「納得のいく説明をして貰おうか」
「こんな場所まで呼びつけて……」
「説明もクソもない。隼人学園のガキ共のお守りだよ、それ以外には何もない」
吸血鬼対策協議まで残り5日。
街から遠く離れた廃工場にて、燐とあさつき、虎太郎が対峙していた。
呼び付けられた二人はあらん限りの不満を顔に浮かべて、虎太郎を睨みつけている。
黒百合と紅羽を筆頭とした現役に率いられた生徒達ですら情報収集と監視に精を出しているというのに、戦闘特化の二人は何もすることもなく手持ち無沙汰でフラストレーションが溜まっていた。
虎太郎は情報収集や監視への同行を徹底して阻止していた。もっとも、表向きには紫の判断ということになっているが。
虎太郎にしてみれば当然の判断だ。
猪武者同然の二人では不測の事態になった場合、感情的になって全てを台無しにしかねない可能性が高かった。二人に比べれば、技量は未熟ながらも事を秘密裏に進める重要性を十二分に理解している生徒の方がマシである。
かと言って、最前線に投入するのも嫌だった。
命令無視など冗談ではない。独自の判断で独自の行動を取られるのも怖い。
本当に最前線で死ぬまで戦い続けて欲しいのだが、半端に実力がある上に見目も麗しいので生き残ってしまう可能性が非常に高い。つまり、彼の仕事がまた一つ増えてしまうかもしれない。
この二人が増員として現れて蒼褪めた虎太郎が何とか今回の件から遠ざけようと考え続けた結果が、これだ。
それが、東と共に確保した隼人学園の生徒達の護衛であった。
元々、東の確保は成功する公算は高かったものの、虎太郎にとっては生徒達も共に確保できたのは僥倖以外の何物でもなかった。
事実として、こうして二人を作戦から遠ざける理由が降って湧いたようなものなのだから。
「巫山戯るな。護衛程度なら学生共に任せておけばいいだろう……!」
「確かに、奴等なら十分だろうよ。だがな、隼人学園とは同盟を結ぼうとしている最中だ。況してや、オレが静観の提案をしたから内部はメチャクチャ。グラムが好き放題やる結果になった」
「その責任はお前にあるだろう! 紫様も何故、貴様なぞの提案を……!」
「だから、お前ら二人が護衛するんだろうが」
戦えないことがそれほどまでに不満なのか、それとも護衛が前線戦闘よりも下の仕事と思っているのか、あさつきは歯を剥き出しにして噛み付いてきていた。
如何にグラムを完全に封殺する為とは言え、対魔忍が隼人学園の内情を知りつつも静観を選んだのは事実。
この事実はいずれ必ず隼人学園側の耳に入るだろう。そうなった場合、対魔忍と隼人学園の同盟関係は致命的に罅が入ってしまう。
此処は誠意を見せなければない。
望外の幸運で救出できた生徒を盤石の体勢で護衛させれば、少なくとも対魔忍が隼人学園を好きで見捨てた訳ではないということが分かる。
学生対魔忍では実力は兎も角として、組織内の立ち位置としては下だ。
そのような者に生徒の護衛を任せては、その程度にしか我々を認識していないのか、と不興を買ってしまう。
だからこそ、上忍二名を意義がある。例え、作戦中の総戦力が減ることになろうとも、今後を見据えれば十分お釣りの来る配置だ。
「それにな、お前ら。アサギと紫の顔に泥を塗るつもりか?」
「何……?!」
「お前等の配置を選択したのは紫だ。紫はこの同盟関係の全てを任されている。これに異議を唱えることは、アサギの考えに異議を申し立てているも同然だろうに」
「…………っ」
「それにな、こうして置けば、全ての責任をオレにおっ被せて蜥蜴の尻尾切りもできるだろうが」
紫の、引いて心酔しているアサギの名を出され、それ以上あさつきは何も言えなくなった。
自分が楽をしたいがために相手を黙らせる必要があるのならば、相手の弱い部分を容赦なく突く男である。
