※この作品はR-18です。

色々なIF集 R-18ばーじょん   作:超人類DX

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前回の続き……かな?


その後の平和

 

 そんな訳で、時には過激な出来事もあるけど俺達4人はそれなりな平和に生きている。

 美人な人妻さんと可愛いお子さんと金髪のロリっ娘ちゃんと只の人間って奇妙な組み合わせ。

 何かこれからも色んなことがありそうな気がしてならないけど、多分俺はそれでも手離さない。

 

 理由は単純、俺は優しくしてくれた人に対しての好意が即レベルでカンストしちゃう……つまりちょろい性格をしてるからな。

 つまり分かりやすいのよ、俺って……。

 

 

「今日も今日とて元気に登校しましょーってね」

 

 

 何度と言ってる気がするけど、俺は基本的に学生なので、例え謎現象で学級崩壊が起きて俺一人だけのクラスとなろうと通うのだ。

 理由は単純に働きたいから……なんだけど、俺って多分企業面接の時点で帰れ言われそうな気がしてならないんだよね。

 いや、それでも学校には通うけけどね。何てったって学生だもの。

 

 

「本日は球技大会とお聞きしましたが、一誠様は出られるのでしょうか?」

 

「いや出ませんよ、クラス対抗ですからね。

ほら、俺のクラスの人達は担任の先生含めて皆精神を病んで辞めたか不登校で参加人数が圧倒的に足りないんですよ」

 

「じゃあ眺めてるだけって事ッスか?」

 

「まー多分そうなるかな」

 

 

 自由を奪い返し、グレイフィアさんとミリキャスくんが冥界から家出してウチにやって来てからというもの、登下校の度にこうして学園まで一緒に来てくれており、今日も真ん中を歩く俺を囲う様に、グレイフィアさんとミリキャスくんとミッテルトちゃんが其々歩きながら適当な話題での会話を繰り広げる。

 

 

「お兄ちゃんは出たくないの?」

 

「んーん、ぜーんぜん? ほら、ミリキャスくんなら解るだろうけど、俺は運動が苦手通り越してヤバイからさ。

どんな球技に出ても体力が切れて呼吸困難になっちゃうもの」

 

 

 前までなら考えなれない『他人との他愛の無い会話』。

 それがミッテルトちゃんから始まり、今やグレイフィアさんとミリキャスくんも加わって計4人。

 ぶっちゃけ正直、真面目に俺を気色悪がらずに会話をしてくれる人が居るというのは幸せな事だ。

 

 

「俺は基本的に応援だね。

だからそうだなぁ、疲れもしないだろうし今日学校終わったら何かして遊ぼうよ?」

 

「ホント!? それじゃあね……」

 

 

 ある種、短いながらも俺よりハードな人生だったミリキャスくんが俺のお誘いに喜んでくれる。

 これがもし他の人だったら無言で石を投げ付けてくるか罵倒してくるかで終わることを考えると、本当にこの子は俺にとっては良い子だ。

 何故あの魔王さんが嫌ってるのかわかりゃしない――――いや、曰く大嫌いなグレイフィアさんとの子だからこそ憎いのか? 安心院なじみに相手にされないあの魔王さんは。

 ま、それならそれで構いやしない。

 お陰で俺がこの幸福を貰えてるんだしね……出来れば永遠に安心院なじみの尻でも追っ掛けてろと言いたい。

 年相応に喜んでいる顔をするミリキャスくんを見て密かにそう思っていると、隣を歩いていたグレイフィアさんが小さくお礼を言ってきた。

 

 

「ありがとうございます。一誠様の元へ来てからのミリキャスは感情を隠さなくなって、親としても嬉しい限りです」

 

「俺は特に何もしてないっすけどねー。

寧ろ俺の性質で『害になる』って言うなら分かりますが……」

 

「私にとってはあの家に居る方が害になるとしか思いません。

それに性質なら私を見て理解してるので、寧ろ一誠様のお側は私が感じてるのと同様に『安心』出来るのですよ」

 

「要するに向かい合う覚悟があるか無いかって事ッス。

ま、ウチとしては正直これ以上変な女が増えるのはご勘弁願いたいッスけどー」

 

「ふーん……わかったけど、ミッテルトちゃんが言うような事は無いと思うぜ。

でなけりゃミッテルトちゃんと知り合う前までに友達100人出来てる筈だもんね」

 

 

