※この作品はR-18です。

対魔忍アサギ 苦労人奮闘記   作:HK416

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『これはご褒美かもしれないが苦労と釣り合い取れてんのか? とか考えている彼は全男の敵』

 

「…………う、ぅ」

 

 

 微睡みの中から不知火の意識が浮上する。

 全身に気怠さは残っていたものの、視界も思考も驚くほどにクリアな状態に自分自身で驚きを隠せない。

 

 虎太郎に敗れ、連れてこられた部屋は特に変化はない。小奇麗さも小汚さもない、生活感というものが一切欠如した地下室。

 唯一変化があったのは不知火が眠らされていたベッドのシーツが新品に取り換えられていた程度か。

 

 目を覚まし、本来の自分自身を取り戻した不知火が抱いたのは、やはり拭いきれない後悔と罪悪感だ。

 いくら敵によって洗脳染みた調教があったとは言え、それに屈服し、受け入れたのは彼女自身に他ならない。

 ましてや、敵の言われるがまま、娘であるゆきかぜと娘同然の凜子を捧げようとする悍ましい行為に奔ってしまった。

 ただ快楽のための下劣で残酷な愚行。正常な判断ができる今、彼女は己を母親などと口が裂けても言えまい。

 

 

「寝覚めで悪いけど、ちょいと質問に答えてくれないか?」

 

「…………虎、太郎、君」

 

 

 両手で顔を覆い、己自身に対する絶望とゆきかぜ、凜子に対する罪悪感に溺れかけていた不知火を引き戻したのは、気遣いなど全く感じられない虎太郎の声だった。

 部屋の隅で両腕を組んで油断も隙もなく不知火の様子を眺めている虎太郎の姿がある。

 

 彼女は驚いた顔で顔を上げ、自分を今の位置にまで引き上げた青年に視線を向ける。

 虎太郎はずけずけと不知火に近寄り、ソファを移動させて、どっかと腰を下ろした。

 

 

「アンタが、一番初めに着いた任務は?」

 

「……急に、何を?」

 

「いいから、答えて」

 

 

 有無を言わさず、虎太郎は不知火に無数の質問を開始する。彼女の心境などお構いなしだ。

 不知火も困惑こそしていたものの、その無遠慮さ、冷徹さは今の彼女にとっては気休めになったのだろう。沈んでいた表情は、次第に引き締まっていく。

 質問の内容は他愛のない日常的なものから、不知火がかつて挑んだ熾烈な任務を思い出させるものまで様々だった。共通点は、不知火ないし対魔忍しか答えられない内容という点だ。

 

 彼の質問の意図は二つ。

 今、目の前の水城 不知火が本物なのかどうか。そして、自身の行為が完全な形で効果を発揮したのかどうかである。

 何者かが姿を変えている可能性もあり、あるいは何らかの魔界技術を用いられて造られた模造品(デッドコピー)である可能性も否定できない。

 何よりも不知火が正気に戻った振りをしている可能性もまた存在している。その全てが潰えぬ限り、弐曲輪 虎太郎は気を緩めない。

 

 彼は誰一人として信じていない。そこには己自身ですら含まれる。例外など何一つない。ある意味で、誰よりも平等な男と言えよう。

 異常なまでの猜疑心。疑いの対象が自分自身に及ぶが故に、彼は自分に対して自信がある、ではなく、自分に何ができるか自覚があると称するのだ。

 

 もっとも、何よりも恐ろしいのは、自分を含めた世界の全てが疑いの対象だと言うのに、平気な顔をして生きていける並外れた精神力だ。最早、異界の神々とですら渡り合えそうなほどである。

 並の人間ならば一時間と持たない。厳しい鍛錬を越えた対魔忍や米連の兵士ですらが一月と正気を保てまい。魔族であったとしても、生きることを諦めよう。

 何一つも信じないということはそういうことだ。安らぎ、安心、安堵、安寧がないも同然――いや、同義である。

 

 10分以上に渡っての質問は、不知火にとっては救いだったようだ。

 表情が厳しくなる場面もあれば、頬を緩め、笑みを浮かべてしまうような他愛のない質問まで、兎に角絶望している暇がないほどの質問攻めだったのだろう。

 

 

「最後に、アンタの得意料理は?」

 

「そう、ね。豆ごはん、かしら?」

 

「ふむふむ。オレの目からはもう大丈夫そうだな。アル、お前からは?」

 

『身体的反応から何らかの虚偽、動揺は見られません。私も同意見です』

 

「……誰なの?」

 

「ああ、アンタにゃ言ってなかったか。オレの相棒だよ」

 

『初めまして、不知火様。私は人工知能のアルフレッドと申します。以後、お見知り置きを』

 

「人工、知能……まさか、こんな高度な」

 

「驚くのは仕方がないが事実だから。実際、優秀だよコイツは。アサギよりもよっぽどな」

 

『言い過ぎですよ、虎太郎』

 

「事実だろ。どう考えても」

 

 

 不知火と虎太郎は任務を共にせず、ふうまの跡取りであったことも知らない。

 故にアルフレッドの存在も知らなかった。そもそも、虎太郎がアルフレッドの存在を明かすのは稀だ。使えるモノほど手の内に隠しておく。その方が、仕事にも敵に対しても有効だからだ。

 

 そして、虎太郎は己の目とアルフレッドの機能。その二つによる判断を以て、初めて目の前の水城 不知火が本物かつ正気であることを認めた。

 

 

「さて。早速だが、不知火さんにやってもらいたい仕事がある」

 

「何、かしら……?」

 

 

