pixivに投稿しました同名タイトルの同一作品です。
既読の方はご注意ください。
リーシャは自身へ迫った刃を、右手で握る細剣で横に流すようにして弾いた。
早朝、まだ肌寒い空気の中、グランサイファーの甲板の上でグランとリーシャは2人きり。だが2人の間を行き交うのは、乾いた金属音と属性力の光。張り詰めた緊張感がある。
「はぁっ!」
リーシャの額から汗が飛ぶ。刃を潰した訓練用の得物とはいえ、本気で殴られれば大きな怪我につながる。しかし、その事を念頭に置いて戦う余裕はもうなかった。
リーシャの鬼気迫る刺突の連続を、グランは下がりながら受け流す。攻め疲れを期待したグランの防御だったが、リーシャは勝負を決める気だった。
グランが後方に下がり、腹を狙った刺突の間合いから外れる。
(とったっ)
リーシャは伸びきった剣を風の属性力で無理やり跳ね上げさせた。狙うは腹の上、剣を握る手首。しかし、跳ね上がった斬撃は空を切る。
「!?」
リーシャの驚愕の瞳に映ったのは、剣を宙に離して切り上げを回避したグランの右手、そのまま手は拳となって引かれ、真っすぐリーシャの腹部に伸びた。
自身に来るだろう衝撃に、リーシャの反射行動は恐怖で目を瞑るだけだった。グランの拳は寸前で止まったが、リーシャは拳が差し迫った風で体が後方へ抜けていく。
「あっ」
グランは左手で宙に浮いた剣を掴みながら距離を詰め、社交ダンスのパートナーのようにリーシャの背中へ手を回した。リーシャとグランの体が密着し、顔の位置が近い。
「……!!」
今までとは打って変わってグランの優しげな顔、リーシャの頬が朱に染まっていく。だがそんな雰囲気をぶち壊す、グランの腹の音。
グランはくすりと笑うとリーシャを起こし、朝食に誘うと船内へ戻っていく。その表情は彼の年齢にしては少し幼く、剣を合わせた時とも体を支えてくれた時とも違っていた。
リーシャは胸に手を当て、グランを見ている。グランが開けた扉の先では、起きてきたラカムら男連中と拳を合わせている。
(不思議な人ですね。あなたは……)
その眼差しは憧れか、それとも。朝食を終えるとほどなく島に上陸し、リーシャはグランに誘われた。
場所は上陸した島の砂漠のオアシス、水棲でありながら土属性を宿した大蟹を前に、グラン達一向は風を得意とする面々で挑んでいる。
「三叉風切り!」
スーテラの矢で大蟹の動きを釘付けにし、グランとリーシャが距離を詰める。リーシャは蟹の盾のような鋏は狙うべきではないと即断し、属性力を込めた風の遠当て、ソニックブレードで頭を狙った。
だが大蟹がすぐ鋏を上げて防御する。リーシャは歯噛みした。
「硬い……! あの鋏をなんとかしなっ、え」
だがグランは鋏の下を潜り抜けようと突撃している。リーシャは鋏が振り下ろされグランが押しつぶされる未来を予想し青ざめたが、蟹の本体と鋏を繋ぐ関節部は、上空から桃色の属性矢によって貫かれ地面に固定、グランはやすやすと蟹の顔の前に立ち、ティアマトガントレ・マグナの拳の暴風を炸裂させた。
グランを中心にして起こった竜巻が止むと、こと切れた蟹に片足を乗せたグランが空を見上げている。メーテラの投げキッスに、親指をたてて応えていた。スーテラはグランを見て安心したように息を吐き、次いでメーテラを見上げて少し不満そうにしている。
(上空から望外の射撃、団長さんはメーテラさんの行動を理解して動いていた……。いや、理解だけじゃない。命を預けられる、相互の信頼……)
リーシャは呆然と、その様子を見ている。
(モニカさんが言った、私に足りないもの。それはきっと、団長さんと一緒にいたら見つかるような気がする)
リーシャは剣を握りなおす。グランはメーテラに体を寄せられ顔を赤くし、スーテラが慌てて割って入ってメーテラに叱責している。メーテラはこたえてないようだが。
