困った。
『おい、ちょっとこれ、焦げてねぇか?』
『な、何よ! 人が作ったものに文句を言うくらいだったら、食べなきゃいいでしょ!』
『いや、勿体ないから食うけどさ…………何も、怒らなくてもいいじゃねぇか』
『何? 何か言った!?』
『いんえ、何にも』
本当に、困った。
『はー、つっかれたぁ。たまの休日くらい……』
『アンタ、掃除の邪魔! ゴロゴロしてないでよ!』
『うぅぅ、もうやだ。やだよぅ。仕事したくない。最近、楽になってきたけどまだ辛い……』
『な、何も泣くことないじゃない』
万事が万事、こんな調子だ。
虎太郎には、感謝している。
私が自分の意志で生きるようになれたのも。
私と萌音が、無事に屍の王の魔の手から逃れられたのも。
私が、人界で安全無事に生活できるのも。
全ては彼のお陰なのだから。
それでも、私には彼にどうやって感謝を伝えていいのか分からないし、素直に接することも出来ない。
以前のように洗脳された状態であれば、蒙昧に虎太郎に尻尾を振っていたのだろうが、今はそれすら儘ならない。
『あー、もう、虎太兄ったら本当メンドくさい』
『ちょ、ちょっといいの、そんなことを言って。ゆきかぜにとって虎太郎は……』
『色んな意味で大切な人だよ。でも、だからって、相手の駄目な所とか、気に入らないことを言っちゃいけない理由にはならないでしょ?』
『……それで嫌われるとか、不安には、ならない?』
『ないない。虎太兄の器は、そんなに小っちゃくないから。寧ろ、建前で本音を隠しちゃう方が嫌いだと思うけど?』
そんなこんなで虎太郎と付き合いの長く、私としても気兼ねなく悩みを打ち明けられるゆきかぜに相談してみた。
他にも相手は居た。
凜子や凜花、不知火に――それから、あのアサギとかいう怪物も、他にも色々と。全員が虎太郎の女だと一目で分かったけれど、とてもではないが相談できそうにない。
不知火とアサギは、元より忙しい身だ。対魔忍という組織は、何処も彼処も火の車。
多くの対魔忍から信頼を勝ち取り、束ねる者として今の組織の状態を改善しようとするのは当然のこと。時間などあろう筈もない。
凛子と凜花を選ばなかったのは、正直な所、私の我が儘だ。
まだまだ少女と女の狭間にいる者に、何百年と生きることも死ぬこともなく彷徨い続けてきた私が相談するなんて気恥ずかしくて耐えられなかった。
その点、ゆきかぜはまだまだ少女。私にとっては萌音に近い存在。
男を知っていながらも、純真と無垢を保っているからこそ、こういったことも相談しやすい――――と勘違いしてしまった。
『でも、そんな悩みなんてー、簡単に解決できるよー』
『な、何よ。と言うか、その笑みは何なのよ』
『むっふっふー。それはねー…………ごにょごにょごにょ』
ゆきかぜが時折浮かべる奇妙な笑みに気圧された時点で気付くべきだった。
あの笑みは女の情念と欲望、深い愛で象られたものだ。何の臆面もなく、何の恥もなく、全てを一人の男に捧げると決めた女の笑み。
気圧されて当然だ。この少女は女としての年季は私の方が上だろう。けれど、女としての格が違うのだ。
とどのつまりは、私は悩みを打ち明ける相手を間違えてしまったことになる。。
――でも、まあ、その……間違えてしまって、良かったと思っている、私もいるのだけれど……。
―――――
――――
―――
――
―
深夜。
虎太郎は眠れない夜を過ごしていた。とは言え、慣れてきてはいたが。
(やはり、簡単には眠れんか。一つ屋根の下に誰かが居ると、とてもではないが眠れない)
疑心で構築され、油断と隙を許さぬ彼の精神は、生活面にまで影響を及ぼしていた。
ワイトが居るせい――より正確に言えば、他人が近くにいる状態では彼は決して眠れない。
睡眠は、私生活において、最も隙だらけになる瞬間である。そんな無防備な状態を他者に晒すなど、彼の精神は許さない。
故に、何が起こっても即座に対応できる浅い睡眠状態を保ち続ける。
