むしかないと言い、グレアとアンも了承したところで、アンが声をあげた。
「待って! また表示が変わって……雌雄収容……15分経過を……確認……繁殖実験を……再開……」
「繁殖実験……?」
グランは嫌な予感がした。グランの鼻腔を一瞬くすぐったのは、慣れ親しんでしまった”あの香り”。
幸い部屋は広く、急激に充満するとは考えにくい。ならばいち早くこの部屋から脱出を目指すか、引き返して先ほどの扉を破壊するか。
そこまで考えたところで、突如壁から銃口のような筒が生え、グレアに狙いを定めているのがグランの視界の端に写った。グレアは気づいていない。
「え」
すぐにグレアを庇うようにグランが覆いかぶさった瞬間、破裂音が鳴った。グランは属性力で背中を強化し衝撃に備える。
しかしその必要はなかった。アンが英霊で二人を守護していたからだ。
「大丈夫!? 二人共!」
グランの悪い予感は当たっていた。英霊が守ったとはいえ、銃口から発射された桃色の煙幕はアンの周囲に漂っている。
「アンこそ大丈夫!? その煙って……!?」
アンはすぐさま自身に魔法陣を展開し、少量吸い込んでしまった自身の解析を開始する。
「うん大丈夫! 毒じゃないみたい。むしろこれって……滋養強壮的な……!?」
(あ……あれ? グレアがすんごく綺麗でかわいく見えるし……グランって……こんなに、かっこよく……?)
状況を全て把握したグランがすぐさまアンをお姫様抱っこしつつグレアに声をかけ、先ほどアンが指し示した避難口の方へ走る。
「ま、待ってグラン!? アン! アンどうしちゃったの!?」
幸い避難口はすぐに把握でき、そこにはかつて休憩スペースとして使われてたであろう寝台もあった。グランは悶えるアンを寝かせ簡単に触診し、持参していたクリアハーブを使いつつ、泣きそうなグレアへ状況を説明しようとした。
グランは散々見てきたからわかる、アンは今、発情状態にある。しかも薬だけでなく魔法による魅了効果と滋養強壮効果のおまけつきで、おそらくは研究部屋で繁殖を促進するためのものだろう。
アンは強制的な発情状態、命に別状はない。
しかし、それを学生たるグレアにどう言えばいいのか。グランが逡巡している間に、
「んんっ……! ああぁっ! くぅう……あ、こ、これ、きつい……!」
「アン!? アン!! どこが痛いの!? そんな、こんなの、私達を庇って……! どうしようグラン!?」
「うぅ……! 痛いっていうか、その……逆っていうかぁ……!」
(二人の顔が、近い……あ、すごい、グレアと、グランの顔、良……!)
寝台のアンが頬を赤らめ、体を悶えさせてよじる。傍から見れば毒に犯されているように見え、グレアの泣きそうな顔はますますクシャクシャになっている。
そんなグレアの姿を見てグランは覚悟を決めた。グレアよく聞いて、と話しかけ、アンに起こっている体の状況を、ドクタージョブをマスターしているグランとして伝えていく。
グランの真剣な表情、年頃の少女に配慮した言葉選び、努めてグレアを落ち着かせるために、グランは誠意を尽くしてグレアへ説明した。
(え、ちょ、うわ、うわああああ! やめてえぇ!)
間近で聞いているアンは悶絶の意味が増えてしまっている。
「え……アンが、はつじょ……はぇっ!? あ、あぅ……え? ええ……うぅ……!」
しかしどれだけ言葉を選んでも現実は変わらず、グレアは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。寝台の上のアンも真っ赤な顔を自身の両手で覆ってしまっている。
必要があったとはいえ、同年代の少年から告げられる発情の事実。グラン自身地獄の空気を作ってしまった自覚はあったが、アンの状態を正確にパーティに伝えなければ混乱により自滅しかねない。
グランは取るべき方針を頭では理解していた。アンの発情状態を連続絶頂させて正常状態に戻し、遺跡探索に戻る。しかし問題なのは、一応の経過観察でアンの状況を見ていなければならない事、アンとグランが年頃の少年少女ということだった。
感情を度外視してグランの方針をアンとグレアに納得させることが可能なのだろうか。とはいえ、このまま状況を先延ばしして好転はしない。グランは変態のそしりを受けることを覚悟し、アンとグレアへ方針を伝えた。
「はぅ!? えっ……えぇ……?」
グレアは顔を真っ赤にしながら返答できず、
「はぁ……はぁ……! くっ……ふぅー……」
アンは一度目を閉じて、思考を巡らせる。
(……私のミスだ。解読をもっと正確に早くして、グレアが狙われていることを把握していたら、こんなことにならなかった……。二人に、これ以上迷惑かけられない……!)
アンが寝そべったまま動かないのは、動けないからではなかった。先ほどから上昇しつづけるグレアとグランへの性的欲求と暴力的なまでの衝動。体を横にして理性を総動員しなければ、二人に性的に襲い掛かりそうだった。
アンはグランの袖を掴んで引っ張る。アンとグランの視線が交わり、アンは一瞬の躊躇の後、コクンと頷いた。
そんな二人を見てグレアは愕然としたまま、動けない。
(私は……私は、どうしたらいいの? アンが、その、エッチなことを、グランに……?)
グランはアンへ、自身で体を動かせそうか聞いた。アンは首を振り、自身のスカートを掴んで気持ち腹部の方へ上げた。
(私、これから……男の人に……)
アンの複雑な感情。興奮と性的欲求があふれて止まらないが、自分のこんな痴態をグランとグレアに見られるなんて、という恥と悲しさは消えてくれない。
いつか、愛する人とロマンティックな経験をすると思っていたのに。目をつむったアンの目尻に雫が溜まる。
そんなアンのおでこに、柔らかい感触があった。
「え……?」
アンは目を開き、それがグランのキスだと認識した。グランはアンの頬を優しく擦りながら言う、アンはグレアと僕を守ってくれた。優しくて可憐で強い、自慢の友人だ。これはあくまで治療行為だから、安心して身を任せてほしい。絶対にこのことは誰にも言わないし、今後話題にもしない。必ず、アンを助けて見せると。
(団長さん……)
アンの表情と思考に暖かい感情が流れ始める。グランと呼び始めた少年を『団長さん』と再び認識したのは、彼から感じた落ち着きと包容力に起因するかもしれない。
そんな二人を見たグレアは、惑っていた表情から頭を振って決意のこもった表情に切り替えたあと、アンの頬を撫でながら穏やかに口を開く。
「ありがとうアン、私を守ってくれて。今、私には何もできないけど……私は、傍にいるよ。あ、でも傍にいないほうが、いいよ、ね……」
アンは首を振り、グレアの手を握った。指先を交差するようにからめ、潤いを持った瞳でグレアを見つめる。
アンは次いでグランを見、絞り出すように声を出した。
「おねがい、します……!」
グランは頷き、躊躇なくアンの青いスカートの中へと手を伸ばした。慣れた手つきで内部のショーツに手をかけて少しずらした後、一気に下ろす。
マナリア制服を着たままのアンの、ショーツだけが取り外された。グレアはショーツの湿り気を帯びた部分を確認してしまい、アンを直視できなくなってしまう。
(グレア……!?)
