※この作品はR-18です。

対魔忍アサギ 苦労人奮闘記   作:HK416

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『雷撃&鬼腕(魔改造)VS死霊騎士(傲岸不遜)……これはもう駄目かも分からんね』

 

 廃工場内部では激しい戦闘が繰り広げられていた。

 碧の雷光。立ち込める黒と銀の瘴気。燻る煙。

 放電音。打撃音。亡者の呻き声。

 

 幾重にも色と光が折り重なり、幾重にも戦闘の音色が多重奏を織り成す。

 

 

「ハァアアアっ――――!!」

 

 

 凜花の裂帛の気合と共に拳が振るわれる。

 威力、速度。どちらを取っても小型の砲弾と遜色のない拳打は、的確に屍の頭部を打ち砕き、節理の輪へと戻していく。

 

 凜花は学生対魔忍において、最強の一人。

 如何に死霊騎士の屍と言えど、そうそう遅れを取りはしない。

 

 最も、それは一対一での話だ。

 これが一対十に、一対二十ともなれば、凜花も油断は出来ない。

 もし仮に、対魔忍において、この軍勢に真正面から戦いを挑み、単身で勝ちきれると断言出来るのは、アサギと紫しかいない。

 

 

「――――ふッ!」

 

 

 加えて言えば、無数の屍に加え、死霊騎士の操るゴーレムも存在している。

 

 凜花は我先にと自身へ殺到する屍を叩き潰し、或いは体勢を崩させ、捕まれることだけは避けながら立ち回る。

 周囲全て。360度から迫る屍を処理する姿は、まるで刃のついた独楽(こま)、あるいは高速で回転する鉄塊だ。鋭く、素早く――それでいて重い拳打と蹴撃。

 

 しかし、ウィスプにせよ、デュラハンにせよ、そこまで甘い相手でもない。

 相手を舐めてはいるものの、戦いに手を抜く筈もなかった。

 

 屍の一体が低い姿勢と重心で、凜花の両脚を掴むように襲い掛かった。

 凜花はその姿を見るや、爪先を天高くに跳ね上げる。両脚が一直線に結ばれると、斧の如き勢いで振り下ろさせる。

 空手においては踵落とし。テコンドーにおいてはネリチャギと呼ばれる、身体の柔軟さは勿論の事、技術も要求される技だ。

 

 本来であれば当てることすら難しい一撃を完璧なタイミングで、意図も容易く頭部に炸裂させる。頭蓋が爆ぜ割れ、脳漿だった腐汁がブチ撒けられた。

 

 残心をする暇もない。

 次なる標的。あるいは次なる襲撃者に意識を向けた凜花の間隙を縫って――ウィスプの銀蠅が迫っていた。

 

 如何に優れていようとも所詮は人間。

 同時に相手を出来る数も、同時に認識できる敵の数も限度がある。

 ましてや凜花が得手とするのは近接格闘。どうしたところで、自身に向かってくる存在に意識を集中せざるを得ない。

 

 彼女の攻撃と意識が届かない射程からの攻撃は、どうしようもない弱点である。

 

 凜花の視界の外。それも後方から無数の銀蠅が砲身を向ける。

 一撃では仕留められない。だが、屍とゴーレムによる波状攻撃ならば、如何ともし難い。

 

 砲口から漏れる銀の瘴気は圧縮され――

 

 

「そんなほいほい、やらせるわけないでしょっ――!」

 

「チっ……」

 

 

 ――ゆきかぜの雷球によって爆散した。

 

 無数の雷球の内、いくつかは()()()()ながらも、凜花を狙った銀の蠅を確実に打ち落とす。

 

 凜花は近接格闘をメインとするが、ゆきかぜは中距離での射撃戦こそを得意とする。

 事実として、ゆきかぜの射程範囲である半径10mに敵を全く寄せ付けていない。

 電気の特性上、空気抵抗によって威力を失うが故に、()()()ではこれが最大射程である。

 銃を得物としているにも拘わらず、悲しいほどに射程は短いが、雷遁の火力の前にはこれで充分。これより内側に立ち入ろうものならば、手練れの魔族であっても黒焦げの死体に早変わりしかねない。

 

 ゆきかぜは周囲を警戒しつつも、敵の群れへと果敢に立ち向かっていく凜花のサポートに徹していた。

 どちらかと言えば、ゆきかぜも攻めを得意とする。凜子と組めば、対魔忍において最も高い攻撃力、殲滅力を誇る二本槍というのが大半の認識だ。

 

 だが、虎太郎の指導もあり、ゆきかぜは新たな才能を開花――いや、改めて認識した。

 

 それは極めて高い空間把握能力。物体が三次元空間に占めている状態や関係を、素早く正確に把握することに長けていた。

 現代社会において、人間の空間把握能力は中々に成長しない。当然だ、幼少期に過ごす環境では、自分を含めた大抵の物体が静止しているからだ。

 