彼とよく早朝に剣を合わせるようになったぐらいで、いい気になってる場合じゃない。リーシャはもっと強くなりたかったし、グランの力になりたいという思いも強くなってきている。
「ちょ、ちょっと! なにをしているんですか!!」
だがメーテラとスーテラに両サイドから挟まれて大変なことになっているグランに対し、出所不明の怒りが起こった原因についてはわかっていなかった。
夜、オアシスの宿に戻ると、併設されている酒場はグランサイファーの大所帯の面々で軽い宴会騒ぎとなっていた。各地に散らばっていた魔物討伐依頼の面々が戻ってきたためだろう。
リーシャはその喧騒の中、グランを探しながら練り歩く。すると、隅っこでワインをちびちびと飲んでいたカタリナを見つけた。
「すいません」
「ん、どうした?」
「団長さんを見ませんでしたか? 酒場にいないみたいだったので……」
「うっ!?」
瞬間カタリナの体がぴくりと震えた。目が泳ぎ、口元がもごもごと動いている。
「? どうしました?」
「ああいや、すまん。ちょっと飲みすぎたようだ。グランなら、ええと、そうだっ。もう寝ているよ。つっ疲れているみたいだったからな」
ラカムやオイゲンが見ていたら、カタリナが慣れていない嘘をついているとすぐわかっただろう。カタリナは膝の上で泡を吹いているビィを抱きしめながら「寝ていることには違いない」と小声で言ったが、リーシャには聞こえなかったようだ。
「そうですか……」
リーシャはグランの様子を思い出す。
(疲れ……確かに昼間あれだけの戦闘をこなしたあと、その後ルリアさんや年少の方たちと買い物、その後は別働のグループの報告を受けて、明日以降の予定の擦り合わせ……)
リーシャも秩序の騎空団にいた頃を思い出す。昼夜と空を駆けて空賊を縛りながら、アマルティア島に戻っては書類の束と格闘する。リーシャがそれだけの大役をこなせたのは、補佐してくれたモニカのおかげだ。
(私は、彼の役に立てているのだろうか……)
そんなことを想いながら、リーシャは一人宴会を離れ、オアシスの浜で剣を振るう。切り下げた剣を残身の元鞘に戻し、夜空を見上げる。
(ううん、疑問に思うということは、私はまだ自分にできることを充分にしていないということ。ただの戦闘員じゃなく、私はかつて船団長を務めていたのだから、相応の役割ができるはず)
リーシャは表情を引き締め、グランの顔を思い出す。疲れ顔は思い当たらなかったが、他の人を不安にさせるような態度は取らないようにしているのだろう。
「よしっ」
明日からはもっと、彼の傍にいよう。大勢の人間をまとめる経験、生かす機会は充分にあるはずだ。
と、そんなことを考えながら帰路につくと、宿の前で見慣れた顔があった。大きなリュックを背負ったハーヴィンと言えば、
「いらっしゃ~い! 旅支度はシェロちゃんにおまかせ~!」
「シェロさん!? どうしてこんな夜中に?」
「しばらく皆さんがここに滞在すると聞きつけて、私も店を構えることにしたんですよ~。ビジネスチャンスをシェロちゃんは逃しませんからね~。どうです? 何か見ていかれませんか~」
「……えーと。そうですね。じゃあ」
『もう寝ているよ。つっ疲れているみたいだったからな』
「若い男性に効く、疲れが取れるような、元気になる薬等はないでしょうか?」
シェロカルテは目を見開いた。リーシャは運動を終えた後で、頬が赤みを増し、全体的に上気している。
夜、宿を前に、男性宛に、"元気になる薬"。
「ほっほーう……それではぁ」
シェロカルテは様々な小瓶を広げた。リーシャにそれぞれの効能を説明していく。
すると、リーシャの目が一つに止まった。