 そう、全てはこの為だ。予定にない不知火の救出を組み込んだのは、決して彼女の為でなく、その力を利用する為に他ならない。

 半ば本気の冗談を口にしていた顔は引き締まり、その瞳は槍のような眼光を放っていた。

 

 

「取り敢えず、背中の傷縫ってくれね? 自分じゃ背中の傷には手が届かねぇ」

 

 

 どんな大仕事が待ち侘びているのかと身構えていた不知火は、何処か間の抜けた虎太郎の声にカクンと肩を落とす。

 虎太郎はその反応に満足げに頷くと医療キットを投げて渡し、シャツを脱いで背中を向けるとベッドに腰掛けた。

 

 不知火が包帯とガーゼを丁寧に外すと、右肩から左脇腹にかけての刀傷が現れる。薬で化膿と出血を止めているが、それ以外の処置を施さなかった患部の皮膚は捲れ上がり、傷が広がっている。

 余りにも鮮やかな切り口に、何よりも記憶にある己の行動で出来た傷だ、忘れよう筈もない。

 

 後悔、罪悪感、屈辱、哀切、憎悪。あらゆる感情が込み上げ、彼女は冷静さを保てない。

 齢を重ねることで年齢相応の落ち着きを手に入れた不知火であったが、己の所業を目の当たりにし、今にも泣き出してしまいそうな顔をしている。

 

 

「おい、早くしてくれないか。アンタがどう葛藤しようがアンタの勝手だが、今のオレに関係ないんだからさ」

 

「もう、知っていたけれど本当に容赦がないんだから――――でも、ありがとう。君のその冷たさが、今は救いだわ」

 

 

 虎太郎は肩越しに冷めた視線を向け、不知火の煮え滾る葛藤を斬り捨てる。

 その人間味が感じられない視線に彼女は冷や水をぶちまけられたような気分になり、己の心までが流水のように冷たくなっていくのを感じた。

 

 

「手を動かしながらで構わない。情報をくれ」

 

『虎太郎、貴方にデリカシーはないのですか。呆れを通り越してドン引きです』

 

「いいのよ……ええっと、アルフレッド君……? この子、昔からこういうところがあったから」

 

『不知火様、私も貴方と同程度には虎太郎と付き合いが長い。彼の気質は十分理解しているつもりです。ですが、せめて言葉で抵抗を示さねば』

 

「…………本当に凄いわね。人工知能にこんなことを言っていいのか分からないけど、そこらへんの人間よりもよっぽど人間が出来てるわ」

 

『でなければ、彼の相棒など務まりません。不知火様の心中お察し出来ますよ』

 

「おーい、ちょっとちょっとぉ? オレのこと忘れてませんかー、二人ともー?」

 

 

 虎太郎に対して同じ思いがあるのか、当人をほったらかしにして急速に仲を縮めるアルフレッドと不知火。

 そんな二人に呆れて言葉で抗議するものの、虎太郎は積極的に止めることはなかった。少しでも精神的に回復し、縫合作業と質問の効率が上がるのなら文句はない。

 

 

「リーアルは奴隷娼婦たちに人体改造と共に、ある仕掛けを施してあるわ」

 

「ふーん。ある程度察しはつくが……何?」

 

「キメラ微生体。奴隷娼婦を縛る忌々しい鎖よ」

 

 

 キメラの名が示す通り、魔界の魔物の細胞と人界の極小機械(ナノマシン)を融合して組み上げられた技術である。

 

 その特性は刻印と呪縛。

 キメラ微生体を投与された女は舌に刻印が刻まれ、奴隷娼婦の証とする。

 奴隷娼婦は云わば性サービスにおける究極のプロ。時に魔界の技術を駆使し限界を超えて奉仕する。

 またヨミハラの支配者たちの情婦になるも同然であり、一介の娼婦と見分ける為に必要なのが刻印というわけだ。

 

 そして、もう一つの特性が逃走防止機能。

 指定された区域から一定の距離を離れるとキメラ微生体が起動する。

 キメラ微生体は起動すると同時に血液に一定量混ざると爆発する特殊な毒素を分泌し、投与された者の両手両脚を吹き飛ばす。

 究極のプロ、というだけあり、その調教、肉体改造にも相応の金を掛けている。何らかの形で首輪をつけているのは当然だ。

 

 

「何かあると思ったが、またぞろ面倒な……」

 

『しかし、これはクリアしなければならない関門です。可能ですか?』

 

「当たり前だ。不知火さんには刻印がない。てことは当然、解除する方法はあるってことだろ?」

 

「それはそうだけど……、でも、ごめんなさい。それについてはよく分からないのよ」

 

「ぱっぱと侵入して、ぱっぱと盗むなんて忍の基本さ」

 

「それで、私は何を……?」

 

「特に何も。まあ、正気を取り戻したと悟られなければそれでいい。こっちとしちゃ、オレの顔や仕草を知ってる不知火さんが敵に回っていることが最大の問題だったからな。無理をして敵に余計な違和感を与える必要もない」

 

「…………ごめんなさいね。私が、弱くなければ、こんなことには」

 

「謝る必要なんてない。後悔も葛藤も役に立たない。やるべきことを必要な機会に必要な分だけやってくれればいい」

 

 

 優しさなど微塵もない冷徹な台詞だ。

 虎太郎にしてみれば、当然なのだろう。彼にとって過去の出来事など現在の仕事に影響を及ぼさなければそれでいい。

 そして、不知火は今現在、虎太郎にとっての最大にして最強の味方だ。これ以上の有用性はない。特に相手が不知火という切り札を最も必要とする場面で、手を切るだけでも凄まじいアドバンテージとなる。