 しかし、ゆきかぜは外で遊ぶのが好きだった。野山に分け入り、野原を駆け回る。それが日常だった。

 実際のところ、空間把握能力を身に付けるには、それが一番効果的なのだ。人体工学や人間科学に基づいたトレーニングを積んだ人間よりも、自然の中で生き、遊んでいた人間の方が優れている場合も少なくはない。

 

 空間把握能力と高い火力を誇る雷遁により、ゆきかぜを中心とする10mは、ほぼ絶対的な防衛線にして制空権だ。

 これを越えられるのは虎太郎のように、ゆきかぜの認識能力を超える速度に特化した者か、或いは雷撃を物ともしない超絶の防御能力を有する者だけである。

 

 

「――――仕方ありませんね」

 

 

 ふぅ、と溜め息を吐いて、ウィスプが動いた。

 勿論、ウィスプ自身が動いたわけではない。彼女自身の認識として、己は直接戦闘よりも屍を操って戦うことこそに向いているが前提に存在するが故に、当然であった。

 恐るべき話ではあるが、この場に存在している屍を操っているのは、他ならぬウィスプのみだった。

 

 ウィスプが指を鳴らすと、凜花に群がっていた屍が動きを止め、くるりと踵を返し、走り出す。向かう先はゆきかぜだ。

 おおよそではあるが、彼女はゆきかぜの連射性能を見切っていた。確かに高い火力は脅威ではあるが、その分連射は苦手――という判断である。

 

 事実としてゆきかぜの雷撃は、両手のライトニングシューターを放てば一呼吸間を置かなければ充電、装填できない。

 同時に撃つのではなく、片手ずつ交互に引き金を引くことで誤魔化してこそいたが、長年戦い続けてきたウィスプには見破られてしまった。

 

 敵の弱点は容赦なく責め立てるもの。

 ウィスプは渋い表情をしながらも、内心では笑みを浮かべていた。

 あの連射性能の悪さでは、自分自身と相性が良いと考えたのだ。確かに、連射が効かないのであれば、数の暴力でいくらでも押し切れるだろう。

 

 

「ゆき――――っ?!」

 

「貴様の相手は、私だッ――!!」

 

 

 ゆきかぜの救援に向かおうとした凜花に対し、デュラハンは地を蹴り、真上から襲い掛かるように拳を振り下ろした。

 反射的に、本能的に身を躱した凜花であったが、デュラハンの拳によって引き起こされた破壊に愕然とした。

 

 単純な力任せの一撃によって、コンクリートの地面に無数の罅を走らせ、叩き割ったのである。

 魔族の身体能力は極めて高い。対魔忍であっても、身体能力だけで押し切られることなど儘ある。この腕力に対抗できるのは、紫くらいのものだろう。

 

 飛び散る細かな破片から顔を守りながら、後方に飛びずさって距離を取る。

 

 見れば、デュラハンはコンクリートから手を引き抜いて、調子を確かめるように腕を振っていた。

 その傍らには、蜘蛛とも蠍ともつかぬゴーレムが控えている。

 

 

「……てっきり、死霊騎士は屍を操るばかりで、自分で手を下さない臆病者だと思っていたけれど、違ったようね」

 

「私は死体なぞを操るよりも、自分自身が前に出る方が得手でな。事実、死体を操るのはウィスプに任せきりだ」

 

 

 凜花の挑発を軽く受け流し、デュラハンは薄く笑みを浮かべる。どうやら、挑発を強がりと受け取ったらしい。

 ウィプスが指揮官、軍師タイプであるのなら、デュラハンは正に純戦士タイプであるようだ。

 

 

(死霊騎士の能力に関しては、虎太郎さんが得た情報からある程度は掴んでいますけど。さて、鬼が出るか蛇が出るか) 

 

 

 人界において、死霊騎士の名や能力は、まだまだ広まっていない。凜花も、相対するのも、名を聞いたのも、今回が初めてである。

 警戒しようにも、情報が少な過ぎた――――が、虎太郎の情報網は魔界にすら及ぶのか、死霊騎士達がどのような能力を持つのか、掴んでいたらしい。

 

 但し、ウィスプとデュラハンが、どの能力なのか。そもそも情報自体が正しいかも不明。アドバンテージはあるが、油断は出来ない。

 

 

(集団戦から各個撃破に切り替えたのは、此方の戦力を分断するため。露骨にゆきかぜちゃんを警戒している。これは……間違いなく好機だわ)

 

 

 確かに、ゆきかぜの火力は脅威だ。

 あの雷撃の前では、数の利を覆されかねない上に、調達した死体の消耗が激しい。

 ブラックとの戦いが控えている彼女達にしてみれば、こんな所で戦力を余計に消耗したくはないのだろう。

 

 

(此方の想定通り、ね。後は、能力的に相性が良いのを祈るだけ)