例え、外部から短距離ミサイルを撃ち込まれたとしても、難なく対応できるレベルの睡眠しか、彼はこの10年間とっていない。
それでも十分に肉体と脳を休められる睡眠法を発見している辺り、流石としか言いようがない。
常人ならば、当の昔に不眠症で発狂している。それほどまでに睡眠とは人にとって重要であり、同時に虎太郎に休まる瞬間などないことを意味している。
自業自得。
自ら選んだ業の道とは言え、流石に辛いものがある。正直な所、虎太郎はワイトにさっさと一人で生きていけるようになって欲しかった。
虎太郎にはワイトに対して義務と責任しかなく、情など欠片もない。支配する気は更々ない。
命がけで屍の王から奪った死霊騎士であっても。
ワイトが心からの願いを叶えてやっただけのこと。
感謝しろというつもりもなく、感謝される謂れもないと考えていた。
「――――…………おい、何だ?」
「…………うっ…………入るわよ」
ボンヤリと眠れない夜を過ごしていた虎太郎は、部屋に忍び寄る気配に気付いていた。
枕の下でクナイを隠し持ちながら、部屋の外に居る存在――――ワイトに声を掛けた。
さしものワイトも、声を掛けられるなど予期していなかったのか、小さな驚きと共に寝室へと足を踏み入れる。
月明りだけが差し込む薄闇の部屋へと入ってきたワイトは、一糸纏わぬ裸体であった。
片手で両胸を、もう一方の手で秘所を隠す姿は有名な女神の絵画を連想させる。
だが、生々しさも色香も妖しさも全てが段違いだ。
月光を反射させるような白い肌。
腕から零れる乳房の質感と手から零れる多寡の陰毛。
虎太郎の鼻を刺激する煮詰まった女の匂い。
期待と興奮に紅潮した頬と不安に押し殺されそうになっている瞳。
どれもが男好きする、どれもが男を誘っているかのような、どれもが男ならば押し倒さずにはいられない要素の塊だ。
虎太郎はそれでもなお冷静にベッドから起き上がり、縁に腰掛けるように移動した。
「……一応、聞いておくが、何のつもりだ?」
「そんなことも分からないくらいに愚鈍なの、アンタは!?」
「まあ、分かるは分かるがな」
つまりは、そういうことなのだろう。
そして、ワイトを唆した存在は、間違いなくゆきかぜだということ。
何せ、ゆきかぜはワイトだけではなく、虎太郎すらも唆していたのだ。
ワイトさんを虎太兄の女の子にしてあげて。
晴れ晴れしい笑顔で、とんでもないことを宣うゆきかぜに、虎太郎は無言で頭を抱えた。
ゆきかぜの女に対抗できそうなのは、アサギぐらいのもの。そして、そんな女が二人も居る現実に、虎太郎の心は砕け散りそうだった。
ワイトは自身の行動とゆきかぜのアドバイスに不安を覚えているようではあるが、虎太郎にも根回しがされている以上、茶番でしかないだろう。
虎太郎の心境を知ってか知らずか、ワイトは意を決したように前に出る。
そのまま両膝を地面に付け、三つ指を突いて、頭を下げた。
「わ、ワイトを、こた――――旦那様の女にして下さい」
哀れな懇願とも、精一杯の媚びとも取れる、全裸による土下座。
肉付きの良い白い尻、女らしい細い体と肩を震わせ、真白の肌に現れている紅潮は明らかなマゾ気質を示しているのは疑いようがない。
けれど、ワイトの胸中にあるのは興奮ではなく、懸命な願いだけ。
もう、どうしていいのか分からないのだ。
これまで死霊騎士としての生き方は、ただ屍の王の命に従い、その褒美として称賛を受け取るのみ。自身で考えて行動することなど一切なかった。
なのに、今ここに来て、虎太郎はワイトに何も望まない上に、何も言わない。
ただ好きにしろと放任するばかりで、口は出しても手は出さない。
虎太郎には返しきれない恩と感謝がある。
にも拘らず、自分には何も、何一つとして見返りとなるものを返せていない。
彼自身は何も気にしてなどいなかったが、ワイト自身が与えられるがままの自分を許せないのだった。
何かしなくては、と焦燥ばかりが募る毎日。
