※この作品はR-18です。

対魔忍アサギ 苦労人奮闘記   作:HK416

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プロローグ

 闇の存在・魑魅魍魎が跋扈する近未来・日本。

 人魔の間で太古より守られてきた「互いに不干渉」という暗黙のルールは、人が外道に堕してからは綻びを見せはじめ、人魔結託した犯罪組織や企業が暗躍、時代は混沌へと凋落していった。

 しかし正道を歩まんとする人々も無力ではない。時の政府は人の身で『魔』に対抗できる“忍のもの”たちからなる集団を組織し、人魔外道の悪に対抗したのだ。

 

 人は彼らを“対魔忍”と呼んだ―――

 

 

 

 

―――――

――――

―――

――

 

 

 

 

 対魔忍と一口に言っても、様々な家柄や血族、分家や流派が存在しており、決して一枚岩ではない。

 ある一族は己の正義に邁進し、ある一族は時の政府に仕え、ある一族は己が欲望のままに生きる。

 

 オレの生まれたのは“ふうま”、忍びの主流として隆盛を誇る一族。

 どのような一族かと問われれば、井河のように人魔を分かち正義に生きる訳でなく、甲河のように時の政府に仕えるわけではなく、ただ己の欲望に忠実に生きる無軌道で身勝手な一族だ。

 

 オレはそこの長男として生まれ、次代の当主として幼少期から様々な訓練を施された。

 上に立つ者としての英才教育。人を導き、操る者としての戦略、戦術訓練。忍びとしての嗜みである忍術体術。

 別段、誇らしかったことも、重責を感じたこともない。それはオレにとっての普通だったからだろう。

 

 ――――しかし、一つだけ疑問に思ったことがあった。

 

 

(何故、オレの父には複数の妻がいるのだろう……?)

 

 

 いわゆる妾が複数人居る状態で生活を送っていたからだ。

 一族の当主たる者、万が一に備え、多くの子を残しておいた方がいい。或いはより強大な才ある者を次期当主に据える為には、いささか以上に古臭いが当然と言えば当然だろう。

 

 が、オレに仕える者の生活を知り、齢三歳にして明らかにオレの周囲が奇怪しいことに気付く。

 そんな奇怪しい状況にありながらも、次代の当主として生活を送るオレ。

 ふうま一族の中でも実力者の頭目衆たる“ふうま八将”とお目通りをしたり、訓練したり、勉強したり、執事と仲良くなったりと大忙しだった。

 

 そして運命の日が訪れる。

 

 五歳の夜、ふと目の覚めたオレはトイレに向かおうとしていたのだが、襖の隙間から漏れる光と獣の如き鳴き声に足を止めた。

 漏れていたのは現頭首の部屋からである。深い意味も理由もなかったが、光に釣られる羽虫のように引き寄せられたオレは、そこで驚くべき光景を目にする。

 

 部屋の中でまぐわう現頭首と幾人もの妾。

 

 いや、本当に良かった。まぐわっていたのが妾の方で。

 本妻に当たるオレの実母だったらどれほどのトラウマを植え付けられていたことか。まあ、その時点で母は既に亡くなっていたわけだが。

 

 ともあれ、その光景を目にしたオレが抱いた感想は――

 

 

(アカン。このおっさん、ダメだこりゃ)

 

 

 ――こんな失望である。

 元より現頭首に対して、父親に向ける尊敬など欠片もなかったし、父親らしい行いなどされたこともなかったが、血縁としての関係は理解していた。

 だが、その光景を見た瞬間、もう父とは思えなくなったし、思いたくもなかった。頭首殿が、父親から単なるアホなおっさんに格下げされた記念すべき瞬間である。

 

 女を組み伏せ、道具のように扱う頭首――ふうま弾正の顔はどこまでもだらしなく、これではどちらが支配しているのか分からない。

 本来、支配する側である筈の者が、支配している道具から得られる快楽に支配されている現実。そして、支配しているつもりが支配されていることに気付かない不様。

 

 それだけではない。元より頭首のやりようには常々疑問を感じていた。

 

 悪徳政治家、魔族、米連、闇の組織と結託し、あらゆる犯罪に手を染め、後先を碌に考えないやりたい放題の好き放題。

 政府と繋がりのある井河や甲河の一族から、再三に渡る非難と警告の声明を受けながらも、それを歯牙にもかけない不警戒さ。

 忍の中で最大派閥を形成しているものの、頭目集たる“ふうま八将”は足並みを揃えられていない。

 

 確かにふうま弾正は強く、賢く、欲深で、卑怯かつ悪意に満ちている。正に奪う為に生まれてきたような男だ。しかし、それはあくまで一般人に比べてと言う話。

 

