隼人学園のある街に存在する闇の組織は一つしかない。
右衛門会。
今時では珍しい巨大組織の後ろ盾を持たない暴力団だ。
彼等、日本のアウトローも魔界都市、魔界技術、魔族からなる組織の出現により大きく様変わりしている。
暴力団はノマドなどの魔族をトップとする組織の傘下へと入ってしまったのだ。いや、入らざるを得なかったと言うべきか。
と言うのも、暴力団が生業としてきた、或いは収入源としてきた非合法行為の数々は、魔界技術には遠く及ばない。
麻薬の売買は、魔界製のそれに比べ、人体へのリスクが高い割に得られる快感の少なさ故に、取り扱うにも以前よりも売れなくなった。
彼等の提供する売春・性サービスにおいては、魔界技術で仕立てられた奴隷娼婦には遠く及ばず、風俗店を営もうが客が入らない。
暴力の分野においても同じこと。対魔忍の異能、魔族との種族差、米連の最新技術と人海戦術の前では、彼等の暴力など何の意味をなさず、嵐の前の小舟に過ぎない。
急速に様変わりしていく世界へと対応するため、暴力団の大半は生き残りをかけて日本へと現れた闇の組織へと表向きの忠誠を誓うことで魔界技術を獲得しようと傘下に入った。
だが、人は堕落する。
元より社会から外れていた者であっても同じこと。
魔族の与える快楽と技術は凄まじい。ある者は快楽によって初心を忘れ、ある者は莫大な富に忍従を捨て去り、ある者は力の差の前に服従を選んだ。
今や、大半の暴力団は形骸化しており、より巨大な組織の操り人形に過ぎない。
自身よりも弱い者に威張り散らし、搾取する姿勢は欠片も変わっていないが、牙を抜かれた
しかし、右衛門会はどの組織の傘下にも入ってはいない。
隼人学園のある街はそのまま上原家の影響下にあり、魔族を中心とした組織では最高位の結界術の前には分が悪い。
端的に言えば、闇の組織にとっては旨味の少ない街なのだ。侵す
その点、右衛門会は運が良かった。
上原家は吸血鬼や魔族の引き起こした事態に対して何の問題もなく介入が可能ではあるが、それ以外には介入する権限はない。
どの魔族、吸血鬼とも繋がりのない右衛門会の相手をするのは、あくまでも警察の仕事。上原家の誰もが右衛門会など脅威や危険と感じていないかった。
そして、右衛門会の組長は賢しかった。
上原家の加護の下、昔ながらの組織形態、経営形態を維持しつつも魔界技術の情報を手に入れ、秘密裏に魔族と接触し、徐々にではあるが利益を上げていった。
気を使ったのは、接触する魔族だ。巨大組織に属しておらず、それでいて利益を追い求める輩。言わば、自身が対等の立場で接する事のできる相手を選んでいた。
組織と繋がりがあれば紆余曲折の果てに呑み込まれるのは明白。ならば、互いの利益と立場のために、互いの意志を尊重できる相手が望ましい。
また魔族も組織の手助けがなければ魔界技術で大儲けが出来ず、組織に与すれば法外な仲介料やら上納金で純利益が少なくなることを理解しており、両者の関係は良好だ。
斯くして、右衛門会は勢力をそのままに、秘密裏に平和裏に、莫大な利益を上げながらも誰の目にも止まらない組織となった。
街では魔族に場所を提供して魔界製の麻薬製造を行わせ、街の外に持ち出して高額で売り捌く。魔族に街の外で攫ってきた女をそのまま調教させ、街の風俗店で働かせる。
言わば、隼人学園にとってのグラムや崎山と同じ、何時の間にやら内側に潜り込んでいた脅威である。
そして、本日。
右衛門会組長である中曽根 亮二は黒い高級スーツに赤いネクタイを締め、肩からは白いロングコートを掛け、目の前の建物を見上げている。
傍らには右腕である若頭と部下三名を引き連れ、とある高級マンションの地下駐車場に訪れていた。