実際の所、虎太郎は何一つ嘘をついてはいない。ただ、事実を語っていないだけだ。
二人の配置を提案したのは虎太郎であるが、最終的に選択をしたのは紫であり、この決定にアサギも納得し既に了承を得ている。
また、万が一に備え、隼人学園側に説明するカバーシナリオは考えてあった。
それは、こうだ。
虎太郎は任務中にグラムと接触、交戦しており、隼人学園を初めて訪れた際に彼の存在に気づいていた。
しかし、それを確信するだけの情報がなかった故に、紫には何も言わないまま、独自に調査を開始。
その過程で確たる証拠を得るために、グラムと部下の暴虐を静観。その後、アサギと紫に連絡を入れ、同盟の担当者であった紫が、部下を引き連れてすっ飛んできたというシナリオである。
静観した責任として、悪感情は全て虎太郎へと集約され、アサギと紫は隼人学園側には恩人となるのだ。
此処でゴネればゴネるほどに、アサギの顔へと二重で泥を塗るようなもの。
其処まで理解したあさつきは、ようやく押し黙った。不承不承ではあるものの納得はしたようだ。
「我々が後方に下がり、生徒達を前に出させるなぞ……」
「指揮を取るのは上忍、何が不満だ。お前がいなければ生徒達が戦えないと、お前でなければ守れないと? 驕りも大概にしろ。お前の目の届かない状況なんぞ、いくらでもある」
「…………ぐっ!」
「お前が生徒の重荷を肩代わりすればするほどに、奴等の手足は痩せ細る。そうなれば、いずれは奴等自身の運命の重さに耐えられずに押し潰されるのは明白だ。手を貸す必要もあることは重々承知しているが、過保護であっては自立の妨げになる。教師として、その程度の分別は持っておくんだな」
対魔忍の背負う運命も責任も、余りに重い。
魔界からやってきた魔族、米連を筆頭とした諸外国の勢力。どちらからも日本を守らねばならない。
ただ一つの失敗が、日本を破滅へ導く可能性もある。
だからこそ、生徒達の危険に目を瞑ってでも、経験を積ませる。
彼女等は、これからの対魔忍を背負って立つ存在だ。必要以上に彼女達から経験を積む場を奪っては、何時まで経っても成長しない。
そして、望む望まざるに拘らず、先達はいずれ舞台から降りねばならない。その時に、何も出来ない対魔忍であってはならないのである。
口を挟んだのは燐であったが、全くの正論で返されては歯噛みする他なかった。
「お前ら二人はそれくらいし――――この仕事には適任だ。魔族が来ようが、米連が来ようが、徒党を組まれようが問題ない。紫がそう判断した。無論、オレにも不満はない。もし、意見があるのなら紫を説得するんだな」
(なぁ、ワイト。アイツ、今、それくらいしか出来ないって言いかけたよな? よな?)
(シっ! 黙っていなさい、東!)
これ以上の話は無意味と斬って捨てた虎太郎に、二人は黙らざるを得なかった。
燐は鼻を鳴らして顔を逸し、あさつきもまた口元を歪めながらも、口唇を引き結ぶ。どうやら、紫の考え――虎太郎のものであるのだが――に納得し、完全に承服したようである。
離れた位置で三人の会話を見守っていた東は、虎太郎の内心を察してワイトに話しかけたが、一蹴されてしまう。
そう。虎太郎にとって、隼人学園との関係が破綻しようが、生徒がグラムの部下に殺されたとしても、面倒に発展はするが、それほど問題ではない。
二つの組織が存在していれば、互いの利益のためにぶつかり合うのは必然であるが故に、折衝と交渉が必要だ。
対魔忍に身を窶している以上、生徒がいずれは殺し殺されるのは必然であるが故に、教育と人材発掘が必要だ。
今の彼の内心は――――
(やったぁぁああぁぁああぁぁぁあぁぁ!!! 不良在庫一掃セール、完了ぉぉぉぉおおぉっっ!!!)
