「あの黒い機体は何なんだ一体⁉︎」
帰ってきたレイゼルとヒルダ、アーニャは第三者に介入してきた二つの黒い機体に気分を悪くしている。ようやく絶対兵器を手に入れると思っていたのに、訳のわからないところで邪魔が入ってきたからだ。
「…私と同じナイトメアフレーム」
「とりあえず、あの機体のことについて詳しく話す必要があるな…」
アーニャとマリーカ、キューエルがナイトメアフレームのことについてヒルダとレイゼルに説明していた。
まず、二機の中にいた一つ目のランスロットとはブリタニアの国にある組織、特派が作った第七世代ナイトメアフレーム。
このナイトメアについてはキューエルやマリーカ、アーニャの3人ともが知っている。ユグドラシルドライブというナイトメアフレームの動力源、その核であるコアルミナスの使用量が多い。機体にはサザーランドなどについているスラッシュ・ハーケンを四つつけ、メーサバイ・レージングソード(MVS)という高周波振動で相手を切り裂く。ライフルであるヴァリス(可変弾薬反発衝撃砲)を使って撃ち落とすこともある。
しかし、その機体は空を飛んでいるのフロートも、超遠距離攻撃を可能にするハドロン砲を撃つためのハドロンブラスターを装備している。
ブレイズルミナスが機能しているために襲ってきたのはランスロットの強化版、ランスロット・コンクエスターというものである。
もう一つ出てきたトリスタンとはガンダムooのキュリオスなどの2形態を持ちわせている。フォートレスモードという滑空状態とナイトメアに変形するナイトメアモードである。
その二つの機体が元々乗っていたのはアーニャが一番良く知っていた人物。
枢木スザクと、ジノ・ヴァインベルグ。この二人はかつてアーニャと共にナイトオブラウンズに加わって戦場に出ていた。
二機とも機体が黒く、撤退する場所が海の中に逃げるという方法だった。
もしも本物が乗っているのならばアーニャの存在に二人が反応し、足を止めている。
しかし、アーニャの存在を気にせずに攻撃を止めなかった。つまり枢木スザクとジノの二人がいるということはありえない。
「クルエルという奴の仕業だろうな…敵が海から出てきて、その海にまた撤退するということは」
キューエルは前のことを思い出して言う。過去に海から黒いドラゴンが出てきており、それと同じように二機が出現した。
ソレイシィ兄妹はクルエルが差し向けだものだと答えた。キューエルやマリーカを生き返らせてかつ海からドラゴン達を呼び寄せれるのなら二機を作ることは造作もない。
「そうだとしても何が目的で」
「ヴィルキスが目的?それとも私達?」
アーニャは首をかしげる。
クルエルの目的の一つとして蘇生させたソレイシィ兄妹を殺すこともあるが、大部分の方は分からない。
「どちらにしても奴らの存在は厄介だな。こいつについても今後の対策は…ソレイシィの二人にも頑張ってもらうよ」
「そろそろ実戦ですねお兄様…」
「まぁ、やるしかないな」
もしもクルエルが黒い機体やドラゴンを操り、ヴィルキスを奪ってくるのなら戦闘は免れない。
アーニャとヒルダ、レイゼルだけでは状況を切り開けない。ソレイシィの二人も力を合わせて立ち向かわなければヴィルキスを奪うことはできなかった。
*****
次の日、レヴェンがアンジュとヴィルキスを検知しようとしているものの中々見つからない。探している最中にナオミがパラメイルに乗ってアンジュを探しているところを黒いドラゴンに囲まれていた。
銃を構えて撃ち続けているものの、ドラゴンの勢いは止まらない。
『ナオミという少女…なんだか危険そうですね。黒いドラゴンと戦ってますよ』
ナオミはドラゴンとの戦闘にかなり苦戦していた。パラメイル一機だけでは全く太刀打ちできない。
「まぁ…助けるしかないだろ。キューエル!マリーカ!用意はいいな!」
二人はナイトメアフレームではなくレイゼル達から提供した機体を使って援護する。
「これが実際の空を飛びながらの戦闘っ…⁉︎」
「私の方は何度か経験してますので! 」
キューエルは指揮官用のブレイブを操作してドラゴンの群れに突っ込み、マリーカは後方からキューエルを守る。
「きゃぁぁっ⁉︎」
大型ドラゴンがナオミを捕まえようとするが、ブレイブから放たれるトライパニッシャーでドラゴンの頭が撃ち貫かれる。