「チッ……あの野郎、何だってこんな所に呼び出しやがったんだ」
「まあ、そういうな。新しい商売があるんだとよ。聞くだけ聞こうじゃないか」
若頭の悪態を諌めながら、中曽根は地下駐車場の門の前に立っていた。
自走式の地下駐車場の前には、車上荒らしや盗難対策の監視カメラが複数。
マンションの入居者にはICカードキーが与えられ、入庫の前に所定の解錠システムに翳すことで鉄扉が上がる
鉄扉を開けられるのは、カードキーを与えられたマンションの入居者、セキリティを管理する管理会社、保全会社のみだけだ。
中曽根が監視カメラに己の顔を見せるように目を向けると、鉄扉が開き始める。
その様子に、若頭は更に舌を打った。
魔族の態度は気に入らなかった。仮にも組長を相手に出迎えもしないなど。
対等とは言え、度が過ぎている。魔族が優れているのは認めざるを得ないが、此方側で商売が出来ているのは誰のお陰だ、と。
若頭の心境を分かっていながらも、中曽根は笑いながら駐車場へと降りていった。今、彼の頭にあるのは新たな商売で、更に潤う自分の懐具合だけだ。
組長の有頂天ぶりに頭を痛めながらも、若頭は部下を引き連れて後を追う。
地下駐車場は街灯に照らされる夜よりも明るかったが、車は一台しか止まっていなかった。
このマンションは入居者が少ないことは知っていた故におかしくはなかったが、高級外車の類ではなく平凡なハイエースというのに若頭は僅かな違和感に首を捻った。
「おー、来た来たぁ」
それ以上に違和感を覚えたのは、駐車場の中央で安物の煙草を吸っている男だった。
少なくとも若頭は見たことのない相手である。
組長は独自のコネとツテを持っており、それが組の生命線であることを理解しているからこそ、一部を明かしても全てを明かすことはない。
今回も、明かしていなかった相手であったのか、と思ったものの、組長の顔を見れば明らかな困惑の色が浮かんでいる。
「……あー、ゾグの奴はどうした?」
「今日は来てないな」
「じゃあ、新しい商売ってのは、テメェが教えてくれるのか?」
「うん? あー、そうか。そうなるか」
魔族、と一口に言っても種族は様々。
魔界に存在する知性体を魔族と総称する場合もあるが、イングリッドと同じ種族――人と全く変わらない姿形であるが、持ちうる能力の桁が違う者が魔族の中でも主要な位置を占める。
ゾグもそうした者の中の一人であり、欲深さから組織に搾取されることを拒み、同じような考えの者達を集めて右衛門会と手を組んでいた。
手にしていた煙草の火を携帯灰皿で消しながら近づいてくる男も、そういった者の一人かと中曽根と若頭は考えた。
人懐っこい笑みを浮かべながら近づいてくる男は、彼等の知る魔族のそれとはまるで違っている。
大抵の場合は、人間を見下している。その人を下に見る気質を承知した上で、どれだけ相手と歩み寄れるかが、右衛門会の明暗を分ける。
その点、中曽根のバランス感覚は素晴らしかった。相手の欲望と自尊心を満たしながらも、自らの欲望と意見を押し通す手腕に長けていた。
お陰か、付き合いのある魔族も初めの内は見下してはいるものの、次第に態度を軟化させていった。
この男には、魔族特有の見下しがない。それが逆に不安を煽る。経験上、こういう手合いは厄介だったからだ。
初対面の印象や評価が低ければ低いほど、自らの有能さを示しさえすれば、印象も評価も鰻登りとなる。
逆に初めから正当な評価を受けてしまえば、どれほど有能であろうとも当然と受け取られてしまう。
その心理を理解しているからこそ、中曽根はこれまでやってこれたのだ。
彼等の考えている通りに、この男は厄介であった。
尤も、彼等の想定していた最悪を簡単に上回る厄介さの化身であったのであるが。
「ほらよ、っとぉ」