 

 

 凜花は半身となり、右拳を腰まで引き、左手を開いて僅かに肘を曲げて顔の前に。

 攻撃の当たる面積を減らし、尚且つ隙を見て反撃に出る構えであった。あの腕力を見たのだ、当然の選択である。

 

 

 

 

―――――

――――

―――

――

 

 

 

 

 

「あー、もう鬱陶しい!」

 

 

 周囲を囲まれぬように立ち回りつつ、ゆきかぜはライトニングシューターから雷球を放つ。

 只の一撃で腐乱死体を黒焦げの焼死体に変化させながら、ゆきかぜは悪態をついた。

 

 ゆきかぜは追い詰められつつあったのだ。

 

 どれだけ高い火力を誇ろうと、一度に倒し切れる敵の数は限られている。

 ましてや攻撃回数、連射に限りがある以上、追い詰められるのは自明の理。

 

 ――だが、理由はそれだけではない。

 

 

「――――ふふ」

 

 

 ウィスプは無数の屍によって出来た石垣の向こうで悠然と佇みながら、屍とゴーレムを操っていた。

 銀蠅の砲門から自らの操り人形に向けて、銀色の砲弾が放たれる。

 砲弾は決して破壊を引き起こさず、直撃と同時に弾け、周囲に漂うと身体に元よりあった穴、腐り落ちて開いた穴から体内へと侵入していく。

 

 変化は劇的であった。

 

 

「……ォオ……、グォ、オォォォオオオオォッ!!」

 

 

 亡者の眼球に銀光が灯る。

 身体能力は勿論のこと、凶暴性すらも跳ね上がり、操り人形に過ぎない亡者(かれら)は、とても人形とは思えない動きを見せる。

 人間らしい格闘技のような構えと攻撃。逆に人から獣へと転生したかのように四肢を付いて疾走するモノすらいる。

 

 操り人形(アンデッド)の力を強化する。これがウィスプの能力だ。

 

 

「くっ、このぉ……!」

 

 

 放たれる雷撃を掻い潜って自身に肉薄してきた亡者の顔面目掛け、痛烈な回し蹴りを放つ。

 華奢な身体からは想像もできない重い一撃は首の骨を圧し折った。しかし、銀の瘴気によって強化された亡者が、それだけで止まろう筈もない。

 首が折れたままゆきかぜの脚を掴み、ハンマー投げのように振り回そうとでもしたのだが、ライトニングシューターから放たれた雷球に頭部を蒸発されて、敢え無く土へと還っていく。

 

 一度でも防衛線、制空権が崩れれば次々に攻め入られるのは当然だ。

 ましてや、凶暴性、俊敏性共に増した屍の猛攻。攻めようにも、守ろうにも、躱そうにも、数が多すぎる。人のみで雪崩に挑むようなもの。

 

 

「仕方ないかっ、やぁあああぁあああっ!!」

 

 

 しかし、雪崩(数の暴力)に対抗してこその雷撃の対魔忍(質の暴力)――!

 

 ゆきかぜは、ライトニングシューターを介した攻撃では対処しきれないと瞬時に判断し、今度は全身から雷を放つ。

 ライトニングシューターはゆきかぜの強大過ぎる力を制御し、効率良く能力を運用するためのものである。

 だが、虎太郎の訓練によって制御装置を必要としないほどに、ゆきかぜ自身の制御能力は向上していた。

 

 今までゆきかぜが範囲攻撃を使用できなかった理由は二点。 

 一点は周囲の味方にまで損害を与えかねなかったこと。

 もう一点は、強大過ぎるその力は、ゆきかぜ自身を焦がしかねなかったこと。

 

 これを、虎太郎の訓練とゆきかぜ自身の努力によって克服(クリア)した。

 

 迸る碧の稲走は、四方八方に広がりながら、屍とゴーレムの区分なく焼き尽くす。

 ゆきかぜに襲い掛かろうとした死体。遠間からゆきかぜを狙っていたゴーレムすらも黒炭(くろずみ)に転じさせ、再び二丁拳銃を構える。

 

 

「ふふ、大したものね。でも、このまま押し潰してあげる」

 

「…………ですよねー」

 

 

 仕切り直し。

 ウィスプは失った屍の数を数えつつ、自らのゴーレムを再度造り直す。

 ゆきかぜは周囲を警戒しながら、相手の動向を探っていた。

 

 

(殆ど膠着状態。お互いに決め手に欠けているけど、体力的にも、数的にも不利なのはコッチの方。相手はこれまで通りの戦い方を続ければいい)

 

(完全にジリ貧。虎太兄の言ってた通り、か。悔しいけど、やっぱり数の暴力って怖い)

 

「けど、手がない訳じゃないんだから……!」

 

 

 確かにゆきかぜにとって状況は悪い。

 だが、この状況を覆すだけのカードはある。その為に、戦いの中で仕掛けを施した。

 