 そう……俺と向かい合う特異な人はこの世界にほぼ居ないと思う。

 だって俺って存在は、兄貴が現れた事が原因で偶発的に生まれた人間としては最初で最後の過負荷(マイナス)らしいし、俺と似た性質が居たとしてもそれは人ならざる者――つまりミッテルトちゃん達みたいな人達だけだ。

 だから人間で俺と向かい合おうとするなんてのは皆無……俺はそう思っている。

 それは良いんだけどね……もう向かい合ってくれた人が目の前に3人も居てくれてるし……ああ、ライザーさん達もかな? フフ……。

 

 

「よっし、今日も張り切りますか!」

 

 

 そんなこんなで学校前まで到着し、気合いを入れ直す。

 ま……今日は合法サボりdayだし、疲れもしないんだけどね。

 

 

「行ってらっしゃいませ一誠様。

お帰りは何時もの時間で宜しいですね?」

 

「うーっす、何か毎回すいませんね……はは」

 

「いえ、好きでやってる事ですから……」

 

 

 護衛……だったか? そんな理由で毎朝俺の登校に付き合ってくれてる3人には感謝しか無い。

 頭を下げるグレイフィアさんや、手を振って送り出してくれるミッテルトちゃんとミリキャスくんにぽつりと思いながら、今日も始まる学園の門を潜り…………。

 

 

「いい加減慣れて欲しいもんだね皆も」

 

『…………』

 

 

 腫れ物を見るような視線を一斉に向けてくる学園の『仲間』にニコリと微笑むのだった。

 

 

 

 

 生徒達にとっての兵藤一誠は、ある意味この学園の『有名人』よりも有名だと思っていた。

 人当たりが良く、人気者の一角である兵藤誠八とそっくりな顔立ちの双子の弟とは思えない薄気味悪さがある意味存在感を放つという皮肉。

 笑ってるだけな筈なのに、どうしてもその笑顔を直視するだけで吐き気すら覚えるという感覚は、1年時と2年時の間に二クラス分の生徒が精神を病んで学園を去っていくのを見れば間違いは無いのだろう。

 故に誰も彼と関わろうとはしない……というより関わりたくないといった方が正解か。

 

 

「なんでぇ、毎回毎回人を化け物を見るような目で見ちゃってさ。

まあ、人間だし仕方ないか。

自分の中にある『常識』に当てはまらない者を排除するという気持ちは人間の真理だし、でなければ世界でやってる戦争はとっくに終わってるもんね。

だから仕方の無いことだし『キミ達はまったく悪くないよ。』フフ……」

 

 

 ある意味で誠八以上に無垢な笑顔を浮かべながら歩く姿を目にした生徒達は、一斉に……そして露骨なまでの距離を一誠から取り、顔を青ざめさせる。

 挙動から何から全てがおぞましく思う……。

 それはイレギュラーという存在から本来在るべきだった立場を奪われてしまった者が代わりに開けてしまったパンドラの箱だというのを生徒達が知るわけも無く、ただただ歩く姿の彼の周りにまとわり付く『黒いドロドロとした何か』を幻視しながら、ひたすらに『早く消えてくれ』と願うばかりだ。

 最近は3人の存在が一誠と共に学園の門の前まで来るようになってから、これまで以上に寒気と吐き気を覚える感覚がより強くなった気がすると生徒全員は思っており、存在するだけで害となる青年が消えてくれるのをある生徒は口を抑えながら、ある生徒はカタカタと震えながら願うのだった。

 

 

「~♪」

 

 

 嫌われを、理不尽を、巻き込まれを、疎ましさを、嫉妬を、憎悪を、嫌悪を――己という存在を認識したあの日から全てをヘラヘラ笑って受け入れる様になってしまった一誠にとって、これ等の視線は慣れ切り過ぎて逆に向けられないと違和感を覚えるレベル。

 だから思わないし、身に掛かる災厄も受け入れてから逃げていく。

 嫌な現実から理想の幻想へと逃げる……彼のマイナスとも言われるスキルは、どんな物事からも逃げ続けるという効力がある。

 凶悪な力からも、 死を迎えるという現実からも逃げられる……ある意味で完璧でありながら最悪な力。

 そんな力も、一誠本人からすれば出来上がってしまった人格における副産物でしかない。

 重宝はするし制御なんてする気もないが、逃げ癖こそが彼のアイデンティティー。

 恐らく神ですら見捨てるだろうその人格。

 

 

「おやおや、ごきげんよう『お兄ちゃん。』と紅髪先輩。

今日も変わらず人気者なこって」

 

 