グレアのそんな反応を見たアンに沸き起こった感情、グレアがアンを拒否することなどありえないが、薬の効果で好意が爆増しているこの状況で動作だけとはいえ目をそらされるのを間近で見ると、アンの心の中では言いようのない不安が押し寄せてくる。
「グレアっ!」
アンが突如上半身だけ起き上がり、グレアを抱きしめた。アンは息荒く風邪を引いたような表情をしながら、途切れ途切れに話し出す。
「……ごめ、ごめんねっ。こんな、姿見るの……いやだよね、でも、私、不安で……!」
抱きしめられたグレアは目を見開き、アンのことを抱きしめ返す。
「違う! 違うのアン! ごめん……もうアンを不安にさせたりしないよ。私が……傍にいるからね」
グレアはアンを抱きしめ、アンの治療が終わるまでこのままでいようと決意を固める。
「グレア……んちゅ……」
「あ、アン!?」
アンがグレアの頬に口づけ、グレアは顔を真っ赤にして固まってしまう。次いで、アンはグランに顔を向け、
「お願いしますっ!」
さっきより大分理性的かつ決意のこもった表情でグランへ促した。
え、この状況で、いいの? とグランは思わないでもなかったが、アンのスカートの中から広がる泉を見て、頷いて二人に近づいた。
先ほどまで悲しみと不安と体の違和感に苛まれていたアンの表情が、みるみるうちに喜びと期待と活気にあふれていく。
(ああ……グレア好き……暖かくて優しくて……もっと……もっと……ほしい……!)
アンはグランを見つつ、
「あの、もっと顔近づけてもらっていいかな……」
グランはアンに笑顔でそう告げられ、座ったまま抱き合うアンとグレアの横へと近づく。すると、グレアを抱きしめていたアンの片腕がグランの腰に回された。グランとしては構わないが、グレアは大丈夫だろうかと、グランはグレアへ眼差しを向ける。
「う、うん。大丈夫だよ。グランなら……アンのためだもん」
グレアは顔を茹で蛸のようにしながらも、アンのためならば全てを受け入れているようだった。ならばとグランはアンの要求に応え、体を寄せる。
傍から見れば男一人に女二人が座って抱き合う体勢。顔も容易にキスできるほどに近い。密着するアンとグレアの豊かな双丘が、服越しに触れ合って形を変えている。グランはごくりと唾を飲みこんだが脳内を理性で満たし、アンのスカートの中へ、手のひらを侵入させた。
全ては、薬によって暴走してしまったアンの性欲を解消させるため。
「は、はぁ、あっ!?」
アンの一瞬の不安げな表情の後、くちゅりと音を立てて、グランの指がアンを撫でた。
「はうぅん!? ああっ! んんああっ!」
アンの体が浮き上がるように跳ね、グランはアンがもっとも感じる場所を探していく。浅く侵入し、押撫で、指を包む圧力の反応がもっとも大きい場所を、的確に学んでいった。
「あっ、アン……!?」
今まで見たことも聞いたこともない親友の艶姿に、グレアは戸惑いと共に下腹の奥が疼く初めての感情を覚えた。アンの薄く開いた翡翠の瞳、開いた口の中では唾が糸を引き、艶のある唇が深いキスを求めるかのように紅く輝く。
対してアンは、戸惑いは未知の快楽で彼方に消え去り、本能に従って下半身を左右に揺らしてグランの指を奥へ奥へと来るようにせがみながら、目の前のグランとグレアの顔に夢中になっていく。
(こんな、こんなに気持ちいいのっ、知らないっ! 自分の指でしたときと比べて、こんなに……!?)
グランが奏でるクチュクチュとした水音は徐々に大きくなり、アンの甲高い嬌声が大きくなるたびに、アンはその顔をグレアとグランへ近づけていく。
「グレアぁっ好きぃっ、だんちょうさっ、グランぅう! もっと、もっとぉっ!」
「アンっ……!」
グレアは言いようのない興奮を覚えた。アンから今まで好意は何度も告げられてきたが、こんなにも快楽で喘いだ状態のアンから告げられると、知識としてもおぼろげな性行為をアンとしているかのような錯覚に陥ってしまう。
アンは、極大な快楽とグレアとグランに包まれる多幸感で我を忘れそうになりながら、理性的に二人を見る思考もあった。
(私のために、すごい事させちゃってる……グランだって……多分好きな人とか、ルリアちゃんとかに悪いよね、これ……でも……)
アンが痴態を晒しながらも、グランは的確な分析と対処を行い、アンの心に寄り添い安心させてくれた。
治療行為という名目ではあるが、今のグランには情欲に流されているような態度が一切見受けられない。
もしここでアンがグランの股間に視線を落としていたら、その見立ては間違っていることに気づくのだが、アンは、
(ちょっと、悔しいかも。それに……)
治療とはいえ、アンになんてことをしているんだ自分は。というようなグランの思考が、アンからは彼の表情から見て取れた。
(罪悪感は、持ってほしくないなぁ。さっきのおでこの、お返ししちゃお)
アンはグランの手淫に喘ぎながらも、唇を尖らせ、
「ああっ! んあっ、んちゅうっ!」
「え!?」
グレアを横目に、グランの唇と、アンの唇がぶつかった。
(あっ!? ほっぺのつもりがっ、えーと、まあいいやっ)
驚愕したグランを前に、アンは微笑んだ。
「んっ……グランみたいな素敵な人に、こうしてもらって、はぁ、結構嬉しいかなって……えへへ……」
グランの罪悪感を弱めようとしているアンの気遣いは、グランにも伝わった。アンはそのまま、
「グレアも、ありがと、んちゅうぅ」
「んんっぅ!?」
グレアの唇にアンの唇をくっつける。薬の影響がなければ絶対にしない行為だったが、今はためらいがなくなり、アンの中では喜びしかない。
「あ、アン……! もう……初めてだったのに……!」
「え!? あーほら、女子はノーカンてよく言うし! ノーカン、ノーカン!」
「うぅ……もう、治ったんじゃないの?」
「えーと、自分で言うのもなんですけど、治ってたらこんな大胆になれない……」
「むぅ……」
グレアも渋々納得した様子だった。アンはグランを見つめ、
「ねえ、キスしながら、してもらってもいい……? そしたら、もっと早く治りそう……」
このままエスカレートして快楽の谷へ転げ落ちてしまうのではないかという危機感は、アンとグラン双方が持った。しかし薬に犯されたアンに抵抗するすべはなく、グランもまた、せめてこの一時だけでもアンの希望は全て叶えてあげようという気遣いの情が勝った。