 

「いっけェッ――!!」

 

 

 ゆきかぜの起した行動に、さしものウィスプも目を丸くした。

 

 事もあろうに、ゆきかぜは無数の敵にではなく、その足元に向かって雷球を放ったのである。

 ウィスプにしてみれば何の意味もない行為。敵の数を減らすでも、牽制のためのものでもない。その意図が何処にあるのかなど、分かろう筈もない。

 

 実際に、雷球は屍に何のダメージも与えず、地面から工場内に向けて碧の放電現象を引き起こしただけ。

 それが逆にウィスプの警戒を強めた。この状況、この局面で何の意味もない行動に出るなど、在り得ない、と。

 

 けれど、ゆきかぜも承知の上。

 

 だからこそ、望んだ局面が訪れるまで、()()()()()のである。

 

 

「――――……?」

 

 

 変化は次の瞬間から始まっていた。

 

 ウィスプが気付いたのは、自身の操っている屍とゴーレムの挙動がおかしくなったこと。

 確かに命令を下しているにも拘わらず、緩慢な動きが、更に鈍くなっていた。

 

 レイスは確かに不老不死ではあるが、その力は無限ではない。

 人よりも高い体力を有しているが、限界は存在する。つまり、消耗と言う概念はレイスにも死霊騎士にも当て嵌まる。

 しかし、ウィスプが知る自身の限界はまだまだ先だ。そもそも、屍を操ることに特化した彼女は、この程度の戦闘で操り糸が鈍る筈もない。

 

 

(ならば、あの小娘が……)

 

 

 何をしたのかは分からなかったが、何かを仕掛けてきたのはゆきかぜと見て間違いない。

 この時、この瞬間に至っても、ウィスプは心の何処かに余裕があった。

 単に操り人形の挙動がおかしくなっただけ。その程度の認識しかなかったのである。

 

 何なら、操り難くなったものは捨て置き、ゴーレムならば新たに生成すればいい。人間どもの死体はまだまだある。 

 

 そんな甘すぎる考えしかなかった。

 

 ――故に、ゆきかぜの狙いが何であるか。彼女がどれだけの努力を重ね、何を掴み取ったのかすら、全く思いを馳せなかった。

 

 

「――――なっ?!」

 

 

 此処からの出来事は当然の結末であった。

 

 ウィスプが愕然とするのも無理はない。

 何せ、味方である筈の亡者とゴーレムが突如として、自分に向かってきたのだから。

 無論、ウィスプが操り損ねた訳ではない。亡者にせよ、ゴーレムにせよ、正面からではなく背面から向かってきている。

 何か、強力な力によって背後へと引き寄せられるように、ウィスプに向かってくるのだ。

 

 本来、津波や雪崩の如く敵へと襲い掛かる筈の操り人形が、自分へと向けられる。

 誰であれ、その数の前に為す術などない。その事実は操り手であるウィスプであっても、変わりはなかった。

 

 十重二十重に折り重なった死体は網の如くウィスプの身体に絡まり、背後にあった残された機械へと磔にする。

 今や、工業機械は無数の死体とゴーレム、ウィスプによって表面を覆われ、奇妙なオブジェと化している。

 

 

「これは、一体……?!」

 

八色稲妻(やくさのいなずま)――――伏雷(ふすいかずち)

 

 

 拘束から逃れようともがくウィスプに対し、ゆきかぜは努めて冷静に告げた。

 

 八色稲妻・伏雷。

 これがゆきかぜが新たに拡張した雷遁の術の名。

 

 伏雷は、ゆきかぜの生み出した雷撃を磁力・磁界へと変化させる忍法だ。

 電気が流れれば磁力が生じ、磁力が金属の電子を動かし電気が生じるように、電気と磁力は密接な関係にある。

 但し、通常の物理法則では、何の装置もなしに電力をこれほどまでの磁力に変換することは不可能だ。

 だが、それを可能としてこその忍法。物理法則など簡単に超越してしまうのが対魔粒子と呼ばれる未知の粒子だ。

 

 

『いいか、お前等。忍法ってのは発想と術者次第で簡単に姿形を変えるもんだ』

 

『言わんとしていることは分かるが……』

 

『実感が沸かないと言うか、信じきれないと言うか……』

 

『例えばの話だが、ゆきかぜが空遁の術、凜子が煙遁の術、凜花が雷遁の術を持って生まれたら、それぞれが全く同じ使い方をしていたと思うか……?』

 

『それは、在り得ませんね。私と凜子ちゃんは近接主体ですけれど、ゆきかぜちゃんの体格では前に出て戦うことはないでしょうし』

 

『ま、そういうこと。忍法ってのはな、術者の深層心理にある闇や無意識の偏向、趣味主張、得手不得手によって方向性が決まっていく』

 

 