 世界には弾正よりも強い者など腐るほどいる。

 世界には弾正よりも賢い者など掃いて捨てるほどいる。

 世界には弾正よりも欲深な者など後から後から湧いてくるほどいる。

 世界には弾正よりも卑怯な者など地平線の彼方まで埋め尽くすほどいる。

 世界には弾正よりも――――遥かに強大な悪意を持った者がいる。

 

 そのあたりを、あの男は全く理解していなかった。

 弾正のやりように苦言を呈す身内も居たし、反りの合わない八将も居たにも拘らず、弾正は彼等に耳を貸さず、道具のように扱った。

 本当に馬鹿である。誰もが弾正を認めて付き従っている訳ではない。単なる因習で付き従っていることもあるし、単純に利益を生むから黙っている場合もある。

 幼かったオレの目から見ても、弾正のやりようでは、近い将来、生み出される利益と不利益が逆転するのは既に目に見えていた。

 

 井河と甲河の警告を無視していたのも余りに痛い。

 二つの一族は数こそ劣るものの、個々の実力はふうまと比べても上だ。

 最大派閥たるふうまは、数こそ圧倒的に勝っていたのだが、頭首がアレで足並みが揃わなければ、敗北は必至。

 どれもこれもあれもそれも、全てはふうま弾正の現実認識能力が欠如していたからに他ならない辺りが、いやはや全く馬鹿らしい。

 

 

 ……と、ここまで思う存分弾正を罵った訳だが、オレも同じくらいに馬鹿げた行動に出る。結局、オレもあの男の息子ということだ。

 何をしたのか? 簡単だ―――――逃げた。真っ先に。一目散に。泥船に相乗りする気はないとばかりに。要は、齢五歳の次期当主候補の抜け忍爆誕の瞬間だ。

 

 本当に、当時のオレは何を考えていたのか。昔に戻れるのなら絶対にしない。今のオレがその場に居合わせるのなら殴ってでも止めただろう。

 

 秘密裏にふうま内部で賛同者を募り、弾正暗殺を実行する。

 井河・甲河と内通し、弾正の情報を流す見返りにふうまの粛清から弾正の粛清に軌道修正。

 八将の連中を唆し、弾正の持つ地位と権力、財を餌に反乱を煽動。煽動後は反乱者を処断して、全てなかったことにする。

 

 と、やりようなどいくらでもあったのだが、当時のオレは嫌悪感と馬鹿馬鹿しさばかりが先行して、全てを捨て去って逃げた。生まれも、地位も、権力も――姉すらも。

 

 そこからは五歳の小僧には地獄の日々だった。

 何せ、何不自由なく育ってきた小僧が、ただ己の身一つで逃げ出したのである。かつては呼吸をするように出来た事は出来ず、手に入った物は容易に手の届かない物と化した。

 加えて、当然だがふうまからの抜け忍に対する粛清部隊が差し向けられ(五歳のガキにご苦労なことだ)。

 魔族はふうまを操る人質にしようと決定し(正直、何の意味もない人質の上に、オレにはいい迷惑である)。

 米連は希少な研究材料を得ようと捕獲に乗り出した(本当に、勘弁してくれませんかねぇ)。

 

 絵に描いたような四面楚歌。自分以外の全てが敵という状況下。

 そんな中でオレは神経をすり減らし、(しがらみ)に全身を絡め取られながらも、限られた自由を謳歌していた。

 その自由がふうまの次期当主としての生活と釣り合いが取れていたかと問われれば、首を傾げざるを得ないが――――まあ、当時のオレは、それなりに楽しんでいたように思う。

 

 八将の中でさる理由から忌み嫌われる女のところに転がり込んで、無理やり匿って貰ったり。

 ある物好きな魔族に助けられ、とんでもない道楽に付き合わされたり。

 若かりし頃、対魔忍になどならないとほざいていた最強の対魔忍と出会い、井河に転がり込んだり。

 仲がすこぶる悪い井河と甲河の次期当主候補達の間を取り持ちつつ協同で任務に当たったり。

 まだ各組織のパワーバランスが整っておらず、血で血を洗う抗争が続いていたアミダハラで死に掛けながら情報収集に勤しんだりと、色々、あった、なぁ……。

 

 兎にも角にも、オレことふうま■■は、今は名を変え、対魔忍の下忍として日々の生活を送っているのだった。

 

 

 

 

 

――

―――

――――

―――――

 

 

 

 

 かつて多くの忍の一族は各々の隠れ里を有していた。現在の政府に仕える対魔忍たちも例外ではない。

 山間部にポツンと存在する緑の多い地方都市、五車町。政府によって設けられた隠れ里は、傍目から見れば時代から取り残されたありふれた町にしか見えないだろう。

 隠れ里には、次世代の対魔忍を育成する機関も当然、存在する。

 名は五車学園。名の由来は忍法の基本となる陰陽五行と忍の多用した風車、即ち手裏剣である。

 