せめて、アンにとってとても気持ちいい時間になればと。グランが顔を傾け、アンと口づけしやすい角度に整えると、アンはグレアを見つめ、
「ねえ、グレアも一緒にキス、してほしいの」
「え、ええええ!? そ、そんなぁ」
普通ではないとグレアは言葉を続けたかったが、アンの子犬のような表情と、さきほどのキスの感触、また、グランともなし崩しにキスしてしまうのではないかという不安と期待が、心を侵食していく。ちなみに三人は気づいていなかったが、グレアとグランはアンから経口感染していた。
グレアは結局観念したように息を吐くと、
「……わかった。治療のため、だからね?」
「もっちろん! それじゃあ、グラン。また、いっぱいして……!」
アンが腰をよじって、膣内をキュッと締めてグランの中指を掴む。アンの淫蕩な誘いに対し、グランは丹田に力を込めた。
アンが目を閉じ、少し隙間の空いた唇を突き出す。唇の間には赤い舌が覗いていた。今度はグランから唇を合わせ、アンのヴァギナから指の出入を再開する。
「はむっんちゅ、ぷはぁああんっ! はぁ、グレアもぉ、ほらぁ」
間近で繰り広げられたグランとアンの深い口づけに対して、グレアは胸をドキドキさせながらも、それでも内向的な性格からグランを見て、許可を求めるように、
「い、いいの……?」
とか細く声を出した。グランは頷き、グレアの背中に手をまわし、アンと一緒に包み込むように抱き寄せる。
グレアは、アンの事が大好きだ。グランの事も、気になり始めていた。普段のグレアなら、あまりの恥ずかしさと混乱でこの場から逃げ出していただろう。
しかし増幅された欲望が、グレアの背中を押した。
(ここで、アンと、グランと、キスをしたら……そしたら……私……)
グレアには想像もつかない、愛情と心地よさに包まれるかもしれない。グレアはその期待に導かれるまま、
「アン、グラン……んちゅううぅっ」
アンの手を握り、グランの服をつかみ、口づけの輪舞の中に飛び込んだ。
どこまでも転がり落ちていく。押し付けあう三人の体、乱れ飛ぶ唾と嬌声、
「グレアぁん、あむっんちゅうっ、はぁん、んちゅうれろちゅぱっ」
「アン、ちゅるちゅぱ、アンぅうんちゅううれろ、ちゅうぅ」
アンは深く唇をつけあう中で、もっとグレアを感じたい、もっとグランを味わいたいという欲望が舌を呼び、呼応するようにグレアも舌を出し、グランが二人を受け止めるように舌で愛撫した。
そんな中でもアンはビクビクと痙攣しながら尿道から飛沫をあげ、
「あぁ!? らめっいくっまたイクっんあああっ!」
ビクビク! プシュプシュ!
アンの体が痙攣したのち、マナリア制服のスカートの中でグランの手と寝具をビショビショに濡らしていく。
アンはグランとグレアに全体重をあずけ、だらしないイキ顔をさらしながら、大きく開いた唇から出した舌でグランとグレアの唇と舌を舐めながら、
「んちゅれろぉ……ねえ……もう、指じゃ、我慢できないよぉ……」
「あ、アン……それって……!」
グランも、数多の経験からそんな気はしていた。しかし相手はマナリアの生徒、騎空団員ではなく一時預かりの仲間であり、ましてやアンはマナリアの王女だ。
指とキスだけなら、まだ引き返せるかもしれない。しかし、アンはグランに口づけながら言葉を紡ぐ。
「本気……だからぁ……んちゅ……私……。グランなら、ううん、グランだから。この状況でも、グランだから、良かったって、想うの、んちゅうぅ……」
まるで恋人のような深いアンからグランへのキス。
普段のアンは自制心があり、責任感が強く、王族しての自覚がある心身共に立派な才女だ。アン自身、軽挙な行動はできない立場だと重々理解している。
だからこそ、こんな状況でもなければ自分にはできないことがあると自覚していた。
(薬に犯されて、我慢できなくなってる私だからこそ、今だけは……)
大好きな二人と、初体験がしたい。あとで正常な自分に戻っても、言い訳ができるから。
そんなアンを見たグレアも、アンの心の中の深い欲望を言語化はできずとも本能で理解した。グレアは今だけは、グランへ芽生えかけていた淡い想いを封印する。
「グラン、私からもお願い。アンを、その、もっと深い、治療をしてくれる……?」
治療という名の免罪符、アンの深いキスと、彼女の親友グレアからの頼み。
全ては治療行為という蓋の下、グランはこくりと頷き、アンの濡れそぼった場所から指を引き抜き、自身のズボンとパンツへ指をかけ、アンとグレアの前で男根の全てを晒した。
「あぁっ……!」
「んんっ……!」
期待の息を吐くアンと、驚愕で息を呑むグレア。二人共に人生で初めて見た恐るべき代物に対して反応は別れたものの、二人の女子の股間部だけはうごめいて液体を分泌し、急速に受け入れ態勢を整えていく。
「はぁ、はぁ、ふぅー……!」
アンは息を荒くしたままグレアへの抱き着きを解除し、上半身も服を脱いで全裸になったグランに倣い、アンも黒いベストの前を開けて、シャツのボタンの前を開き、少しだけ水色がかったブラを外した。
でかい。グランは正直にそう思った。ただし、あまりに恥ずかしそうなアンの表情を見て、こっちに合わせなくてもいいと言うと、アンは、
「そ、そう!? それじゃあ、ちょっと……」
なぜかブラを外したまま、白いシャツだけ中途半端に着なおした。ボタンも上までは完全に締めず、彼女の豊満な谷間と、汗に濡れた薄桃色の乳輪と乳首がシャツの白を貫通して浮いている。
グランは何も言わなかった。これが最善だと判断した。
アンはグランに腕で導かれるまま対面座位へ移行する。
グランの指だけでも時々気を飛ばしてしまうほどに気持ちよかったのに、このペニスで貫かれたらどうなってしまうのか。アンの口内には涎がたまり、愛液がダラダラと太ももを伝って止まらない。しかし、アンの視界はいつだってグレアもとらえていた。
(グレア、グランのこと……)
ペニスとヴァギナが触れ合う直前で、アンはグレアの方を向き、
「グレア、んちゅぅ……れろっちゅぱ」
「んむぅ!? んちゅる、アン、んちゅう」
そのままグレアへ深く口づけ、戸惑うグレアに対して、
「ぷはっ、ちゃんと次はグレアの番だから。準備しといてね。二人で、治療してもらお」
「え、えぇ?」
いやグレアに必要はないのでは? とグランは思わないでもなかったが言いはしない。一応しといた方が万全だろう、多分、とグランは自分の中で結論づけた。
(私も……グランと……!)