 かつて、訓練の折りに虎太郎が語った科白は、ゆきかぜ達にとって考えられない発想だった。

 だが、邪眼“魔門”を持ち、多くの忍法に触れてきた虎太郎にしてみれば、当然の帰結であった。

 

 同じ水遁使いでも、直接的に攻撃に使用する者も居れば、不知火のように幻惑に特化した使い手もいる。その差異から至った結論が、虎太郎の言葉であった。

 

 

『但し、能力の拡張ってのは難しい。味覚の好みを強制的に変えるようなもんだからな』

 

『う~ん、じゃあ無理なの?』

 

『そうでもない。お前等はまだ若いし、何よりも才能に溢れている。端的に言やぁ、他の連中よりもキャパシティがある訳だ』

 

 

 一つの事柄に特化した使い方をし続ければ、思考が凝り固まり、他の発想には至らないように。

 長年、忍法を同じように使い続ければ、使用や発動はスムーズかつ無駄のないものとなるが、拡張性は失われていく。

 だが、三人はまだまだ若い。拡張の余地は十二分にあり、思考も柔軟だ。何よりも才能と言う名の天からの授かり物があった。

 

 虎太郎の考え通り、三人は自らの努力によって能力の拡張に成功していた。

 ゆきかぜにおいては、八色稲妻である。無論、その名の通り伏雷のみではない。流石に次世代のエースと呼ばれるだけのことはある。

 

 

『あれ? でも、虎太兄って、本来の使い手じゃ出来ない使い方してるよね? それって、凄い事なんじゃ……』

 

『あ? 全然違うよ? オレはお前等と違ってキャパそんなにないから。お前等が100くらいの才能だったら、10か20とかそんなもん。ただ、強制的に好み変えてるだけ』

 

(((…………化け物だ)))

 

 

 余りに簡単に恐ろしい事実を告げる虎太郎に、三人揃って戦慄したのは記憶に新しい。

 虎太郎の言を信じるのであれば、彼は自身の精神性を変質させることで、忍法まで変質させているも同然である。

 それでいて、根にある部分は全く変わっていないのだから、どんな精神力、どんな自我だと言うのか。

 

 虎太郎が精神的な怪物などと分かってはいたが、改めて認識すれば三人共、言葉もなかった。

 

 

「ぐっ、この程度……!」

 

「無駄よ。そっちが用意してくれた死体のお陰で拘束力が跳ね上がったから」

 

 

 戦いの始まり、的を外したように思われた雷球の攻撃は、元よりこのつもりだったのだ。

 虎太郎の入れ知恵ではなく、ゆきかぜ自身が死霊騎士の特徴を聞いた時点で決めていた。

 一対多。数の暴力に対抗する為には、操り手である死霊騎士を倒すのが一番手早い方法であると分かっていた。

 

 かつてのゆきかぜであれば馬鹿正直に、真正面から戦おうとしていたであろうが、戦闘中の思考にまで虎太郎の影響が見て取れる。

 

 そして何よりも、拘束さえしてしまえば、雷遁の術の真骨頂――――他の追随を許さない、圧倒的な火力を最大限発揮できる。

 

 ゆきかぜの身体から無数の稲妻が迸る。

 床に、天井に歪んだ雷撃の糸が繋がり、ライトニングシューターの銃口へ集束していく。

 

 電気の力は、凄まじいものだ。

 かつては天上における神威だった稲妻は、人の力によって地に堕ろされた。人界の多大な発展を齎し、人類は消えぬ光を手にした。

 人の世に下ろされ、研究が進むにつれ、空気中では急激に拡散し、非力なエネルギーというイメージがあるのも無理はない。

 

 だが、決してかつての神威が消え去った訳ではない。

 ましてや、生み出しているのはゆきかぜだ。彼女は雷撃の対魔忍――現代に現れ出でた雷神と言っても過言ではない。

 

 

「これが私の最大火力よ――!」

 

「――ひっ!」

 

「――――雷鎚の術(トールハンマー)!!」

 

 

 その出力は如何程のものか。

 ウィスプの恐れの声は、ゆきかぜが生み出した雷撃の音に掻き消された。

 

 薄暗かった工場内を真白に染め上げ、全てを飲み込んでいく。

 夜から昼へ。閃光は放流となり、射線上に存在する全てを蒸発させる。奔流の余波に、工場全体が軋み、悲鳴を上げていた。

 

 情け容赦のない雷の神威。

 如何な死霊騎士と言えど、対する術など在ろう筈もなく。

 

 後に残ったのは、半壊した工場とバタバタと倒れ始める死体ども。

 大穴の開いた天井はチロチロと火が揺れており、電熱によって熔解した鉄骨は赤熱化して、雷神の鎚がどれほどの威力であったか物語っている。

 

 

「連発できないのが難点だけど、虎太兄のお陰で確実に当てられるようになったし、こんなもんでしょ」

 