「おやおや~? このお薬は掘り出し物で~。中々手にはいらないんですよ~」
シェロカルテが取り出したのは一本の小瓶に入った液体の薬。綺麗な色をしていた。
「効果はですね~。使うとあら不思議~。滋養強壮元気100倍~。お仕事に疲れたり、気苦労の絶えない若い男性の方におすすめの商品です~」
リーシャの瞳に薬が写る。シェロカルテの瞳は怪しく光った。
「飲み薬としてもお香としても使える優れものです~。団長さんへのプレゼントにいかがですか~? 今ならサービスいたしますよ~」
シェロカルテが掲示した価格は破格のものではなかった。
(軽い贈り物ならこれぐらいでも……)
「はい毎度あり~! お香として使うときは、2人で部屋を閉め切って置いておこう! ……うぷぷぷぷ……」
リーシャは薬を手に、いつ渡そうかと考えながら宿の大衆浴場へと向かった。入る時はリーシャ一人しかおらず、髪を乾かし終わっても他の女性はいない。もう随分と夜が深くなっていた。
散々自分の腰の上で跳ねたルリアを満足させ、グランは風呂に入りなおすことにきめた。
女性陣たちで決めたらしい順番の元、今晩自室に訪れたのはルリア。グランに事務的だとか惰性という想いはいっさいないし、情熱をもってルリアと肌を合わせたが、毎晩際限のない肉欲に対し苦笑を漏らすことはままあった。
男性用の風呂場に誰もいないことを確認し、自身に格納されていたルリアを出す。寝ぼけ眼の彼女と自身を洗い、彼女をまた体内へ戻す。既に慣れた一連の作業を終え、冴えてしまった目をどうしようかと思った矢先、脱衣場を抜け出すとリーシャと出会った。
「団長さん? あれ、寝ていたのでは……」
リーシャも風呂を出た直後なのだろう、髪と肌に湿り気がある。寝ていたのでは、という呟きで、グランはリーシャが事情を知っている誰かに自分の所在を尋ねたのであろうと予測した。ヴィーラの気性が移ったのか、こういう察しは鋭くなってきている。
少し目が覚めてしまったために一度体を流しなおして、部屋で皆のこれからの予定を確認しようとしていた、と告げる。これは事実だった。書類を眺めるのには慣れていないから、すぐ眠くなるだろう。
「……」
リーシャの表情が憂いを持ったものに変わり、唇を引き締めると、瞳が決意のこもった色に変わる。はて、なにかまずいことをいっただろうか。
するとリーシャはグランへと距離を詰めて手を握り、
「お手伝いさせてください。2人でやってすぐに終わらせましょう。私だって秩序の騎空団で船団長をしていましたから、役に立ちますよっ」
と少々強引にグランに寄った。ここまで言われれば、断る理由はない。
「はいっ! それじゃあさっそく」
とあれよあれよと二人はグランの部屋で同じテーブルにつき、これからの予定が書かれた書類を見ている。書類といっても堅苦しいものではなく、何人ぐらい必要でこの人に頼めれば、くらいのアバウトなものだった。団員にはそれぞれ事情があって一時的に団を離れることはあるし、グランもそういうものだと疑問に思ったことはない。
(秩序の騎空団の時とはまるで違いますね。確かに皆さんが個性が強いですから、変に縛り付けるより、これぐらいアバウトな方が予定を立てやすいのかも……)
リーシャもこれを見ると、秩序の騎空団は軍隊然とした趣が強かったように思えてくる。勿論風土も団員数の規模が違うので当たり前なのだが、リーシャもここから何か学ぶことはないかと、目をさらにして書類に目を通す。
(こっちは過去の予定ね……。っ!? すごい……。そこまできっちりとした物ではないのに、舞い込んできた依頼のほとんどをちゃんとこなしてる。多分、その要因は……)
リーシャは紙に目を落とすグランを見る。