グレアもまた、期待で心が喜びであふれ体がさらに疼きだし、彼女の竜の尻尾と羽がピョコピョコと揺れた。
そんなグレアを見てアンは満足そうに微笑んだあと、気を取り直してグランへ相対する。
「……えへへ……やっぱり、緊張するね。こんな状態でも、痛いのかな? ……」
アンの記憶の中、グランとの触れ合いが走馬灯のように駆け巡る。マナリアでの邂逅、彼の誕生日での歌唱と連弾、特別な親友グレアとピアノの席の間に、いつのまにか彼を当然のように入れていた。
卒業したあとも、三人で居られる時間を。そう真剣に語ったグランの顔を見た時のトキメキを思い出し、感情をさらけ出した。
「……グラン……好きだよ……」
唇を尖らし、切なく愛を求めるアンの表情。グランもアンの名前を呼び、唇をゆっくりと重ね合わせ、彼女の中へ一気に突き入れる事で応えた。
ズプンっ!
「んんんぅうん!? んあぁあああぁ!」
アンは目を見開き、体を痙攣させて発汗し、尿道から漏れた液体をプシャリとグランの下腹へ浴びせた。
「あ、アン……!?」
尋常ではない様子のアンに対して、グレアは発情の感覚を覚えながらも、アンの顔を心配そうにのぞき込んだ。
アンはグランから唇を離してしまい、涎を垂らしながら懇願するようにグレアに手を伸ばす。
「くぅっ!? はぁんっ、グ、グレアぁ、これ、すごいのぉ……!」
アンの伸ばした手をグレアは掴むと、つないだ手から汗と振動がグレアに伝わってくる。今、グランがもたらしているアンの性的快楽がつないだ手を通じて伝わってくるようで、グレアは唾を飲みこむと同時に太ももをすり合わせた。
「はぁっはぁダメ、私っすぐイっちゃ……んむちゅうううっ!」
淫らに乱れきったアンの喘ぎ声へグランは舌を突き入れ、がむしゃらなアンの唇と舌、ぎゅうぎゅうとペニスを掴んで離さない膣壁に、激しく抽送を繰り返していく。
その度にアンの尿道からビシャビシャと壊れた蛇口のように飛沫が漏れ、接合部からは粘度を持った液体が絶え間なく分泌されてペニスとヴァギナのピストン運動を速めていく。
「好きっ好きグランっんむちゅぱっんちゅうううっ!」
アンの激しい接吻と種付けを請うヴァギナの律動に対して、グランとて限界は近く余裕はなかった。マナリアの王女アン、薬の影響下とはいえ彼女から愛の告白を受け、マナリアの制服を着崩し乳房と性器をさらしたアンと、恋人のようにまぐわっている。しかも、先ほどからしだれかかったグレアが、その豊満なおっぱいをグランに押し付けながら、アンとグランの口づけの間に「んちゅ、ちゅぅう」とキスを残してくる。
「あふんちゅうぐれあぁ、ちゅるちゅぱんちゅううぅ」
アンもグレアの動きに応え、二人の舌と唇がグランの唇と舌をしごきだし、アンは絶頂の中でも腰を上下左右に振り乱し、初めてとは思えないほどにグランのペニスをさすってこすって、離さない。
このままだと中に出してしまう。グランに残っていた一粒の理性が、アンの膣からペニスを引き抜こうとした刹那、アンはディープキスと喘ぎ声の中で、
「んちゅはぁ、わらひっ、本気、だからっ。グランが、好きぃんちゅうっ」
グランの引き抜きが、アンの中で亀頭を残して止まってしまう。アンが射精を懇願するようにグチュグチュと腰を前後に動かしてさすり、グランの亀頭から竿の半ばまでを掴みながら激しく愛撫する。
アンの瞳は本気だった。貪欲に、自分が好きなモノを、全部。
「ちゅっちゅるれろんっグランのっ白いの、中に出してぇええ! はむっんちゅううう!」
グランはアンの口内へ深く舌を突き入れてアンの全てを吸引し、ドスドスと無遠慮にアンの奥の奥までピストンを繰り返し、そして
(あっ)
アンの視界と思考が弾け、噴水のような潮を吹いてヴァギナが収縮振動した瞬間、
ドビュルルルルル!! ドビュウウウウウウウウウ!! ボビュルルルルルッ!
ビクビクビクビクビクビク! プシャアアアアアア!!
「んんんっああああああっあっあぁあああっ!!」
グランとアンの深い口づけの中でも、アンは痙攣して甲高い喘ぎ声をもらし、だらしなく快楽に乱れきったと表情でグランの種付けを受け入れていく。
「あっあああっ……んちゅ、ちゅるるぅ……ちゅうぅ……」
アンはチョロチョロと尿道から透明色の液体を出しながら、乳飲み子のようにチュウチュウとグランの唇と舌を吸っていく。グランのペニスを全て納めきった接合部からは、子宮の許容量を超えた大量の精液が、アンの愛液と混ざって漏れ出していた。
グランはそんなアンの長い橙色の髪を優しく撫で、彼女と自分が望むままに絶頂に浸った。治療という名の強制絶頂、しかし悲壮感は消え失せ、ここにいるのは本能の幸せに浸る雄と雌。
絶頂の波が小康状態になるにつれ、アンの口づけにも余裕がうまれ、隣で体を持て余しているグレアにも口づけていく。
「んちゅ、ちゅる、んふふ、ちゅうれろっ、次は、グレアの番だね♪」
「んちゅ!? ふえぇえ!? わ、わたしは、別にっ」
アンはグレアを見つめる。グレアは絶えず太ももをすり合わせ、羽と尻尾は興奮した犬の尻尾のように揺れている。
(グレアの方が、先にグランの事好きになってたんだもん。それに……)
アンは再びグランに口づけると、グランは柔らかく受け入れ、アンが必死になって舌と唇を動かしても、グランがもたらしてくれるキスの快感でアンの方が先に根を上げてしまう。
(グラン、絶対慣れてる! 迷ってる暇なんてない! 私とグレアで、夢中にさせないと……!)
アンが望み描き出した未来のために、そして愛するグレアのために。アンは絶頂の終了と共に、キスと交合を終了してグランから体を離した。
アンの膣の入り口は絶頂の余韻でヒクヒクと動き、ドバドバと精液があふれだしている。そんな膣口を、アンはグレアに見せつけるようにして、
「見て、グレア……」
「ひぅっ……!?」
「私、グランにいっぱい治療してもらって、もうすっかり大丈夫だよ。すっごく気持ちよくて、ふわふわと幸せな気持ちになれるの……。ね、グレアもちゃんと、治療してもらお……!」
誰がどう見ても大丈夫には見えないが、アンには確信があった。アンが知るグレアなら、グランとアンがセックスしている間に、グレアは自分から体を寄せてキスなんてしてこない。グレアもまた、自分と同じ影響下にある。ちなみにそれがアンとの経口感染によるものと気づくのは数日後のことである。
であるならば、ここは私と同じく治療を。そんな真剣な眼差しを、アンは一瞬グランへ向けた。
グランも頷いた。ここで薬の影響を解消しておかないと、大衆の前で突然オナニーしかねない。
グランはグレアの名前を呼び、戸惑うグレアを優しく抱きしめ、あやすようにその角と頭を撫でた。
「はぅんんっ!?」
その度にグレアの心と体には幸せと快感が駆け巡り、先ほどのアンの痴態を想起してしまう。
(私、いいの? 本当に、このまま……?)