 

 ゆきかぜの力に耐えきれず、内側から破裂したライトニングシューターの一丁をホルスターに収め、ゆきかぜは呟く。

 

 伏雷は、雷鎚への繋ぎのために生み出した。

 多大な火力と破壊を生む反面、対魔粒子の消耗を強い、武器を失う一撃を確実に当てるためのものだ。

 また、他の仲間とのコンビネーションをも前提としていた。一対一でも使え、集団戦でも多大な効果が期待できる応用範囲の広い忍法である。

 

 人は失敗を糧に前へと進む。

 ヨミハラで地に堕ちた誇りは、再びゆきかぜの胸の内に戻りつつあった。虎太郎から学んだ、油断の無さと共に。

 

 今の一撃は、闇の世界への宣誓に等しい。

 

 ――今再び、人の世に仇為す外道を誅するため、新生した雷撃の対魔忍が舞い戻ってきたのだ、と。

 

 

 

 

 

―――――

――――

―――

――

 

 

 

 

 

「ぐっ――――!!」

 

「どうした! 対魔忍という奴は、その程度なのか!?」

 

 

 デュラハンの豪腕が唸りを上げた。

 一撃一撃が空を裂き、大気を震わせる。直撃すれば、如何な対魔忍と言えど無事には済まない攻撃の嵐。

 

 武道の欠片も感じられない大振りの攻撃。

 だが、圧倒的な身体能力から生じる破壊力と速度は、それだけで脅威だ。

 

 触らば壊れる。

 当たれば骨折は確実。当たり所が悪ければ死は免れない。

 一歩間違えれば即死。死の恐怖に犯されながらの戦いは、精神的にも凜花を追い詰めていた。

 

 対魔殺法の達人である凜花だったが、まだまだ経験は薄く未熟である。

 柔よく剛を制すと理想を囀る輩は後を絶たないが、剛よく柔を断つ現実の方が圧倒的に多い。

 

 正に紙一重、鼻先を掠めるような一撃を避けるが、恐怖によって大きく退いてしまった。

 その隙を、死霊騎士として戦い続けてきたデュラハンを見逃す筈もない。

 

 大振りではあるが、繋ぎは上手く隙も少ない。

 凜花もこのままでは追い詰められるのは分かっている。分かってはいるが如何にもならないのだ。

 

 戦闘において、儘ある現実。

 今はまだ耐えるしかない。逆転の糸目、反撃の機会は必ず訪れる、と。

 

 

「――――ふっ!」

 

「なに……っ?!」

 

 

 顔面に放たれた拳を、鋭い呼気と共に捌く。

 

 相手の拳にそっと手を添え、緩やかにすら見える動作。

 だが、デュラハンと凜花の身体能力を考えれば、凄まじい速度で行われているのは疑いようもなく。

 

 身体の外側へ、大きく拳を誘導し、デュラハンの体勢を崩してのけた。

 これ以上ない機会に凜花の右拳に大きく力が籠った。引き絞った弓に番えられた矢の如く、一直線に敵へと向かう正拳を放たれようとして――

 

 

「チィっ……!」

 

 

 ――凜花は、横合いから放たれた黒い瘴気の一撃に、距離を取らざるを得なかった。

 

 絶好の機会を無為にされ、凜花は距離を取りながら歯噛みする。

 

 厄介なのは、何もデュラハンだけではない。彼女のゴーレムと瘴気もまた厄介だ。

 ウィスプとは違い、複数のゴーレムを生み出せるわけではなく、一体だけではあるようだが、攻撃の威力はその分、凶悪。

 

 加えて言うのなら……

 

 

(何て厄介な。ゴーレムの方――いえ、彼女の瘴気も、また一撃必殺とは……)

 

 

 チラリと視線を向けた先は、今し方回避したゴーレムの一撃が当たった先だ。

 当たったのは工場の天井と地面を繋ぐ剥き出しの鉄柱であったが、黒い瘴気を受けた部分は石と化している。

 

 瘴気に犯された部分の石化。それがデュラハンの能力らしい。

 ただの攻撃も一撃必殺であれば、能力すらも一撃必殺。

 

 誰の目から見ても、凜花の不利は明らかであった。

 

 

(でも、相性は良い。これなら、アレを試せる……!)

 

 

 しかし、凜花は冷静であった。

 射程、腕力、脚力、速度、耐久。全てが劣っているにも拘わらず、彼女の目は死んでいない。

 

 恐怖は覚えつつも、怯え竦む様子は見られず、勇猛果敢に前へ出た。 

 黒蠍から放たれる黒い砲弾を巧みに躱し、時に地を蹴り、時に獣の如き低姿勢で掻い潜る。

 

 デュラハンはもう間近。

 油断か、慢心か、凜花の技量によるものか。

 無防備ですらデュラハンの腹部に、渾身の一撃を叩き込む――!