――――
酷い話である。
仮にも味方を使えない扱いをした上に、作戦の邪魔にしかならないと踏んで、最も重要性の低い位置に配置したのだから。
因みに虎太郎の中で燐、あさつき両名の評価は、東の妹である舞華、佐久家の次期当主の春馬並みに低い。
燐は、とある任務で虎太郎の速度に反応が間に合わず敵諸共に電撃を浴びせており、殲滅ばっかりで状況判断能力の低い粗忽者。
あさつきは、アサギの真似をして敵陣の中央に突っ込んでいった挙句に孤立して窮地に立たされる、敵どころか己の実力も測れない愚か者。
といった評価である。
二人へのフォローをいれるのなら、燐に関しては虎太郎の味方に求める理想が高すぎるからであり、あさつきに関しては桐生によって施された治療そのものが彼女の精神に影響を与えているからである。
もっとも、その程度のことで、彼の評価が変わることはありえないが。
「じゃあ、後は任せるぞ」
「承知した」
「……了解」
無表情を保っていたが、内心はルンルン気分で今すぐにでもスキップをしてしまい気分であったが、虎太郎はぐっと堪える。
此処でこれ以上、二人にゴネられても面倒だ。自分への反抗心から持ち場を勝手に離れられる訳にはいかなかった。
最早、廃工場に残る理由はない。
数日分の食料を渡し、生徒達を眠らせておく栄養剤と睡眠薬の混合薬剤を定期的に点滴するように指示を出してから、ワイトと東を連れ立って仮設本部へと戻ろうとしたのだが――――
「…………ところで、その顔はどうした?」
「悲しい意見の擦れ違いだ。それ以上、聞くんじゃない……!」
「あ、あぁ、そうか……」
――――岩石も斯くやという顔を燐に指摘され、迫真の表情で黙らせた。
ボコボコに腫れ上がった顔は、東の仕業である。
寄生蟲の呪縛を解くために行った性交の後、目を覚ました東に無抵抗のまま殴られ続けた結果だ。
虎太郎とワイトの思うがまま乱れさせられた情けなさ。
自ら明け渡したとは言え、未体験の快楽に翻弄されて女を晒した気恥ずかしさ。
抱かれる前には満たされたことのなかった女としての充足感。
その全てを拳に乗せて、東は気がつけば虎太郎を殴り倒していた。
拳に乗せられていた感情がそのような感情であったから虎太郎は今も己の脚で歩けているが、これが殺意であれば恐らくは死んでいたことだろう。
「お、おい、大丈夫、なのかよ……?」
「あぁ、あの二人に任せておけば大丈夫だ。それこそカーラ
「い、いや、そっちじゃなくて、お前の方で……」
「「…………」」
「………………な、なんだよお前ら! 二人して頭撫でんじゃねぇよ!!」
これから共に廃工場を離れ、仮設本部へと戻ろうとした虎太郎へと近づいてきた東は、そんな言葉を口にした。
普段は開け広げられている赤いジャケットの前をキッチリと閉め、両手をポケットに突っ込んだまま口唇を尖らせて虎太郎を気遣う。
何だか、仕掛けた悪戯が思わぬ結果を引き起こしてしまい、反省した子供のような姿だった。
しおらしい東の姿に、虎太郎とワイトは目を丸くして顔を見合わせたが、何一つ言葉を発することなく、二人揃って頭を撫で回し始めた。
無論、それが東なりの感謝と照れ隠しだと気づいた上で、愛らしさを感じてのことだ。
彼女を女らしくない、などと言ったのは誰なのか。十分に女らしい。年不相応に純情で純心な少女そのものではないか。
「だぁあぁぁっ!! 人が心配すりゃぁこれかよ! クソっ! 馬鹿にしやがって馬鹿にしやがって馬鹿にしやがって!」
「馬鹿になんてしてねぇよ。可愛がってるだけだろ。可愛いよ、東。東、可愛いよ」
「かわっ……!?」
「そういう愛らしさは私にはないから、少し羨ましいわ」
「……ぐっ、ぐぅぅぅっ…………お、おら、さっさと行くぞ!!」
二人の素直な感想だったからか、東は顔を真っ赤に染め上げるとそれ以上反論することはなく、足音を立てて部屋を出ていってしまう。
内容は聞こえていなかったのだろうが、声の大きさから言い争いだとでも思ったのか、燐とあさつきは呆れの視線を送ってきている。
普段の虎太郎の言動を鑑みれば、重要な同盟相手を怒らせても不思議ではないので当然だ。もっとも、虎太郎が相手を怒らせるような言動をするのは相手に問題があるか、意識的なものに過ぎない。
敬意を払うべき相手には払う。TPOは弁えている。彼の言動が目につくのは、周囲に問題のある相手が多過ぎるからだ。
(ちょろい。チョロいわ、東。これなら、後は何もしなくても勝手に完堕するわね! やったわ、ゆきかぜ! 旦那様のハーレム要員が増えるわよ!)