挙句、焦燥に任せて虎太郎に対して素直になれず、必要以上に辛く当たってしまう。
自身の心とは裏腹の生活など苦しいだけだ。
そして何よりも、恩と感謝だけではなく、ワイトは虎太郎を愛してしまった。
自身の存在を認め、肯定し、本心を引き出し、屍の王の呪縛から解き放ち、救ってみせた。
萌音に対するものとはまた違った形の愛を虎太郎に対して抱いている。救われた命を捧げても惜しくはないほどに。
「分かった分かった。だから、頭を上げろ。座りが悪いんだ、そういうのは。まあ、興奮する要素にはなるがな」
「も、もう! 人が精一杯、考えて……」
「だろうな。馬鹿馬鹿しいが、考えて選んだ結果だと言うのなら、オレは応えるだけだが――――その前に、お前に注文がある」
「は、はい。何でしょう……?」
顔を真っ赤に染め、女の欲望を堪えながらの台詞を吐くワイトを、半ば本気で可愛いと感じながら虎太郎はニヤつきながら口にする。
ワイトは僅かながらに不安を覚えながら、恐る恐る問い返した。
虎太郎は無理難題を口にすることが多い。
その実、相手の能力や性能、性格を加味した上で、何とか熟せるラインであるのだが、相手にしてみれば溜ったものではない。
ワイトもまた、記憶のない状態で虎太郎に縋るしかない状態で、自分の事は自分で決めろと酷く難しい要求をされた。
しかし、今回の要求は逆に酷く簡単であった。
ただ、それは実行が容易という意味で、ワイトの心持ちとしては酷く陰鬱で重いものだった。
ワイトは思い悩む素振りを見せながら、やがて諦めたように被りを振ると、自らの忌まわしい“
「こ、これで、よろしい、ですか……?」
「何だ、そんなに嫌か? 死霊騎士の力と鎧は」
「だ、だって……」
かつてワイトの誇りそのものであった死霊騎士としての能力と装束は、今や劣等感を刺激する要素にしか過ぎなかった。
摂理を捻じ曲げて現世に立っているだけの存在。自らの命もなく、新たな命を育むわけでもなく、ただ命を奪うだけの存在。
屍の王の側から、人の側へ。立場が変われば、考え方も変わる。今の彼女にとって、かつての自分を想起させるものは、単なる嫌悪と劣等の証明に他ならない。
いたたまれなくなったワイトは泣きそうな表情で視線を逸らす。
ワイトとて己の身に、萌音の身に、虎太郎の身に危険が迫れば躊躇なく力を行使するだろう。
死霊騎士の力は、それだけのアドバンテージであることは理解している。
けれど、極力使いたくないのも、また事実であった。
「少しの間、我慢しろ。オレの我が儘だがな。必要なんだよ、その格好になるのは」
「……それは、どういう……?」
「まあまあ、良いから。傍に寄れ。良い物をやるよ」
虎太郎は、ベッド脇のナイトテーブルから一つのケースを手に取る。
ショップでアクセサリーを買った際に入れられるジュエリーボックスだった。
手招きに誘われるまま、ワイトは座った虎太郎の前に立つ。
嫌悪感と劣等感に苛まれ、身体を震わせている彼女などお構いなしに、虎太郎は剥き出しの腹を無遠慮に撫で回し始めた。
「っ……ひっ、んんっ……」
突然の接触と品定めするような手付きから発生する微弱な快感に、ワイトは堪らずに桃色の吐息を漏らした。
明らかに雄へと媚びる牝のそれに、ワイトの顔は再び朱に染まっていく。
普段の彼であれば、女に対する愛撫ですら楽しみの一つ。
自ら培った性技で、快楽に翻弄される姿は興奮を誘う。
嫌悪感と劣等感から身体を震わせていたワイトは、今度は快楽に身体を震わせていたが、虎太郎はニヤつきながら口を開く。
「なあ、ワイト。新しいのやるから、臍のピアス、外してもいいか?」
「は、ぁぁ……ど、どう、したんですか、そんな、急に……?」
「いや、これよぉ。誰に貰ったか知らねぇが、気に入らねぇ」
「………………旦那様の、お好きになさって下さい」
(あ、あぁ、旦那様、凄い目しちゃってる。これから、自分の女にしてやるって、メチャクチャにしてやるって、目がギラギラしちゃってる)