「――――?」
周囲を壁で覆われた駐車場に鈍い音が反響する。
若頭には、それが何であったのかを直ぐに理解は出来なかった。しかし、何処か聞き慣れた音であったのは確かだ。
それは若かりし時分に自身の身体から響いた音であり、暴力の世界へと足を踏み入れてから相手の身体から響いた音でもある。
「――…………」
見れば、組長である中曽根の首は、奇妙な形に折れ曲がっていた。
真っ当な人間の頚椎では決して再現できない角度。首の筋肉だけでは支えきれぬ頭部が、暖簾の如く垂れ下がる。
恐るべき早業だった。
反応どころか、目で追うことすら出来ない。
目の前の現実に――地面に倒れていく中曽根の身体に、ようやく頭が付いてくると若頭は懐に収めてあった銃に手を伸ばした。
未だ混乱の極地にあったものの、長年、暴力の世界においた身は彼自身にも驚くほどスムーズな動きを見せる。
彼を含めた構成員は万が一の抗争に備え、顔馴染みの魔科医にフェラーリ一台分の金を積んで改造手術を行わせた。
身体能力の向上、五感の鋭敏化、薬毒耐性、高速治癒。下手な魔族であれば、簡単に殺せてしまう改造手術だ。
「ぶっ――!」
だが、全ては無意味だった。
若頭は鳩尾に走った衝撃に、抜き放とうとした銃を取り零して不様に両膝を地面へと付いていた。
喉から迫り上がる血塊を堪らずに吐き出す。どうやら、強化された腹筋すら意味をなさずに複数の内臓に傷を負ったらしい。
地面に染み込んでいく己の血を呆然と眺めていると聞き慣れた乾いた発砲音が六度連続し、見れば引き連れていた部下が地面へと倒れている。
自身の持ってきた拳銃を奪われたのだ。余りにも鮮やかな手並みに、もはや悔しさすら湧いてこない。だが、若頭の口から漏れたのは慣れ親しんだヤクザやマフィアの定型文。彼もまた骨の髄まで闇家業の一員だった。
「ごっ、ふっ……テ、テメェ、こんな真似をしてどうなると、思ってやがんだ……テメェの家族から、恋人、知り合いに至るまで、皆殺しだぞ……!」
「はん? どうやってだよ? 他に誰もいねぇのに、どうやって伝えるってんだ? 脅し文句にしてももっとマシなもんを選べ。ほら、オレを殺せば体内の爆弾が爆発するぞ、とかさぁ」
「………………」
「ヤクザ屋なんぞに人権はねぇ。死ね。ただ死ね。死んでオレの役に立て」
何処までも冷徹な、目の前の命に何の価値も見出していない瞳に、若頭は震え上がる。
文字通りに背筋が凍り、命乞いすら忘れていた。彼が最後に見たのは、氷の瞳には似つかわしくない、春の日差しの如き穏やかな男の笑みだった。
―――――
――――
―――
――
―
「あー、いいのかなぁ。これ、いいのかなぁ……」
「もう、諦め、ましょう……」
事が終わった後、地下駐車場では後始末が行われていた。
右衛門会の四人は死体袋に詰められ、紅羽と翡翠が二人がかりでハイエースの中へと積んでいる。
地面に飛び散った血は、生徒達が不満を浮かべながらも躍起になってデッキブラシと洗剤を使って洗い流していた。
本来であれば、政府が後始末部隊を送って綺麗に片付けるのであるが、今回はそうもいかない。
死体の処理は手間がかかる。これだけ血が流れていれば、十人単位の部隊が必要になるであろうし、街の警察に話をつける交渉役も必要になる。
街の外からやってくる後始末部隊では目立ちすぎる。グラム達は兎も角として、米連の部隊に気取られかねない故に、こうして彼女達自身がやるしかない。
「おう、しっかりやってるか」
「それはやってます、けど……」
「そっちの方は…………」
「いや、虎太先生、それ……」
最後の死体袋を片手に引き摺りながら現れた虎太郎ともう一方の手に握られた物体に生徒達は目を奪われる。