目の前の少年は、グレアの竜人の運命を見届けた。グレアの父の故郷を訪れたあの日、人質に取られたグランは、その気になれば力ずくで脱出できたのではないか。と、グランの力を見るたびにグレアは思った。きっとそれをしなかったのは、グレアの父の故郷と争いたくなかったからだろうと。
強くて優しく、逞しい。なのに、一緒にピアノを弾くと、一生懸命で、はにかむように笑う。そんなグランの事が、グレアはいつからか――。
グレアの視界が目を閉じたアンで埋め尽くされる。優しいキスの感触に、グレアも浸ってしまう。唇を離したアンは、
「グレアも一緒に……ね?」
グレアの人生がアンとの出会いで変わったように、これも三人の新しい関係の、始まりなのかもしれない。
それを嬉しいと感じてしまった時、グレアは、
「グラン……私にも……治療、いい?」
グレアはグランに抱きしめられたまま、グランの顔へ自身の顔を寄せていく。
グランは了承した。グレアは瞳を閉じ、唇を突き出す。
「ちゅうぅ……!」
口づけた瞬間、小刻みに羽ばたくグレアの羽。触れ合うだけの優しいキスを数秒終え、グレアはとろんとした瞳と潤った唇をグランへ向ける。グレアの服が汚れないよう、グランは液体まみれの男根を触れさせないよう腰を引いていたが、それを見たグレアは「あ」と声を出して、自身の衣服に手をかけた。
グレアはアンを見、
(これぐらいでいいのかな……?)
と、マナリア制服の白シャツの前のボタンを全て外し、シャツは羽織ったまま少し躊躇ってからブラを外した。柔らかくドでかい異音がでそうなほどの弾力を内包したグレアの巨乳に、グランとアンは目を離せなかった。丸さの中にツンと張った乳首と乳輪が色鮮やかでいやらしい。
次いでグレアはスカートの中からショーツを下ろし、少し潤いを持ったそれをアンが脱いだショーツの横に並べて置いた。
その段階でグランが再びグレアにキスをすると、グレアは気持ちよさそうに目を閉じて体の全てをグランへ任せた。キスしながら対面座位になり、グレアの膣口にグランの亀頭が触れ、グレアとグランのキスが深くなるにつれ、互いにグッと腰を前に出して性器を合体させていく。
つぷりと亀頭がグレアの膣口を犯し、内壁をグリグリと抉っていくにつれて、
「んんっあっぁあああああっ!」
グレアがグランと唇を触れ合わせながらも、未知の感覚に艶がかった声をあげた。グレアの羽と尻尾がピンと張り、腰が震えて力を失い、重力に従って自ら奥までペニスを飲み込んでしまう。
「ひぃっ!? ああああぁああっ!?」
「グレアっ!?」
グレアは目を見開き、体を痙攣させてグランにしがみつく。アンは心配で声をあげたが、グランは落ち着いていた。グレアの背中を撫で、頬と唇にキスをしながら、未知の快感に戸惑うグレアを落ち着かせていく。
(中がじんじんして、壊れそう……! でも……グランのキス……優しくて、好き……)
「んちゅ、ちゅぅうう、れろちゅぱっ、グラン……もっと……ちゅるるちゅぅう」
グレアから唇を尖らせてグランの唇をついばみ、積極的に舌を出してグランの舌と舐めて絡め合う。
その度にグレアの腰はゆっくりと前後に動き始め、グランのペニスをギチギチに締め上げながら撫でるようにしごいていく。
グランはグレアとテンポを合わせて、彼女の反応を見ながら徐々に腰の速度を上げていく。パチュパチュと響きだす水音、フリフリと揺れるグレアの羽と尻尾、グレアの肩に体を寄せるアンも自慰を激しくしていく。
グレアはグランと舌を絡めながらも、
(すごい……グラン、私に合わせて加減して、ゆっくりと早くしてくれる。そっか、セックスって、相手のために呼吸を合わせて……私も、グランを気持ちよくしてあげたい……!)
大好きな人のために思った言葉は伝えなければと、グレアは具体的な言葉を快楽の中でも伝えようとする。
「んちゅるちゅぱ、グラン、もっと動いてっいいよ。私もっちゅるれろんっ、グランに、気持ちよくなって、ほしい、からっ! んんちゅううう!」
本能のまま、天然のままに言葉を紡ぎ、グランの性欲を煽る。グランも激しくグレアを突き上げて応え、口づけたまま奥の奥で愛し合おうと、グランとグレアは舌を絡めながら薄く目を開けて見つめ合う。
しかしグランの視界の端では、物欲しそうな顔をして「ぐれあぁ……!」と呟きながら自慰をするアンの姿があった。グランはアンの背中に手をまわして、アンに交合に加わるよう促す。
アンはすぐさまグランの思惑を悟る。「んんちゅううううっ!」グランとグレアに抱き着きながらディープキスに参加する。
グレアは一瞬の驚きと共に受け入れ、三人で唇と舌を絡ませながら、
「あ、アンっんちゅる、れろちゅぅ、グランと、みんなで、一緒に、イこっ……んちゅううう!」
「うんっ、ぐれあぁすきっ、んちゅう、ぐらんっんあ好きっんちゅううっ!」
グランとグレアは残像が出そうなほどに一気に腰のスパートを速めてバチュバチュとひどい水音を奏でだし、グランはアンの膣内に中指を差し込み、彼女のGスポットを的確に押しえぐる。
アンが目を見開き、グランとグレアの視線が混じり合う。
グランはグレアの瞳から、
(グラン……好き……!)
と音のない声を聴いた瞬間、ぎゅうううっとグレアの膣内が脈動してペニスを奥の奥まで導き、グレアが限界までグランの唇と舌を吸引した瞬間、
「んんちゅううううううううううっっ!!」
ドビュウウウウウウウウウウ! ビュウルルルル! ブビュウウウウウウ!!
ビクビクビクビクビクビク! プシャアアアアアア!