言葉とは裏腹に笑みを浮かべて虎太郎は告げる。
臍のピアスを送ったのが屍の王であろうが、他の誰かであろうが、かつてのワイト自身であろうとも。
これから自分の女になるワイトには、もう不要だ、と言外に語っているも同然だ。
他人のものから自分のものへ。他の男の手垢を洗い流し、自分の手垢で自分の女としていく過程ですら虎太郎は楽しめる。
強い独占欲と雄の欲望に晒され、ワイトは悦びに打ち震えていた。
彼女にこんな経験はない。
屍の王は、自身にとって都合のいい人形を愛でるのみ。独占欲とはまた違った歪な欲望しか向けてこなかった。
能力の関係上、ワイトは情報を収集する機会が多く、下衆な男に身体を差し出して篭絡したことはあったが、その過程は吐き気を覚えるほどの嫌悪しかなかった。
だからこそ、嬉しい。
ピアスを外し、虎太郎がゆきかぜに唆されて買ったであろうハート型の装飾がぶら下がった新しいピアスを取り付けられるのも。
今この瞬間、虎太郎の欲望の中心に、自分が立っているのも。今この瞬間、他の女を押し退けて、虎太郎の欲望を一身に受けているのも。
何よりも、本当の意味でただ一人の男の
「さてと、舌にもあったな。そっちも付け替えるから、膝をついて舌を出しな」
「は、ぁ、はぃ……よろしく、お願いしますぅ……んぇぁあっ……」
虎太郎に命じられるがまま、ワイトが望むままに。
ワイトは控えめに口を開き、舌を尖らせて突き出す。
舌の中心には片側がボール状になったラブレットスタッドタイプのピアスがあった。
虎太郎は舌を掴むと、器用に取り外し、付け替える。
タイプは変わらないものの小さくなり、色は銀から金へと変わっていた。
「これで、よし、と。じゅる…………何だよ、そんなに嫌か?」
「……嫌な、匂いがするし……身体も、冷たく……」
今現在、ワイトは不死者と死霊騎士のどちらでもあり、どちらでもないという半端な存在だ。
普段は不死者寄りであるものの、残った能力を行使すれば死霊騎士に寄り、身体は死体の如く冷え切り、瘴気と死臭と腐臭の匂いで包まれる。
今の彼女は、それが堪らなく嫌だった。
自分が節理から外れた存在であると、真っ当な命とは異なる現実を突きつけられるが故に。
「何だ、気にしていたのか。だったら、思い知らせてやるよ。そんなもの、その程度のものなんだ、ってな」
「え? きゃ――――――んんー!?」
虎太郎はワイトの腕を引いて体勢を崩させると、身体を抱きすくめ強引に唇を奪った。
恋人同士の初々しさなどないキス。獣欲を滾らせ、浅ましいながらも、優しさの見え隠れする接吻だ。
元より抵抗する気概などワイトには存在しなかったが、唇を割って入ってくる舌に目を見開いて白黒とさせる。
それでも舌の動きに応えようとしたのは女としての本能であったのだろうか。
「んふぁぅ……んれっ……じゅ……ふぁんむっ……じゅりゅ、んへぁ……んく、こくっ」
「ほら、オレの唾ばかり飲んでいないで、オレにも寄越せ」
「……ふぁ、ふぁい♡」
悲しみに沈んでいた瞳は何処へ行ったのか。ワイトの両目は蕩けきり、発情しきっていた。
反射的に漏らした科白には、雄へと媚びる牝の鼻息で満ちている。
虎太郎に命令通りに、ワイトは口内に溜った唾液を舌同士を擦り合わせて送り込む。
ぴちゃぴちゃと音を立てての粘膜交換。激しい舌の動きに、二人の口の端からは唾液が零れ、快楽に溺れているのは誰の目からも明らかであった。
その様に、虎太郎は満足げに頷くと顔を放す。
「あっ……あぁっ……旦那しゃま、もっろ、もっろぉ、んへぇぇぇっ」
「ふふ。まあ、落ち着けよ。ほら、気にすることなんてないだろう? もう身体もこんなに熱くなって、匂いの方も……」
「ひうぅんっ♪」
「発情した女の匂いしかしないぞ?」
ワイトの首筋に顔を埋めて深く息を吸い込み、発情した牝の匂いを胸一杯に満たして堪能する。
舌を突き出して、快楽をせがむ表情は、女そのもの。