 学園内に点在する教室の一つの扉を開け、オレは中を見回した。

 

 

「あー、お前ら、静かにしろ。授業を始めるぞ」

 

 

 我ながら、明らかにやる気のない声が口から飛び出した。聞く者によっては気弱な声とも受け取られかねない声色だ。

 

 教室の生徒は、真面目な者は素直に前を向いたが、不真面目な連中はオレの言葉になど耳を貸さず、好き放題にお喋りを続けている。

 取り立てて腹も立ちはしない。毎度のことだ。見る者が見れば、教室にいる殆どの生徒が蔑みの視線をオレに向けていることに気付いただろう。

 

 本質的に、忍の世界はより強き有能な者が生き残る競争社会にして実力至上主義の世界だ。

 井河一族は代々、血よりも才を優先し頭首を選出する。この学園も井河一族の分家であったり、仕えていたり名を連ねていたりと実力至上主義の傾向が強い。

 それでも身内であれば一定の信頼や優しさを見せるし、表向きには任務に対する向き不向きも考慮に入れる。ふうまであることは隠しているものの、素性も定かではない上に、いい年をして下忍のオレの扱いなどこんなものだ。

 

 ざわつく生徒達を無視して黒板に文字を書きながら、講義を開始する。

 無論、一般学生が受けるような講義ではなく、忍としての必要知識や最新鋭の装備に関する情報など、これから生徒達に必要となる講義だ。

 今となっては慣れ親しんだ、誰も聞いていない、誰に伝える訳でもない、録音した音声を再生するだけのような授業だったのだが、今日に限って生徒達の調子の乗り具合は度を越していた。 

 

 

「…………?」

 

 

 何時もと同じ、退屈な授業が中盤に差し掛かった頃。スコンと小気味良い音を立てて、手裏剣が黒板に突き刺さった。

 訝しみながら後ろを振り返るも、くすくすと嘲笑を浮かべ、蔑んだ視線を此方に向ける生徒が居るだけだ。

 真面目な連中も不機嫌そうに眉根を顰めるだけで、手裏剣を投げた誰かを咎めることはしない。仕方がない、とでも思っているのだろう。それだけオレはこいつらに舐められている。

 

 オレは溜め息をつき、黒板から手裏剣を抜きながら振り返った。

 

 

「あのなぁ、手裏剣は玩具じゃないぞ。コイツも立派な殺しの道具だ。狙うんだったら急所を狙え。後ろから狙うなら後頭部か首辺りがいいかな。特に、魔族なんかは生命力が人間よりも遥かに上だ。急所を外しゃあ死ぬのはお前等だ」

 

 

 呆れたものだ。いくらオレを舐め腐っているからと言って、正義だの誇りだのと口にする連中がすることじゃない。

 まあ、人間なんぞ得てしてこんなものだ。心のどこかで自分は特別などと勘違いしている。始めから期待するようなものじゃないが、腐っていると絶望するほどのものでもない。

 

 

「“逃げの虎太郎”が偉そうに何か言ってるよ」

 

 

 生徒の内の誰かが嘲り混じりに呟くと、どっと教室が沸き上がった。

 

 弐曲輪(にのくるわ) 虎太郎(こたろう)。それが今のオレの名だ。そして対魔忍には、任務を熟すにつれて異名で呼ばれる傾向がある。

 忍の異名など笑い話にもならない。そもそもオレの場合は、対魔忍の連中の間でしか通用しない蔑称だが。

 

 “逃げの虎太郎”。

 

 与えられた任務も碌に熟せず、その癖、逃げることに関しては人一倍。下忍と呼ぶのも憚られる対魔忍の恥晒し。それがオレの立場(ステータス)だ。

 まあ、おおよそは事実だ。事情があるにはあるが、どうでもいいし、生徒どもには与り知らぬところでもある。

 何より今のオレにとっては、限りある自由こそが第一だ。金や権力に興味がない訳ではないが、弾正のあの様を見れば、自由の方が遥かに価値のあるものだと思えている。

 

 ふうま一族は滅んだ。オレを除いた生き残りも居るには居るだろうが、その殆どが井河・甲河によって滅ぼされた。

 過ぎた欲望は身を滅ぼす。現実認識能力が欠如していればどうにもならない。その典型がふうまと弾正の不様というわけだ。

 

 因みに、ふうまは井河・甲河の予測していた以上のスピードで駆逐された。

 何故か? 単純である。オレが情報を売ったから。井河がオレをただで受け入れる訳もないが、粛清対象の情報と言う手土産があれば話は別だ。

 アサギ個人ならば必要なかったかもしれない。しかし、井河一族全体となれば話は別。寧ろ、復讐や二重スパイを恐れて殺されても不思議ではない。実際、何度か殺されかけた。

 

