※注意※
各種フェイトエピソードのネタバレがあります。
pixivに投稿しました同名タイトルの同一作品です。
既読の方はご注意ください
片膝をついて構えられた銃は静止している。銃身に取り付けられた二脚は空中で遊んでいるわけではなく、水の属性力によってまるで地面に縫い付けられたかのように重さを支えていた。引き金のあそびをギリギリまでせばめ、指先のかすかな反射行動だけで撃鉄が下ろされるよう、体を保全する。
あとはタイミングだった。射撃対象は自分の眉間に死が忍び寄って来ていることも知らず、真っすぐに飛行してスコープの中の映像を鮮明にしていく。標的の速度が思ったより速い。シルヴァは弾道降下の計算のもと、微量の修正を行う。
肩に銃が食い込む衝撃があったのは、その後すぐだった。一瞬ぶれた視界が戻ってくると、グランサイファーに向かってきていた飛竜の姿はもうなかった。瞳をスコープから解放すると、空の先で黒点が落下していくのが見えた。
射撃音に身を震わせていたクムユがシルヴァを称賛する。シルヴァは微笑んでクムユの頭を撫で、銃を担ぎなおして自室に向かう。
「珍しいじゃない。シルヴァが外すなんて」
甘い蜜が詰まったような、優しさとからかいが混じり合ったような声色だった。
シルヴァは船内の廊下で立ち止まり、声の方へ向き直る。
ソーンは軽快な微笑みを浮かべている。シルヴァに出会えた事、今何気なく会話できる喜びがひしひしと伝わってくるようで、シルヴァは少し陰鬱としていた気持ちが和らいだのを自覚し、釣られて微笑んだ。
「……叶わないな。恥ずかしいところを見せてしまったね」
「恥ずかしくなんてないわ。ちゃんと的にはあてて、この船に近づく魔物を倒したんですもの。ただ、シルヴァにしては珍しいなって、本当にそう思っただけ」
シルヴァはトリガーを引いた感触を思い出していた。どれほどの狙撃手だとしても、照準を完全に静止させることはできない。スコープを覗くのは人間で、人間は絶えず心臓を動かし呼吸をしている。その微動は誰にも止めることはできない。
シルヴァは重々承知していた。何千、何万と引き金を引いてきた中で、シルヴァは自身の微動を熟知している。
だというのに、先ほどクムユの視線が注がれる中で行った飛竜の撃墜では、シルヴァは自身の呼吸とうまく付き合うことができなかった。額を狙った弾丸は下方にぶれて首下に入った。
痛みなく一瞬で終わらせるはずが、激痛と恐怖の中でかの魔物の生命を終わらせてしまったのだ。意図してそうする狙撃手がいれば、それは最低のサディストだった。
一部始終をその天眼から見ていたソーン。ソーンも狩人として、自然生物への向き合い方には敬意を持っている。シルヴァの言葉はなくとも、その辛酸は理解できた。
「……まだまだ私も未熟だよ。せっかくククル達が最高の銃を用意してくれたのに」
「ふふ、お互いまだまだ人間ってことかしら」
ソーンは私みたいな失敗はしないだろう、とシルヴァは口まで出かかった言葉を飲み込んだ。シルヴァは彼女の矢が逸れるさまを、決して記憶から消えない瞬間として覚えている。
シルヴァは憮然として顔を背けた。
「……今日はいじわるだな、ソーン」
「えっ!? ご、ごめんなさいっ。その気を悪くさせるつもりはなかったのっ。ただ、その……」
とソーンが言ったところで、シルヴァは顔を背けて少しプルプルと震えていた。焦り顔のソーンはシルヴァの意図に気付き、頬を膨らませる。
「もう! からかったわね! 落ち込んでたみたいだからせっかく……」
「ふふ、ごめんごめん。大分気は楽になったよ。……声をかけてくれて、本当にありがとう」
と、シルヴァの暖かい笑顔を向けられてしまえば、ソーンもシルヴァを非難する気持ちが霧散した。こうして互い気兼ねなく話しかけることができ、冗談だって言い合える。それが今どれだけ幸福なことか。
「お礼といっては難だが、一緒にお茶でもどうだい? 前の島で新しいのが入ったんだ」
「もちろん! あ、お菓子持っていくから、先に部屋に行ってて。すぐ行くからっ」
「ああ」
いつも火薬と油の匂いがするシルヴァの部屋。しかし今はテーブル上で豊かな茶葉の風味と甘菓子の匂いが香り、その上を行き来する声はかしましい。
ソーンが放つ話題は風のように流れる。十天衆全員の親睦会があって、これからも定期的にやろうと意気込んでたら、それっきり全然集まらない事を愚痴ったり。団員から聞いて知った島々の服屋や甘味所、グラン・ルリアと共に巡ったカフェのことなどを楽しそうに展開していく。
友人との会話に飢えていたソーンは話すことに飽きず、シルヴァもまた、口数は少なくとも顔を綻ばせて相槌を打つ。
と、これで終われば二人の幸せな日常風景だった。
「グランって結構いろいろなお店知っててー……て、そういえば」
ソーンはグランの顔を思い浮かべると、先ほどのシルヴァの狙撃を想起した。シルヴァが弾丸を放つ瞬間、確か……。
「さっきシルヴァの狙いがそれたのって、もしかしてグランが原因?」
「んぐっ」
シルヴァは喉に詰まらせた菓子を茶で流し込む。
「あ、やっぱり。グランが話してるの聞こえてきたものね。でも、どうして? それぐらいでシルヴァが狙撃を乱すなんて……」
ソーンの疑問はもっともだった。怒号と轟音が交錯する戦場で乱れなく狙撃を敢行するあのシルヴァが、船内から甲板まで聞こえたグランの話し声程度で集中を乱すとは。
「グランと何かあったの? もし喧嘩とかしてるんだったら私が」
「ああいや、違う。グランとはなにもない。彼との関係は良好だ。……これは私の問題だ」
シルヴァはあまり話す気がないように見えたが、ソーンには心当たりがあった。それぞれの絶技を預けると決めた少年団長、日々見かけることがあれば、その行動は注視している。
「……最近彼の周り、いつも女の子いるものね……私も前ほど一緒にカフェに行かなくなったし……」
「う、ソーンもそうなのか……」
口調と表情が暗くなってしまう二人。老若男女問わず色々な仲間と過ごしているグランだが、最近は一部の女性と過ごすのが多くなってきている。
二人は単純に、一縷の寂しさを感じていた。
「私もって、シルヴァもグランとどこか遊びに行ってたの?」
「ああ、私の場合は、よく一緒に銃の手入れをしたり、狙撃や、長銃を持った時の近接戦を訓練したりしていたんだ」
これ自体は珍しくもなかった。グランはよく仲間たちと訓練して、技術を学び吸収している。ソーンも二王弓とのひと悶着が解決した後、心に起こった負けん気でグランを弓術勝負に誘った覚えがある。
グランの事とソーンに気付かれたシルヴァ、特に隠してもしょうがないかと自己完結し、胸に詰まった感情を吐き出し始める。
「この前……彼に手を握られてすごく感謝されてな。動けない仲間を庇いながら、銃と蹴り技で暴漢達を撃破できたのは、私と訓練したおかげだと。ただ……」
「あ……それわかった。ゼタとベアトリクスのことでしょ」
ソーンとシルヴァが思い出したのは数日前の事。グランサイファーが停泊する港へ、馬車に揺られながら戻ってくるグランの姿だった。
いつもはルリア、ビィと連れ歩く彼が、ゼタとベアトリクスに両サイドを固められている。ルリアは不満そうな顔でグランの服を正面から引っ張っている。
戻ってきた団長を出迎えた仲間たちの中にシルヴァとソーンもいたが、真っ先にグランの正面に立ったのはカタリナ、ヴィーラ、リーシャの三人。グランの右腕を抱くゼタはにやりと笑い、左腕を抱くベアトリクスは正面の三人娘を見て「ひぃ」と恐怖していた。
当のグランは全てをあきらめたような達観した表情をしながら、彼女ら6人に運ばれるように街へ消えていった。
その翌日グランはピンピンした様子でシルヴァに礼を言いにきた。
対して6人の女はうっとりとした様子で時々腰をさすっていたが、その原因にまではシルヴァとソーンの想像は及ばない。
「あれって……グランの取り合い、なのかなあ?」
「……さあな。あまり彼の周りで浮いた話は聞かないが……」
「でも、そうよね。十天衆の皆も、彼に惹かれて続々集まってきてるし……」
「……ああ。黒騎士や、王族であるへルエス殿もまた……。時々彼が私よりも一回りも年が離れていることを、忘れてしまうよ」
「グランっていつの間にか人をどんどん増やしてるわね。ククルちゃんにクムユちゃんもいるし、シルヴァにとっては、もう一つの家みたいじゃない、グランサイファーって」