虎太郎も笑みを深めざるを得ない。これが、女をものにしていく楽しみというモノだ。
経験したことのない快感に翻弄されるワイトを尻目に、虎太郎はその胸元へと手を伸ばした。
ぷるん、と音を立てて、水着のような鎧が上にずらされ、白い乳房と桜色の乳頭が露わになった。
「んくぅっ! はっ……は、こ、擦れただけで、こんなに……」
「キスだけで、こんなにビンビンじゃないか、ほれ」
「きゃ、うぅぅんっ!!」
小さめの乳首は完全に勃起し、弾力を保ちつつも小石のように硬くなっていた。
浅ましい発情を自覚させるように虎太郎が指で弾くと、ワイトは歓喜と悦楽から黄色い悲鳴を上げた。
「乳輪まで完全に盛り上がってるな。まだ身体の冷たさなど気になるか?」
「ひぃ、も、もうっ、どっ、どうでもいいれすっ! ワイトが、ワイトがバカれしたぁっ! ワイトは旦那様にされたら、発情した雌犬になっちゃうのぉっ、よぉっくぅ、分かり、ましたぁ♡」
「オレの女になるってのは、そういうことだ。後悔しなきゃいいけどなぁ?」
「し、しませんっ! あっ、あぁっ、乳輪と乳首、くにくにぃ、って……こんなに優しくされたら、後悔なんて、絶対できませんんっ♪」
両の胸の乳輪ごと抓み上げ、苦痛を伴わないギリギリのラインで責め立てる。
指が乳輪を這ったかと思えば、乳頭を押し込み、逆に抓んで形が変わるほどに引っ張り上げる。
女の胸を玩具にして遊んでいるようにしか見えない行為。
けれど、膝立ちのままのワイトが胸を前に押し出し、更なる愛撫をねだっている以上は互いに求める行為に違いない。
「ふぅんんっ♪ も、もう、終わり、ですかぁ……?」
「いや、次の段階に移ろうと思ってな。ほら、これだ」
「……あぁ、これって」
虎太郎が差し出したのは、三つのピアス。何処に取り付けるつもりなど考えるまでもない。
小さめのリングに小さいハート型のチャームが取り付けられていた。
ワイトは奇妙な魔力をピアスから感じ取り、それが何であるのかを理解した。
これは魔界のアイテムだ。
何の事はない。奴隷娼婦の淫らな身体を飾り立てる、淫らな装飾品。
下衆な男が女を所有物と主張する為だけに生まれたSEX用の下らない小道具。少なくとも、かつてのワイトはそう感じていたが、今はどうしようもない魅力に満ち溢れていた。
奴隷娼婦に使うのではなく、自らの女に使うのだ。
身も心も女を自らのものとしてやろうという虎太郎の欲望と獣欲が煮詰められたアイテムとも言える。
恥ずかしさや呆れからではなく、期待からワイトは身体を震わせ、ようやく理解した。
死霊騎士の鎧を纏わせたのはこの為。屍の王から忠誠心や支配権を奪うだけではなく、本当にワイトの全てを奪うつもりなのだ、と。
無言で差し出される二つのピアスを、ワイトもまた無言で受け取る。
――自分でつけろ、と言う意味である。
(こんなの自分で付けたら、もう、完全に旦那様の、女に、なっちゃう……なれちゃうっ♪)
紛れもない隷属と屈服の証を、ゆっくりと、それこそ今この瞬間のもどかしさすら楽しみながら、両胸にと近づけていく。
ワイトが乳頭にピアスを近づけるとリングの部分が一人でに割れ、噛みつくように挟み込む。
「っくひぃぃぃいいぃんっっ♪」
痛みは皆無だった。
血も出ていない辺り、ピアスというよりかは、性質としてはクリップに近かったのかもしれない。
乳首への刺激、虎太郎への隷属からワイトは全身を震わせて絶頂を表現する。
舌を垂らして快感を享受する様は牝犬そのものだが、両の目から溢す歓喜の涙が全てを掻き消している。
「さあ、次は下だぞ。少し前へでな」
「は、はいぃっ! わひゃり、ましたぁっ!」
よたよた、と覚束ない足取りで、ワイトは虎太郎に近寄った。
虎太郎の眼前に、鎧で覆われた秘所を突き出すような形。
隙間から漏れている愛液は、虎太郎の視線を受けると量が増していく。
虎太郎はワイトの太腿から足首まで流れる愛液を指で掬い上げ、舐め上げる。