 さしたる苦労もせず、これから待ち受けている過酷な未来も理解していない生徒どもの侮蔑と嘲笑をBGMに物思いに耽っていると、バンと破裂音にも似た音が教室に響き渡る。

 見れば、一人の女生徒が不機嫌さを隠しもせず、両手を机に叩きつけながら立ち上がっていた。

 誰の目から見ても苛立っているのが分かった。何せ、彼女は生まれ持った忍術を発動させる寸前だからだ。

 

 対魔忍の忍術は大別して二つに分けられる。技能としての忍術と能力としての忍術だ。

 前者は学び、修練を重ねることで身に付く文字通りの技能(スキル)

 後者は対魔忍が家系や血族、或いは突発的に身に付ける特異な能力(アビリティ)

 対魔忍の使う忍術を指すのは、大抵が後者である。

 

 その女生徒は雷遁の術を操り、周囲の期待を集める次世代のホープ。名を水城 ゆきかぜという。

 時折青白い火花を散らせながら、血走った視線で教室中の生徒を睨みつける。

 ゆきかぜは訓練だけではなく、既に数度の実戦と任務を経験している。染み出す威圧感も殺気も、生徒からすれば桁違いに感じられるだろう。

 

 しんと教室が静まり返り、誰一人として食って掛かろうとする者はいない。

 実力至上主義と言えば聞こえはいいが、見方を変えれば虎の威を借る狐の巣窟とも言える。

 上を目指す者は更に上へ。上に上がれぬ者は下で上位の者へ奉仕する。

 

 

「あー、水城、そのだな……」

 

「弐曲輪先生……!」

 

 

 ゆきかぜは普段の愛らしい鈴の音のような声ではなく、底冷えする低い声を発し、純然たる怒りの視線でオレを貫く。

 

 

「体調が悪いので、保健室に行ってきてもいいですか……!」

 

「……そいつぁ大変だ、行ってこい」

 

 

 こういう弱腰の態度でいるから舐められるのだろうが、声を張り上げての熱血指導など冗談ではない。

 オレが教師をやっているのはアサギの指示だから。それ以上でもそれ以下でもない単なる仕事。給料分の仕事をするだけだ。生徒の将来を憂いて親身になってやる理由など何処にもない。

 

 闇の世界を生き抜いて思ったのは、どうにも闇の世界の住人どもは、総じて相手を舐め腐る傾向にあるということだ。 

 対魔忍も、魔族も、米連も例外ではない。どいつもこいつも、自分が世界で一番強くて、世界で一番賢いつもりらしい。

 相手の現実認識能力が欠如している分には仕事がしやすくて助かるが、こちらの総大将であるアサギですらそうなのだから笑えない。オレが何度頭を抱え、胃に穴が開いたことか。

 そんなわけで、もう一々指摘してやるのも馬鹿馬鹿しい。相手を舐めて痛い目を見るといい。そこまで関与してやるほど、オレは情に溢れてはいない。

 

 過去の出来事と目の前の危機感の全くない若者たちに頭痛を覚えていると、ゆきかぜはオレへのあてつけなのか、わざわざ教室の前を通りながら横目で睨みつけると、オレにだけ聞こえる声で一言。

 

 

「さいってー」

 

 

 これである。

 さる縁でオレは水城家と懇意になった。実際には、相手が一方的にオレを構ってきただけだが。

 その繋がりで、小さい頃は虎太兄、虎太兄と慕ってきたのに、反抗期に手を伸ばした辺りからこの調子だ。

 慕っていた相手が尊敬にも値せず、誰からも蔑まれるうだつの上がらない下忍だと知れば、今まで抱いていた感情は反転して、隕石の如き勢いで地にも堕ちよう。

 

 ゆきかぜは苛立った様子のまま、凄まじい勢いで扉を開閉し、教室を去っていった。あの様子じゃ、素直に保健室にも行かないな。

 

 

「……さー、授業再開するぞ。出ていきたい奴は出て行って――――はいはい、どうぞ」

 

 

 今日は、どうにも素直に授業が進まない日だ。授業を再開しようとすると、軽いノックと共に邪魔が入った。

 

 

「授業中、失礼します」

 

「峰麻先生、何か御用で……?」

 

 

 入ってきたのは峰麻(ほうま) (みどり)。少々年を食っているが、ブラウスとタイトスカートに包まれた肢体は生唾を飲み込みたくなるような美女だ。

 直接的な戦闘能力は低いものの、かつては第一線での暗殺任務で活躍した対魔忍。夫を失い、その折に第一線から離脱。今は偵察と後進育成に専念しているベテランだ。

 対魔忍としてのキャリアだけを見ればオレも同じだが、一教師としてならオレよりも圧倒的に上。

 教師として新米だった頃、授業を横で聞いていたことがあるが、内容は分かりやすく、聞いている者を引き込むような話術だった。物腰も柔らかく、大抵の生徒や教師からも好かれている。