「そうかもしれない。ふふ、家か……ラビ島の実家に戻ることができたのも、ソーンと再び出会えたのも、元をたどれば、団長が……。彼と出会っていなかったら、クムユやククルと空をめぐることも、実家に帰ることも、ソーンとこうして話すことも、なかったのかもしれないな……」
シルヴァは脳裏にグランの顔を浮かべると、自然と心が温かくなっていく。色々と思い返すと、彼には返しきれない恩がある気がしてきた。
ソーンも目を細める。自身が二王弓の呪縛から解き放たれ、シルヴァと視線を合わせた時の視界の端。彼の顔は、『もう、大丈夫だね』と優しく言っているような気がした。
「今度、家に案内してあげたらどう? 私はもうグランを実家へ招待したわ」
「そうなのかっ。驚いたな……なら、今度機会を見つけて誘ってみるよ」
「私の実家にも来てね」
「ふふ、ぜひ。それも楽しみだな」
「あ、そういえばどうして、シルヴァはこの騎空団に入ったの?」
「ああ、私は成り行きなんだ。まだ彼らが帝国に追われていた頃の話なのだが――」
グランとの出会いを語るシルヴァの声は弾み、ソーンもますます頬を緩ませていった。
「おや、今日は早かったですね。ちょっと待っててくださいね」
団内にシャオという者がいる。エルーンの若い男性で、糸目に飄々とした態度と歯に衣着せぬ物言いをするが、確かな医術知識に基づいた薬の処方ができる薬師だった。
シャオの部屋で彼から小包を受け取るグラン、その表情は硬い。
シャオはにこにことしながら言葉を続ける。
「調合用の素材はまだまだ余裕がありますよ。万事屋さんから団を混乱させたお詫びにと、大量に頂きましたから」
シャオの言葉で、グランは以前シェロカルテとしたやり取りを思い出す。
シェロカルテが言うには、リーシャとヴィーラへ販売した薬は、人の理性を破壊するような強力な媚薬ではなかったという。せいぜいカップル同士が気分を高め合って楽しむためのもの、リーシャがモニカに連絡して別口の裏も取れたため、シェロカルテが嘘を言っていないこともわかった。
ならば何故、グラン、ヴィーラ、リーシャはあんなことになったのか。
シェロカルテが立てた仮説はこうだ。
『もしかすると~グランさんの体質によるものかもしれませんね~。薬の後遺症という話も初めて聞きましたし~。以前盗賊の方たちが持っていた濃い物を吸ってしまった事で、効果が出すぎてしまっているのかもしれませんね~』
彼女には珍しく申し訳なさそうな顔をしていた。薬の反応によるグランの体質の変化や、他の使用者に同じ例がないかなど、シェロカルテには幅広い人脈を駆使してもらい調査を続けてもらっている。
今のところグランの日常生活に支障は出ていないが(夜の生活はさておき)、念のためシャオに協力してもらい、精神安定用のハーブ等を各自処方してもらっている。
「6人の美女を抱えるハーレムとは、男として中々憧れるものがありますね。いやはや、私もあなたのかぐわしい匂いを嗅いでいると、なんだか体が熱く変な気分に……」
体をくねらせるシャオにグランは青ざめるが、
「やだなあ、冗談ですよ。しかし求めるお薬が精力剤ではなく逆のものとは、若いっていいですねえ」
そうかもしれない、とグランは昨夜のことを思い出す。ルリア、カタリナ、ヴィーラ、リーシャ、ゼタ、ベアトリクスに半ば襲われるようにベッドに押し倒され、しばらく時間が経った後、ギンギンのグランを残し、女性達は至る所から白濁液を漏らしながらピクピクと痙攣して倒れていた。
後日目的地に到着し、団員たちは各自分かれて依頼へと向かう。
小声で話すシルヴァとソーン、二人を後ろに先頭を歩くグラン。今三人は、メフォラシュの砂漠を進んでいた。
依頼は群れを成して移動するキラーキャメルたちの誘導。全滅させては生態系に影響が出るため、あくまで進路を人里に向けさせないようにするための依頼だった。
グランとしては土地勘のあるシルヴァ、そして元狩人として天眼を持つソーンと万全の人員だったのだが、先ほどから後ろ二人はそわそわとしている。
「な、なあグラン?」
と、シルヴァが少し歩調を早めてグランの隣に来る。
なんだい、とグランが聞き返すと、シルヴァとは反対側にソーンも並んだ。
「依頼が終わったら時間あるかしら? よかったらシルヴァと一緒に、案内したいところがあるのだけど……」
グランは了承し、どこへ行くつもりなのか聞き返す。
「それは行ってのお楽しみ。ね?」
「ふふ、ああ。楽しみにしていてくれ」
と、シルヴァとソーンは楽し気に微笑んでくる。美女の双方向からの視線に、グランは思わず胸が高鳴った。体の距離が近い。二人が自身を信頼してくれていることを自覚すると、グランの心に、沸々と黒い感情が鎌首をもたげてくる。
行ってのお楽しみ、シルヴァとソーンが、男の己へ。
「どうしたの?」
「?」
突如立ち止まったグランに、シルヴァとソーンがきょとんとしている。
グランは自身の想像に呆然としていた。今、自分は目の前の二人で何を考えた?
グランはごそごそと懐をあさると、シャオからもらった粉末の匂いを吸って肺に送り、その後粉末そのものを水で一気に喉へ流し込んだ。
興奮が瞬く間に引き、体が落ち着いていくのがわかる。グランは心の中で、改めてシャオに感謝した。
「お薬?」
「どこか悪いのかい?」
心配する二人へ、昨日まで少し風邪気味だったため、念のためシャオに処方してもらった、と告げる。二人に嘘をつくのは少し心が痛かったが、まさか性欲を抑えるための薬とは言えない。
「そう、あんまり無理しちゃだめよ。もし調子が悪かったら、すぐに言ってね」
「依頼をこなすのも大事だが、一番大事なのは皆無事で帰ることだ。と、君には言うまでもないかもしれないがな」
二人の柔らかな声と表情がグランへ向けられる。グランも笑顔で応え、移動を再開する。目的地へ到達する間、グランは常に男性の仲間の顔を頭に浮かべ、先ほど脳裏に浮かんだ二人の痴態を必死に塗りつぶそうとしていた。
ほどなく予定地に着いた。
「準備万端。それじゃ、また後でね」
「私たちがついている。今日も無事に終わらせよう」
ソーンが空へ上がり、シルヴァは狙撃ポイントで待機する。
グランは荒野で一人。視線の先に、砂塵を上げて移動する魔物の群れがいる。
グランは金色の兜を被った。丸い大楯を持ち、槍を悠然と構えてマントをなびかす。太陽光を反射する金鎧の輝きは、魔物たちへ『この首欲しくば、来たりて取れ』と言わんばかりの存在感を放っている。
グランが咆哮すると、魔物たちが一気に進路をグランへ取った。
「見えた」
ソーンが面制圧の魔道矢を雨のように降らせ、追い込み漁のように魔物たちの群れを圧縮させていく。圧縮した群れは一気にグランへ衝突した。
キラーキャメルの斧のような刃がグランへ降り注ぐが、ファランクスを発動したグランは難なく盾で弾き飛ばしていく。槍で数頭に手傷を負わせると、恐れをなした群れ全体が、グランの前で横へと流れていく。
シルヴァは群れから外れた数頭を打ち抜きながら、あえて銃弾の軌道を水の属性力で明確にしていた。群れは弾が放たれた方向とは逆の進路を取り始める。
あとは三人で魔物を小突くように攻撃すると、群れはどんどん人里とは逆の方向へ進路をとっていく。
グランが最後の一頭の尻を見送り、依頼は完了した。
「お疲れ様。魔物たちが最初から走っていて助かったな」
シルヴァは二人に声が届かないことがわかっていたが、ソーンは唇を見て言葉を読むことができる。ソーンが手を振りながら高度を落としてきた。
未だ地響きがしているが、これもすぐに止むだろう。
(……ん?)
シルヴァはグランを見て訝しがった。戦闘が終わってから、グランはその場から一歩も動いておらず、ソーンとシルヴァへジェスチャーもしていない。シルヴァは双眼鏡を覗いてグランの様子を伺ったが、ケガもなさそうだった。
ソーンもグランの様子が気になったのか、グランの方へと高度を落としていく。
グランは前かがみになっていた。
「グラン?」
ソーンの声はもう届いているはずだったが、反応がない。グランは何事かぶつぶつ言ってるようで、必死に懐をまさぐっている。
グランの心にはピンク色の嵐が吹き荒れていた。自身を狙ってきた魔物の群れ、感情が高ぶり、命の危機に瀕した本能が血液を沸騰させてくる。
加えて自身と戦線を共にする二人の美女。シルヴァの下着同然の胸元、むき出しのソーンの体のライン。
別に長く禁欲していたわけでも、あの薬を吸い込んだわけでもない。自分の体になにが起こっている?