グランとグレアの体が余すところなく密着し、一つの生き物になったかのように絶頂痙攣する。アンもまた、二人に潮吹きを浴びせながら、二人にしがみついて二人のキスに吸いついていた。
(グラン……アン……気持ちいい、気持ちいい……ずっと……こうしていたい……)
グレアは精液を膣内で飲み干すように絶頂脈動を繰り返し、透明色の液体を噴水のようにグランへ浴びせ続ける。全身から力が抜けていくのに、グランとは力強く結びついて離れないような感覚。
グランもまた、我ながら一切容赦のない中出しに、いいようのない背徳的な快楽を得てしまっていた。グレアは特徴的な体をしていながらも、その内面は純粋で繊細な普通の女の子だ。そんなグレアと、ただの雄と雌になって愛し合っている。
グレアの下腹が少し膨らんだあと、ペニスを全て飲み込んだままのグレアのヴァギナの端から精液が勢いよく噴出していく。
絶頂痙攣が徐々に収まっていき、グランとグレアは同時にアンへ視線を動かし、二人でアンの唇と舌を撫でて、アンをキスで包み込んだ。アンも全体重を預けて応え、グランがグレアへ膣内射精する中、ちゅぱちゅぱと三人でキスの音を響かせる。
(アン……グラン……好き……ずっとこのまま……)
(グレア大好き……グラン……ありがとう……大好きだよ……)
数秒、数十秒、数分と三人だけでいつまでも浸る。ここがどこかも忘れ、なんのために始めたかも忘れ、ただただ幸せな快楽に身を沈めた。
半ば硬度を失ったペニスがグレアからずるりと抜け出たタイミングで、アンとグレアも力を失い、座るグランを膝枕にして二人で横たわって体を休める。グランはまだ余裕があるのか、座ったまま二人の背中を撫でた。
これで、治療は完了したはずだ。グランは二人を見てそう思った。相変わらず周りに他の気配はないし、後は全員の体を綺麗にして、皆と合流すればいい。
理屈ではその通りなのだが、グランの膝を枕に半裸で横たわるアンとグレア二人の美少女を見て、ムクムクと自身の性欲が増大していくのを自覚した。
いや、よくないとグランは首を振るものの、その動作で硬度を復活させたペニスがペチペチとアンとグレアの唇を叩いた。
アンは瞬時にその意味を察したように声を上げ、
「あ」
まだ絶頂冷めやらないグレアは何が起こったのか把握するのに一瞬を要した。
「ん」
まずい、とグランが思った時にはアンは「んふふぅ」と悪戯な笑みを浮かべながらグランの男根を掴み、グレアは「あ、えっ」と戸惑った顔でその様子を眺めている。
アンは巨乳をグランの膝の上に乗せ、グランの勃起したペニスを竿部分から亀頭の傘まで浅くしごいていく。
「ふふっ……どうやらグランのここは、まだまだ治療が必要なようですねえ」
うっ、とグランが身もだえし、アンは淫蕩な笑みをますます深くしていく。アンはグレアの手を握って誘い、
「ほら、グレアも触ってみてっ」
「えぇ? で、でもぉ……」
戸惑うグレアはグランを見上げると、グランはごくりと期待のこもった瞳をグレアに向けてしまった。それを見たグレアは微笑み、
「ん……わかった。今度は、私たちで気持ちよく、じゃなかった、”治療”……してあげるね」
「そうこなくちゃっ」
アンとグレアはグランを見上げて微笑みを向けた後、二人の片方の手のひらでペニスを包み込んでいく。二人の指が間断なく交差して竿部分を覆い、その上で亀頭が外気と二人の吐息に揺さぶられる。
ドクドクと脈打つような熱く硬い感触を、アンとグレアは堪能していた。ヴァギナでは散々味わったものの、手のひらで直接触れたのは初めてだった。
「すごっ、こんな感じなんだ……」
「えっと、グラン、力加減、大丈夫……?」
グレアの問いかけにグランは頷く。グレアに性知識はほとんどなかったが、先ほどのグランを膣内でしごいた時の感触を思い出し、ゆっくりとアンと一緒に上下に手でしごいていく。
対してアンは、かつて女子の間で回し読みされていた禁書(ギリギリアウト)の知識を思い出し、
(よ、よし……!)
と決意のこもった瞳で亀頭を見つめ、唇を尖らせて、
「んちゅうぅ」
「あ、アンっ!?」
アンは亀頭を唇で包み込むと、ちゅうちゅうと吸ってグランの亀頭の汁気を吸い取っていく。その度にグランが悶えて声を出し、アンは亀頭に吸い付きながら口端の笑みを深くした。
アンはそのまま舌先でグランの鈴口をえぐると、グランの腰がビクンと跳ねる。アンは口内の亀頭を唾たっぷりで浸したあと、唇をつけたままグレアへ話しかける。
「グレアもしよ、んちゅ、グランのこんな顔、もっと見たくない……?」
アンとグレアがグランを見上げる。そこにはもう、色欲で息を荒くして余裕を失くした同年代の青少年しかいない。あの優しくて強くて頼りになるグランが。
その事実を認識した時、アンとグレアには好いた男を手玉にとる優越感と、淫蕩な雌の本能がうずきだす。
グレアはアンの言葉に、微笑みを浮かべて応えた。
「うん……初めてだけど、気持ちよくなってくれると、嬉しいな……グラン。……ちゅううぅ……!」
「ふふ、んちゅううっ」
あのマナリアの王女アンが、竜姫グレアが、マナリアの女学生二人が、唇をすぼめ、グランの亀頭越しにキスをして、そのまま唇を広げて亀頭を覆っていく。二人の上唇が触れ合って完全に鈴口を覆うと、
「「んむちゅううううぅっ」」
と二人が頬をすぼめながら吸引して我慢汁を吸い取りながら、二人の舌を絡ませながら鈴口を撫で抉っていく。アンとグレアの合わせ手コキは、二人の亀頭フェラから漏れ出た唾液を潤滑液にして泡立ちはじめ、グチュグチュとひどい水音を響かせていく。
グランはもう完全に余裕がなくなり、二人に絶頂を予告する。するとアンとグレアは手コキをさらに速め、グランに視線を送り、二人の唇と舌で亀頭を撫でながら、
「いいよ、れろんちゅぱっ、私とグレアの間に、いっぱい注いでっんちゅる」
「グランの、ためだから、んちゅうれろっ、がまん、しないで、んちゅううっ」
アンとグレアはそう言うと女同士で見つめ合い、深くディープキスして目を閉じた。その下には指を交差させて握り合う二人の手。グランは一瞬百合が咲き誇るような光景に錯覚したが、現実は二人の手は残像が出るほどにグチュグチュとペニスをしごき倒し、二人の唇の中では二人の舌が亀頭を舐めまわしてグリグリと鈴口をほじくった後、アンとグレアは呼吸を合わせて、一気に、吸引、
「「んちゅうぢゅるるぢゅううううううううううっ!!」」
ボビュウウウウウウウウウウ!! ドビュルルルルル!! ブビュルルルウ!!