 

 今は耐え難きを耐え、忍び難きを忍べ。彼は暗にそう言っている。

 余りにも残酷だ。罪を償う事もせず、娘が犯されているのをただ見ていろと、とても母親に向ける言葉ではない。

 

 

「手が止まってる。続けてくれ」

 

「え、あぁ、ごめんなさいね」

 

「それで、ヨミハラでアンタが捕まって、リーアルどもに好き放題やられたのは分かった。問題は、その後だ」

 

「そうね。3年ほど耐えたわ。それから奴等は繋がりの合った淫魔族に私を受け渡し、そ、れ……か、ら…………」

 

 

 そこから先は不知火にとって忌まわしい記憶だ。語りたがらないのも無理はない。次第に口調は途切れていく。

 

 ……まさか、だろう。水城 不知火は熟練であり、井河 アサギと並び称されるほどの対魔忍だ。それがどれだけ恥辱と屈辱に濡れたであろうとも必要な情報を語らない筈がない。

 不知火は語らないのではなく語れない、思い出さないのではなく思い出せない。

 リーアルと矢崎が協力している淫魔族の首領が確かに居た。己はその相手にどうしようもない痴態を晒し、見苦しいまでの懇願と共に堕落した。

 

 ――だというのに、その首領と周辺にいた人物や技術、目的、本拠の記憶がごっそりと抜け落ちている。

 

 

「その顔じゃ、覚えてないか」

 

「……え、ええ。でも、どうして? こんなこと忘れるはずが…………」

 

「不知火さんの頭の中にはチップが埋め込まれていた」

 

「チップ……?」

 

「ああ、今は機能が停止している。特定の行動を取ると起動して頭痛を与える詰まらん小道具さ」

 

「そんな、ものが……」

 

「しかし、隠された機能もあったらしい。恐れ入ったね、チップが破壊されると同時に特定の記憶だけを消すか。手が込んでる」

 

 

 ある程度、予測はしていたのだろう。虎太郎は困惑せずに呆れた口調で頭を掻いた。

 

 何らかの組織から離反者が出た場合、最も恐れられるのは情報の漏洩だ。

 ましてや淫魔族は水面下で何らかの目的を持って動いている。誰にも悟られず、死に至る病のような静かさで着々と計画を進行しているだろう。

 何処からか情報が洩れ、計画が表に出るのは避けたい。表に出るにしても、それはもう全てが誰の手であっても手遅れの段階になってからだ。

 

 

「まあ、それにアレだ……ていうか、また手ぇ止まってないか?」

 

「もう終わったわ。ごめんなさいね、こんな……」

 

「ああ、もう面倒臭いな。だから、何だ。アンタが可笑しくなったのはチップのせいだ。それのせいにしちまえばいい。それだけの話だろ」

 

「それは……」

 

「なあ、不知火さん。アンタが堕ちたのは事実だ。ゆきかぜや凜子を売ろうとしたのも事実だ。それは変えようがないし、起きてしまったことだ。悔やんだってしょうがない」

 

 

 虎太郎の言はどうしようもなく正しい。人は一度起きた過去をどうにかすることは出来ない。

 もし出来ることがあるとすれば、それは起きた出来事から目を背けず、己にとってより良い未来を手にする為の努力だけ。

 

 しかし、そう簡単に割り切れぬからこその人間でもある。全ての物事を簡単に割り切るのでは機械と何ら変わらない。

 

 

「……………………」

 

「何、そう難しく考えることはない。堕ちるとこまで堕ちたんだ。後は這い上がるだけさ」

 

「……ありがとう」

 

 

 かつてふうまの次期当主でありながら、全てを捨てて底の底まで堕ちた男の言葉だ。これ以上、重さのある言葉もあるまい。

 華やかでこそなかったが何不自由のない生活から一転して、雑草を口にし泥水を啜る不自由しかない生活。

 全て己自身の馬鹿さ加減が引き起こした事態であったが、虎太郎は確かに這い上がってきた。

 

 自分から闇の底へと身を投げた阿呆ですら這い上がってこれた。

 ならば、他人に突き落とされた不知火であれば、怒りと憎しみでもっと早く這い上がってこれると考えている。

 

 その言葉に彼なりの気遣いを感じたのか、不知火は虎太郎の肩に縋るように額を乗せる。

 虎太郎も拒みもしなければ、何一つ言葉にすることなく黙って受け入れた。

 

 決して可哀想だからなどという甘い判断からではない。

 不知火にはこれから敵の元に戻り、堕落した己を演じて貰わねばならない。そこに如何なる些細な変化や違和感が生じることは許されないのだ。精神状態が、かつて対魔忍として数多の任務を熟していた頃と同じ状態に戻っていた方が望ましい。

 

 機械染みた合理的な判断に基づいた行動であるが、気遣いには違いない。

 そして、人の行為は本心がなんであれ、受けた側の感じ方次第で呼び名が変わるものだ。不知火にとって、虎太郎の気遣いは紛れもない優しさであった。

 その優しさで不知火の悔恨も罪悪感も溶かされるように薄らいでいく。決して消え去ることはないが、気持ちは安らいでいくのは確かだった。

 

 やがて、不知火は虎太郎の肩からパっと不自然な速さで額を放す。

 

 

「もう、大丈夫、話を続けましょう」

 

「………………そうか、ならいいよ」

 

 

 それから時間を掛けて可能な限り情報を共有していく。

 娼館「アンダーエデン」の間取り。不知火の知っている限りのリーアル及び矢崎の行動。奴隷娼婦、スタッフの役割と行動範囲。客層と奴隷娼婦一人当たりの値段。

 