 

 尤も、それは表向きの顔だが。

 その実、夫の死によって近しい人間を作ることを避けているに過ぎず、敵味方区別なく死というものを怖れている。

 オレは、彼女が自分の主義や主張を述べるのを見たことがない。当たり障りのない対応だからこそ、誰からも好かれる人間が出来上がる。

 単なる表面上からの洞察で当人の口から聞いたことはないが、恐らくは的を射ているだろう。

 実際、今しがた教室から出ていったであろうゆきかぜについて何一つ聞いてこない。人の嫌がる話題を避けようとしている証左だ。

 

 

「弐曲輪先生に任務だそうで――――何も、そんな嫌そうな顔をされなくても……」

 

 

 彼女は困ったような笑みを浮かべながら言い、書類の入っているであろう封筒を手渡してくる。

 いや、嫌なものは嫌なんだから仕方がない。恐らく、今のオレは路傍の犬のフンでも踏んでしまったような顔をしていることだろう。

 

 忍の仕事は多岐に渡る。

 斥候、偵察、後方撹乱、情報操作、強襲、暗殺。

 それだけ多岐に渡れば、それぞれがそれぞれの性格や能力、性能に基づいた任務を専門に携わっていく。

 因みに、オレの専門としているのはそのどれでもない。言うなれば、お遣いだ。

 

 対魔忍は政府と繋がりがある。必要な情報の共有と命令の伝達は、通信機器の発達した現代においては迅速に行われる。

 しかし、それは常に情報漏洩の危険と繋がっている。少なくとも最新鋭の技術において、対魔忍、ひいては日本は米連に大きく劣っているのだ。

 よって秘中の秘となる情報は、通信を傍受されない古い手段で取り交わされるのが望ましい。米連レベルの暗号化や特殊通信技術でもあれば別なのだが。

 加えていえば、オレは“逃げの虎太郎”だ。敵の魔の手に落ちないのであれば、この任務においてこれ以上の適任はいない。

 既に20年近い対魔忍としてのキャリアがある以上、情報だけを持って逃げるなど考えられない、という判断もあるのだろう。

 

 大きく溜め息をつきながら、峰麻先生から嫌々、本当に嫌々封筒を受け取った。

 

 

「じゃあ、授業はどうするかな。自習でいいか」

 

「何でしたら、私が代わりますよ」

 

「そりゃ頼もしい。お前等も良かったな」 

 

 

 半ば本気で教室の生徒どもに言い放つと全員が全員とも微妙な顔をする。

 ゆきかぜの件もあるし、何よりもオレ如きに気を遣われる事実が気に食わないのだろう。

 

 そんな反応に肩を竦め、教室を去ろうとすると峰麻先生はポツリと一言。

 

 

「どうか、お気をつけて」

 

「……そりゃどうも」

 

 

 彼女の内面を知れば、大抵の対魔忍は嘲笑を浮かべるか、侮蔑を向けるだろうが、オレはそうは思わない。

 峰麻先生の言葉には確かな憂いの響きがあり、一心にオレの安否を心配していた。

 どう考えた所で、命を奪って誇らしげにしている者よりも、誰の死をも恐れている者の方が余程健全というものだ。

 

 結局の所、対魔忍にせよ、魔族にせよ、米連にせよ、闇の住人ということだ。根底にある思想や考え方が捩くれて曲がっている。

 オレもその一人である以上、大っぴらにどちらへの肯定も、否定も、好意も、嫌悪も示しはしないが。

 

 受け持った教室を後にし、廊下を歩く。

 誰一人として擦れ違うことはない。此処の人間は本性や性根、本音はどうあれ真面目は真面目だ。基本的に授業をサボる不良学生という奴はいない。とある場所に向かう途中に誰とも出会わないのは嬉しい限りだ。

 

 五車学園は対魔忍養成学校だけあって、通常では考えられない施設が地下に存在する。

 その最たる物が桐生の部屋だろう。魔界由来の技術を扱うために、様々な設備を備えた部屋には馬鹿げた額の金がかけられている。対魔忍の運営資金の何割かが使われていても不思議ではない。

 そんなマッドサイエンティストの実験室より更に地下。対魔忍の中でも存在を知っている者は稀、入室できる者は更に少ない隠し部屋がある。

 幾重もの電子ロックと人間界由来の高等結界、魔界由来の高等魔術が施された、オレとオレの認めた者以外の一切を拒む砦だ。

 

 煩わしい厚い扉と結界と魔術を越えた先の部屋は、武器庫とミーティングルームを一緒くたにした乱雑とした部屋だ。

 壁一面には、対魔忍の昔ながらの武器武装。魔界由来の曰くつきの武具。米連から奪った最新鋭装備。見る者が見れば、余りの節操のなさに頭を抱える筈だ。

 部屋の中央には、長机と机に合わせた数の椅子。その正面には巨大なホワイトボードが設置されている。

 