 それがイレギュラーと共に『赤龍帝』では無くなった兵藤一誠という青年だった。

 そして、その一誠はイレギュラーであり『赤龍帝』となっており、本来の一誠が在るべきだったその場所へと留まるのを、突然現れて全て持っていった『双子の兄』である兵藤誠八とその仲間達を前にして、己が行った所業を一切忘れてるかの様なヘラヘラした笑みを見せていた。

 イレギュラーとなってる双子の兄に全ての居場所を剥奪され、代わりに獲られた居場所を守るためにとある出来事で全てを台無しにしてやったというのに、当の本人である一誠に罪悪感というものは何も無い。

 寧ろ、やっと獲ることが出来た友達を利用してくれたコイツ等の自業自得と思っているぐらいだった。

 末端の悪平等であるミッテルトとの居場所を守りきる為にわざと整合し、そして裏切って仕返しをし、更には仕返し相手の身内の妻とその子供も持って帰った……少なくともグレイフィアとミリキャスの事情を知らずに、ただただ裏切られた誠八と……その主であるリアス・グレモリーには思うことしか出来ず、例えこの前事情を説明されても納得するには難しい話だった。

 

 

「なんだい? 俺は教室に早く行かないといけないんだけどなー?」

 

「………。別に邪魔をするつもりは無い。

無いんだが……聞かせてくれ、グレイフィアさんとミリキャス君は……」

 

 

 俺は俺、この人達はこの人達。

 最早関わる理由の全てを消した一誠にとっての、隠しきれてない憎しみに満ちた表情を浮かべる誠八の問い掛けに、一誠は罰の悪そうな表情で俯くリアスを一瞥しつつ、実に面倒そうな顔でヤレヤレと肩を竦め、首を横に振りながら口を開く。

 

 

「またその話? この前もしたのを忘れたのかい?

まったく……良い? 何度も言うけど二人は望んで来たのさ。

考えなよ、俺があの二人をどうこう出来る程強いように見えるかい? 逆に殺されちゃうってーの」

 

 

 いい加減納得してよねーもう。

 と半分小バカにするように口を3の形にしながら、一誠としては計4回目となる嘘偽り無い事実を話すと、誠八の顔はやはり歪んでいた。

 

 

「それは解ってる……! 解ってるが、二人は魔王様の――」

 

「だったら何? そもそもその魔王ってのが勝手に手離して要らないって言ったんだぜ?

全くもって酷い話だと『お兄ちゃん。』なら寧ろ怒るべき所だろう? 何でそんなに彼に肩入れしてるんだ? そもそもあの魔王って人から言われたんじゃないの? 『余計な真似をするな』って」

 

「ぐっ……」

 

 

 ねぇ、俺の言って事って間違ってる?

 そう首を傾けながら逆に聞き返された誠八は言葉に詰まってしまう。

 そう……確かに一誠が言った通り、魔王のサーゼクス・ルシファーはリアス達に罰則を与えた後同じような事を言ったのだ。

 

 

 『ああ、グレイフィアとミリキャスはグレモリー家から出て行ったよ。

理由? ああ、そっかリアスは知らないんだっけ、僕って実はグレイフィアが滅茶苦茶嫌いでね、そんなグレイフィアが人間の……ほらキミ達を出し抜いた兵藤一誠くんに惚れたんだってさ。

ともなれば僕としては咎める理由も何も無いし、父と母は後継者がどうとか言ってたけど後で黙らせて置けば問題が全く無い…………だから、本人達の好きにさせてあげるべきだと思うんだ。

だからキミ達に言っとくけど、一誠君等にもう余計な真似をして怒らせるような事はしないでね? それで僕が彼女に見限れるなんて事になったら、多分次は直接キミ達を殺してしまうかもしれないから、さ……』

 

 

 一誠がライザーと繋がりを持ち、そしてアッサリと裏切られてレーティング・ゲームに負けてしまった後、魔王でありリアスの兄であるサーゼクス・ルシファーに言われた誠八達はただただ驚いた。

 特にリアスは兄と義理姉の仲が実は完全に崩壊していたとその時初めて知らされてショックすら受けていたぐらいだった。

 慕っていた義理姉が、可愛かった甥が……と。

 

 

「そういう訳だから、仮に返せと言われても絶対返さないつもりだよ。

テメー都合であの二人を振り回すだなんて魔王だろうと偉かろうとやって良い訳じゃない。

だから絶対に返さないし、力づくで来るのであれば……ふふ」

 

「っ……」

 

 