 虎太郎は作戦の内容を敢えて明かさず、不知火もまた敢えて聞かなかった。不足の事態に備えて救出の基幹となる部分だけは明かさないでいた方がいいという判断からだ。

 不知火は不安から、虎太郎は合理性から互いの握る情報を分断することで敵への情報流出を防ぐつもりであった。

 今一度敵の手元へと潜り込まなければならない不知火とほぼ単身で作戦の下準備を進めねばならない虎太郎。危険度はどちらも同じ。

 そして万が一、どちらか一方が敵に捕まった場合、もう一方が速やかにゆきかぜと凜子を救出する手筈だ。最低でも三人は確実に五車町へと戻ることが出来る。

 

 

「それから、これ」

 

「これは……?」

 

「通信機及び発信器。米連から奪った最新式――と言いたい所だが、もう何年も前のだ。完全に型落ち品だな。だが、通信内容はアルフレッドを介して高度に暗号化される。傍受の可能性は0に近い」

 

「通信機は分かるけど、発信器は……?」

 

「ああ、どの道アンタがもう一度捕まれば、助けに行くのはオレだ。なるべくなら楽をしたいからね」

 

 

 受け取りようによっては、必ず助けに向かうから心配するなと励ましているようだ。

 事実は虎太郎が言葉にした通りの理由でしかなく、不知火もその全てを理解してなお笑みを浮かべた。こんな地の底にまで救出に来た男の言葉だ。例え、世界の果てであれ、任務である以上は彼は必ず有言実行するだろう、と迷いなく信じられるからだ。

 

 それからも情報を共有していった。

 ヨミハラの情勢や各組織のパワーバランス、魔界騎士イングリッド直属のヨミハラにおける自警団に相当する部隊の存在、そしてカオスアリーナの後継とも呼べる忌まわしい闘技場。

 

 しかし、時間が経つにつれて不知火の様子は可笑しくなっていった。

 話の途中に何度も頭を振り、何度も唾を飲み込み、瞳は潤みを帯びて虎太郎から視線を外せなくなる。

 

 無理もない。

 どのような技術によるものかは不明だが、不知火の身体は淫魔へと変質しかけている。無意識にも男の精も求め、貪ろうとするのだ。

 狭い地下室に男と二人きりという状況に加えて、少なくとも肉体的には完璧に屈服させた男。

 何よりも何度となく絶頂を極めたにも拘わらず、肝心の精液は一度もその身に受けていないのだから。

 

 並みの対魔忍なら耐えられない。さくらや紫でも同様だろう。アサギになってようやく耐えられるレベルの発情だ。

 

 

「今の所、共有できそうな情報をこんなものか。仕事も何とか一段落だな」

 

「え、ええ……そう、ね」

 

「じゃあ、今度はこれ」

 

「これは……?」

 

 

 不知火が手渡されたのは奇妙な形状のクナイだった。

 両鎌槍の穂をそのまま小さくしたような形状の刀身に奇妙な紋様が刻まれており、よく使い込まれているのか細かい傷が無数に刻まれていた。

 クナイは忍にとって万能武器である。斬撃、刺突、投擲は勿論のこと、壁に突き刺して手掛け脚掛けにすることもでき、穴を掘るのにも向いている。

 しかし、この形状では微妙にバランスが悪く、何をするにしても慣れが必要になるだろう。折角の汎用性が損なわれてしまっている。

 

 何の為にこんなものを渡してきたのか分からないまま、不知火は虎太郎に視線を向けたが、次の瞬間目を丸くした。

 

 虎太郎は一瞬で距離を詰め、唇と唇を触れ合わせてきたのだ。

 余りに突然の出来事に不知火に為す術はなく、けれど身体が勝手に応えてしまおうとするのを堪え、一瞬で壁際にまで後退する。

 

 

「こ、虎太郎君、何を……!」

 

「何をも何も、一週間も御預け喰らってんだ。もうオレこんなんだからな?」

 

 

 虎太郎はベッドの上で立ち上がり、そんなことを言いながら無防備なまま不知火との距離を詰める。

 彼が“こんなん”と評したのは、自身の股間。長大なペニスは痛々しいまでに勃起し、ズボンを高々と盛り上げている。

 

 追い詰めた獲物を捉えようとするように、ゆっくりと近づいてくる。

 不知火は思わず、後ろに逃れようとするも壁がある為どう足掻いたところでそれ以上は下がれない。

 何よりも、まだ姿を見せていないが、記憶の中にある逞しい怒張から目を離せないでいた。

 

 

「……や、やめて。虎太郎君、やめてちょうだい。君が、私を引き上げてくれたんじゃない。母親に戻してくれたのよ……!?」

 

「ああ。なら、そのご褒美くらい貰ってもいいよな?」

 

「そ、それは……!」

 

「嫌なら、そのクナイで刺してくれて構わない。無理強いはしないよ。ただ、こっちも色々と我慢の限界なんだ」

 

 

 困ったような笑みを浮かべて肩を竦める虎太郎の姿に、不知火はその言葉が嘘だと確信していた。

 当然だろう。一週間もの時間、勃起を維持しながら一度も射精には至らなかった彼に我慢の限界などある筈もない。堪えようと思えばいくらでも堪えられるはずだ。

 そんなもの彼に抱かれた女――殊更、仕事の上で抱かれた女ならば尚の事によく分かる。単純な性欲だの我慢だのの問題ではないのは明らかだった。

 

 