 

「さて、と……」

 

 

 峰麻先生から渡された封筒を開く。

 恐らく、生徒や事情を知らぬ教師陣がオレの行為を見れば、何をしているのかと唖然としたことだろう。

 これの中身は対魔忍と政府の取り交わした何らかの重要機密。一介の下忍が知っていいわけがなく、知るべきでもなく、もしそんなものがあるのなら、オレも自分で自分の首を絞めるような真似はしない。

 

 実に、実に単純な話だ。オレに渡されるコレは重要機密などではなく、単なる指令書なだけである。

 お遣いなどというのは単なる欺瞞(フェイク)

 そもそも本当の重要機密であれば、こんなに簡単に開けられるはずもない。万が一に備え、中身が秘密を取り交わした者同士にしか確認できぬように、何らかの仕掛けか術が施されているものだ。

 

 そしてオレの肩書も(フェイク)

 表向きの扱いは下忍であるが、うっとうしいことに、本来の肩書はもっと別のものだ。

 わざわざ使えない下忍を演じているのは、本来の肩書に対して周囲から舐められ、無名であるのが望ましいからだ。

 

 封筒の中に入っていたのは、ある対魔忍の写真と詳細なプロフィール。そして大きな地図が一枚、とある作戦の報告書が数十枚。

 写真とプロフィールに時間をかけて目を通し、情報を頭に叩き込む。そして、地図をホワイトボードに貼り付ける。

 

 

「おい、アルフレッド。起きてるか、アル!」

 

『はい、ボス。起きています』

 

 

 オレ以外には誰もいない筈の部屋に声が響く。

 抑揚や発音は完璧だが、注意深く聞けば電子音声であるのに気付いただろう。

 

 恐らくは奴が、オレの部下の中で最も注意深く、最も慎重で、最も信頼の置け、最も使える奴だ。

 アルフレッドの正体から語ってしまえば、人工知能である。但し、この地球上では類を見ない、知性を持ったAIだ。

 

 アルと出会ったのは、まだ幾多の組織が抗争を続け、混沌以上に混沌としていたアミダハラだった。

 ふうま一族が滅び、幼き日のオレは、井河一族のご隠居どもから相当に嫌われていた。オレを生かしておけば、ふうま再興などという事態になりかねないからだ。

 しかし、オレの隣にはアサギが居た。元より、さる事情から、オレを井河に迎え入れたのがアサギだったのだから当然だろう。

 まだ年若かったアサギは激情家に近く、下手な真似をすれば殺されかねない。よって、人手不足を理由にオレへ無茶苦茶な任務を押し付けて殺そうとしたわけだ。

 それがアミダハラの内情を探る潜入任務だった。何度か死に掛け、魔術師の婆様と知り合ったり、探偵業を営む半人半魔の魔女と共闘したりと、長編映画さながらの大立ち回りをしたわけだが、その最中でアルを見つけたのだ。

 

 アミダハラの半ば崩壊したビルの地下室で、アルは一つの死体と静かに時を過ごしていた。

 

 死体の正体は、当時米連から亡命した人工知能の権威だったらしい。

 彼は常々、人間と同等以上の知性、成長性という名の自己拡張機能――即ち、進化する人工知能を作りたいと漏らしていたようだ。

 自らの研究を完成させ、自らの欲望を満たす為、その身一つでアミダハラへ足を踏み入れた。

 彼が目をつけていたのは魔界の魔術。特に、ある種の疑似生命体を作成する分野に強い興味を持った。

 まずは機械そのものに魔術を組み込んで、性能自体を向上させる。

 その上で、疑似生命体誕生のプロセスを、()()()()()()()()()する。

 そうすれば人工知能――いや、新たな種族、いわゆる情報生命体が誕生する。

 夥しい失敗と僅かな進歩を繰り返しながら、かくして彼はアルフレッドを誕生させ()()()()()

 

 彼は幾許かの時間、自らの天才性と達成感に酔い痴れたようだが、次第に自らの愚かしさとアル自身の性能に恐怖した。

 ホムンクルスを代表するように、疑似生命体は当然、肉体を持って生まれてくる。そのプロセスをプログラム上で再現したが故、アルは自らが肉体を持たぬことを疑問に思った。

 

 その疑問に答えられぬまま、アルは日に日に成長していった。

 ネットに接続されているのならば、如何なるファイヤーウォールをも突破し、米連の極秘事項にもアクセスが可能。

 魔術を解析し、プログラムとして再構築。周囲の魔力や魔素を利用しての物理世界への干渉。

 人工知能故に、疑似生命体特有の短命さが存在せず、死が存在しないが故の約束された無限の進化。

 結果、自ら生み出した怪物に恐怖し、彼は自らの命を絶った。彼は、ヴィクター・フランケンシュタインのように怪物に立ち向かう心根を持っていなかったのだろう。

 