 邪気が見えない笑顔でハッキリ言い切る一誠に、誠八は最早何も言えずに黙ってしまうのと同時に理解が出来なかった。

 仲がどうとかは分かったが、何故あの二人がコイツの所になのか……と。

 グレイフィアの本来の性質を見抜けずに居た誠八にとってはそれが分からずにいたのだが、リアスは一誠と共に歩くグレイフィアとミリキャスの姿をこの前偶然見てしまっていたので何と無く解っていた。

 だからこそ、リアスは敢えて問うのだ。

 

 

「……。グレイフィアとミリキャスの様子はどうなの?」

 

 

 本当は見て知っている。

 一誠と共に歩いてるの時の様子は見てしまったので解っている。

 予想が正しければあの二人は――

 

 

「さて? 直接聞いた事なんてありませんから何ともね。

ただ……フッ……俺はハッキリ言って今の現状に幸福を感じてますよ」

 

「……………」

 

 

 ニッとニヒルな笑みをリアスに見せながらハッキリと宣う一誠にリアスはやはりと確信した。

 グレイフィアもミリキャスも……そしてあのミッテルトも、この欠陥人間と一緒に居る方がハッキリと幸せを感じてる様に見えている事に。

 年相応な笑顔を見せるミリキャスや、殆ど笑うことが無かったグレイフィアも同じようにそうであったように……。

 

 

(そう……結局アナタを利用しようとしたあの日から全てが壊れた……。

忠告すら聞かず無視した結果がこの様ね……)

 

 

 俺を仲間にしても良いことなんて無い。

 まさにその言葉の通りだと痛感させられたリアスはら既に陥ってしまった現状に心の柱が折られてしまった。

 神器とは違う力を持つからと安直に考えるべきでは無かったと……。

 

 

「そう考えると、一時的にもアンタ等のお仲間ごっこをして良かったと思ってますよ。

お陰でハッキリとアンタ等より幸せになれましたし? いやぁ、本当『ありがとうございます。』」

 

 

 言った通り、放っておくべきだったんだと……。

 しかしそれも全てが後の祭りだ。

 壊れてしまった出来事は決して元には戻らない。

 

 

「それじゃあ俺はこの辺で失礼しますよ

ま、お互いがんばりましょうや赤龍帝の『お兄ちゃん。』……ふくく」

 

「…………」

 

 

 戻しようも無い。

 全ては各々が望んで進んだ結果なのだから。

 例えどんなトリックを使ったのかは知らないが、人間へと戻った彼の寿命が尽きて居なくなったとしても、失ったモノはもう取り戻せないのだ。

 鼻歌を唄いながら歩く一誠の背中を見つめながら、リアスは思い知らされた現実に折れてしまいそうになるのだった。

 

 

 

 

 

 

オマケ

マイナス一誠と…………

 

 

 リアスの他にも悪魔が居る…………と聞かされた所で一誠は別段思うところも無い。

 通ってる学園の生徒会役員全員が悪魔とその眷属であろうと無かろうと、言いたいことがあれば言うし、意味深にジロジロ見られれば多少の文句も言う。

 例えそう……

 

 

「なんすか?」

 

 

 てくてくと一人寂しく歩く一誠の前に偶然現れた、いつぞやも会った記憶がある眼鏡っ娘とかがそれに当てはまる。

 

 

「いえ……別に」

 

 

 廊下を歩いてた一誠。

 向こう側から眷属を連れながら広がって歩く眼鏡っ娘と以下眷属達。

 例え話、今から殺し合いをするにしてもどちらが有利かだなんて一目瞭然。

 しかしながら双方にそんな気など当然無く、こうして鉢合わせしたのも本当に偶然なのだ。

 故に、別にと言いつつジロジロと自分の顔を見てくる眼鏡っ娘……つまりソーナ・シトリー(一誠は表の名前もソーナという本名も知らない)に対して、ほんの少しだけうざったそうな顔をしながらこう言った。

 

 

「そっすか、なら退(の)いて貰えます?

生徒会の人達が廊下を横並びで歩くのってどうかと思いますよ。

あ、風紀委員の人達の贔屓でオーケーでも貰ってるのなら逆にすいませんでしたと土下座して謝りますけど?」

 

 

 へらへらっとした顔で一切の遠慮なしに言い切った一誠に、眼鏡っ娘ソーナ――では無く彼女の眷属達が顔を顰めた。

 というのも、一誠の表の評判もさることながら、この前のリアス達とライザー達によるレーティングゲームの際に見せた態度がいくらなんでもアレだったからというのもあるし、今も一誠が見せる神経を鑢で逆撫でするような態度が余計に眷属達の顔を顰めさせる材料となっており、その中の一人である兵士の匙元士郎からすれば、殴り飛ばしたくなる顔でもあった。