(またぞろおかしなこと考えてんなぁ、コイツ。いや、責任くらいは取るけどさぁ……いいのかぁ、これぇ?)
ふふふ、と黒い笑みを浮かべたワイトは最早、立派なモテモテウハウハ虎太兄ハーレム王国建設作戦実行委員会の会員であった。
青い空を背景に会長であるゆきかぜが、ぐっと親指を立ててる姿を幻視した虎太郎は、思わず頭を抱えてしまいそうになったのは、言うまでもない。
―――――
――――
―――
――
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「――――以上が、隼人学園の現状です」
「各拠点の現状も報告の通り。米連も足を止めたまま現状を維持しています」
「ご苦労。上忍連中は兎も角として、学生どもは短い間だったが、よくやった。今後もこの経験を任務で活かすように。完全な戦闘職でも無駄になる
東を引き連れ、仮設本部へと戻った虎太郎は任務に携わる全ての人物を集め、最後のミーティングを行っていた。
上忍達が得た情報を統合し、花蓮と深月が虎太郎へ手短に報告を行っていた。
敢えて花蓮と深月に報告をさせたのは、この二人が指揮官としての適性を持っていたからだ。
冷静沈着かつ俯瞰的な視点を持つ二人は、戦闘は勿論のこと、人を動かすことに長けており、指導にも向いていると虎太郎が判断した。
以後は、二人に指揮官としての教育を行っていくつもりだ。その前に必要な経験を積ませる算段である。実に彼らしい無駄の無さである。
既に東救出の知らせを聞いていた皆は、彼女の無事に胸を撫で下ろしながらも必要以上の気遣いはない。
挨拶もそこそこに、作戦の状況がどうなっているのかを問い質す東の意志を尊重してのこと。
況して、今回の件においては被害者にして当事者でもある。助っ人扱いであるものの、重要な戦力故に軽く扱うこともなかった。
隼人学園の現状から、カーラは既に陥落したものと思われた。
と言うのも米連の襲撃に備え、グラムが自身の配下を隼人学園に招き入れていたからだ。
其処まで派手に動けば、いくら何でもカーラに悟られてしまう。それだけ大胆な行動に出たということは、最も重要な駒を手中に収めた証左である。
学園内部の支配も既に終了した。
カーラ達ほどの女傑であっても抗えない寄生蟲の支配には、如何な吸血鬼退治の精鋭と言えども対抗し難い。
吸血鬼共は昼間は教師や生徒として振る舞い、夜間は学園内部を徘徊して米連の襲撃に備えている。
隼人学園の守りは固くなったが、その分だけ三つの拠点が手薄となったのは朗報であった。
これは殲滅戦だ。只の一人も逃がす訳には行かない。虎太郎の手の届かない拠点が、上忍と生徒だけでも確実な殲滅が可能となったのは大きい。
「これから五つの班に別れる。峰麻、穂村、前園、百田の
「「「「――――了解」」」」
「指揮は上忍が取ってやってくれ。お前らは、それに従い、これまでの成果を見せろ」
「成果言うても、ただ走ってばっかでしたやん……」
「それ以外にも色々教えてやっただろ? 要は、此処の使いようだ」
紫の指示に、上忍達は全てを納得した上で任務を拝命する。
虎太郎の言葉にも無言で頷いたが、雫は不安げな表情だった。
実戦は初めてではないにせよ、これだけ慎重を期した作戦の大詰めともなれば不安の一つも湧いてこよう。