(団長さんの頼みを、皆断らないから。突然の依頼でも、団長さんの頭の中には団員それぞれの力量と得意分野が記憶されている。ミスマッチが起きない、人を数で見ていないということ。私に足りないのは、そういうところなのかな……)
リーシャが膝を組みなおすと、服の中からカランとガラスが擦れる音。
「んっ? あっ」
リーシャは声を上げてしまった。グランのために買った薬、今渡さずして何時渡すというのか。
「あっあのっ! 団長さんっ」
グランが顔を上げる。リーシャはグランと目が合うと、今自分がしようとしていることを自覚してしまった。
同年代の男性と夜二人きりで、贈り物を渡す。そんな経験あろうはずがなく、リーシャは先ほどまでの思案も吹き飛び、顔を赤くしてしどろもどろになってしまった。
「えっあっあのっ。こっこれなんですけど……」
(あうっもう。私、なんでこんな顔熱くっ)
と、おずおずと先ほど購入した薬をグランへ差し出す。
「こっこれ、さっきシェロカルテさんから購入して、その元気になる薬ってことで、あの、団長さんに……」
そこまで言えば、グランも受け取ってお礼を言った。リーシャの顔がぱあっと明るくなる。
「これ、飲んでもいいんですけど、お香としてもできるらしいんです。ぜひ、あのっご活用していただければ……」
ふむっとグランは思案する。それならば、お香として今使ってみようか。そうすればリーシャにも効果があるだろう。
「えっそうですかっ。えああいやっ、いやってわけではなく、はいっ! やってみますねっ」
落ち着いていた先ほどまでと打って変わって、リーシャは鍋をひっくり返しそうな勢いでお香の準備をしていく。ちなみにシェロカルテからサービスでもらったものだ。
説明書を見ながらこなすリーシャがあまりにも見ていて危なっかしかったため、リーシャの傍により、器具を手に持つ。
「ひゃいっ!? あっ団長さん……」
手伝うよと言うと、リーシャは少し落ち着いたようだった。香を立て、瓶から液を移し、火をつけようとする。グランは前にソシエの部屋に呼ばれ立ててもらったことがあった。
2人四苦八苦しながらなんとか準備を終えると、リーシャとグラン、椅子を並べて肩が軽く触れる中、ほのかな香りが流れ出す。
(いい香り……)
リーシャがぼうっと香を眺めている中、グランは目を瞑って堪能し、改めてリーシャへ感謝を囁いた。
「……いいえ、こちらこそ、あなたにはいつも……」
リーシャがグランの横顔を見る。何故か思い出されたのは、昼間彼にじゃれついたメーテラスーテラ姉妹(スーテラはそう思われるのは不本意だろうが)、彼と手をつないで市場を回るルリア、さりげなく彼の隣を確保するカタリナ。
クリスマスにはクラリスに呼ばれ、たまにカリオストロの部屋で実験に付き合い、ユエルの好奇心に乗って小冒険へ。胸元を強調したゼタに迫られたり、何故かグズっていたべアトリクスを慰めてたり。
バレンタインではイオとロゼッタが……。
(……上げればきりがありませんね。だけど、今は……団長さんは、私の隣にいる。いつもはとても、難しいことなのだけど……)
闇の中淡い光に照らされるのは、異性の顔。胸が高鳴るのは、ほのかな香りのせいだけではなかった。
(もし)
リーシャの手がグランの頬へ向かう。
(もし、あなたも今)
グランがリーシャに気付いた。こちらを向く。手のひらが頬を包む。
(私と同じ気持ちだったら……)
リーシャの潤いを持った唇が、ランプのオレンジ色の光を反射する。リーシャの想像は止まらない。
もし、目の前のグランも今、自分と同じ淡い想像を抱いていたとしたら。
冒険の中で出会った男女、旅の中でお互いの想いを重ね、やがて通じ合う。
頬に手を伸ばし、ゆっくりと顔を近づけ、唇を触れ合わせる。背中にゆっくりと腕が回され、体温を直に感じることができたら――。
(あ……れ……?)