 

 

「こんなものか」

 

「――――っ!」

 

 

 確かに内臓を破裂させる拳打だった。

 デュラハンの頑強さを鑑みても耐えられるはずがなく、事実として拳を介して伝わってきた感触は内臓を破裂させていた。

 

 だが、相手は死霊騎士だ。

 痛みとは生命の本能。死を避ける為に発生する生理現象に過ぎない。

 故に、不老不死たる死霊騎士に痛みなぞ、そうそう感じはしない。それこそ、元の形が何なのか分からない程の破壊でなければ、欠片の痛みも覚えないのだ。

 

 叩き込んだ右手首を掴まれ、凜花は失敗を悟って全身が総毛だった。

 これから何をされるのか。これからどんな痛みを覚えるのか。これからどんな苦しみに耐えねばならないのかを悟ったのである。

 

 

「――――そらっ!」

 

「……が、っはぁ!」

 

 

 手首を掴まれたまま、球技のボールのように、馬鹿げた速度で凜花の身体が宙を舞った。

 地面と平行に投げ出された身体は石と化した鉄柱に背中から激突し、石を砕くだけに留まらず、そのまま地面を転がっていく。

 

 肺の空気は全て体外に排出され、せり上がった横隔膜が呼吸を阻害する。

 胃から上ってきた鉄の味を飲み下し、凜花は尚もデュラハンを睨みつけた。

 背骨が砕けなかっただけで奇跡的だというのに、この気概。凄まじいものがある――――が、デュラハンにしてみれば、それだけだ。

 

 

「それでは動けまい。これで終わりだ」

 

 

 無慈悲な宣言と共に、デュラハンは手の平を差し出した。

 すると、黒い瘴気が凜花に向かって溢れ出す。

 

 ゆっくり、ゆっくりと。確実に死に至る病のように。

 黒い瘴気は緩やかに、だが確実に訪れる細波(さざなみ)のように、凜花へと向かっていく。

 

 立ち上がることすら叶わない凜花に為す術もなく、石像と化す運命しか残されてはいない。

 

 

「――甘い、わね」

 

「……何、だと?」

 

 

 黒い瘴気は凜花を確実に届き、犯していた。

 ――にも拘らず、凜花は何事もなかったかのように立ち上がった。

 

 これにはさしものデュラハンも唖然とする他ない。

 今まで己の瘴気が通用しない相手など存在しなかった。

 身体が岩で出来た種族などには通用しないだろうと予測はしていた。

 だが、対魔忍と言えど只の人間に、通用しない筈がない……!

 

 

「貴、様……何をした!」

 

「答える義理なんてないわ」

 

 

 石化どころか、先の一撃で与えたダメージすら無くなっているかのような姿に、デュラハンは怒りを露わにした。

 人間風情が、屍の王から授かった瘴気を無効化するなど、断じて在り得ない――そんな傲慢な考えを抱いているのだろう。

 

 けれど、それは厳密に言えば間違いだ。

 

 確かに効いている。効いてはいるが、効いた端から元の状態に戻っているだけである。

 

 

『凜花、お前の煙遁の利点はな、身体を煙に変えられるってことだけじゃないぞ?』

 

『と、言われましても……』

 

『だからもう一歩踏み込めって。身体を煙に変えられる。そして、更に煙から身体を元に戻せる、だろ?』

 

 

 そう。単純な理屈だ。

 石化していく端から凜花は身体を煙に変え、煙から身体へと戻している。ただそれだけの話。

 無論、凜花の変化速度が、石化速度に勝っているが故に行える荒業だ。

 

 そして、痛みはなくなるが、覚えてはいる。

 肉体の破壊はなかったことになるものの、ダメージが消える訳でもなく、体力が回復する訳でもない。

 

 

『つまり、煙から戻す際に正常な姿に戻せれば、疑似的な回復能力、不死にもなるって寸法だ』

 

『えぇー…………いえ、そんなこと、考えたこともなかったですけど、出来る、の、かしら?』

 

『その為には、まずは自分の身体を知ることだ。という訳で、お前には専用の訓練を与えます』

 

 

 そして、与えられたのが一冊のスケッチブックであった。

 一日に何度も何度も、身体を眺め、正確に模写していく。

 

 それだけではない。目を閉じ、自分の身体を完璧に頭に思い浮かべるようになるまでイメージした。

 

 

『あ、あの、こんなの恥ずかしい、です……』

 

『駄目だ。効率良いだろ? 気持ち良くて、修行にもなるなんて、さ?』

 

『それは、そうです、けど……ぁんんっ♪』

 

 

 虎太郎に抱かれる際、鏡の前で自分の恥部から痴態から眺める羽目にもなった。

 