(こ、この子、私の、為に……その上、逃げ道まで用意して……)

 

 

 これからアンタを犯すのはアンタが発情しているからではなく、単にオレが若さ故の堪え性の無さを露呈させただけ。アンタに責任はなく、ただ救われた恩があるから拒めなかっただけさ。

 

 そんな言い訳が出来る状況を用意して、心の負担を軽くさせようとしている。

 ともあれ、虎太郎は不知火を抱かねばならないのも事実だ。自身の肉体的な理由によってではない。不知火の今後を考えて、だ。

 人間は快楽を受けた時、より精神的な、本質的な部分が表層に現れる。如何に不知火が手練れの、最強クラスの対魔忍であったとしても、今の発情度合いは如何ともし難い。とても快楽を受け流すことなど出来ないだろう。

 僅かな違和感をも抱かれてはならない以上、ここで発情を発散させなければならない。

 

 

「こ、こんな……こんなの最低、よ。人の、心の隙間に入り込むみたいなやり方……」

 

「まあ、自覚はある」

 

 

 不知火は既に母親としての心は取り戻している。虎太郎が求めねば女として扱われることを望んではいない。

 しかし、一度虎太郎が求めれば、女として応えてしまう。彼女は既にどうしようもないほど彼に屈服しているのだ。唯一見せられる抵抗は、言葉によるものだけ。

 

 

「……ん」

 

 

 何の抵抗も出来ず、不知火はクイと顎を持ち上げられ、そのまま唇を奪われる――いや、捧げたと言うべきだろう。

 まるで何も知らない少年少女のような唇と唇を触れ合わせるだけの、男と女の密事を知る者であれば鼻で笑ってしまうような、幼稚で稚拙な性技の欠片もないキス。

 

 たったそれだけのことで不知火の胸は高鳴り、女陰は花開いていく。

 

 

「最低だわ……、私は、最低の母親よ」

 

「安心しろよ。それでも母親だ。アンタはゆきかぜの無事を何時でも祈っているし、助かるのを望んでいる。まあ、オレの仕事でもある。必ず助けるさ」

 

「…………こんなの、拒めるはずないわ」

 

「じゃあ、遠慮なく」

 

 

 不知火の手からクナイが滑り落ちるのを確認すると、虎太郎は笑みを浮かべた。

 クナイがなくなり開いた手を取り、指と指と重ね合わせる。まるで互いの指紋を確認し合っているかのようだ。

 次第に重ねられた指は絡み合っていく。まるで愛する相手の熱を少しでも多く感じていたいというばかりに。

 

 不知火の顔は発情とは別の赤みに染まっていく。

 

 当然だろう。

 対魔忍としての任務で多くの下衆どもに身体を差し出して篭絡した経験もある。

 今は亡き夫と愛し合い、ゆきかぜという娘を生んだ経験もある。

 淫魔の駒として、数えきれない程の雄に精処理の道具として扱われた経験すらある。

 

 ――だと言うのに、女として成熟しきった自分がこんな愛撫とも呼べないスキンシップで胸の高鳴りを抑えきれないでいる。

 

 これでは生娘そのものの反応だ。もう、女としては勿論のこと、年上としてのプライドも振りかざせないだろう。

 

 ふいに不知火は虎太郎と視線が交わった。

 底なし沼のような黒瞳は明らかな喜悦で光り輝いている。

 ただ女を使って性欲を処理しようとする雄とは違う輝き。自分は一切優位に立つつもりはないが、女を蕩けさせることを楽しみ、一心に女を求めている。そして、瞳の最奥では決して失わない絶対零度の冷たさも見て取れた。

 

 

「…………ん、んっ!」

 

(ああ、拒めない。拒めないわよぉ、こんなの。身体を堕とされて、発情までして……こんな一途に男として、女を求められたら、誰だって、拒めないわよぉ)

 

 

 遂に不知火は自分からキスをせがんだ。

 頭一つ分の身長差がある虎太郎のために、踵を持ち上げ、爪先立ちになって唇を押し付け合う。

 

 虎太郎も任せるままではない。開いた手を不知火の尻肉に回し、撫で回す。

 子供を生み、たっぷりと脂の乗った肉付きのよい尻たぶであったが、不知火にとってはコンプレックスの一つだった。

 女から妻となり、妻から母への変遷を遂げた彼女にとっては、最早不要のセックスアピールでしかない。

 何よりも、いずれは衰えていくものでしかない。今はまだいいが、やがては皺に塗れ、垂れ下がっていく自覚はあった。

 見た目の美しさは女性にとって重要視するモノの一つだ。不知火であっても変わらない。同年代に比べれば驚異的な若々しさだが、結果は同じだ。

 

 それでもなお虎太郎の手付きは彼女のコンプレックスごと愛でるかのようだ。

 優しく、決して跡を残さぬように、それでいて女の官能を煽りながら、女としての矜持も同時に満たしていく。

 

 

「あ…………ん、んふぅ、んんっ」

 

 

 尻肉への愛撫に自分でも驚くほど甘い吐息を漏らし、不知火が堪らず開けた口腔に虎太郎の舌が滑り込む。抵抗がないのを良いことに、舌の動きはまるで遠慮がない。

 舌は勿論、舌や唇の裏側、内頬、歯茎まで口腔の味を確かめ、歯並びまで確認しているようだ。

 

 

「ぅふ、……こく、ぅ、ぁ、ひ……」

 

 