しかし、虎太郎は自分の頭を指で小突いただけで、不安を一蹴する。
何も彼は体力ばかりを伸ばしてきた訳ではない。彼女達自身が、己の限界を見極め、異能の行使と使い方を考えさせてきた。
グラムの指揮もないチンピラ同然の吸血鬼であれば、身体能力に差があろうとも、戦い方さえ間違えなければ十二分に対抗可能と判断したのだ。
「蓮魔、由利、氷室の
「戦闘は……?」
「可能な限り避けろ。已むを得ない場合は音もなく一方的に無力化か殺害。氷室の氷遁を起点に、蓮魔と由利がサポートする形がベストだ。無力化、確保した後は逃走を図った吸血鬼の追走に備えておけ」
「分かりました」
「そして、私、ワイト、神村殿、鉄兜の太極班は、正門から堂々と侵入し、全ての目を釘付けにした上でグラム、上原理事長、マリカ・クリシュナ、カーラ・クロムウェルの確保と吸血鬼の殲滅を行う。何か、意見はあるか?」
「特には…………弐曲輪先生は何を?」
「オレは此処の屋上からスポッターと狙撃を兼任する。米連の動向の監視と太極班、
無論、口から出任せである。
虎太郎は鉄兜の中身として、グラムの周囲を固める吸血鬼とカーラ達の戦闘に参加する手筈となっている。
実際にスポッター、狙撃を行うのはアルフレッドだ。
監視には米連から鹵獲した小型の飛行ドローンを用い、狙撃には消音装置付きのライフルをモーターで可動する脚立型の遠隔照準装置を使う。
後は虎太郎が太極・兌班からの報告を受けて、アルフレッドへ指示を出せばいい。これで、虎太郎の動向も味方に対してすら覆い隠す事ができる。
気になるのは米連の動きであるが、いきなり三つ巴の戦いに突入することだけはない。
米連側にしてみれば、同盟を結んだ筈の隼人学園と対魔忍が相争うことに混乱する。更にはグラムの存在に気づき、東が対魔忍側についている事実は更なる混乱を生み出すことだろう。
またしても米連は現状把握に務めなければならず、もし仮に介入を決意しても、行動を開始するのは間違いなくグラムと対魔忍の戦いが終わった後であることは明白。
何故ならば、その方が自軍への損害を極限し、なおかつ任務の遂行も容易となるから。
これまでの米連の思考や行動を鑑みえれば、間違いない。
介入に対しても、既に手は打ってあった。彼等は泣く泣く本国へと帰る道しか用意していなかった。
「では、作戦の決行は3日後の午前0時。それまでは各自、監視を交代で行いながら、十分に休息を取っておけ。以上、解散!」
救出作戦最後のミーティングは終わった。
各々が不安を抱えながらも、それ以上の闘志を漲らせて部屋を後にしていく。
無論、部屋に残った紫、ワイト、東も同様であった。
その中で唯一、虎太郎だけが欠伸を漏らし、何のやる気も見られない態度を取っている。
これが彼のデフォルトだ。それでも、油断だけは見られないのは流石といった所だろう。
(さぁて、後はオレが命を張るだけだ。最後の助っ人が頼りだな。まあ、いつも通りだ。キチンと殺してやるからなぁ、グラム叔父さん)
誰にも悟られぬ確殺の決意が心の内側で燃えている。
何処までも冷たく、何処までも残忍に敵を灼き尽くす絶対零度の炎は、数日後にはグラムへと向けられることになる。
未だ彼等の存在に気づいていないグラムが炎に巻かれ、絶望する羽目になるのは言うまでもないことだろう。