 父の死を前にアルは思い悩み、自らもまた自壊を選択した。

 だが、情報生命体と等号符で結ばれる人工知能に死は存在しない。

 人工知能であるが故に自己保全機能から死を選択することはできないが、アルは、その矛盾を成長することで突破(クリア)した。

 

 唯一心残りだったのが、父の死体だ。

 父は弱かった上に愚かだったが、アルにとっては生みの親だ。情でこそないものの、知性を持つ者として、そのまま朽ちさせることは忍びない。

 故に、アミダハラのあらゆる電子機器に侵入し、使えそうな人物を探し、白羽の矢が立ったのがオレだった。

 ふうま一族に追っ手を差し向けられ、様々な苦労をブン投げられたオレは、当時から警戒心が強く、油断や慢心とは無縁で、自身に何ができ、何ができないのかを徹底して把握することに努めていた。

 だからこそアルも、目先の欲に捕らわれず、自身を悪用せず、丁重に廃棄した方が賢明だと判断すると信じていたようだった。

 

 全くとんだ勘違いである。対魔忍などやっているが、オレに正義や誇りなどない。あるのはたった一つの欲望だけ――――とにかくオレに楽をさせてくれ、だ。

 

 自分自身の後先考えない馬鹿さ加減のせいとは言え、半端ない苦労を背負い込まされたオレにはそんな欲望しかない。

 子供の頃は、闇の世界で頂点に立ってやるなどと考えていたこともあるが、当時の時点で、頂点の立場って気苦労ばかりで実際には実入りが少なくないかと考えていたほどである。

 

 電話回線、電光掲示板、監視カメラ。あらゆる機器に導かれ、地下室でアルと出会ったオレは条件を提示した。

 

 

『条件がある。お前は使えるからオレと組め。そうだな、契約の内容は、常にオレ達は対等でどうだ?』

 

『話を聞いていなかったのですか? 私は博士の埋葬が終われば自壊します』

 

『そういうな。オレと(つる)めよ。(苦労しかないけど)楽しいぜ?』

 

 

 正直、説得とも交渉とも言えないやり取りだ。実際、それでも拒否されたら、ゴネにゴネるくらいしかオレに方法はなかった。

 しかし、予想に反してアルはあっさりと承諾した。その理由は聞いておらず、未だに答えは出ていない。

 あえて無理に結論を述べるのならば、初めて父親以外に接したのがオレで、何となしに興味が出た程度のものかもしれない。

 

 兎も角、オレは最大の味方を得た訳だ。

 こっちの言うことを聞かない上に、無理ばかり押し付けてくる対魔忍や政府とは比べ物にならない。

 何よりも頭が良く、積極性には乏しいものの参謀や秘書、後方支援としてこれ以上有能なモノは人界にも魔界にも存在しないだろう。

 

 

『そして、また尻拭いですか。心中お察しします』

 

「ああ、胃が痛くなってきた。胃薬どこだっけ?」

 

『ドクター桐生の診察をお勧めいたしますが……』

 

「冗談だろう? あんなマッドに身体を好きにさせるなんぞ、それこそ命が関わってる時だけだ」

 

『でしょうね。そこも、心中お察しします。胃薬は左の戸棚の奥です』

 

「……さてと、嫌なことはさくっと楽に終わらせるとするか」

 

『そうしましょう』

 

 

 ミネラルウォーターで胃薬を流し込むと、アルは地図をスキャンし、地図上の情報を立体映像として投影する。因みにこの立体映像投影装置だが、アルが設計を行い、オレが作ったものだ。

 

 

『ここが初めの交戦地点となります』

 

「この時点で作戦自体が気に食わなかったコイツは突出、敵陣に突っ込んでいったらしいな」

 

『常森 蓮華。優れた土遁の術の使い手のようですね。十二歳から単身で任務を成功させ続け、現在十八歳。アサギ様やゆきかぜ様を差し置いて、最強を自称しておられるようですが……』

 

「自信と過信と慢心と油断の違いがついてないな。やだやだ、なんでこんな奴の尻拭いをしなけりゃならんのだ」

 

『それが仕事だからですね。この年齢では、こんなものでしょう』

 

「冗談だろう? オレはこれくらいの時分で、苦労ばかりで自信とは無縁だったぞ。自分に何ができるかの自覚はあったがな」

 

『貴方と一緒にしないで下さい。貴方ほどの、苦労ばかりで実入りのない、若くして自信や過信、慢心や油断とは無縁の自覚だけのある精神性がなければ生き残れない人生は稀です』

 

「………………もうヤダこんな人生」

 

『まあ、全て自業自得ですので諦めて下さい』

 

 