「え、ちょっとっどうしたの?」
混乱する頭の中、グランの視界に飛び込んできたのはソーンの股間だった。むき出しの太ももとおへそ、甘く心地いい女性的な匂いがグランへ注がれる。
「わっ!? シルヴァ?」
グランの隣へ降りようとしたソーンの真横を、シルヴァが発射したであろう弾丸が通り過ぎた。シルヴァの唇を読むと、緊急事態を告げている。
「下!? あ」
ソーンが気付いた時にはもう遅かった。地中から現れたのは巨大ワーム型の魔物、グレイブティガ―。その大口はグランの真下から現れ、グランは取り出した白い粉末を宙に散らしながらソーンを両手で押しやり、グレイブティガ―の体内へ消えた。
ソーンとシルヴァから思考が消えた。キラーキャメル達がおそらくこのグレイブティガ―から逃げていたことや、クレイブティガーもまた群れを成して次々と姿を現していることなども関係ない。ソーンは魔道弓から、シルヴァは長銃から光を放ち、グランを飲み込んだ魔物の皮を、矢と弾でむくようにズタズタにしていく。繊細な作業だった。周りの魔物の息の根を止めながら、飲み込まれたグランを傷つけないようにしながらの射撃行動。
二人無言、無表情。戦闘以外の一切の要素を排除し、洗練された絶技が魔物たちを血と肉に変えていく。だがそれでもなお、グランを飲み込んだ魔物の行動を止めるに至らず、次から次へと地中から伸びてくる魔物で射線が制限される。
シルヴァとソーンの背中に、嫌な汗が流れた。ソーンが一気に高度を取り、ソーンの意図を察したシルヴァが件の魔物以外を銃撃で吹き飛ばしていく。ソーンの一斉射で邪魔者を全て滅したのちに、グランを飲み込んだ魔物の息の根を止め、その腹を捌く。
そんな二人の思惑は、敵の腹を引きちぎりながら脱出したグランによって霧散した。
グランは全身返り血に塗れながら溶けた槍を敵に突き立て、引き裂くような斬撃でグレイブティガ―達を肉塊に変えていく。叫び、食らいつくすような攻撃に一瞬ソーンとシルヴァは硬直したが、すぐにグランが無事であった事実を喜んで射撃を再開する。
殲滅に専念できるのならば、三人の敵ではなかった。グランは使い物にならなくなった槍と盾を放り出し、属性力を伴った拳で最後に残った敵を殴り飛ばす。
(……なんて凄まじさだ。ベルセルクやレスラーのジョブも見たことはあるが、ここまでとはな……)
シルヴァは改めて思い直す。あの少年は、あの十天衆がその力を認めた存在なのだと。とはいえ、シルヴァは戦闘終了と共にグランへ駆け出している。グランが全身血濡れだったため、ケガがあるか確認できなかったからだった。
「グラン! 大丈夫!? 怪我はない!?」
一方のソーンは珍しく取り乱していた。地中からの魔物の襲撃、空中にいたことで振動に気付けず、グランに庇われた形となった。
大丈夫だよ、とグランは返事をした。
「グラン……」
ソーンが静かにグランの前へ降り立つ。返り血に塗れ、鎧と武器が敵の酸で溶けて砕けてなお、グランはソーンへ微笑む。
その姿を形容する言葉がソーンの脳裏に、そして駆けつけてきたシルヴァの脳裏にも沸き起こる。だが、すぐに首を振ってかき消し、二人微笑んでグランの労をねぎらう。
「……庇ってくれて、ありがとね。体すぐに洗わなきゃ」
ソーンは自身の手が汚れるにも関わらす、グランの手を取って礼を言った。シルヴァも懐から布巾を取り出し、グランの頭を撫でる。
「念のためにポーションも使おう。死肉を求めて他の魔物も集まってくる。すぐに宿へ戻ろう」
二人の優しさはグランの心に染みた。二人からふんわりと香る女性的な匂い。じんわりと汗がにじんでいる魅惑的な体。汚れた自分のことを少しも気にせず、体を近づけて怪我がないか確かめてくれる。
グランの目の色が変わりつつある。今のこの二人ならば、誘えばころりと転がってくるのではないか。二人まとめてベッドに押し倒し、口づけながら組み敷けば二人といえど、
「……グラン? どこか痛む? どうしたの?」
「属性力の使いすぎかもしれないな。肩を貸そう」
口数の少ないグランを心配するシルヴァとソーン。
グランは心と体がピンク色に染まっていく中、一握りの理性で自分に何が起こっているのか自覚した。
人を惑わす魅了の薬。多大な摂取で自身の体質が変化し、汗などの体液そのものに魅了の効果が出始めている。また、その魅了効果は自身すら対象だった。フグは自身の毒で死ぬことはないが、後天的に備わったグランには当てはまらない。シャオが処方してくれたのはおそらく、クリアハーブの粉末だ。
グランが下半身で動く人間だったら、悩むこともなかったかもしれない。だがグランが至上とする光景は、空を行くグランサイファーの上で数多の仲間と邁進する姿にある。
グランの視界では、シルヴァとソーンの顔が少し紅潮しているのが分かった。シルヴァがグランの脇に手を差し込み、ソーンはグランの手を握る力を強くしている。
グランへ本能が囁く。最高じゃないか。身をゆだねてしまえ。なに、今更二人増えたところでなんだ。誰も咎めはしない。こいつらも、船にいるあの女や少女も、皆全部、俺だけのものだ!
「きゃっ!?」
「わっ!?」
グランが強い力で二人を振りほどく。シルヴァとソーンが軽く悲鳴をあげる。グランが一歩、二歩と後ずさりする。
シルヴァとソーンが疑問で名前を呼ぼうとしたが、グランの顔を見て声が出なかった。
グランはごめんと言いながら微笑み、頬に汗ではない滴を伝わらせながら、右手は心臓の位置、左手は股間へ。力を込めて握りつぶした。
気を失ったグランを宿へと運びベッドに寝かせた時には、もうすっかり夜が更けていた。
「調子はどうだ?」
軽い夕食を持ってきたシルヴァ、眠るグランの横には椅子に座るソーンがいる。
「うん。もう熱は引いているわ。すっかり寝入っちゃてる」
「そうか……よかった」
二人はできればグランを医者に見せたかったが、宿の近場には見つからなかった。外傷の応急処置は済ませたが、熱はどうしようもない。懸念事項が減ったことでシルヴァは一つ息をつく。
「唯一の外傷が、自身で傷つけた物とはな……」
シルヴァがソーンの横の椅子に座る。ソーンは目を細め、グランの眠る顔を眺めている。ソーンの指が、グランの額にかかる髪を撫でた。
「指でくっきり、後が残ってたね……」
「……ああ」
やむなく気を失ったグランの外衣を剥いだ二人だったが、グランの左胸には指が食い込んだ赤い痕が残っていた。股間の方も確認したが、そこには目立った傷はなく、ソーンとシルヴァは真っ赤な顔をしながらすぐにグランへ下着を着せた。
やけに元気だったグランのグランはともかく、ソーンの纏う空気には惑いと悲しみがあった。
「私……またやっちゃったのかな」
「何を言うんだ。ソーンはなにも」
「でも、シルヴァだって見たでしょ? グランのあんな顔、今まで見たことなかったっ」
それだけはシルヴァも同意せざるを得なかった。グランの顔は泣き笑いながら自責にかられたような、まるで自分を見ないでと言うような顔だった。
ソーンの語気が強くなっていく。怒っているようで、泣き出そうでもあった。
「私、グランに庇ってもらったのに、きっと、あの時私がグランを変な目で見ちゃったから……それでグラン、きっと混乱しちゃって」
あの時とは。シルヴァは一瞬で戦闘を終えた時のグランを想い出した。そして、ソーンの想いにも気付く。
ソーンは重ねってしまっている。シルヴァに言われた言葉と、二王弓に付け込まれた心の弱さに。
「やっと吹っ切れたと思ったのに……私が、グランの事を、化け物だって、そんな目で見ちゃったから、きっとっ」
違うっ、とそう答えたのは、目を開けたグランだった。
「あっ……」
「こらっ。まだ起き上がっちゃだめだ……。どこか痛むところはないか?」
シルヴァの声にグランは首を振って答える。グランは言葉を続けようとしたが、その前に自身の胸と股間を見た。確かに自身では握りつぶした感触があったが、平穏無事のようだ。特に、男子の象徴については。
呆然とするソーンと、グランが理由を話そうとしているのを察して言葉を待つシルヴァ。
グランはソーンが自責の念に駆られているのを認め、自身に起こっている事を包み隠さず話した。ルリア、カタリナから始まり、ヴィーラ、リーシャ、ゼタ、ベアトリクスと始まった関係。夜、どのように楽しんでいるかも。
さすがにシルヴァとソーンは顔を赤くしながら目を白黒させ、夜のことについてはシルヴァが「そこはもういいっ」と言葉を止めさせた。
シャオに薬を処方してもらっていること、そして今回戦闘を終え、性欲が沸き起り、二人に手を出すことを回避するため、衝動的に自身の心臓と股間に手を伸ばしたことも。
全ての事情を吐き出すと、グランは自嘲した。自分がルリアと命が繋がっていることも忘れて自殺まがいのことをしたこと。結局はどこかで理性が働き、股間すら握りつぶせなかったことを。
ソーンが何か言おうとしたが、その前にグランの片頬にパチンと音が鳴った。立ち上がったシルヴァが、平手を振り抜いたためだった。
グランの表情に驚きはない。報いを受ける時が来たのだと思った。