リーシャの想像は、いたく現実的だった。現実だった。あのグランが、自分を団に受け入れてくれて、数多の冒険を先導する騎空団長に、今背中を預けられる唯一の人に、抱きしめられ、キスされている。
(団長さん……)
恋慕の情があふれて止まらない時点で、リーシャの運命は決まった。
「あっ……」
ベッドに寝そべったリーシャは、グランに完全に恭順の意を示していた。小さな吐息、潤んだ瞳でグランを見上げる。
(私、これから……)
いつもの自分だったら、あまりの恥ずかしさといやらしさで逃げ帰っていただろう。だが、今心にあるのは覚悟と期待と、得も知れぬ浮遊感。
対してグランは興奮と同等の、恐怖と罪悪感が身を支配していた。
この状況は非常にまずい。この体の感じは覚えがある、あの薬だ。自分とカタリナとルリア、ヴィーラを惑わし性欲に溺れさせた魔性の薬。
おそらくあのお香だろう。雰囲気に流されリーシャとキスし、そのままベッドに押し倒したが、ここにきて頭に冷静さが一分戻る。
だが事情を説明できるような余裕はなかったし、自傷して交わる事を阻止したとしても発情したリーシャが残されるだけだ。加減をあやまって中のルリアを危険にさらすわけにもいかない。
だが、リーシャの純潔(おそらく)をこんな事で奪ってしまうのは、あまりにも忍びない。記憶はばっちり残るのだから、正気に戻った後下手をすれば彼女は泣き崩れだろう。
じゃあせめて、そうじゃない方法で満足させれば、あるいは。
グランは実践にかかった。
寝そべるリーシャの横に座り、グランは彼女の頭を撫でた。
「だ……グラン、さん……」
撫でる腕に、リーシャの腕がまとわりつく。あまり積極的ではないグランを悟ったのか、リーシャは少し強めにグランを引いた。
グランも逆らわず、彼女の体を覆うように寝そべりながら、体重をかけぬように腕で空間を作る。リーシャは腕でグランの首を抱き、目を瞑ってキスをせがんだ。
その姿に、思わずグランも見とれてしまう。いつものリーシャからは想像できない、異性への求愛行動。男に逆らえというには酷だった。
「ちゅ……んっ……んんっ……」
唇が合わさると、リーシャは角度を変えて唇を擦り付け、両足でグランの片足を挟む。グランの体重がゆっくりとかかると、擦りあわされた唇から舌先同士が触れあった。
「んっ……ちゅふっれろはぷっ」
餌を啄む雛のように、リーシャはグランの舌と唇に吸い付き、飴を味わうように舐めしゃぶっていく。グランもリーシャの肩と腰のベルトを外して金具を避け、胸を覆う外衣をずり下ろす。
あらわになった胸を掴み、ゆっくりと揉み解すと、リーシャはグランの唾液を吸いながら太ももをすりわせた。
「ちゅぷっ……はぁっ……はぁっ……もっとっ……」
息継ぎで口を離し、次はリーシャの胸へと向かう。可愛く主張する乳首を口に含み、ちろちろと舌先でくすぐる。
「んあっグランさんっふあぁっあんっ」
リーシャは喘ぎ声を耐えるように人差し指を口に含みながらも、もう一方の手はグランを胸に押し付けるように。
一方の胸を口でしゃぶりながら、もう一方の胸を揉みしだいて、乳首を親指と人差し指でこりこりと挟む。
「だっだめですぅっ! そこはっ感じっいっああっ!!」
リーシャのソプラノの声が一層高鳴ると、体が縮こまってピクピクと震えた。
「はぁっはぁっはぁっグランさんっ、そのっ、あそこをっ」
リーシャの瞳と唇の潤いは、全てグランへ向けられている。
「私っ変なんですっ、あそこをっ、あそこをっあなたにいじって欲しくてっ」
純真の騎空士と言っていいリーシャの言葉に、グランはごくりと唾を飲んだ。一応ここまでは想定内とグランは一握りの理性を取り戻す。
グランの手はリーシャの望み通り、スカートの中に侵入する。すぐに花園へは向かわず、太ももの内側を指先でなぞる。
「あっ……はやくっ、ちゅうう」
グランに下から抱き着いたリーシャが、グランの頬に赤い痕をつける。期待にこたえ、手はリーシャのパンツの内部へ、そして、
「ぁあっんんっ」
濡れそぼったクレバスを人差し指でなぞる。一往復するだけで指はびしょびしょになり、さらに滑りをよくして速度を速めていく。
「はぁっ、あぁっ、んあっぁああっ!」
奏者と楽器のように、リーシャはグランの愛撫一つ一つに嬌声を上げる。空の上のような、ふわふわとした綿の上にいるよな不思議な感覚と、想い人とことを致しているという高揚感。
リーシャが鳴くたびにグランの指は奥へ早く出入して激しくなり、指の動きが激しくなるにつれて、リーシャの喘ぎ声がまた一段と大きくなっていく。
グランもたまらず空いている手でズボンをずり下ろし、臨戦状態のペニスをリーシャの太ももに擦り付ける。
裏筋がリーシャのストッキングに包まれた太ももを上下になぞる。リーシャもそれが分かり、シンクロするように足を上下左右に揺らす。
お互いにもう限界だった。グランがもう射精するというタイミングで、リーシャの膣の中に入れた指を、大きく曲げて押し上げる。
「あぁああああぁあんっ!!」
ビクビクビクっ!!