酸味と塩気のきつい味に、ワイトの発情の具合を確認し、ワイトもまたはしたない発情を知られ、羞恥と同時に歓喜も覚えた。
虎太郎は焦らすように、膝下まで最後の砦をずり下ろした。
むわり、と湯気が立ち上りそうなほどに熱くなった秘裂からは、白濁した本気汁と牝の香りが漏れている。
「最後はオレがつけてやるからな」
「はいっ、はいぃ! 旦那様ぁ、屍の王からワイトを奪って下さい♪ ワイトをっ、ワイトをぉ、旦那様専用の、淫らで、いやらしくて、スケベな
虎太郎は悪辣な笑みを深め、ワイトは淫らな笑みを深める。
ビンビンに、これ以上ないほどに勃起した淫核は、包皮を押し退けて姿を露わにしていた。
吐息を吹き掛けられただけでも絶頂してしまいそうなほどに震え、腰の動きで牝の弱点が左右に揺れている。
ワイトは両手の指で包皮を開き、女の性急所をより晒す。
気を良くした虎太郎は頷くとクリトリスに虎太郎の許可がなければ絶対に外れないピアスを取り付けた。
「――――かっ、はっ! だ、だん、なしゃまぁっ」
「んん? どうした?」
「あ、あくっ、ふぅぅぅ、アクメ、頂いても、くぅぅん、よろっ、んぐぐっ、でしょうかぁっ……?」
「ああ。いいとも。手伝ってやるよ」
「あ゛ぁ゛!? いぐっ!! そんなッ急に引っ張ったらっ、いぐいぐいぐぅぅぅううぅ!!」
何の遠慮もないままに、だが痛みだけは与えぬ完璧な力加減で、取り付けたばかりのピアスと共に淫豆を引っ張る。
大きく引き伸ばされて形を変えたクリトリスは痛々しさすらあったが、ワイトに与えられた快感は想像を絶していた。
ワイトの両脚はだらしなく、がに股に開かれ、立っているのもやっととばかりに痙攣を繰り返す。
秘所からは絶え間なく愛液が垂れ流され、尿道からはぶしぶしと潮を噴いて、視覚で男を楽しませた。
「ほっ、ほぉぉ……はひ……ふんン……ひぃ……ひぃぃ……」
「どうだ? 気持ち良かったか?」
「はひぃぃっ、牝堕ちアクメ、専用女絶頂、最高っ、れひたぁぁっ♪」
「まだまだ、これからだ」
「ふひひぃぃんっ♡」
虎太郎は牝潮だらけになった身体を気にも止めず、だらしない牝の顔、男に屈服する女の顔をしたワイトを容赦なく抱え上げると、優しくベッドに寝そべらせる。
そのまま女陰を隠していた水着のような鎧を片足から外し、もう一方に引っかけた状態で、Vの字に脚を開かせた。
「だ、旦那っ、様……ひ、一つ、一つだけ我が儘を言わせて、くらしゃい……」
「ん? どうした?」
「旦那様、愛して……ます。精一杯、愛しますからぁ、ワイトのことを愛して、可愛がって、くださぁぁい♡」
「くく、ゆきかぜからの入れ知恵か?」
「あはぁ、やっぱりバレちゃ――――おっ、おっ、ほほぉっ♪」
「良いとも。たっぷり愛し合おう、な」
虎太郎らしからぬ慈しみに満ちた言葉。
そして、秘所へと半ばまで埋まめられた亀頭に、ワイトは目を見開いて挿入の瞬間を待ち望んだ。
両手で勝手に暴れようとする脹脛を抱え、挿入の邪魔だけはせぬように、と必死で押さえつける。
「んぐぐっ、あっあっあっ、ゆっくり、じら、焦らしちゃ嫌あぁっ!」
「駄目だ。それに焦らしてるんじゃない。お前のマンコに覚え込ませているんだよ、オレの形を襞の一枚一枚にまでな」
「いちまっ! あぁっ、そんな、そんなぁっ! ひょ、ひょんなの、あぁ゛っ、覚えたら、ホントに牝犬になっちゃうぅぅぅう♪」
「何だ、嫌なのか?」
「ちが、くうぅうぅっ! 違い、ますっ! ひあぁっ、素敵すぎて、ンゥんんぅっ、嬉し過ぎるんですぅ!」
亀が歩むようで奥へ奥へと向かっていく亀頭。
本当にワイトの襞の一枚一枚に覚え込ませているようだ。
破裂しそうな亀頭の形で割り開かれる膣の感覚も、カリ首の段差で捲られる襞の感触も、浮かび上がった血管による刺激すらも。
情け容赦のない屈服の過程。
しかし、ワイトはそれすらも愛の形と受け入れていた。