 舌を伝わり流し込まれる虎太郎の唾液を、不知火は思う存分味わう。男に屈服し、身体を征服される被虐と背徳、倒錯と恋慕の甘い蜜に咽喉を鳴らして飲み下していく。

 食道から胃まで溶けた鉛でも流し込まれたように、まるで唾液そのものが媚薬としての効果を持っているかのようだ。

 

 舌を(つつ)かれ、今度はお返しに不知火が器用に唾液を送り込む。

 虎太郎は目を細め、もっと寄越せとばかりに舌を吸い上げ、その刺激に不知火は腰をぴくぴくと痙攣させる。

 

 

「あぁっ、んえぇぇぁ……」

 

 

 虎太郎が唇を放すと不知火は切なげな溜め息と共に舌を伸ばし、のたくらせて更なる快楽を求める。

 その情けないほど欲情した姿に、彼は笑みを深め、滾る獣欲を隠そうともせずに真っ直ぐ目の前の女を欲した。虎太郎は不知火の手を取ると、ズボンの上から擦らせる。

 

 不知火はズボンと手袋越しですら逞しい脈動を感じ、手ごと溶けていくような錯覚に陥った。

 苦しい苦しいと訴える剛直を解放しようと母性にも似た優しさでジッパーを下ろし、男の欲望そのものが形となった器官が姿を現した。

 

 

「……あぁ、凄い♪」

 

 

 ぶんと音を立てるような勢いで反り返る肉棒に、彼女が初めに感じたのは全身が泡立つほどの恐怖だ。けれど、口から漏れたのは生臭い女の甘え声と共に消えていく。

 湯気が立ちそうなほどの灼熱を何一つ言われないままに握り、ゆるゆると扱き始めてしまう。

 

 優しく優しく、肉棒を一切痛みを与えず、ただ気持ちよく射精を促す上下運動。堪らず、虎太郎は小さい呻き声と共に顔を歪めた。

 

 その様に不知火の手淫に熱が籠った。

 調教時、あれだけ冷静だった彼が今は仮面を剥ぎ取り、自分が与えている快楽に悶えている事実に、不知火の女は堪らない喜びに包まれる。

 親指で鈴口をくりくりと虐め、指が回りきらない幹を扱き上げ、カリ首を擦って明らかな奉仕に熱中してしまう。

 

 

「凄ぇ、な……しかもこれ、人間の技術じゃないぞ。いいの? 淫魔に教え込まれた(わざ)だろう?」

 

「だ、だって、……こんなに素直に悦んでくれたら、女なら誰だって、してあげたくなっちゃうわよぉ……♪」

 

 

 己自身ですら許しがたい過去、失態、痴態。

 その全てを知ってなお、それでも構わないと受け入れた虎太郎が相手だ。例え、悍ましい淫魔に仕込まれた手淫であろうとも構う訳がない。

 

 

「あっ、もうこんなにピクピク震えて……、ひぅっ!……凄い、勢い」

 

「はぁ、はぁ……ハハ、勘違いして貰っちゃ困るね。まだ、序の口さ。手だけじゃなくて、ちゃんとよく見て」

 

「あっ、あぁ…………嘘、嘘よぉ」

 

 

 掌に感じた迸りは、間違いなく射精のそれと何ら変わらない勢いだった。だと言うのに、不知火の目に飛び込んできたのは粘り気のある透明な先走りだけだった。

 それだけではない。既に股座から垂れ流された愛液は両の足首を伝って、床にシミどころではない大きな水溜りを作っている。

 

 

「もう、そろそろいいかな? 悪いね、不知火さんにも前戯で気持ち良くさせてやりたいんだけど」

 

「い、いいわ、……これ以上、じ、焦らされたら、私、可笑しくなるわよぉ!」

 

「何言ってんの、可笑しくなるのはこれからこれから」

 

 

 不知火の股布を横にずらし、秘所を露わにさせる。

 とても子供を産んだとは思えないほど綺麗でありながら、発情によってぷっくりと膨れた大陰唇と小陰唇はくぱくぱと開閉を繰り返し、糸を引く愛液が滴り落ちる。

 

 これからいよいよ挿入され、最後には熱い雄汁を吐き出して貰える。その期待に胸を張り裂けんばかりに膨らませる不知火であったが、虎太郎は更に容赦がなかった。

 

 

「ああ、そうだ。凄くいやらしい台詞で誘ってくれよ、その方が興奮するから。それから入れる前に不知火がしてくれる準備もな」

 

「そ、そんなぁ……私は、母親なのよ? そ、それが男を誘うみたいな、あぁ♪」

 

「もう今更でしょ。それに母親であることと女であることは何一つ矛盾しちゃいない」

 

「…………う、うぅ」

 

 

 蕩けた秘裂を擦り上げすらせず、興奮で震える怒張を見せつけるばかりで何もしない。

 

 不知火の呼吸は何処までも荒く、視線はペニスに釘付け状態だ。

 背中を完全に壁に預けたまま脚を大きく広げ、腰だけを前に突き出してクイ、クイと縦に振って雄を誘っている。とても母親などといった女のする行為ではない。

 

 虎太郎もまた興奮を隠さない。普段の無表情が嘘のように、にやついた表情で自分を必死で求め誘っている雌のだらしない仕草を堪能していた。

 

 やがて、根を上げたのはやはり不知火の方だった。どう足掻いても、虎太郎には我慢強さも性技においても敵わないのだから当然だ。

 

 

「こ、虎太郎君……」

 

「ああ、駄目だよ。もうちょっと呼び方も考えて欲しいね」

 

「な、なら、なんて呼べば満足してくれるのよぉ、もう……」

 

「んー、そうだな。こんな感じ、かな?」

 

 