ビュルルルビュルルル……。
リーシャの体の振動がグランに直に伝わり、リーシャのパンツの中のグランの手が熱い液体に包まれる。放出された精液はリーシャのへそを濡らし、ベッドにシミを作った。
「あっ……はぁっ……はぁっ……」
リーシャとグラン、お互い生き絶え絶えの中見つめ合う。すると、唇がまた重なり、
「んっ……ちゅうっ……ふうっ……んふぅ……んふぅ……」
お互い唾液を混ぜ合いながら呼吸を整える。また硬度を保っていたペニスが、リーシャの手の甲に触れた。
(あっ……これが)
リーシャの初めての感触。
(これが、これから、私の中に……)
だが、グランの思惑とは違った。リーシャの舌が元気にこちらの舌を舐めしゃぶり、腰が悩まし気にまた動き出す。グランはそれを見計らうと、また指でリーシャのそこを慰める。
「んんっ!?」
最初とは違う、お互い高めあった果てに得られた絶頂ではなく、言ってしまえば暴力的なグランの指の動き。問題なのはリーシャは抵抗どころか、女を知っているグランの愛撫にすぐに嬌声を上げてしまった。
「んあっ!? まっ、待ってくださいっまっまたイキッ!?」
グランはリーシャの顔を見ないように顔をリーシャの首筋に沈め、一心不乱に膣を指でいじめ続ける。リーシャが耐え切れない快感に腰を浮かせていく。
「いきっひぃいあっ!! ぁあああああっ!!」
リーシャの再びの絶頂と共に、勢いよく膣から液体が噴出した。足が伸びきって痙攣し、顔は涙と涎があふれ飛んでいる。
「あひっグラン……さんっ……」
リーシャはグランの顔が見たかったが、体に力が入らない。なんとか体をゆするように動かして擦り付け、言葉を紡ぐ。
「あのっ、私、わたしっ……!」
言いたい事は、わかっている。だがリーシャはこんな狂乱の中でも、その言葉を言うには多大な勇気が必要だった。毛ほども残ってないはずの理性を打ち破る必要があった。
「わたっし! あなたのっ、あなたのぉおおおっ!?」
だが、グランの考えは違った。グランはまた無慈悲に、リーシャの膣の中の指を動かし始める。
グランの思惑、この夜は、リーシャと自分の理性の留め金が外れたのは薬によるものだ。だが経験上、絶頂を繰り返せば幾分理性は戻る。この状態で自分もリーシャも続ければ、少なくとも最悪の事態は免れる。翌朝薬の事を説明し、謝罪して彼女を慰める。繋がる事がなければ、彼女のショックは軽減されると信じている。
だがリーシャからすれば今の状況は拷問でしかなかった。
「なっなんでっ!? グランさんっんああっ!」
想い想われていたはず、キスして、抱きしめてもらって、あと最後に当然するはずのことが、してもらえない。きっかけはあのお香だったが、今のリーシャの現実はこれしかない。
「いきっいやあっああっ!!」
また軽く気をやってしまい、リーシャの体が震える。だがその度に、グランのアレを求める感情が、本能が膨張していく。耐え切れなくなっていく。
(どうしたらっどうしたらっアレをっ)
入れてもらえるのか、バチバチと思考が快楽で弾ける中で、リーシャに思い出されたのは、秩序の騎空団時代のある記憶。
若い女性団員同士の会話、盗み聞きする気はなかったが、夜の行為に免疫がなかったリーシャはつい注意することなく夢中になってしまった。付き合う彼が求めたという、夜の行為のエッセンス……。
「ん……はぁっ、はぁ、……好き……」
グランの耳に吹きかけられた、リーシャの誘惑。
「好きです……。んっ、グランさんにいじられるの、抱きしめられるのも、キスするのも、全部大好きですっ! だけど、だけどぉ……!」
リーシャの膣が、グランの指に圧力を加える。