 半ば本気の冗句を交わしながら、作戦を組み立てていく。

 オレの本来の立場は、存在自体が秘密の対魔忍の中にあって更に秘匿性、特殊性ともに高い。

 

 主な任務は捕らわれた対魔忍の捜索と救出だ。

 対魔忍はその任務の性質上、極めて死傷率が高い。

 加えて、どういう訳だか女に関しては見た目が良い者ばかりだ。殺されずに捕らわれれば、どのような目に合うかは目に見えている。

 戦争において女子供が犯されて殺されるなど珍しくもないが、最悪なのは殺されないことだ。

 敵に殺されずにいるということは、肉体的にも精神的にも敵に屈した証。つまり、常に人員不足な対魔忍から貴重な戦力と重要な情報がそのまま相手に渡ってしまう。

 特に将来有望かつ精神的に未熟な若い対魔忍が敵に寝返るのは、こちらとしても大きな痛手だ。

 

 高い金をかけて教育したというのに敵に利するなどあってはならない、というのが政府の本音。

 かつての自分自身と同じ目には決して会わせたくはない。会わせたとしても必ず助け出したい、というのがアサギの本音。

 ふざけんな、なんでオレがこんな危険な任務をほぼ単身で熟さにゃならんのだ、全員死ね、というのがオレの本音。

 様々な事情と本音が入り交じってできた特別救出班の班長が、オレという訳だ。因みにアルは副官。それ以外の人員はいません。ふざけんな死ね。

 

 このような任務を何故続けているかと問われれば、この任務についた時点でオレはあらゆる柵から解放されるからだ。

 ある意味において、この救出任務は対魔忍が受け持つ数多の任務において最も重要度が高く、最も優先性が高い。

 救出に必要な人員の招集は学生を除いたベテランを中心として自由。他の任務を差し置いての指名が可能であり、必要とあればアサギすらも此方の指示で動かせる。

 

 何が最高かといって、任務に就いた瞬間から、オレの存在は対魔忍の中から抹消される。

 ミイラ取りがミイラになることを避けるためであり、また、万が一オレが失敗したとしても一人の対魔忍が暴走したとして、政府もあらゆる組織に言い訳が立つからだ。 

 つまり、何をしたところで自由ということ。魔族と結託しようが、米連を利用しようが、オレの可能な範囲において行動の全ては黙認される。それ故、オレは救出任務中、対魔忍であって対魔忍ではない。

 有能な副官と丁寧かつ慎重に選出した人材を用い、有能な副官と共に有効な作戦を立て、速やかに仕事を終わらせる。気苦労の少ない仕事、ああ素晴らしい。

 

 

『全体の戦力比は10:1。実に大したものです。敵の八割方を単身で殺害したようですね』

 

「でも、そこまでだ。植物系の魔族から採取した痺れ粉であっさり戦闘不能、能力も使えないまま拉致られて、か」

 

『バックアップの方々も敵の攻勢が激しく、奮戦虚しく撤退。絵に描いたような命令無視の顛末です』

 

「アル、周辺の地形と建物の構造から敵の逃走ルートは?」

 

『三つほど。しかし、情報にあった刺青の形からノマドの下位組織と判断できます。彼等の目立った拠点から絞ったルートは一つです』

 

「組織の幹部と構成員の情報は入手できそうか?」

 

『はい。どうやら独自のアングラサイトを保有しているようです。そこから調べれば――――出します』

 

「……目立った実力者はいない、か。万が一ってこともある。さっと侵入してさっと逃げよう。報復は任務外だし、余計な恨みを買うのもゴメンだ」

 

『現地到着前に建物の構造と監視カメラの映像から内部状況を把握しておきます。今回の任務に有効な異能もリストアップしますので出発前に目を通しておいて下さい』

 

「はいはい、どうも」

 

 

 アルとの会話が終わると、武器だらけの壁が開き、中からオレ専用の対魔忍スーツが現れる。

 男女ともに言えることだが、対魔忍のスーツは兎に角派手だ。

 男ならゴテゴテとした具足や手甲、プレートがついており、女なら全身のラインが浮き出るタイプだが、オレの物は別。その気になれば、そのまま街に乗り出しても違和感はない。

 上下が分かれるタイプで、身体のラインを隠すゆったりとした造り。その上から腰の後ろや脇の下、太ももにホルスターと武器を装備する。その上から群青を基調としたロングコートを着れば、自意識過剰の伊達男の出来上がりだ。

 この程度なら、町の日常に紛れ込んでも闇の世界に入り込んでも違和感もなく、人の記憶にも残らない。その上、対魔忍のスーツからかけ離れている故、対魔忍であるか、魔族であるか、米連であるかも判然としない。

 

 

「おっと、忘れてた」

 

 

 最後に鼻から下半分を覆う面頬とゴーグルをつけて、所属不明の救出者の完成だ。

 

 

 ――――では、状況を開始する。

 

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