だが、続くシルヴァの言葉に目を見開いた。
「もっと自分を大切にしなさい! 君に非などないじゃないかっ。犯してもいない罪で自分を追い詰めても、何にもなりはしない。……君も、周りも悲しいだけだ」
シルヴァの声が、どんどん優しくなっていく。グランの片頬を、今度は張らずに手のひらで包む。
「す、すまない……つい、手を上げてしまった。だが、君が傷つくと、君を大切に思っている人も傷つくんだ。そのことがわからない、君じゃないだろう?」
(シルヴァ……)
つい二人のやり取りを見守っていたソーン。彼女もまた、落ち着いた心の深淵から言葉を紡ぐ。
「ねえ、前に私が言った事覚えてる? 私はずっと、普通ってなんだろうって考えてたって。村を出て、私が世間から外れている事がわかって。私の居場所は結局、人の普通から外れた場所にしかないのかなって、ずっと思ってた。でも……」
ソーンがグランの手を取り、微笑む。
「十天衆の皆と、この騎空団に受け入れてもらってから気付いたの。普通じゃないのも私の一部。そこを理解してくれるシルヴァもいれば、気にせずに一緒にいてくれるルリアちゃんもいる。だから、ありのままの自分でいいんだって。グランが、その、色んな女の人と付き合っているのは驚いたけど、だからってグランともう一緒にいたくないなんて思わないわ。私を魔物から庇ってくれて、その後もシルヴァと私の事を思って、あんな行動を取ったんでしょ」
ソーンがグランの片手を両手で包み、暖めるように軽く力を入れる。
「体をちゃんと治してね。シェロちゃんも協力してくれてるのでしょう? だったら大丈夫よ。ちゃんと体が元通りになったら、またカフェへ行きましょう。ルリアちゃんとシルヴァも一緒に。ね、シルヴァ」
「……ああ。私たちの事を思ってくれた君への信頼は、決して揺るがないよ。だから、今はしっかりと養生するんだ。大丈夫さ、君はいつも不可能を可能に変えてきた。私たちも協力してな」
グランは涙をぐっとこらえて礼を言った。二人が聖母に見えた。だからこそ、情けなくもあった。彼女たちが向けてくれる優しさの中、起きてからずっと股間は毛布を突き上げている。
シルヴァとソーンもちらりとその方を見て、頬を赤くして目を背けた。暖かい雰囲気だったが、気まずい空気が流れる。
話はひと段落したし、グランは二人が色々察して部屋を出てくれることを期待した。
「それにしても……ちょっと悔しいと思わない?」
「? なにがだ?」
が、中々部屋を出ない。ソーンが不満そうに頬を膨らませる。
「だって、グランは今まで色々な子に我慢できなくなって手を出してきたんでしょう? 私たちの時だけ気を失ってまで我慢したなんて、ちょっと悔しい」
「……それは、グランが私たちのことを思ってくれたからこそ、だろう?」
「そうだけど……」
あれ、気のせいだろうか。二人が残念そうに見えるのは。ソーンがグランの顔に寄ってくる。
「ねえ、グランの話を聞いてて思ったんだけど、グランの恋人たちって、体の関係を持つ前は、好き合ってたわけじゃないのよね。その、してからその関係が始まったのよね。だったら」
「お、おいソーン!?」
複数の恋人という矛盾を抱えながら、それでもなお女性たちを夢中にさせる男とは。元より心から信頼していた若い異性、この機に乗じたら、少し、味わうことができるのではないか。
シルヴァとソーンは好色ではないし、グランを異性として好きだったわけでもない。しかし、若く未来があり、隣に並び立つことに何の違和もない相手であることは確か。
淡い期待が、二人の心に灯ったのは確かだった。あるいは、自覚していない失恋による心の痛みを、一夜の幻で癒そうとしているのかもしれない。
グランもソーンの思惑を察した。察したというより、最初から持っていた危機意識が警鐘を鳴らした。自身の魅了が効果を表している。
わけではなかった。
「クリアハーブ、宿の人が備蓄してたの。今私たちは、グランの体から影響を受けてないわ」
ソーンがハーブをグランへ見せる。元々はグランの熱のために用意したものだった。
「グランに助けてもらっておいて、はい、じゃあ後は一人で頑張って処理してね、なんて、さすがにひどいと思うの。だから、ね?」
ソーンがグランの首から頬を、ゆっくりと人差し指で撫でる。
(やっぱり、ハーブ持ってても影響受けてるのかな、私。でも……)
ソーンは今自分が抱いている気持ちに、嘘をつきたくなかった。
「義務とか、性欲処理とかじゃなくて。お互いに、そういう気分になっちゃったから、エッチするの。グランも同じ。そうね……綺麗なお姉さんに迫られて、誘惑に負けちゃった。とかじゃあ、だめ?」
恥ずかしそうなソーンだったが、その笑みには慈しみが感じられる。シルヴァは仰天していたが、ソーンの続く言葉でやっと意図に気付いた。
「……君は、化け物なんかじゃないわ」
(……そうか)
シルヴァはすとんと心に落ちた想いだった。シルヴァもまた、ソーンが抱いている気持ちと大差はなかった。これほど私たちのことで悩みぬいて傷ついた彼を、ここで一人残す。すると残った彼は女二人に知られたうえで、自らを慰める。あまりにみじめではないか。
「ふふ……ソーン。それだと、彼にとって私達が綺麗なお姉さんでなければ成り立たないよ」
言いながらシルヴァはベッドの反対側へ行って腰かけ、グランとソーンを眺める。
「あっ!? そ、そっか……」
ソーンはベッドへ身を乗り出してグランと至近距離。
「えっと……私たちって、どうかな? グランにとって、綺麗?」
どうと言われても。グランからすれば、そもそも二人が魅力的でなければ今回の事態は起こっちゃいない、と思っている。この誘惑に負けたら、あの砂漠の出来事はなんだったのか。
そんなことを思って口をまごまごとさせていたグランだったが、突如電流のような衝撃が走った。魂を通じて、思念が流れてくる。
『体を、大事にしてください。……気付けなくて、本当にごめんなさい。無理、しないで』
グランはごくりと喉を鳴らした。躊躇が、小さくなってしまった。
グランは、ソーンへ返答した。
「……明り、消すね」
夜闇の中、毛布が剥かれる。
ぎしりとベッドが鳴った。グランの視界には、左右から体重をかけぬように覆いかぶさってくるシルヴァとソーン。二人は特に、グランの胸板には気を付けていた。
「もし、私たちに至らないところがあれば……天井のシミでも数えててくれ」
グランからすれば、誘ってきたソーンはまだしも、シルヴァも乗ってくるとは思ってもみなかった。どちらか一人だけでも天上の喜びであろうに。
「すごい……大きい……」
ソーンはそそり立つグランのペニスを見て、感嘆の息を漏らした。私たちを見てグランがこうなっていることを思うと、女として嬉しい。
「力を抜いて、楽にしてね。私たちがしてあげるから」
「今の君は、けが人だからな」
お互い服を着たまま、グランのズボンと下着だけが下ろされた。隣に寝そべったソーンはグランの頬に吐息をかけながら、そそり立つペニスを片手でつかむ。
「わっ……熱い。ふふ」
微笑むソーン。シルヴァもまた反対側に寝そべり、グランのペニスを見てごくりと喉を鳴らした。あれが6人もの女を毎夜喘がせる凶悪な矛と思うと強烈な興味を惹かれ、シルヴァもその温度を体感すべく手を伸ばす。
むぎゅ……。
「これが、君の……はぁ……」
シルヴァの感嘆の吐息。
グランにとっては新感覚だった。自分からは何もせず、ただまな板の上のカツウォヌス状態。秀麗なるソーンとシルヴァの温い吐息が両頬に振りかかり、二人の手のひらと指でペニスが包まれる。
「シルヴァ……」
「ん……」
ソーンがシルヴァの指を撫でると、シルヴァも意図を察した。二人ペニス越しに指を交互に絡ませ、ぴっちりと手をつなぐ。互い親指も交差して作られたのは、シルヴァとソーンの合わせ手によるオナホール。
シルヴァとソーン、二人とも赤い顔をして瞳を閉じ、おずおずとグランへ距離を詰めていく。
「チュ……」
「ん……」
ゆっくりと触れるソーンの柔らかい唇と、シルヴァの少し震えて強張っている唇。その二つの口づけを両頬に受けると同時に、ペニスを包む二人の手がゆっくりと上下しだした。
グランは震えて息を漏らした。頬に繰り返される二人の唇の感触、肩から腕は彼女たちの体の体温に触れ、ペニスはすべすべとした手のひらの凹凸にくにゅくにゅと撫でられる。
絞りと取る動きではなく、ゆっくりと撫でて慰めるような優しい刺激。だが、グランは心地よさともどかしさで思考が弾けていく。
シルヴァとソーンもまた、未だ恥ずかしさが抜けきっていなかった。合わせ手コキの速度もその表れ、羞恥をごまかすようにキスを繰り返し、徐々に自身の気持ちを高めていく。
「グラン……気持ちいい?」
「我慢、しなくていいからな……」
酒に酔ったような性の心地さ良さを、シルヴァとソーンは久々に感じ始めていた。
(……ふふ、グランったら、口だらしなく開けちゃって……)
(君も、ここを握られればこうなるのだな。いつも皆を導いてくれる君が……!)