「欲しいっ! あなたのっペニスが欲しいのっ! 私のぐちゃぐちゃのあそこをっいっぱい貫いてっいっぱいドプドプ射精してほしいのっ! あなたのじゃなきゃ、満足できないっ!」
グランの安い思惑をずたずたに引き裂いていく。
「リーシャのまんこに、いっぱい精子っ注ぎ込んでぇ……!」
グランが指を引き抜き、リーシャの太ももを掴んで大股に開かせる。あてがわれるのは男子の象徴。
「あっ……」
だらしなく歪んだ笑みを浮かべたリーシャの期待に応える様に、グランは一気に奥の奥まで刺し貫いた。
「あひいっぃいぃぃあああああっ!!」
リーシャの嬌声の本領はここからだった。ガンガンと子宮をペニスにうちつけられ、体の内側の快楽神経が歓喜の信号を絶えず脳へ送り続ける。
グランの獣のような瞳から目を離せず、口に侵入したグランの舌をじゅぶじゅぶと舌で愛撫しながら逃さぬよう吸引する。
「んむっふむぅううっじゅぶじゅるるるっ」
下品な水音と愛液をまき散らし、手も足も全てグランに絡ませる。露出した胸がグランの胸板に押しつぶされて形を変える。
全てリーシャが望み、グランが溺れた空間は互いに絶頂の波が来ても終わることはない。
(好きっ好きっ好きっ好きっ好きいいいいいいいいいいぃ!!)
リーシャは既に自身が何回イったかわからなかったが、グランを射精へと一入導くため、無意識に膣を脈動させる。
グランの手も足も口も、そしてペニスも全てリーシャという存在に包まれて、ぎゅうぎゅうと快楽で締め上げられるような強烈な悦に支配される。
限界の時、ペニスの内部を精子がせりあがり、膣壁を抉りながら子宮にぴったりと合わさった瞬間、
ビュルルルルルルルっ!! ビュルルルルル!!
「んんっふむっんんんんんっ!!」
リーシャが目を上向かせながら、一滴も逃すまいと膣内を締め上げる。ペニスが中で跳ね上がり、
ビュルルルル!!
もう一度、
ビュルルルッ!!
と、全てを注ぎ込むように2度3度と大きく痙攣して射精する。
リーシャの体も精神も全て自由意思を失い、ただ繋がるオスの種付けを受け入れる為だけのメスと化す。今まで得たことがない性的快楽と多幸感。
長い射精にリーシャも膣を震えさせて応え、どこまでも終わらない波に酔いしれる。過去も現在も、思考もいらない。今のこの快楽だけが全てで、喜びだった。
グランは脱力していく体になんとか力をこめ、口と足と腕とペニスを離さないリーシャを抱き上げ、ゆっくりと仰向けになった。絶頂に震える中でも、できる限りリーシャに負担をかけさせたくなかった。
上になったリーシャ、互いの絶頂が終焉し、接合部から精液と愛液が漏れ出ていく。
「ちゅぷはぁ……はぁっ……はぁっ……」
リーシャが脱力し、体をグランの上に投げ出し、グランの耳元で息を整える。
「んあっ!?……はぁっ……はぁっ……!!」
リーシャの表情が妖しく笑みを作ったのは、グランのものが一向に萎えないままリーシャの中でぴくりと震えたからだ。
グランに心配されたが、リーシャはすぐに上体を起こし、グランを見下ろしながら舌なめずりをする。
「グランさん、やけに女性の扱いに慣れてますね」
ギクリとグランが顔をこわばらせたのが答えだった。だがリーシャは得心したように息を吐く。グランも事情を話す余裕ができ、全てを話した。
薬のこと。名前は出さなかったが、そのせいで女性と関係を持ったこと。リーシャを最初指だけでいじめた理由も。
「シェロカルテさんはなんて薬を……。まあそれは後で考えるとして」
グランはリーシャからの糾弾を甘んじて受けようと身構えた。ちなみに二人とも繋がったままである。
「グランさんは、まだその女性と関係を持っているんですか?」
くちゅりと、リーシャが軽く腰を動かす。グランは正直に言った。