髪の毛の付いた仮装用のマスクのような物体は、人の肌と全く変わらずに、血が滴っていた。
「これ? ぶち剥いた生皮だ。これ使うと変装すんの簡単なんだよ」
「ひぇぇ……」
先程殺したばかりの若頭。その頭部の皮膚を剥いたばかりか、変装に使うと宣言すると生徒達は戦慄を隠せない。
虎太郎が全くの無表情であったが故に、悪趣味の発露ではなく、単なる仕事の一貫として行っているのが頼もしいやら恐ろしいやら。
生皮を上手く利用すれば、変装の道具になる。
殆ど使い捨ての上に、加工処理を誤ればすぐにでもバレてしまうのが難点であるが、今回はそれで十分だ。
虎太郎は知恵と工夫と確かに言ったが、生徒達にはとても真似出来ないし、するつもりにもなれない残虐行為である。
「さてと…………そっちの様子はどうです?」
『運転手の方は、まだ気付いていないようですね。しかし、これは……』
「問題なし、と。ワイトの方は――――準備万端だな」
「ええ、勿論」
既にワイトは自らの能力によって、姿形どころか声までもが変化している。
彼女の能力は記憶の読み取りと変化。アルフレッドは彼女が元々生まれ持った対魔忍としての忍法が、屍の王によって発展・強化されたのではないかと推察していた。
今回、彼女が変身したのは中曽根だった。
此処までくれば、虎太郎の目的も分かろうというもの。
ワイトは中曽根に、虎太郎は若頭に成り済まし、右衛門会の戦力と繋がりのある魔族を使って、米連の待機している工場を襲撃させるつもりなのだ。
元々、紅羽や黒百合に街に潜む闇の組織を探らせたのは、グラムと繋がっていることを警戒してではあった。
だが、調査の結果、グラムとの繋がりは皆無であり、ノマドとの繋がりもない独自の形態を持っていることが分かった。
これぞ正に準備の成果である。今回は手が回らない、わざわざ手を下す必要がないと判断した相手であったが、状況が変化すれば便利な道具になる。
中曽根の築いてきた全て――身分も、コネも、金も横から奪い、米連に足止めさせる道具にする。
その為に、わざわざアルフレッドを使って、中曽根の携帯にゾグからの電話と連絡を取った。
後は、このまま何者かに襲撃を受けたことにして組の事務所に戻り、ゾグに連絡を取って呼び出す。
ゾグの携帯から連絡があった事実、その後の襲撃も加われば、何らかの意図で組を潰しに掛かったようにしか見えない。
ゾグは身の潔白を証明する為に、中曽根に変じたワイトの言う通りに動かざるを得なくなる。
米連の待機している工場を襲撃者の根城と偽って、右衛門会のヤクザとゾグの集めた魔族の混成部隊に襲撃を行わせるのだ。
ただし、襲撃させるだけでは米連側の戦力を測るか、削る程度の効果しか得られないだろう。
「ですが、どうしてこんなに回りくどいことをするんです? 私達が動けないのは分かりますけど、これでは米連の足止めは出来ませんよ?」
「だろうな。不摂生なヤクザとはぐれものの魔族の混成部隊なんぞ、大した連携も取れない雑魚だ。米連の部隊の前には意味がない」
「だったら、どうやって……?」
「ふむ。じゃあ、一つだけヒントだ。死霊魔術師の操る
「え? それ、は……私は不勉強で知らないだけで、何か違いが、あるんじゃ……?」
「科学的な観点から見ると殆ど差がないんだなぁ、これが。ハッキリ言えば、人間側は生ける屍にせよ、食屍鬼にせよ、大きな差を見つけらていない。となれば、米連はどう考えると思う?」
掃除の手を止めた深月は虎太郎の質問に困惑を隠せなかった。
彼はワイトの操る生ける屍を右衛門会とゾグ、米連の戦闘に投入するつもりだ。
共に動く死体であり、生ある者を食らう共通点はあるものの死体が動く原理は別、その原理自体を人間側はまだまだ理解出来ていない。