グランの視界が弾け、意識が飛ぶ。気持ちいい、気持ちいい。絶頂中にも関わらず、アンとグレアはもっとグランを気持ちよくしたい欲求と、愛する女と唇と舌を合わせている愛欲が同居して、さらに二人での手コキを速めて、頬をすぼめて二人の唇で亀頭を吸引する。
「「んぢゅううううううううっちゅううううぅう!!」」
ブビュウウウウウウ!! ビュウウウウウウウ!!
容赦もなければ止める者もいない、アンとグレアの未成熟で際限のないダブル手コキフェラ。アンとグレアはとろんとした薄目を開けて見つめ合い、グランの亀頭を舐めまわして精液を受け止め、ゴクゴクと飲み干していく。
プシュ、プシュとアンとグレアの尿道から飛沫が飛び、アンとグレアもグランと同じく痙攣した。
(グレア……グラン……)
(アン……グラン……)
三人の意識が混濁してもなお、アンとグレアの吸引手コキは一向に止まず、グランの射精も終わらない。グランの意識が一瞬完全にブラックアウトしてガクンと体が落ち、グランはなんとか手をついて倒れ込むことだけは阻止した。それを見たアンはハッとして一瞬目を見開き、手コキの速度を徐々に落としつつ、フェラチオも柔らかく撫でまわす方へとシフトしていく。グレアもアンとグランの変化に気づき、チロチロと亀頭を舌先でくすぐったり、亀頭を揉み解すように唇だけで甘嚙みする。
しかし、それが余計にグランの性欲の琴線と絶頂中のペニスを喜ばせ、今度はお漏らしするようにビュッビュと勢いよく精液が噴射して、驚いたアンとグレアの唇の隙間から飛び出し、二人の顔を白濁液で汚した。アンとグレアは顔を精液でコーティングされたことで少し呆けていたが、ゆっくりとまた二人のディープキスで亀頭を吸引してゴクゴクと喉を鳴らしていく。
数分にも及んだ射精は勢いが弱まるにつれ、二人はキスで啄ばむように亀頭を順に吸引し、最後は二人で鈴口に「「ちゅう」」とキス音を立てて終えた。
アンは少し得意げに微笑み、グレアは言外に「うまくできたかな」と、グランに問いかけるように微笑んでいた。
「ふふっ、グレアとのコンビネーション、気持ちよかったでしょ?」
「痛いところとか、なかった? 私も途中から夢中になっちゃって……」
最高だった。それ以外の言葉が見当たらなかった。グランが正直に答えると、
「やったねグレアっ。んちゅうぅ」
「んんちゅ!?」
アンは硬度を失ったペニスを唇ですくい上げながらグレアに押し付け、再び百合のディープキスにペニスを巻き込んでいく。グレアも「しょうがないなぁ」と言った表情で応え、アンと一緒に唇の中でペロペロとグランの亀頭を愛撫していく。
グレアにも、アンの狙いがわかっていた。先ほどからアンとグレアは太ももをもじもじとさせ、極部は期待で再び大洪水になっている。
アンとグレアの唇と舌でたっぷりと唾液をまぶされたペニスは、本能のままに天へと反りかえっていく。
「「ちゅぽんっ」」と音を立ててアンとグレアが唇を離したとき、二人は感嘆と期待と発情の吐息を「「はあぁぁ……」」と亀頭へ浴びせた。
グランはもう、目を血走らせることしかできない。
アンとグレアは震える体をなんとか起こしてグランと視線を合わせて膝立ちになると、そのまま二人の全体重をグランに預けて抱き着いていく。
温かく柔らかい女体、二人の豊満な乳房がグランの胸板でつぶれていく。
グランの太ももには、二人の愛の涎がダラダラと垂れてきていた。
「ねえグラン……グレアと私、まだまだ治療が必要みたい……愛情たっぷりに……お願いしたいなぁ……」
「何度も出して、大丈夫……? けど……もっと、してほしいの……だめ、かな……?」
グランはしっかりと二人を受け止めながら、二人の膣内に指を突き入れ、グチュグチュとした反応と湿度をしっかりと確かめた。
「あぁん、グラン……指もいいけどぉ……んちゅちゅう」
アンはムチュムチュとグランの唇を覆うようにキスをして、
「んぁあっ、グランの、あそこじゃないと、ダメ……ちゅううぅ」
グレアは懇願するようにちゅうちゅうと吸いついていく。
もう、止まれない。グランは二人を抱いてゆっくりと押し倒しながらも、荒々しく二人同時に口づけながら、アンとグレアの巨乳をそそり立った乳首ごと鷲掴みにして揉みしだく。
「「ちゅふちゅるはぁあんっ!」」
共鳴するアンとグレアの喘ぎ声、間髪入れずにグランはアンに突き入れると、アンは「ひゅっ!?」と目を見開いて肺から息を噴き出し、弓なりに仰け反って潮を噴出してガクガクと痙攣する。
容赦と余裕を失くしたグランは本能に従い、アンの下腹が浮き上がるほどにガツガツと肉の衝突音を出しながらピストンを開始する。
「ああぁあっ!? あひぃああああああああっ!?」
ビクビクビクブシャアアアア! チョロロロ……。
先ほど処女を失ったばかりのマナリアの王女の最後の壁を粉々に砕き、快楽絶頂が心身に響き渡ってアンの脳髄をピンク色に染め上げていく。
(こんなの……知ったら……グレアと一緒に……グランのものに……なっちゃうぅ……!)
「あああぁっ! もっとぉグラン、もっとぉんちゅるちゅぱっ好きっんちゅううう!」
グランとキスをしながら快楽に喘ぎ狂うアンの姿を見て、グレアにも背徳的な寒気が一瞬よぎっていた。
「あ、アン……」
アンが、グランとのセックスで変わってしまった。壊れてしまったと言ってもいいかもしれない。そして、まもなくグレア自身も喜びと共にそれを迎えようとしている。
グランはグレアの期待と寂しさを察知すると、すぐにアンからペニスを引き抜いてグレアの濡れそぼった膣を一気に貫く。
「んんぁああああああああっ!? あっあっあああっ!?」
ビクビクビクプシャアア!! チョロロロ……ジョロロロ……。
グレアの体も背中から放物線を描いて巨乳を揺らし、アンと共に空中へ透明色の液体を噴出する。グランはアンの膣を二本指で喘がせながら、グレアを抱きすくめて唇を奪いつつドスドスと征服するようにグレアの子宮を攻め上げる。
「んんむちゅぅぅ!? んちゅるぅうううっ!!」
(……気持ちよすぎて……もう、なにも……グラン……アン……)
隣り合うグレアとアンが手を合わせて指を絡めてしっかりと握り合いながら、一人の男によっていつまでも快楽の波に沈められていく。グランはグレアとのキスを中断し、グレアとアンのおっぱいにそれぞれ乳首からむしゃぶりついて舌で吸い上げ、二人の勃起した乳首を、親指と人差し指で挟んで伸ばしてコリコリとしごき上げる。
「「あひぃああああああああああぁぁっっ!!」」
おっぱいから手と指を離したグランの眼下、グレアはペニスでピストンされ、アンは再び二本指で抉られ、潮吹きとイキ顔を晒しながら痙攣し続ける。
そんな中アンとグレアの膣内が一際締まってグランを求め、アンとグレアの焦点が合わさり、二人が喘ぎながらもキスを求めて唇をすぼめた時、グランは体を倒し、二人の唇と舌に溺れながら、全てを解き放った。
ドビュルルルルルビュルルルルル!! ブビュウウウウウウ!!