ぐっ、と歯を喰いしばり、意志とは関係なく絶頂に達しようとする牝穴をくい締めるが、一擦り、センチ単位で肉棒が進むだけで我慢の意志を砕かれて絶頂する。
「ひひゃぁぁあっ! また、一人でぇ、うっく、ムリ、ムリムリぃっ! こんなの、我慢むりぃぃいっ!!」
「いいぞ。どんどんアクメさせてやる。我慢はこれから覚えればいいさ」
「あぎぃ! だ、だんなしゃまぁ♡ ひ、ひぃぃ、優し、すぎぃうぅっ! 拒めないっ♪ こんなの拒めない♪ アクメするしかないいいぃ♪」
ぞりぞり、とGスポットを削り取られ。
ぐりぐり、と最奥の子宮口を捏ね回され。
ぐちゅぐちゅ、膣内の襞全てを掻きまわされる。
終わらないアクメの奔流に、ワイトは煮え滾った牝潮を噴き上げ、虎太郎と自身の身体を汚していく。
さらさらとした透明な潮に交じり、白濁した本気汁は二人の腰が離れる度に糸のように伸び、プツリと途切れていた。
途方もない快楽と未体験の愛した男との性交は、ワイトの理性を削り、思考を白く染め上げ、目の奥でバチバチと火花を散らせる。
全身は絶頂に抗えず、陸に打ち上げられた魚のように痙攣を繰り返したが、虎太郎の抽送の邪魔せぬように必死で押さえつけていた。
「ほらほら、子宮口も完全に開いたな。分かるか」
「くっふぅぅっ! わか、分かりますっ、子宮口、ちゅぱちゅぱ、旦那様のチンポに、吸いちゅいてましゅぅぅ♡」
「良い牝穴だぞ、ワイト。このまま子宮に直出しして欲しいか?」
「はいっ、はいっ、ワイトの子宮に、旦那様の
「そら、イくぞ。ちゃんと見ておけよ」
「―――――おぉほっ♡」
どちゅ、と粘ついた愛液が噴き出し、ぴたりと押し付け合った腰は、最奥の最奥にまで至った証。
ぶわりと広がった傘と一回り大きくなった逸物を膣で感じ取ったワイトは、ただの一度で射精しようとしている牡の形を覚えてしまった。
「あひぃぃぃぃっ!! いぐぅぅぅぅぅうううっ!!」
「――――づっ」
「ぐりっ、ぐりりっ、されながら、子宮に精液出てるっ! おまんこ、イッでるっ! 子宮の壁どろどろにされてりゅぅううぅ♪」
「ほら、目を逸らすな。しっかりと腹の上からっ、子宮を見てみな」
「ひぐ、ひぐぅっ、すっごぉぉ、凄いいぃん♪ 子宮ぼこぉって、チンポで押し上げられてっ、はひゃぁぁっ、精液で膨れてるぅぅ♡」
「マンコでも子宮でも視覚でも、全部で覚えろよ」
「いぐぅぅっ! 旦那様チンポっ、ザーメンっ、覚えながらっ、躾けられながらっ、まらイグゥゥゥウウウゥっ!!」
くるりと余りの快楽に反転しそうになる瞳を必死で押さえつけ、虎太郎の言葉通りに下腹部から目線を逸らさない。
それ以外は無残なほどのアヘ顔だ。涙と鼻水、涎で顔を汚し、でろりと垂れた舌は牝犬と何ら変わりはない。
抱えた脚は、指先までピンと伸ばされ、絶頂を悦んで受け入れている証だ。
射精と同時に尿道は開き、アンモニア臭の漂う小水を漏らしていた。
黄金水が尿道を渡る感覚さえ自覚し、その程度の感覚で更なる絶頂に押し上げられ、思考までがどろどろに蕩けてしまったようだ。
「旦那様ザーメンで、中出しアクメっ、ちょうだいしましたぁぁぁああぁぁんんんっっ♡♡」
最後の射精に合わせ、ワイトは今日最大の絶頂へと至った。
硬さを失わない剛直は精液を膣全体に塗り込みながら、余韻に浸るワイトに滲むような軽い絶頂を与えながら引き抜かれる。
精液と愛液で濡れた逸物は、女を自分専用にしたことを誇るように、ビクビクと震えていた。
「はっひぃ……うぅ……ひぐぅ……ひぁ……んっく……♡」
「くく、これだけ出したら、孕んじまうかもな」
「……はりゃ、むぅ……?」
「何だ。気付いてなかったのか? 今のお前は生き返ったようなもんだ。ほぼ完全に生者としての生理機能を取り戻しているからな」
忘我の果てに居るワイトですら、一瞬で引き戻すほどの威力を秘めている言葉だった。
虎太郎の言葉は全て事実であった。