囲って襲ってくる小型ドラゴンもマリーカが支えているおかげで前線に出ているキューエルは戦いやすい。
初めての空での実戦は、キューエルにとって経験になった。
「よし…やれる、やれるぞ!この機体なら‼︎」
この後、キューエルとマリーカによる無双が始まり黒いドラゴンは一匹残らず海の中に落ちていった。ナオミは見知らぬ二機に驚き、誰なのかを尋ねる。
海から出てきたドラゴンは、海に沈んでゆく。
「君がナオミだな」
「なんで私の名前を⁉︎」
「詳しい話はこちらに来てからしよう。大人しく投降してほしい」
ステレスで隠していたリィアンを展開して、見えるようにする。ナオミはパラメイルをリィアン内に置き、警戒しながら入っていった。
*****
ナオミはリィアン内に入り、リィアンの中にはレイゼル達5人が待っていた。
「ドラゴンから助けてくれてありがとう…でも何者なの?」
「俺は知ってるだろ?アルゼナルで賞金首、前にも会ったかな」
それを聞いたナオミは敵だと察知して銃を抜いた。レイゼル達に銃口を向ける。
「アンジュを探してどうする気なの⁉︎」
レイゼル達にむかって、銃を構えて撃とうとしている。前にレイゼルはナオミを撃ち落とそうとしていたためにアルゼナルと彼らはまだ敵対のまま。しかも、レイゼル達がアンジュを捕らえてよからぬことを企んでいる思っているんじゃないかと。
「アンジュは絶対に渡さない!」
「貴様っ!助けてもらっておいて!」
キューエルとマリーカはナオミの行動を見て、持っていた拳銃を構えてナオミを射殺しようとする。しかし、レイゼルはナオミに敵意を向けられても冷静に対処していた。
「待て、俺達はあんたと戦う気はない。それにあんたのパラメイルはいつ壊れてもおかしくない。俺を倒したところで、再度アンジュの捜索中にドラゴンに襲われれば一貫の終わりだからな」
「…」
さっきのドラゴン戦でパラメイルが酷く損壊している。
ジャスミンからもらったアンジュの探知機は生きているもののナオミの乗っているパラメイルはこれ以上戦えない。アルゼナルからの通信機器も壊れており、連絡が取れなくなっている。
また黒いドラゴンや機体に襲われてしまえば、墜落は免れない。
レイゼル達に直してもらわない限り、パラメイルの損害はかなり酷かった。
「…何者なんですか。さっきの二機といいあの黒いドラゴンといい」
「とにかくアンジュの方はこちらに任せておけ。目的は同じなんだろ?そちらの質問は後で答える。こちらは敵意はない、頼むから武器をしまってくれ。でないと碌に会話することができん」
ナオミはレイゼルの言う通りに銃をしまい、大人しくしてくれたことでキューエルとマリーカもまた持っていた銃を収めた。
「状況認識と物分りが良くて助かった」
「拷問するわけじゃないんですね?」
「俺たちがそこまで極悪非道な連中に見えるか?ついてこい」
レイゼルはナオミをさらに奥まで案内して、ナオミをソファに座らせる。レイゼル達はみんな椅子に座っていた。
「まず、どこから話せばいいのか?」
「貴方達が何者なのか、どうしてアルゼナルを襲うのか、なんでアンジュとヴィルキスを奪おうとするのか。あの黒い機体とドラゴンはなんなのか…」
「黒い連中の方は実というとよくわからないんだ。すまない。それ以外なら全て話せるが…ここから先は話が長くなるぞ」
ナオミは構わないと頷いて、レイゼルの話をすることとなった。レイゼルは最初に自分達兄妹の故郷のことを話した。
エルデガルド連合でヒルダと母親が静かに暮らし、レイゼルは義理兄として母親に育てられてもらっていた。しかし、ヒルダがノーマだとバレてしまい兄妹はレヴェンのデバイスの力を借りて逃亡中の身となっていた。兄のレイゼルがヒルダを助けて、船で怯えながら暮らしていたわけではない。
対抗するための準備を成長していくにつれて用意していた。
「アルゼナルが無事だと完全に思っていた。最悪そこにヒルダを預けて守らせて貰えば、妹は安全な場所にいられる。アルゼナルに預ければ、俺は安心してこの作った世界を破壊出来るからな。
でも、全部…馬鹿げたことだった。
そう思ってしまったきっかけは、ヒルダが俺の警告無視して外に出てたんだ。