シルヴァとソーンは今、グランの命を握っていると言っても過言ではない。
手のひらの上の男を転がす気持ち、高まってきた性の衝動が相乗し、シルヴァとソーンは手の速度を速めていく。
「ちゅ、あっ、我慢しないで、たくさん、出していいのよ。全部、ちゅ」
「んんっ、君になら、手を汚されても、構わないっ、だから、んちゅ」
繰り返される頬の柔らかい感触。水音が混じった彼女たちの吐息と囁き。
彼女たちの手のひらはペニスの側部を挟み込んで上下にしごき、裏筋は指八本による凹凸が絶えずぐにぐにと抉っていく。表のカリ首が二人の親指の腹で擦られると、鈴口はどうしようもなく我慢汁を分泌して、彼女たちの愛撫に水を添えていく。
グチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュ……。
「ちゅ、グラン、グランんちゅ」
「ちゅる、ちゅう、ちゅうう……」
ソーンは陶酔した瞳で、シルヴァは目を引き絞ってキスと手コキを続ける。徐々に圧力を加えられる手の圧力が増し、上下動も既に酷い水音を立てるほどに速くなっている。
尿道からせり上がってくる感覚を最後に、グランは目をバタバタと瞬きして、背筋を逸らした。
ボビュルルルルッ! ビュルルルルル!! ビュルルル……。
「ちゅ!? え、あっ、すご」
「んちゅっ!? こ、こんなに、出るのか……?」
噴き出した大量の射精は、まさしく噴水だった。グランがぎりりと歯を引き絞り、二人が与えてくれる快楽に完全に白旗を上げた。
精液はペニスを握る二人の手を包むように濡らしていくが、二人の手コキは終わらない。射精している最中にも関わらず、ソーンとシルヴァは精液の量に呆然としたまま、手の動きだけはそのまま。
グチュグチュグチュグチュ……。
ビュルルルッビュルルルルッビュルルルビュウゥゥ……。
耐えきれない快楽に泡を吹き始めたグランにシルヴァが気付き、慌てて手コキの動きを弱める。
「あ、ソーン!」
「え!? あ、ごめんなさい!」
大量射精を眺めるのに夢中になっていたソーンも気付き、二人は白濁液に塗れた手を離す。解放されたペニスが上下に揺れながら精液を放出し、グランの下腹から太ももを汚して、ようやく収まった。
荒く息をつくグラン。シルヴァは拭き布で汚れたグランの体と自身とソーンの手を綺麗にして、グランの顔を見た。
(こんな……顔を……)
グランは快楽で口を半開き、荒く息をついてシルヴァとソーンを見上げている。先ほどまでの罪悪感の色は薄まり、ただ快楽をもたらしてくれる女を見上げ、次は何をしてくれるのかと、期待をしているようだった。
シルヴァは射精の収まったグランのペニスを見る。一度出したからなんだと言わんばかりに、バキバキの臨戦状態。
「んむちゅう……」
シルヴァがごくりと喉を鳴らしている間に、ついにソーンがグランの唇を吸った。赤い顔、唇の柔らかさを味わうための、ゆっくりとした触れ合い。ソーンは愛おしそうに目をつむり、その様を間近で見たグランは、ゆっくりと悦楽の沼に浸かっていく。
そんなキスを傍から見ていたシルヴァもまた、グランへキスをしたくなった。ここにいるのは三人だけ。誰に見られているわけでもない。
これを一夜の幻とするならば、何をためらう必要があるのか。いつも勇敢な背中を見せてくれる彼が、今私たちの女に溺れている。
(キスって、こんなに気持ちいいんだ……。いいなあ、ずっと、こうしていられたら……)
ソーンもまた、キスの時間が長くなるたびに暖かい想いが体へ浸透していく。好意を自覚していなかった、いや、そもそも異性としてはなかったかもしれない。しかし、こうして色々な理由を繋げてきた結果ベッド上の彼へ口づけしてみると、心体に快く甘い感覚が、じんわりと広がっていく。自分の衝動が間違っていない事を確信していく。
「チュ……」
シルヴァがまたグランの頬へ口づける。目をつむり、頬には赤みが増している。ソーンはキスをしながら横目にシルヴァを見やると、
「ん……。どうぞ、シルヴァ」
「え」
「したいんでしょ? 私だけ味わっちゃ、不公平だもの。グランだってしたいでしょ? シルヴァとキス」
グランは、こくりと頷いた。シルヴァはそれを見ると、恥ずかしそうに俯き、すぐに顔を上げた。
シルヴァが目を閉じる。少し突き出した唇。今、シルヴァのキス顔が迫ってくる。ソーンの時は突然だった。徐々にシルヴァのキスが迫ってくる。唇が視界から消える。鼻が触れ合う。まつげが長い。そして、
チュウ……。
あのシルヴァが、キスをしてくれている。赤い顔で目を引き絞り、豊満な体をやんわりと押し付けながら。
グランはもう、体の強張りを消した。ずっとこの心地よさに浸っていたい。
しかしソーンはグランの力が抜け、シルヴァが陶酔しているのを見ていると、ちょっかいを出したくなった。
「シルヴァ、ちょっとだけそっち寄って」
「んむっ……? んんっ」
シルヴァが横にずれると、グランの唇の横半分が空いた。すかさずソーンがシルヴァと頬をつけ合いながら、グランとキスをする。
「ちゅうう……」
(ソ、ソーン!?)