米連は豊富な人材こそが最大の武器。
不測の事態で様々な敵と戦うことはあっても、超巨大組織であるが故、基本的に部隊単位で相手をするのは何らかの敵や状況に特化している場合が多い。
グラムは欧州を中心に活動を行っており、屍の王はブラックを追って人界へと手を伸ばしたばかり。
他の吸血鬼や死霊魔術師と戦闘を行った者も居るには居るだろうが、この二つを相手取った者となれば、極端に数を減らすだろう。
其処までの適正人材が、今回の米連が配置した部隊の中に居るとなれば奇跡的な確率だ。手間を掛けるだけの価値はある。
「どう考えるって、グラムの仕業と考えるんじゃあ……」
「いえ、前園さん、それは在り得ないのでは……」
「そやなぁ、グラムについて知ってるんはウチらだけなんやろ? となれば疑うんは…………アレ?」
「ま、まさか、弐曲輪先生……?!」
「そうだよぉ。カーラの仕業と考えるのが普通だよねぇ(ニッコリ」
この街において、闇の世界における吸血鬼のビッグネームはカーラのみ。
米連がどれだけ諜報の手を伸ばそうとも、カーラの高潔な姿勢や行いしか得られていない。事実として、彼女は自身の身に与えられた高貴と王族の役割を全うしてきたのだから。
だが、此処で。このタイミングで。
カーラと闇の組織との繋がりを匂わせる可能性が浮かび上がればどうだ。人と吸血鬼の間に交わされた約定が、吸血鬼の女王自らの牙で破られている可能性があればどうだ。
此度、配置されているのは米連の排斥派である可能性が高く、結託派であったとしても関係がない。
排斥派であれば、カーラを討つだけの大義名分を得られる。結託派であれば、血を捧げる生贄を代償に交渉のテーブルにつける。
そして、まだ他の組織と繋がりがないかと慎重になる。襲撃にせよ、交渉にせよ、横合いから殴り付けられては堪ったものではないのだから。
米連は一時的に足を止めるだろう。少なくとも吸血鬼対策協議ギリギリまで、情報収集をし直すに違いない。
「で、でも、それではカーラさんが汚名を被ることに……!」
「だからぁ? 火のない所に煙は立たない。人の噂など七十五日だ。何の情報も揃ってないのに、そんなもんを信じる奴は先入観を拭いきれないバカだ。カーラも、そんな連中の相手をしなくて済んで御の字だろうよ」
「そ、それは、そうかもしれないですけど、本人に断りもなく、なんて――――」
「カーラは今回の件に一切絡んでいない。つまり、どれだけ噂が立とうがカーラ自身は関係がなく、直接的な類は及ばない。アレも王族で政治屋だがな、その程度の真っ赤な嘘や噂で立場を追われるようなら、そのまま消えた方が奴の為だよ」
「――――――鬼や」
「何処が。米連の足止め、撹乱を同時に行いつつも、オレ達の存在は知られることはない。グラム側は米連の存在に釘付けにされる。やったぜ、オレ達はやりたい放題だ。ふひひ」
とんだ外道ぶりに、生徒達は知ってはいたが絶句した。
自分達の仕事で最大限の成果を得るために、米連を巻き込むのは兎も角としてカーラの名誉に傷をつける行為を平然と選んだのである。
対魔忍は動きこそするが、最小限の動きであり、被害が及ぶ可能性があるのは精々が虎太郎とワイトだけ。更には最大限の効果を期待できる動き。
これが情報収集と状況把握の効果だと言わんばかりに。
生徒達も戦慄を隠せない。これは虎太郎でなくとも、情報収集さえ行っていれば、誰でも行える手段だと言うことが更に拍車を掛けている。尤も、誰もが選べる選択肢ではないのだが。
「ほいじゃま、行ってみようか。後は意気揚々とオレ達は準備を整えるぞぉ~!」
『…………………………アカン』
ニッコリと微笑む虎太郎の顔に生徒達の口から漏れたのは、彼女達の心境を端的に表したものだった。