今のワイトは、屍の王による不可思議な術式によって死なない死者ではなく、屍の王とアルフレッドの術式によって死なない生者となっていた。
桐生の検査によって、確定している事実だ。暫らくすれば、生前と変わらない生理機能を完全に取り戻す。
この不可解な事象に桐生は狂喜乱舞し、暴走しかけたのだが虎太郎によって
「あ、あぁ……あぁぁぁぁ……」
「目の色が変わったな。そんな顔をされたら、もっと悦ばせたくなるだろうが」
「あぐぅぅっ! ふひんっ!? んぉぉほぉおおおおおっ♡」
再び挿入された剛直の衝撃に、主人専用となった牝犬の嬌声が部屋中に響き渡る。
淫らな牝犬の遠吠えは、長く、何処までも広がり、彼女が完全に意識を失うまで響き渡り続けた。
―――――
――――
―――
――
―
「……んん、……ふぁぁ……あっ」
「おはようさん。身体、大丈夫か?」
「ふふ。まだ気怠いです。でも、凄く、幸せな気分――――ん」
ワイトが目を覚ましたのは翌日の昼であった。
虎太郎は一睡もしなかった。他者が傍にいると眠れない気質もあったのだろうが、何よりも幸せそうに眠るワイトの顔をずっと眺めていたのだ。
起きぬけに、目の前にあった愛しい男の顔に、ワイトは堪えきれずに唇を合わせた。
昨夜の性行など嘘のような初々しいキスであったが、彼女を心を満たすには充分過ぎた。
互いに身体を横にし、向き合う形。
布団の下では片手を重ね、きゅっと指を絡めて、握り合う。
「それから、遅くなったが、お前に伝えておかなきゃいけない事があってな」
「――――?」
虎太郎が語ったのは、江戸中期の時代における対魔忍の残した事件の記録であった。
その事件とは、墓の下で眠っていた筈の死体が蘇り、無辜の民に襲い掛かるというものだった。
「それって……」
「恐らくは屍の王だろうな。死者を蘇らせて操るなんぞ、早々いて貰っちゃ困るからな」
「で、でも、それが……?」
当時の対魔忍は、その元凶の正体を探り、討伐隊を編成し、遂には対決へと挑んだ。
しかし、強大なその力を前に、徐々に、だが確実に討伐隊は人数を減らし、敵の傀儡となっていった。
「だがな、どうやらその身を犠牲にした対魔忍が居たらしい。彼女の犠牲もあって、屍の王は魔界へと押し返された――が、彼女の死体は魔界へと堕ちていったらしい」
「………………」
「お前は、この街の風景が懐かしいと言ったな。記録では、その“彼女”は、この辺りの出身だったそうだ」
全ては推論に過ぎない。
確証など何処にもなく、状況証拠ですらない。
だが、辻褄は合っているだろう。
屍の王は自らを追い返した“彼女”に興味を持ち、そして、それが――――
「お前の本当の名前は――――んぐ」
「仰らないで。……それが事実でも、きっと“彼女”と私は別物です」
「そうか。お前がそう言うなら、そうなんだろうな。それでいいさ」
「はい。私は、ただのワイトで充分です。旦那様の女で充分。旦那様と皆と、それから
僅かばかりの寂寥とそれ以上に強い覚悟と意志を宿した瞳に、虎太郎は笑みを浮かべる。
以前、ワイトに見せたものと同じ笑み。己の道を選んだ意志と決断を祝福しているかのような笑みだ。
「そんな顔を見ると堪らなくなるな。オレ好みの良い女、強い女の顔だ」
「強いだなんて、そんな……」
「これなら、安心して孕ませてやれる」
「も、もう、気が早いです、旦那様ったら……!」
「そうだな。まずは妻として勉強しなくちゃな」
「し、しっかりしていますよ? ゆきかぜ達と一緒に」
「じゃあ、母親としては、どうだ?」
「そ、それもします。旦那様の子供を育てられるように」
「そうかそうか。そりゃ重畳。ほら、オレのもこんなに元気になっちまったよ。お前が可愛いくて健気なもんだから」
「ひゃぁん! き、昨日、あんなに出したのに、もう、こんなの押し付けられたら、我慢出来ない」
「ちょこっと、練習でもしようか?」
「はい、旦那様との愛の結晶を授かれるように、今からじっくり、ねっとり、練習してください♡」