シルヴァとグランは驚いた。横から入り込んできたソーンの唇はシルヴァとも触れている。三人の同時キスに、グランはもとより、同性のシルヴァも驚きこそあったが、なんら嫌悪はわかなかった。むしろ、ソーンの唇はこんなに柔らかかったのかと、理性がほぐれる想いだった。
グランが薄目を開ける。性欲こそ極大だったが、なまじ理性が残っていたから、その光景は脳裏に焼き付いた。秀麗なる狙撃手二人の、初心とも言える触れ合うだけの口付け。だが同時に二人の顔が視界に広がり、唇に二つ異なる感触がある淫蕩な矛盾。興奮で体の強張りが戻り、愛撫から忘れ去られたペニスがビクビクと震えた。
グランは声を出すように唇を開き、舌先を出した。二人の唇の境目に触れ、二人の体がピクリと震える。
二人は唇を浅く開き、グランの舌を迎え入れる。浅くしゃぶるように、唇で揉むように。ソーンの方が、先に舌先をグランの舌先と触れさせる。ちゅぶちゅぶと水音が出始めると、シルヴァもまた、一層の勇気を振り絞って舌を突き出した。
「あむっ、ちゅうう、あん、シルヴァ、はげしっ」
「ちゅる、す、すまない、加減がっ、んちゅ、ちゅる」
一度たがが外れると、後は唇と舌、唾液が乱舞する。誰と誰がキスをしているかも関係ない。三人の間を行き交う吐息と快楽。シルヴァとソーンの混じり合った唾液が、グランの口内へ落ちて喉に飲み込まれて行く。
シルヴァとソーンは、当初の目的を忘れてしまっていた。グランの舌と唇は、まるで何年も前からシルヴァとソーンを知っていたかのように、心地よい刺激と望外の喜びをもたらしてくれる。自然グランの腕を抱き、疼き出した秘部へ、外衣越しにグランの指を擦りつける。
「ちゅる、はぁあ、グラン、私、私、ちゅううっ」
「はふっ、ちゅぷはぁ……ちゅるるっ」
グランが指に力を入れると、シルヴァとソーンはビクリと震えた。
グランがキスの合間に何かを言っている。キスに陶酔しきっていた女二人は、ようやく彼への愛撫が不足している事に気付いた。
「ちゅる……ごめんなさい。つい、夢中になっちゃって」
「君は、本当に、すごいな……。んくっ」
ソーンがてへっと笑い、シルヴァは口内に残ったグランの残り香を飲み込む。二人の視線は、我慢汁の涙を流し続けるペニスへ向いていた。
「シルヴァ、私、先にいいかな?」
「ああ、構わないよ。グランも、いいかい?」
シルヴァがまた、優しさのこもった笑顔でグランの頭を撫でる。グランも頷いた。彼女らもまた、自分を欲している。ここまでされて自制して、彼女らに恥をかかせてはいけない。後のことは、後で必死に考えるとする。
ソーンが膝立ちになり、ゆっくりと外衣を脱いでいく。貴金属の付いたものから外し、ソックスを脱ぎ、そして胸元を露出する。下を脱ぐと、甘い蜜が糸を引き、月明かりに反射していた。
全てを晒したソーンは頭を一度軽く下から上に振り、ふんわりと乱れた髪を背中にまとめる。
「……するね、グラン」
ソーンがグランの股間を跨ぎ、騎乗位の態勢でグランの頬を撫でる。ソーンにはまだ、グランに緊張が見えた。快楽に溺れきっていないように見えた。
ソーンは宣誓するように言葉を紡ぐ。
「グランと出会って、色々あって、今こんなことになってるけど。グランじゃなければ、きっとこんな気持ちに私、なっていないわ。幸せで、体が沸き立つような気持ち。だから、今夜だけでもいいから、一緒に、いこ」
グランもまた、ソーンの頬に手を添える。ゆっくりとソーンが体を倒し、グランとキスをする。シルヴァも邪魔をしなかった。
口づけたまま、ソーンはグランのペニスを掴み、自身のヴァギナの入り口へあてがった。そしてゆっくりと、腰を下ろしていく。
クチュ……。
「ふあぁああんっ!」
ソーンが唇を離し、背筋を反らしてソプラノの声を散らす。初めての感覚だった。包んでいるのはこちらのはずなのに、突き上げられて責められ、征服されているような心地。一瞬の痛みはあったが、すぐに甘い口づけと、膣内を駆け巡る快感に支配される。
「んちゅ、ちゅる、んんっ! あふっ、ああえっ!? うそっ、もう、イッ!? ふああぁっ!?」
プシュ、プシュリと、ソーンの涙と涎と平行して潮がまき散らされる。グランとソーンの下腹部がぶつかるたび、水音にまみれた肉の音が響く。
「あっすごっ、こ、こんなのっ、らめ、ふちゅう、ちゅううっ!」
色に溺れ切った瞳のまま、ソーンはまた体を倒して口づけし、腰を動かし続ける。一応グランの胸に負担をかけないようとする理性はあったが、それでも体に流れる絶頂の感覚にはあらがえない。
「も、もう、イったのか……!?」
「ちゅふはぁ、だ、だってっ! こんなの、こんなの、凄すぎて、ちゅるんんっ」
二人の接合を見ていたシルヴァだったが、ソーンの乱れ具合には驚嘆していた。グランは時折下から突き上げてキスに応えるだけなのに、ソーンはだらしなく快楽に顔を歪ませて嬌声と愛液をまき散らす。シルヴァはたまらず二人のキスに顔を寄せ、自らの秘部に指を伸ばした。
「好きっちゅる、グラン、グランっちゅる、じゅるるっ」
グランの征服は、ソーンの脳内まで及んだ。ソーンの今生きている一瞬が、全てグランで埋め尽くされて行く。隣で自慰をしているシルヴァにも気付かず、グランの頭を掻き抱き、貪るようにキスをして、腰を限界まで上げてペニスをしごき上げ、そして一気に落とす。いつまでもいつまでも繰り返す。
だが、最大の絶頂を悟ったグランがソーンの尻を掻き抱き、一気に射精へ到達するまでガツガツと突き上げると、ソーンはなすがままになって膣から液体をさらに噴出する。もうソーンの舌もだらしなくグランの口内へ投げ出され、グランの唇と舌でごしごしとしごかれるままになる。
グチュグチュとペニスを揉みしだいていたソーンの膣内が、一気に波打ってペニスを限界まで締め上げる。グランは一切の我慢をせず、最後に一気に亀頭まで抜いて、一気に子宮口を押し上げ、
ブビュッブビュルルルルッ! ビュルルルル!! ビュルルルッ!
(あっ、きたぁあっ)
ビクビクビクッ! ビクビクビクッ、プシャアアアアア……。
ソーンもまた、グランの最後の一突きで完全に理性が破壊された。許容できない絶頂の連続で体の震えが収まらず、体の全ての水分を出すがごとく潮をグランの下腹へ噴出しつづける。瞳はとっくに虚空を見つめ、その豊満な胸もグランの胸板で潰れている。
「んっ……ちゅるっ……んんっ……!」
華麗なる弓術を扱う美麗狩人の姿は、もうなかった。目はだらしなく垂れさがって半開き、快楽に打ち震える体は絶え間なく淫らな水音を垂れ流す。ゴポリと泡立った精液が接合部からあふれ出す。
それでもソーンは『グランに負担をかけない』という矜持をギリギリまで保ち、体重はできるだけかけず、舌とペニスを抜いて崩れ落ちるようにグランの隣へ寝転がった。
「はぁあ……! はぁ……! はぁ……! んくっ……」
ソーンは荒い息のまま、口内で気泡を立てた唾液を飲み込んだ。膣からは色々な液体が漏れ出してきたが、今はグランの手を握り、現実感を取り戻しに行くので精一杯だった。
「あっ……んん……ちゅ……ちゅう……」
痙攣していたソーンだったが、横のグランに微笑みを向けられて頭を撫でられると、嘘のように落ち着いて暖かい感情に包まれていく。ソーンはそのままグランの半身に抱き着き、頬にキスを繰り返して絶頂の波から戻ってくる。
反面シルヴァは自身を慰める指が止まらず、絶頂間近だった。ソーンの色に溺れた姿、グランがもたらしてくれる性の極上の快楽。
女の本能が囁いている。早く、私も、あれを。
グランがシルヴァの名を呼んだ。シルヴァが顔を上げ、熱に浮かされたような表情でグランを見る。
「ふふ、シルヴァすごいエッチな顔」
「!? き、君だって、そうじゃないかっ」
「そりゃあそうよ。だってグランの本当に気持ちいいだもん。でも、ちょっと休憩するわ。シルヴァももう、我慢する理由はないでしょう?」
ソーンの悪戯な笑みに、シルヴァは最後の理性の留め金が外れるのを自覚した。グランのペニスは天にそそり立って待っている。
(ソーンが、あんな表情を……。私も、これを入れたら……)
シルヴァは唇を引き絞りながらも、自身を包む外衣を一つずつ脱いでいく。上着、スカート、パンツ。たゆんと揺れる、大きく豊かな乳房。
シルヴァは一度裸になった後、乳頭と股間を恥ずかしそうに手で隠していたが、ソーンとグランに期待の目を向けられ、意を決して全てを晒した。
「本当に大きいわね……」
「い、言わないでくれ……」
グランもごくりと唾をのむ。ドラフとまでは行かないが、シルヴァのそれは容易にグランの顔を包むことができるだろう。シルヴァの全身は汗の艶でてらてらと輝いているようで、それでいて股間から太ももを伝う液体は別の粘度を帯びている。
(君と繋がったら、私は……)
グランの体に、溺れてしまうのではないか。シルヴァに残った粒子ほどの理性が今なら引き返せると言っている。だが、自身へ伸びてきたグランの手を握り、指を間断なく絡ませ合うと、彼に求められた現実に本能が歓喜してしまう。跨った体の下、愛液が垂れてペニスを濡らした。
「グラン……」
いつか彼の下を、離れる時が来るかもしれない。それでもいつも心は一緒、かつて彼に告げた言葉は嘘じゃない。
(君が、私を求めてくれるのなら、私は……)
「くっ……ふっ……んんっああぁ!」
シルヴァはゆっくりと腰を下ろしていたが、膣が肉棒を迎えた喜びで膝が笑い、力が抜けて勢いよく根元までグランを収めてしまった。子宮から全身が押し上げられるような感覚が、電流のようにひた走る。
「くっあっ……!? いきっいああああっ!?」
シルヴァの悲鳴と共に、滴が舞った。グランの下腹からへそまでまき散らされるシルヴァの潮。膣内は波打ってきついほどにペニスを締め上げ、グランは歯を食いしばる。グランは我慢をしているわけじゃない。自分も気持ちよくなるならば、シルヴァにも最大の快楽を届けたい。
両手を握り合ったまま、グランはシルヴァの体を前へと寄せるようにガツガツと突き上げ、シルヴァの巨乳は上下左右と暴れまわる。シルヴァは絶頂に打ち震える体を制御できず、いともたやすくグランの思惑通りに前へ体を倒してしまう。
(し、しま、彼の胸は、まだ)
グランの怪我の部分にだけはなんとか圧力を加えないようにと体に力をいれたシルヴァだったが、全て無駄だった。
「んふむぅ!? んちゅ、ぢゅる」
グランに舌を吸われ、唇をむさぼられ、胸は彼の胸板を感じる。
シルヴァとグランは薄目を開けて見つめ合い、舌を絡ませ合って止まらない。腰も、ペニスと膣がグチュグチュと泡を立ててピストンを繰り返す。シルヴァは快楽神経が限界を迎えるとともに、グランの手も、口も吸いつくように力を入れ、ペニスを根元から搾り取りように膣内を脈動させた。
ビュルルルルッビュルルルルッブビュルルル!