 

 

「な、何だとテメェ!」

 

 

 確かに複数の人数で廊下を広がって歩くのは良くない事は分かってたし落ち度がある事も理解した。

 だけど、そんな小バカにするような態度で、しかもありもしない事まで引き合いに出してぺらぺらと言われたら誰だって頭に来る。

 だから匙は引き続き半笑いの顔をしていた一誠の胸ぐらに手を伸ばして締め上げようとするが――

 

 

「匙っ!!」

 

 

 寸前の所で自分の主である眼鏡っ娘ソーナの一喝するような声で、ビクリと身を震わせながら伸ばしていた手を止めて引っ込むことになるのと同時に、ハッと何かを思い出してジョジョに顔色を悪くさせた。

 というのも、この一誠という男。

 何のトリックを使ったかは知らないが、サーゼクス・ルシファーにある意味で守られているポジションにあるのだ。

 

 なので、うっかり此処で大怪我なんて負わせた日には―――それを思い出した匙は悔しげな表情で一誠を睨む。

 まあ実際は一誠――じゃなくてその後ろに存在する匙達には知りようも無い人外――安心院なじみに嫌われたくないからというサーゼクスの個人的な理由だからな訳だが、それが今此処で絶大な効力を発揮したことに一誠は自覚してない。

 

 

「すいませんでした。以後気を付けますので……」

 

「いえいえ、何だか一介の生徒が偉そうにして申し訳無いッスね。んじゃあこれにて……」

 

 

 そんな匙に初めから興味も無さげな一誠はといえば、ぺこりと頭を下げるソーナに対して、やはりヘラヘラしながら首を横に振っている。

 人畜無害と主張する貼り付けた笑みに心の無さを感じるとはいえ、最悪の事態は何とか免れたとソーナは内心ホッとする横で、そう思うなら最初から言ってんじゃねーよと匙は敵意を剥き出しにしている。

 

 

「あ、そうだ……最後に一つだけ――」

 

 

 どうであれ穏便に済んだ――

 敵意を剥き出しにする匙以外の面子が胸を撫で下ろそうとしたその時だった。

 歩き出そうと少し足をあげていた一誠がピタリと立ち止まるや否や、ピクリと身を強ばらせたソーナに対してニコニコと胡散臭い笑顔を見せた一誠が指を差しながらこう口を開いた。

 

 

「人にジロジロ見られるのが好きじゃない人だって居るだろうし、意味もなく見るのは止めて貰えませんかねぇ――――

 

 

 

 

「いい加減この前からうぜーんだよバーカ」

 

 

 それまで浮かべていた胡散臭い笑顔をほんの一瞬だけ引っ込め、低い声で言い放つその顔は全くの無表情であった。

 

「あれっすか? お友達の悪魔さんを裏切った俺を集団でボコにしたいんですか? 別に良いですよ、やりたきゃ好きにしてくださいよ……ふふ」

 

 

 しかしそれも本当に一瞬だけであり、直ぐにまた何時ものヘラヘラした笑顔に戻すと、よせば良いのに余計な事をペラペラと話す。

 

 

「そうやって女子を傘にして俺が何もしないと思ってる?

容姿に自信があるからなにもされないと思った?

あははははは、甘ぇんだよ……。つまらなそうで一ミリたりとも何も思わない女共から鬱陶しい真似されたら、いくら俺でも『行動』するよ?」

 

「っ……」

 

「っ……の……!」

 

 

 たった一瞬だけだったものの、その一瞬から感じ取れた一誠の雰囲気は背中に氷柱を入れられたかのような寒気と吐き気をソーナも匙もその他の眷属も敏感に感じ取り、思わず身体を強張らせるも、そんな彼等を半ば無視するかの様にペチャクチャ話していた一誠は、最後にこう言った。

 

 

「ま、眼鏡似合ってる女の子にこれ以上は言いたくないんこの辺にします……。

というか少し調子乗りました、すいません。

どうにも眼鏡が似合う人相手だとテンションが上がってしまうもんで………『それじゃ』『またいつかとか』」

 

「え……?」

 

 

 にゃっはっはっ! と変な声で笑いながらソーナと眷属達の横を通り抜けた一誠がヒラヒラと手を振って去っていくのを、ソーナは若干気の抜けた顔で見送る。

 

 

「……眼鏡?」

 

 

 掛けていた眼鏡の縁を無意識に触れながら。




補足
上手いこと関わらなかったお陰で何とか被害は無かったシトリーさんたちなのでした。
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