 耳元で囁かれた言葉に、不知火は目をかっと見開いて、今まで以上に頬を朱で染め上げる。

 更なる羞恥を煽られた証拠であろう。だが、僅かな逡巡を見せつつも、身も心も完全に女として優しく堕とされてしまった不知火は意を決していながらも、震える声で告げた。

 

 

「……こ、虎太郎さぁん♡」

 

「……ッ」

 

 

 かつて世話を焼いていた少年を、男として雄として認める呼び方。

 かつて自分を子ども扱いしていた女が、男として雄として認める呼び名。

 

 不知火の脳髄は堪らない興奮で蕩け果て、虎太郎は冷静さを保ちながらも先走りを脈動と共に迸らせて女体に引っかける。

 

 

「と、年甲斐もなく、虎太郎さんに、はぁ……はぁぁ……、恋しちゃった年増マンコ、……虎太郎さんの、逞しい女殺しのオチンポで、たぁっぷり、愛してくださぁい……♪」

 

 

 年を重ね、一児の母となった女が口にするには余りにも重い言葉であったが、虎太郎には心地よい響きだったのだろう。

 明らかな媚びを含んだ笑みと言葉に迷いなく、けれど慌てもせずに、いよいよ限界を迎えた女穴に男根を差し込んだ。

 

 

「ひ、ひぃ、ひぃぃぃぃぃ……!」

 

「スゲェ声、そんなにいいか?」

 

「す、っごい、凄過ぎるぅ……! アレ、だけ躾けたのに、今度は優しくぅ……っ! カリ! カリで、襞、あっ、あっ」

 

 

 最奥までは至らずに、膣道をたっぷりと味わう動き。

 調教の時とは異なる抽送に、不知火は頭の中でバチバチと白い火花が散るのを感じた。

 

 

「うぅ、凄いすごいすごいぃぃぃぃ! 激しくもないのに、こんなに優しくてゆっくりなのにぃ、どうしてこんなに前よりも気持ちいいのぉぉぉっ!!」

 

「そりゃ、女は精神状態がモロに出るからな。それだけ不知火さんがオレに心を開いているってことだ」

 

「ひ、開きもするわ! 弱ってる、ところに、アレだけ、優しくされたら、誰だって、心開いちゃうわよぉぉぉ!!」

 

 

 アクメには至っていないにも拘わらず、快楽の度合いは一週間抱かれ続けた時よりも明らかに上だ。

 剛直はカウパーを吐き出しながら、亀頭とカリ首で襞の一枚一枚にまで塗りたくる。

 

 

「ひくぅぅぅ! あ、ぐぅ、これ、これぇ! 躾けたのにぃ、今度は自分の味まで覚えさせてるぅぅ!!」

 

(あ……、あぁ、ゆきかぜ、ごめんね。弱い母親で、ごめんなさい。お母さん、ゆきかぜの一番大切な人に、(おんな)にされちゃってるぅっ!)

 

 

 かつてのように娘に対する罪悪感すら快楽へと変える。唯一の違いは相手の性質だろう。

 淫魔は単なる計画か、目的遂行の一環として、或いは種族の本能として不知火を求めた。

 しかし、虎太郎が求めているのは女としてだけ。母親としても、対魔忍としても不知火を縛るつもりはない。

 

 ――ただ、こうなってしまっては、今後虎太郎が求めれば、不知火は女として可能な行為を全て捧げる筈だ。

 

 

「うぅ、こ、怖い。怖いわ、こんなになって、あひぃ! あっあっ、あぁああぁぁ、は、母親に、戻れなくなるぅ!」

 

「それなら、こういうのは?」

 

「くぅぅ、……だ、だからぁ……お、おほぉ! こんなの、駄目よぉぉっ!!」

 

 

 両手の指を絡ませながら握る。もう完全に恋人同士の交わりだ。

 母親に戻れなくなるのが怖いと言った不知火の恐怖だけを取り除く行為。これでは再び母親に戻れるかどうか。

 

 存分に自身の味を覚え込ませた虎太郎は、遂に子宮口を責め立てる。

 

 

「あ、あっはぁ……キス、してるぅ、亀頭に、ぶちゅぶちゅぅ、子宮口が吸い付いちゃってるぅ……!」

 

「はぁぁっ、こりゃかなり効く、な。ほら、子宮も準備させてやるよ、ッ……ッ」

 

「おっ、お、ぐぅぅっ、……びゅ、びゅってぇ、カウパー、先汁、引っかけないでぇ、軽くイクの、止まらないぃっ♪」

 

 

 肉棒を脈動させて、並みの男なら射精と変わらない勢いで先走りを吐き出し続ける。

 不知火も一目でソレと分かる痙攣で子宮を、膣を、腰までも震わせて応えた。

 

 

「もう、イきそうだっ。不知火さんも、そろそろ限界?」

 

「ひやぁ、も、もうひっ、と、とっくの昔に限界よぉ! こ、降参ン! 参りましたぁ! だから、だからぁ……」

 

「じゃあ、最後にもう一度、分かるよな?」

 

「は、はひぃぃぃぃ……」

 

 

 身も心も完全に屈服した不知火の秘裂は、虎太郎の剛直で擦り上げられる度にアクメに達してしまう。

 膣口もGスポットも精液溜まりも関係ない。もうどのような体位でも、どのような角度でも、どのような強さでも、どのようなリズムでも一切関係なく絶頂へと至り、虎太郎を射精へと誘うだろう。

 

 

「はぁ……、はぁ……、お、お願いします、虎太郎さんの子種汁、不知火に、味わわせて、下さいぃ! 子宮まで、ねっとり愛してぇぇ!!」

 