俺が外に出て支給する必要があるものを取りに行ってたからな…ヒルダにとって自分が重荷になってるんじゃないかって責めていた。あの時はまだお互い幼かったし、冷静な判断もできなかった。
これ以上俺に負担をかかせないためにヒルダは勝手外に出たんだ。当然捕まってしまい…一度はアルゼナルに送られてしまった。
俺は是が非でもヒルダを助けるためにアルヴァアロンに乗った。アルゼナルのことを調べるまでは、安全だと思っていた俺が馬鹿だった。送られてきたノーマを無理矢理ドラゴンに戦わせるってことを知らなかったんだ。
送られてしまったヒルダはジルに尋問され、どんなに酷く言われても俺のことを売らないで黙ってくれていた。
身体に傷をいくら負っても…そしたら今度は性的な拷問をした。尻の穴や処女を奪うだの…それを見た俺はもうその女を殺すつもりで…妹を助けるためにジルを殴り飛ばし、邪魔をするノーマ達を半殺しにし、パラメイルや兵器を半分使えないようにしてからアルゼナルを出て行った。
これで俺達が何者なのか言っておいたぞ。
もう俺はこいつら以外は何も信じれなかったんだ。あぁ、お前の場合は言動次第だけどな…」
ナオミは考えるうちにまた新たに不自然な点があった。一番肝心なところ、レイゼルがアルヴァアロンを操作していたのならばその機体を使ってヒルダの復讐は可能だったこと。
でもアルゼナルは存在している。
どうしてやらなかったのか。
「ち、ちょっと待って!もしもジル総司令が貴方達を怒らせるようなことをしたのならその気になればアルゼナルを壊すことだって…」
「あぁ、可能だったよ。引き金を引けばアルゼナルは藻屑となっていただろうな。
けど、撃たなかった。
引き金を引けないんじゃない…引けなかった。
理由は、ヒルダと同じ年頃の幼年部が外に出て手が震えたんだ。止めてと行ってくるあの子達に俺は復讐で子供の命を無残に奪い去ることに恐怖を感じて…心の中にある情が…邪魔をしたんだよ」
(あぁ、この人は…とても優しい人なんだ)
レイゼル達が何者なのか、人間だけでなくノーマにも迫害されている逃亡者でもあるけれどちゃんと世界と戦っている。
彼には迫害された怒りと憎しみはあるが、子供までに復讐するほどの怒りは持ち合わせてない。
「こうしてアルゼナルと敵対関係になり…賞金首にさせられて。俺達は全世界を敵にまわしてしまったというわけだ。マナも、ノーマも敵とみなされて俺達を撃ってくる。ヒルダをアルゼナルから救い出すため。それによって俺が賞金首にかけられた、人間からもノーマからも危険人物として迫害されたってこと」
アルゼナル内では賞金首にかけられていた黄金の機体と操縦士はアルゼナルに不法侵入して基地内を破壊し尽くし、仲間を殺した恐ろしい大悪党と噂が出ている。
(そういう、ことだったんだ…)
「だから、ナオミ。俺がアルゼナルを壊してたら生きてなかったってことになるな。いや、アンジュ以外の全中隊が死ぬことになるだろな」
「アンジュ…そうだ!ヴィルキスを奪おうとするのはなんでなの?」
もう一つの質問、レイゼル達がドラゴンとの戦闘中にヴィルキスを奪おうとしたこと。レイゼル達の勢力なら人間に対抗できることもある。
「ジル総司令は神を殺すヴィルキスを絶対兵器と言っていた。
だから彼女がこちらの味方になって、この世界をすぐに終わらし…ヒルダと幸せな暮らしをしたいからだ」
(そうか、つまりレイゼルはノーマである妹のヒルダが幸せに暮らせるために)
「支配者を潰せば、アルゼナルを潰す必要はないだろう?
そりゃあ支配者を潰したとしてもそっちが今後も俺達を襲ってくるなら返り討ちにして潰すしかないけどさ」
ヴィルキスを奪う理由は絶対兵器と共にこの世界を破壊して、差別を終わらせること。
ナオミは最後にレイゼルに質問した。
「あ、あの…最後に一つ。レイゼル、貴方はなんのために戦ってるの?」
「この力も、身体も、心も、俺の妹のためだ。世界がヒルダを否定するなら俺は世界を敵に回す。それが自分とヒルダのためであり…幸せの為だ」
(やっぱりか、この人…妹思いなんだね…たとえ妹がノーマでも愛してるんだ。お兄さんかぁ…)
レイゼルはそう言って部屋に戻っていく。すべての話を聞いていたナオミは、レイゼルの背中がとても大きく感じた。