ビクビクビク! プシャアアア……ビクビク! ビクビク!
シルヴァの腰が絶頂で上下に打ち震え、射精の最中のグランのペニスを激しくこすり上げる。
(……あ……)
シルヴァとグランは、何も声を発することができなかった。思考も白く染まり、とめどない絶頂に腰と性器を痙攣させるだけ。二人の混じった液体が接合部からゴポゴポと漏れ出し、二人は唇をぴったりと合わせて舌を絡め合ったまま、全ての体を快楽に委ねて、相手の体温を感じ合う。
「じゅる……ちゅううぅ……」
シルヴァが瞳を閉じ、グランの舌と唾液を、まるで赤ん坊がミルクを欲するかごとく吸っていく。刻み込まれた強烈な悦と、自分の全てを任せてしまいたい甘い屈服の心情。それでもシルヴァは絶頂の波が引いてくると、まだうつろな世界のまま接合を解除して、ソーンとは逆の方へ倒れるように寝ころんだ。
「あ、ま、待って、グラン、もう、イキッ!? あぁぁああんっ!」
(……ソーン……?)
息を整えながら天井を見上げていたシルヴァだったが、隣から聞こえてきたソーンの喘ぎ声で顔を向ける。
グランはソーンの膣に指を差し込み、縦横無尽に内部を抉っていた。シルヴァのセックスを見て自身を慰めていたソーン。それに気づいたグランは慣れた手つきでソーンの感じる箇所を探し当て、ソーンの絶頂にまた新しい絶頂体験を刻み込む。
「イグッイキっあひぃあああっ!!」
ソーンは股間を突き出して背筋を仰け反らせ、プシャアッ! とまた液体を噴出して痙攣する。
その様を眺めていたシルヴァはグランに唇を奪われ、口内をグランの舌に蹂躙される。舌をごしごしと押し抉るように刺激し、かと思うと唇全体が押し撫でられて包まれる。予測できない愛撫にシルヴァはピクピクと浸ってしまい、最後のイキ残しまでイかせようとするグランの思惑くに完全に屈服した。
プシュ……プシュ……チョロロロ……
シルヴァとソーン、二人の体がビクビクと痙攣し、二つの放物線がベッドを濡らしていく。
グランはシルヴァの膣にも指を挿入し、二人の膣の形を完全に覚えるかのように何度も何度も押し撫でる。
「グラン……キス、キスしてぇ……んちゅう……」
「あむっ……やめないでくれ……わ……わたしも……ちゅう」
グランの唇にソーンとシルヴァが群がり、三人の舌が絡め合って唾液が乱れ飛ぶ。絶頂の余韻で激しさはなく、ねっとりと絡み合って相手の味を味わいつくす。
「あむっ……あ、また固くなってる……すごい……!」
「んむっ……ま、まだこんなに健在なのか……」
二人が言ったのは、太ももで感じたグランのペニス。だが二人の共通認識として、すぐにまた膣内に収めるのは躊躇いがあった。本能はごくりと求めていたが、今度こそ、あまりの快楽で意識を手放してしまうだろう。
でも、あと少し体を落ち着けたらしたいし、またグランの物を放っておくわけにもいかない。
「ふふ、じゃあ次はぁ、口でしてあげる」
「んちゅ……!? ふぅ……よ、よし」
グランの唇から離れ見下ろす二人。ソーンは舌なめずりをして、シルヴァは気合を入れていた。
グランのペニスを境に、左右から顔を寄せるシルヴァとソーン。
「すっごい……こんなに脈打って、火傷しちゃいそうね」
つんつんと指で小突くソーン、グランがぴくりと顔を快楽で歪ませる。その表情を見たシルヴァとソーンの心に、Sの気が芽吹いた。二人に妖しい微笑みが生まれる。
「さんざん君に気持ちよくしてもらったからな。次はこちらの番だ」
「ふふ、声響かせてあげる。ちゅ」
ソーンが尖らせた唇で、カリ首の境目を押す。するとペニスは揺れてシルヴァの唇へ。
「んちゅ」
シルヴァもまた、カリ首に柔らかい感触を残してペニスを押す。ペニスがまたソーンへと戻り、「ちゅう」とまた唇で押し返される。二人のキスの応酬でペニスが左右に揺れ動き、唇の柔い感触がビリビリとした甘い刺激をグランに送り続ける。唇を突き出した二人の表情が余すところなく見え、視覚的な興奮が最大限まで高まるダブルキスメトロノームフェラ。
グランはかはぁと息を漏らし、揺れ動くペニスから我慢汁を射精のように噴き出した。
あえぐグランにますます気をよくしたシルヴァとソーン。二人今度は舌を出して舐め上げるようにペニスを押し動かし、ソーンは時折唇をすぼめて「ちゅううぅっ」と鈴口に吸い付いて我慢汁を吸い出す。ちゅぽんと離れたペニスはシルヴァに渡り、シルヴァはねっとりとカリ首の外側を裏筋まで舐めてまたソーンに渡す。ビクビクと痙攣するペニスを境にした二人の唇は、徐々に距離を詰めていって愛撫の合間をなくしていく。
「あむっちゅるっ、ふふ、ピクピクして可愛い♪ ちゅる、んむ」
「ふふ、あむ……あれだけ私たちを鳴かせたのに、こうなれば可愛いものだな……はぼっ」
シルヴァがついに亀頭までしゃぶりついてじゅぶじゅぶと唇と口内でしごくと、また勢いよく口を離してそのままソーンがしゃぶりつく。
「んー♪ んんっんんっ」
ソーンは口内のペニスを深く咥え込み、横頬に形が浮き出るまで押し当てると、口内からは舌でぐりぐりと、頬の外からは人差し指の腹でぐりぐりと押し撫でていく。
「ソーンっずるい、ちゅむはむっ」
「んふっ、ひるふぁっ、ひょっふぉまっふぇ」
シルヴァはソーンの人差し指を顔でどかし、ソーンの横頬に浮き出たペニスのラインを唇で挟むようにして横に左右にスライドする。異質な感触にソーンも震え、つい口に力を入れて吸い、舌もぐにぐにとペニスの亀頭を強く押し撫でてしまう。
もう、限界だ。そんなグランの呟きを聞き、ソーンもシルヴァの要請に従って口内からペニスを開放した。
ペニスが震える。シルヴァとソーンはその瞬間を逃さぬよう、唇をつけ合いながら二人の舌で亀頭を包んで舐めしゃぶる。
「はむっちゅる、いっふぁい、らひてっちゅるる、れろちゅうぅぅ!」
「あむっちゅう、えんりょせじゅ、ちゅる、いっれくれはむっつちゅるるっ!」
二人のディープキスの間に亀頭を突き込んでしまったかのような、唇と舌の絶え間ないじゅぶじゅぶとした肉の坩堝。
グランの視界が弾け飛ぶとともに、ペニスが震え、尿道の中を精液が舞い上がる。シルヴァとソーンはタイミングをぴったりと合わせ、上唇をぴったりとつけ合って鈴口を封鎖、唇の中でかすかな空間を開け、一気に二人同時に、
「「ちゅううううぅぅっ!!」」
ビュルルルッビュルルルビュウビュウビュウビュウウウウウーーーッ!