「……初めて同士、てわけではなかったんですね。少し悔しいですけど」
リーシャはむすっとしたが、口調は穏やかだった。薬もまだ切れていないのだろう。
「秩序もへったくれもありませんが、今はこの薬の効能を体から抜けさせるのが先決です。グランさんは、そのままっんっ動かないでっ」
リーシャが緩やかに腰を上下しだす。元々は彼の疲れを癒すために買った品、きっかけが自分である以上、責任をグランに取らせるつもりはないようだった。
だがグランもまた、そんな彼女を放っておけなかった。もうグランも、彼女を手放す気がなくなった。
「あんっ!? だめっ動いちゃっ、私またっ」
グランがリーシャの手を取ると、リーシャはグランに重なるように体を倒し、目を瞑って舌をグランの口へ入れる。
(そう、今は仕方ない。仕方ないんです……)
理由や状況を盾にしても、一度浸かった淫靡な空間からは、なかなか抜け出す気が起きなかった。
(どうしよっかな……)
散々に行為を繰り返し終え、時刻は早朝。リーシャは同衾するグランの寝顔を眺め、唇に軽くキスを繰り返しながら、これからの事を思案していた。
(グランさんは複数の女性の方と関係を持っている。不純だけど、元々は薬のせいで、今回だって私が……)
複雑な感情が渦巻いていたが、昨夜の事を思い出すと、幾度も注ぎ込まれたはずのあの場所が性懲りもなく疼く。
思考の方も、英雄色を好むだとか、自身に根付いた倫理観からどうにか好意的に受け止めようとする方向に動いている。
だが、彼が他の女性と交わっていることを想像すると……。
「ちゅ……。好きだけど、どうすれば……」
「あら。女性を交えての行為もいいものですよ」
リーシャがバっと起き上がった。いつのまに部屋にいたのか、扉の前には微笑みを浮かべるヴィーラと、顔を赤くしているカタリナがいる。
「えっあっんんっ!?」
混乱するリーシャを、ルリアが唇をふさいで静めた。グランがもぞもぞと体を起こし、まだ頭が起きていないのか目をこすっていたが、すぐにカタリナとヴィーラに代わる代わる唇をふさがれ、2人の手でペニスがしごかれる。
「んぶっは!? みなさん、何を……!? 関係を持ってる女性って」
「んふふ♪」
ルリアが鼻歌を歌いながらキスする中、リーシャはヴィーラとカタリナに脇を固められ、グランの立ち上がったペニスへ導かれる。
「ぷはっえっあっなにっんっちゅううっ!?」
グランと唇が重なり、薬が抜けきっていないのか体が受け入れ準備を急速に整え始める。朝の日課に巻き込まれたリーシャ、グランももう成るように成るしかなかった。
「なっなあヴィーラ。やはり無理やりは……」
「いいえお姉さま、もしリーシャさんが嫌ならば、これだけで愛液を滴らせたりしませんわ」
「……ふむっ、それもそうか」
お香は変わらず焚いてある。まともな判断を下せるものはいない。
(あっそんなっこれってっ)
ルリアにキスされても、ヴィーラとカタリナに胸を揉まれても、気持ちよさしか感じない。目の前の彼、メインディッシュを味わうための、前菜だから。
「ようこそ、リーシャさん♪」
グランのペニスが何度も何度も子宮をノックする。リーシャは何度目かわからない絶頂に体を震わせながら、乗算されていく愛情と快楽に溺れていった。
「なんかお前、虫刺され多くね? 首とか」
グランはラカムの言葉にびくりと震えた。今2人は商隊護衛依頼をこなすため、グランサイファーの一室で武器弾薬の準備や人員の確保を進めていた。
ラカムが銃や弾の数を確認している間、グランはラカムにバレていないか戦々恐々としている。
だが、今は気にしても仕方がない。貴重な薬を運ぶ商隊の護衛、魔物や盗賊の襲撃が予想される。
後誘うべきは……。