「ああ、いいぞ。イけ、不知火(・・・)

 

「――――おほぉ♡」

 

 

 これ以上ないほど下りきり、口を開いた子宮に雄の象徴が叩き込まれる。

 

 愛し合う牡と牝そのものの姿。

 子宮も膣も、オマンコを愛でてくれる精一杯のお礼に、一生懸命吸いつき、締めつけ、蠕動して射精を促した。

 

 

「んほぉおおぉおおおぉおおっっ!! で、でて、でてるぅぅううぅ!!」

 

「……ぐっ」

 

膣内射精(なかだし)アクメ、オルガ! キてるぅぅ!! イク! イグイグイグぅぅうううううぅうううっっ!!」

 

 

 それこそ爆弾のような勢いで吐き出される精液は一瞬で子宮を満たし、女陰から溢れて床へ音を立ててこぼれ落ちる。

 

 

「んぐぅ、ぐぐぅ、とま、とまら、ない! こ、虎太郎さんのチンポ、射精、止まらないぃいい!!」

 

「最近、っ、誰も抱いてなかったからな。どうだ?」

 

「こ、濃ゆくて、これじゃ、ゼ、ゼリーよぉ! 凶悪なオチンポで、こんなザーメン、臆面もなく、女に啜らせてェ! 堪えられる、耐えられるわけないじゃないのよぉぉぉ!!」

 

「まだまだ出るぞ、不知火」

 

「はい、はひぃ! あぁん、出して出してぇ、私のおまんこ使って下さい! あぁぁ、またイク、またイキますからぁ! おっひぃぃ、んぐひっっ、ひっぐぅぅぅぅんっ!!」

 

 

 1分、2分、3分。

 虎太郎の射精は止まらない。これも修めた性技によるものか。どう考えたところで人間の領域にない射精であったが、今の不知火には関係あるまい。

 緩みきった尿道は潮を噴き、大き過ぎる乳房の先端に突き出た乳首も、天を突く陰核も、全てを痙攣させて絶頂を男に伝えている。

 朦朧とした意識の中であっても、吐精を繰り返す度に終わらないアクメを示す潮吹きを披露し続ける。

 

 

「ほら、不知火。どうだ。オレだけがマーキングしたんじゃ悪いからな。お前もオレにしていいぞ」

 

「はへぇ……ん、ぐっ……ひぁ……くぅ……ひゃ、ひゃにを……?」

 

「兎に角、言う通りにしろ」

 

 

 不知火の手を掴んで雌穴へと誘う。そして、射精を続ける怒張によって押し広げられた女の象徴を不知火自身の手で更に開かせる。

 それで全てを察したのか、或いは限界であったのか、今し方まで牝潮を噴いていた尿道はブルルっと震わせた。

 

 

「はあぁぁ……アア、ァァ……おしっこ、キ、キモチイイぃ、……こ、虎太郎さんにひっかけ、マーキングしちゃってるぅ♡」

 

「ほら、イく時はどうするんだ?」

 

「イ、イってます……わ、私、虎太郎さんに、射精、して、もらいながら、オシッコ、……う、嬉ション、おもらしアクメ、キメてますぅ♡」

 

 

 不知火ははしたない勢いで尿を排泄しながら、私の男と主張するように遠慮なく湯気が立つ小水を虎太郎の腹や股間にぶちまけた。

 若い男の女となり、失禁の羞恥で顔を赤く染めいたが、情けなく媚びたアクメ笑みは女の幸せを噛み締めているも同然だった。

 

 完全に射精を終えて虎太郎が硬さを保ったままの一物を引き抜くと、支えを失った不知火はズルズルと壁を滑り、性行の証である白濁と黄の水溜りの上に崩れ落ちる。

 意識は朦朧とし身体は絶頂の余韻でまともに動かない。だが、己に快楽の坩堝を味合わせた剛直を差し出されると、お掃除フェラを開始する。

 丁寧に丁寧に、まるで礼でもするかのように本気汁と白濁液、黄金水を舐め落としていく。

 

 

「んじゅ、んん~~~~~~~~、ちゅぽん♪」

 

 

 尿道の中に残ったザーメンまで吸い出すと音を立ててチンポを口から引き抜く。

 衰えなど感じさせない怒張を前にして、生唾と共に吸い出した精液を飲み干すと、不知火は不意に強い意志の光を瞳に宿す。

 

 

「私は、どうなっても構わないわ。……けど、ゆきかぜは、凜子ちゃんは、ちゃんと、助けてちょうだいね……?」

 

「当たり前だろ、不知火さん。こんな地の底まで来たんだ、手ぶらで帰れるかよ。アンタも含めて連れ帰るさ」

 

 

 肩で息をしながらも母親としての顔を見せた不知火を安心させるように、虎太郎はらしくもない自信に満ち溢れた声で答える。

 

 

「それはそれとして、まだ時間に余裕はあるな。どうする、不知火(・・・)? 今度はベッドの上で夫婦同士でしかしちゃいけないようなセックス、してみるか?」

 

「もう…………虎太郎さん(・・・・・)の、好きにして♡」

 

 

 対魔忍として、母親として、女として。

 それぞれの表情を使い分けることを覚えたのか、不知火は嫣然とした微笑みを浮かべて、まだまだ足りないと言外に語る虎太郎に応えた。

 

 それから暫らくして、ベッドの軋む音と男に組み伏せられて悦びの鳴き声を上げる女の嬌声が薄暗い地下室に響き渡るのだった。

 

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