 結果として、意味などあるのか疑問だった訓練は成果を得た。

 肉体から煙へ、煙から肉体への変化速度は向上。手足しか煙と化せなかった変化部位は、今や全身へと至っている。

 お陰で、回復だけではなく、回避能力も向上した。通常の人体では避けられない攻撃も、煙と化すことで無効化できるようになった。

 

 射程を伸ばす、という使い方しか思いつかなかった自分とは違う異次元の発想に、凜花はドン引きであったが、こうしてみれば感謝しか浮かんでこない。

 

 ほんの一歩でも誤れば、永遠に煙と化して元に戻れない荒行であるが、虎太郎の課した訓練が功を奏したのか、今では呼吸をするかの如く容易に行えた。

 

 

「成程。忌々しい話だが、お前には私の攻撃は通用しないわけか――――だが、お前の能力にも限界があるはずだ。真実、不死身の私と死ぬまで戦えるか?」

 

「ええ、その通り…………だから、此方も一撃で事を終わらせる」

 

「ほざけ――!」

 

 

 凜花は再び地を蹴った。

 デュラハンは、ゴーレムに瘴気を放たせて迎え撃つ。

 

 これでは、先程の再現だ。とどのつまりは千日手に過ぎない。

 

 

(浅はかな! 味方の援護でも待つつもりではないか!)

 

 

 互いに決め手に欠ける相手。

 だが、デュラハンの有利は動かない。

 事実である。体力的にも、不死の理屈に関しても、死霊騎士の方が一段上である事実は決して覆らないのだから。

 

 但し、先程とは違う点が一つだけあった。

 

 凜花の手の内に握られていた物体の存在である。

 

 

「猪口才な……!」

 

 

 凜花が手から投げはなった物体は、煙玉であった。

 デュラハンの足元に投げられた瞬間、煙玉は役割通りに煙幕を張り、視界を封じる。

 

 

(何のつもりだ! 時間稼ぎにしたとこ――――何だっ?!)

 

 

 凜花の次なる行動を予測したデュラハンであったが、起きた出来事に硬直した。

 

 突如として、煙幕が消え去ったのである。

 まずありえない。ここは建物の内部、強風が吹く筈もなく、空気の流れも緩慢だ。

 そもそも煙玉は逃走用、敵の視界を遮る道具。風に流されぬように調合され、その場に長く残り続ける筈だ。

 

 晴れた視界の先では凜花が右肘から先を失くした状態で立っていた。その表情には会心の笑みが張り付いている。

 

 

 ――凜花が無くなった右腕を振り下ろすような動作を見せた。

 

 

 次の瞬間、デュラハンの周囲が黒く染まった。

 窓から差し込む月光が何かに遮られたのである。

 戦闘中にも拘わらず、デュラハンは本能的に頭上を見上げていた。

 

 

「――――っ!!」

 

 

 最後にデュラハンが見たものは、凜花の拳だ。但し、何十倍も膨れ上がった巨人の拳である。

 

 悲鳴すら上げる事も叶わず、突如として出現した巨大な質量がゴーレム諸共デュラハンの身体を押し潰す――!

 

 肉が潰れ、骨の砕ける音は、巨大な物体が地面へと叩き付けられる轟音に掻き消された。

 

 煙遁・天手力。

 虎太郎の発想を元に、凜花が独自に生み出した新たな術。

 本来、煙遁は身体を煙に変え、操る忍法である。故に、自分の身体から変換した煙以外は操れない――と、少なくとも凜花は思っていた。

 

 しかし、新たな発想は、凜花にも新たな使用法を考え付かせた。

 自らの一部を煙に変え、別の煙に混ぜれば、自らの一部と出来るのでは……?

 

 その発想を元に編み出したのが、これだった。

 

 結果は御覧の通り。

 凜花は煙を混ぜることで操ることを可能にしただけではなく、自らの身体を巨大化させることも可能としたのである。

 

 

「虎太郎さんに言わせれば、面白味のない使い方でしょうけど」

 

 

 巨大化した右拳を煙幕に戻し、更に混ぜた肉体の一部(けむり)を元の状態に戻す。

 何度か手を握っては開きを繰り返し、支障がないかを確認する。

 

 彼女ほどの才能であっても、生半可な覚悟と努力では実現できない技であったようだ。

 

 

「さて、ゆきかぜちゃんの援護――――の必要はないみたいね」

 

 

 突如として生み出された白い閃光と爆音に、凜花はゆきかぜの勝利を確信した。

 

 

「なら、ワイトさんの方ですけど――――虎太郎さん、酷い事してなければいいけど」

 

 

 ゆきかぜ同様に、新生した鬼腕の対魔忍は大きく溜め息を吐いた。

 虎太郎のド外道ぶりは嫌と言うほど分かっている。死なないと言うだけの理由で、どんな行為でも起こしかねない男だ。

 

 目的を果たした凜花は勝利の余韻に浸る暇もなく、次なる目的に向かって走り出した。

 

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