幾度となく繰り返された射精が、一切の出力を失わずにシルヴァとソーンの口内に吸い込まれて行く。
シルヴァとソーンは絶えず吸引しつづけ、時にお互いの吸い付きのバランスが崩れて「「あっ」」と口からペニスを離してしまう。二人の顔が白濁液に染まるが、即座にシルヴァがしゃぶりついて竿を指でゴシゴシとしごきながら吸引。ソーンの唇がなんとかしゃぶろうとシルヴァの唇にキスをしていると、シルヴァも譲ってペニスはソーンの口内へ。ソーンはイき続けるペニスを根元まで、ごりゅごりゅと口と喉全体でピストンしてある程度吸引すると、また唇を離して今度はシルヴァと二人で唇を合わせ、鈴口を吸引する。
「「ちゅうぅうう……」」
徐々に勢いを失う射精、しかしペニスの硬度はまったく衰えず、温度は熱い。そのことを唇で確認した二人の女の園が、またくちゅりと疼いた。
「はぁ……ふぅ……ちゅ…ちゅ…れろ」
「あふっ、こらっ、ソーン……ちゅる……んむっ」
うつろな表情のソーン、シルヴァの頬や唇についた精液を舐めとると、グランの亀頭を巻き込みながらシルヴァと舌を絡め合う。戸惑っていたシルヴァだったが、心地よさに瞳を閉じて応じ、ソーンと二人で亀頭をあやすように舌を絡め続ける。
ペニスはぴゅるぴゅると出し残した精液を二人の舌に浴びせては、そのすべてを鈴口の奥からじゅるると、二人に不規則に吸われて一切を奪われていく。
グランの荒い呼吸が徐々に収まるにつれ、ペニスの律動も落ち着いた。シルヴァとソーンも亀頭越しのキスを終え、唾液と精液の混じった逆アーチを舌先で作る。
「「はふぅ……はぁ……はぁ……!」」
落ち着くグランと対照的に、シルヴァとソーンはグランへぎょろりと視線を移すと、膝立ちになって二人グランを見下ろした。息荒く火照った体。4つの乳首はピンと張って、膣はだらだらと涎をたらしている。
興奮したグランはペニスを再びガチガチに固めたが、二人の状態はさすがにやばいと思いなおし、ベッドわきにあったクリアハーブを二人に差し出した。二人共最初きょとんとしたが、グランの意図を察すると二人口に含んで匂いを嗅いだ。三人セックスの最中に葉っぱというどうみてもまずい絵面だったが、これである程度落ち着きを取り戻すはずだった。
「ぷっ、全然だめね、効かないわ」
「ああ……この興奮は、属性力の魅了じゃないよ」
二人そういうと、ソーンはグランの股間を跨ぎ、シルヴァはその横でグランの手を取って自身の秘部へ導く。
「私が今抱いている気持ちに、嘘とか作られたものはないわ。だって魅了だけじゃ、こんなに幸せな気持ちにならないもの」
「ああ……。この興奮は、君だから起こっている。君自身が魅力的過ぎるから……だから」
ソーンのまんこに、亀頭が飲み込まれる。シルヴァに差し込んだ指が、ぎゅうぎゅうと締め付けられる。
「いっぱいしましょう? お互い溶けあうまで……」
「何も遠慮することはない。君がくれるのは、悦びだけだ……!」
グランの頭から、思考が消えた。ペニスが跳ね上がり、指が上下左右と脈動する。
「「んああっ!」」
ソーンのおっぱいが揺れ、だらしなく快楽に浸った微笑みから涎がグランへ振りかかる。ペニスがグチュグチュと肉の海でもみほぐされ、彼女の絶頂の波でまた精液が搾り取られる。
「ぃいぃっ! グラン、もっと、もっとぉ!」
シルヴァに突き込んだ指が熱い。腕に彼女の潮が絶え間なく振りかかり、シルヴァの唇と舌がグランの口内へ突き込まれる。
ソーンからペニスが引き抜かれ、今度はシルヴァの中へ。
「いぎっ!? ひぎぃいいっ!?」
指で高められたばっかりのシルヴァの秘部は壊れたように絶頂の快楽信号を神経へ送り続ける。グランは構わずに突き上げ続け、また半ばうつろになったソーンとシルヴァのおっぱいをそれぞれ揉みしだく。
「グラン……んちゅ……じゅる、ちょうらぁい……」
気付けばシルヴァとソーンは半分に分け合うようにグランへ上から抱き着き、二人で唇をついばみながら膣内に精液を注がせる。ソーンに出せば少しずれてシルヴァへ。シルヴァへ激しく出し入れしてまた互い絶頂に浸ると、また少しずらすようにしてソーンへ。
「あむっちゅう……ほんとうに……君はっちゅる……すごいなっんあっ……んくっ」
「ちゅぷっ……ふふ……ずっと、こうしてたいなぁ……あんっ、またイクッ……!」
二人の体温と柔らかいおっぱいと乳首が胸板にこすれる。なぜか怪我の痛みも完全になくなり、グランは動けなくなった彼女らに変わって、ぞれぞれの尻をもみながら下から突き上げ続ける。
「はひ……あっ…………」
「う……あっ……」
シルヴァとソーンの意識が混濁していく。舌と唇は力なくグランの唇に触れたまま、絶頂の波がいつまでもいつまでも引かない。子宮がきゅんきゅんとなり続け、ドプドプと注がれた白濁液は許容量を越え、二人の膣から漏れ続ける。
もうかすかな嬌声と腰がぶつかる音しか響かなくなった部屋の中。むせかえるような淫らな匂いが充満し、三人の液の分泌だけがいつまでも続いていた。
「ん……」
「おはよ、もうお昼だよ」
「……ん……おはよう。彼は?」
「……先に起きてるみたい。私も今起きたとこ」
高い陽射しが差し込む部屋の中、シルヴァとソーンは向かい合って寝転がっていた。シーツは清潔、毛布も掛けられて寒くない。
「これは、彼が?」
「うん。私たちが先に寝ちゃった後にね、多分」
属性力の扱いに長けているとはいえ、二人が寝ているところに洗濯やらなにやらここまでできるのは、魔術系のジョブもマスターしているグランならではだろう。
シルヴァは昨夜の情愛による筋肉的な後遺症を感じて、もう少しだけ体を休めることにした。ソーンもゆったりとして起き上がらないから、似たようなものかもしれない。
「……やっちゃったね」
「……そうだな」
シルヴァとソーン、二人見つめ合ってくすりと笑った。悲壮感はなく後悔もない、和やかな雰囲気が流れる中、扉がノックされグランの声が聞こえた。
「いいわよ」
入ってきたグランは、片手にバスケットを持っている。サンドイッチだった。宿の厨房を借りたらしい。
「美味しい! 本当にこれグランが作ったの? 見た目もきれいだし……ねえ、こっちも食べていい?」
テンションの上がるソーン、無言で咀嚼するシルヴァ。グランがシルヴァにどうしたのと訪ねると、
「あ、いや美味しいよ。ありがとう……」
(……君はなんでもできるな。私より若く、きっと銃の腕も、いずれ……)
憧憬にも似た思いでグランを見るシルヴァだったが、当のグランは少しうとうととして眠そうだった。
「えい」
「!?」
ソーンはそんなグランを抱いてベッドに呼び込み、シルヴァとの間に寝ころばせる。グランも眠気が多かったために大して抵抗しない。
「どうするシルヴァ? 案内するのは今度にする?」
「……ああ、そう、だな。今日の遠出は、やめておこうか。お互いこんな状態だしな」
グランが申し訳なさそうな顔をしたため、シルヴァはグランの頬を撫でて微笑む。
「いいんだ。またメフォラシュには来ることもあるだろう。宿は延長して、明日船に戻ろう」
「ということはあ、今夜もしちゃおっか?」
「ソ、ソーン!」
「あら? じゃあ今夜は二人でしちゃっていい?」
「そういうことじゃなくてっ」
「だって私たちって他の子たちより出遅れてるじゃない? グランのこと、これからも誘惑していくからね♪」
「……変わったな、ソーン」
「シルヴァとグランもね。グランも悩みすぎちゃだめよ。そのうち私みたいになっちゃうから」
明るく笑うソーン、シルヴァにはまぶしく見える。
(もう笑い話にできるのなら、私もうじうじはしていられないか)
「ああ。昨夜も言った通り、まずはその体を治さないといけないな」
「この島にいる間は私とシルヴァが傍にいるから安心してね。もし治らなかったら、ずっと傍にいてあげる。ね、シルヴァ?」
すり寄るソーンに驚くグランだったが、シルヴァもまた距離をつめ、
「……ああ。君が傷つくことに比べれば、ささいなことだ。君には私たちにとってそれくらいの魅力があることを、自覚しておいてくれよ」
微笑んで抱き着いてくる二人。
グランは自身の境遇を思うと、何を悩んでいたのかと苦笑した。皆を心から愛している。そう思うと同時に、「どの口が言う」と蔑んだ目で自己を見つめるグランがいる。
だが白か黒か決着を着ける必要は、もしかしたらないのかもしれない。帰ったらルリアたちの想いをちゃんと聞き、そして自分の想いを伝えよう。もしかしたら、今のこの状況が至上としてこれからもずっと……。
グランの甘い考えもしょうがなかった。ソーンとシルヴァはグランの頭を撫で続け、暖かい人肌で眠りにつかせる。
「……寝ちゃった。近くのカフェとかも行ってみたかったけど、ま、いっか。ふぁあ……」
「ふふっ、もうひと眠りするかい?」
「そうする。グランってあったかいなあ。今夜も楽しみ……」
「はは、まったく……でも仕方ないか」
グランの肩に顔を埋めて目をつむるソーンにシルヴァも習う。暖かい陽射しが降り注ぐ中、シルヴァも陰を纏う感情を心の奥底に沈め、グランの腕を抱いて意識を手放した。
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