「「んんちゅううううううううううぅぅぅ!!!!」」
ビクビクビクビクビクビク!! プシュ、プシュ! プシャアアアアアア!!
中出しされたグレアの下腹が爆発したように痙攣した後、グランはすぐさまグレアから引き抜いてアンに挿入し、射精しながらアンの奥の奥を二度三度と突き上げる。
「んちゅぅうううぢゅうううううっ!?」
プシャアアアアアア!! ビクビクビク! プシュ、プシャアァ……。
今度はアンがさらに下腹を浮き上がらせて半ば白目を剥き、アンの上と下の口の脈動がグランへ歓喜を伝えてくる。
グランは全て堪能して受け止めたあと、すぐにまたアンから引き抜いてグレアの中へ挿入し、中を白濁液で満たしていく。
「んちゅうぅうっぢゅるるう……!」
グレアも虚ろな瞳をしながらキスと膣の圧力だけは決して緩めず、アンと共に混濁した意識の中で快楽だけに酔っていく。
グレアとアンの膣内を均等になるように精液を満たし、最後に少しだけ多めにアンへピストンして、グランは全てを出し切った。
今度こそ、一握りの理性でグランは二人から離れようとしたが、アンとグレアの腕と足は決してグランを離してくれない。グランも観念して二人に体重をあずけると、アンとグレアは安心したように表情を緩ませてグランに絡みつき、いつまでも絶頂の余韻の中三人で口づけし続ける。
「んちゅ……ちゅるれろっ……ちゅうぅぐれぁあむちゅうぅ……」
「アンっんちゅ、ちゅぱぁあむっ……ちゅぅうう、れろ、ちゅうぅ……」
アンとグレアの愛情たっぷり熱烈キスと、濡れ切った女体の柔らかさ、アンとグレアのおっぱいに胸板は包まれ、彼女らの太ももが媚びるようにグランの太ももを挟んでこすって離さない。
アンは淫蕩に微笑みながら、
「ちゅうう……もう少しだけ、治療、いいかな……?」
グレアも物欲しそうに唇を尖らせ、
「ちゅぅう……アンと一緒に、頑張るから……!」
グランの頷きと共に、アンとグレアの嬌声と、肉のぶつかり合う水音が響きだす。
「んちゅ、あぁっ! グレア……」
「はぁんっ、んんっ! アン……」
互いに視線を合わせ、目を閉じて唇を合わせ、そして一人の男の子にいつまでも身を委ねる。
避難口の壁に発行する魔法陣は、交合完了の古代文字を浮かび上がらせていた。
「うん、この辺は見たことある道だね。もうすぐ合流できそう!」
「じゃあ、そろそろ降ろしてもらって、大丈夫だよ。いつまでも、悪いから……」
古代遺跡には足音が一つ、グランは右腕にアン、左腕にグレアを座らせて抱え、体の軸一つ揺らぐことなく歩んでいる。グランの顔の幼さにさえ目をつむれば、娘二人に怪力を自慢する親に見えなくもない。
この状況の原因は多大な治療行為による、アンとグレアの腰の後遺症だった。既にジンジンとした痛みはかなり引いて行動に支障が出るほどではないのだが、アンとグレアはつい、グランの包容力に甘えてこのまま来てしまっている。
歩く道は最近人の通った痕跡が多数あり、アンの言う通り合流できるのも時間の問題だろう。アンとグレアの衣服や体は、グランとアンの魔法、グレアの炎とで協力し、すっかり性の痕跡は消えている。
グランがゆっくりとアンとグレアを腕から降ろし、アンとグレアは無事自身の足で立った。しかし、二人はグランの腕を掴んだままだった。
アンとグレアの思惑は一致していた。
(これで、終わっちゃうのは……)
(……いやだな……)
治療だった。しかし、心に灯った炎は決して消えてくれない。
グランは多分団員からモテるだろうし経験もあるだろうし、アンとグレアがグランと共有できる時間は少ない。二人同時に妻というのも、周辺国では変な話だ。
それでもなお、アンは自身の英霊の力を確認した。全く問題なく、自在に扱える。グランへの恋も決してあきらめていない。
(うん。ちゃんと私本気だ。それなら、やることは一つ!)
きっかけはどうあれ、もはや体の隅々まで交じり合った関係。迷いを振りはらったアンはグレアの手を握り、そのままグランに身を寄せて抱き着く。
「あ……ん……」
戸惑ったグレアだったが、アンに倣ってグランの背に手をまわす。アンとグレアが二人でグランを抱きしめ、顔をグランに近づけていく。
二人が望んでいることはグランにもわかった。治療は終わった、ここで応えていいのか、本当にいいのか、グランが自問して答えを出す前に、アンはまっすぐにグランを見つめながら、宣誓した。
「えへへ……グランのおかげですっかり助かっちゃったよ。皆の団長さんをこんな風に独り占めしちゃって……いや、二人占めか。グレアと二人占めしちゃって、ふふっ……すっごく幸せで、素敵な時間だったの……。また、過ごしたいなあって思うぐらい」
グレアも一度目を伏せ、決意のこもった表情でグランを見つめる。
「私も、私もね。こんなことになっちゃったけど……グランが相手で、すごく、嬉しかったんだ。アンとグランだったから、あんなことになっても安心して、幸せな気持ちになれたんだと思う……だから……聞いてほしい」
アンとグレアが思い描く将来、二人手をつなぎ進む光の先に、少年の背中が見える。
アンはしっかりとグランの目を見据えて声を張り、
「きっかけは、グランが船で用意してくれたピアノで、グランが私たち三人の将来を語ってくれた時。初めてだったんだ。一緒にいて、こんなにドキドキする男の子って。これが、恋なんだなあ、て」
グレアは、勇気を振り絞った表情で震える声を徐々に落ち着けていく。
「きっかけは……よく覚えていないの。でも、グランと今まで過ごしてきて、楽しくて、暖かくて、幸せで……もっと長く、一緒にいられたらって、そう思える男の子が、初めてで……だから、聞いて」
グランは二人を待つ、それが誠意だと思った。
アンとグレアが同時に息を吐き、理性と決意を込めて、本音をぶつけた。
「「グランが、好き。恋人になってください」」
読了ありがとうございました。
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