ヒルダと長時間の間に部屋で一緒にいることになった後、性行為を終えて服を着ようとしている。
「その…満足だったか?」
「うん、兄貴の…今までで本当に凄かったよ」
あれだけの性行為をしてもレイゼルは元気で、ヒルダは久しぶりに性交したお陰で肌がキラキラと光っている。
彼女は、お腹をさすっていた。
「ヒルダも、相当溜め込んでたそうだし…妹のあんな姿が見れて良かったよ」
「なっ…⁉︎ば、馬鹿…!」
歩いている最中に恥ずかしがっているヒルダがレイゼルに八つ当たりするが、それを快く受けている。強く叩いているわけじゃないから、わざとなのがすぐに分かる。
『マスター、ちょっと話があります。
よろしいですか?』
「分かった…今ここでか?」
『はい、要件を三つほど』
レヴェンは要件を話していく。話を聞くようレイゼルはヒルダの八つ当たりを止めるように手で抑えつつ、彼女はちゃんと言うことを聞いて素直に止めた。
『まず部屋の鍵の確認、壁を防音にさせました。子供が興味本位で見たり聞こえたら大変なことになるので』
「は、配慮ありがとう…」
『あの子達にはまだ早すぎますし、教育に悪いですからね。ヒルダの妹さんはもう手遅れですが…』
性行為を見られたり、聞かれたりすることを防いだ。確かに幼い子供達に生々しいものを見せられたら、エルシャになんと言われるかレイゼルには察しがつく。
「なんか震えてるけど、大丈夫?」
「あぁ…いや、なんでもない」
(防音にしてくれて助かった…)
エルシャのことを知らないヒルダはナオミ時とは違い、好奇心慢性である他の子供達にこんなところ見られたら見られたで恥ずかしがるが、レイゼルはその後エルシャの怖い笑みで拳をポキポキと鳴らしながら迫ってくることにゾッとしている。
(ナオミには、見られていたけどな)
『次に、出て行った時にエンブリヲの生体反応が途絶えたことです』
「…?ちょっと待てよ。エンブリヲって俺のザ・ワールドで貫いても蘇っただろ」
『確かに、私もそうも思ってました。
ですが…蘇るのであればたったの数秒程度で早々に復活したはずです。なのに、数分かかっても復活する様子がありません。倒されたという罠なのか、或いはエンブリヲ以上の存在が消したのか…』
エンブリヲが消されたという知らせを聞いても、いまいちピンとこない。いくら殺しても復活し、数分かかったところで復活していなかったとしても、レヴェンの言う通りに彼自身がわざとやったという可能性もある。
『最後に、アウローラがやってきます。
アンジュ達も一緒です』
「アンジュも⁉︎無事だったのか!」
アウローラは徐々に海を潜水し、レヴェンがわかるように音波で信号を発している。そもそもアンジュとタスクがあの防衛とエンブリヲの魔の手から逃げ切れたことに驚いた。
行方不明になっていた彼らが生きていたことに喜ぶ。
『以上です。久しぶりに帰ってきたのですから、みんなに顔を会わせるようにしてくださいね』
「あぁ…そうだな」
プトレマイオスの船内は、エルシャごと子供達を連れて入ったことで大団円になっている。もう椅子が全然足りなくて、床に座るほどだった。
「エルシャママ〜」
「あらあら、みんな元気ね」
子供達の病気は完治しており、ご飯を食べた後も船内を元気よく走り回っている。今ある食糧は、ひとまず全員で一週間分を保つことはできる。足りなければ、レイゼルのゴールドエクスペリエンスで食物を用意すればいい。
「おはよう、子供達も元気そうで何よりだ」
(色々あったけど…やっぱり俺の判断は、間違いじゃなかった)
レイゼルはエンブリヲの本性を見て、エルシャと子供達と共に脱出して良かったと心の底から思っている。
「アウローラと早く合流してから、決戦に行く。子供達の方もそちらに引き渡す」
レイゼル達と一緒にいるよりは、アウローラには顔見知りや子供達とずっと暮らしていたノーマ達の方が良い。
しかし、
「パパーっ…」
「ごめんね。合流したら…子供達を巻き込むわけにはいかないからさ。
それまでは辛抱しててくれないか?」
子供達がレイゼルに集まっていく。ミスルギ皇国に捕らえられている間、エルシャと一緒に彼女らの面倒を見つつ信頼を得ていた。
「ふーん、あっちじゃ子供に人気だったんだ」
「まぁ…俺達の母親と…それに、ライラもいたからな」
性欲で我慢出来なかったヒルダは無理矢理ベッドに入って以降、ライラに会ってどんな反応をするかまだわからない。
ちょうどその話をした時に、
「あのっ…レイゼル兄さ…つっ…!」
[ノーマ、うわぁぁぁっ‼︎ノーマぁぁっ‼︎]
ライラは、レイゼルが部屋から出て来たが、その隣にはかつてノーマだと恐れていたヒルダがいる。
前に、故郷へ帰ったヒルダにあんな台詞を言ったことを思い出し、今度は姉になるはずだったヒルダを恐れる。母親にも拒絶され、今度は兄がキレた事をちゃんと覚えていた。
レイゼルに駆け寄るライラの足が止まり、声が出ずにどんな顔をすればいいか分からない。
「あの…あ、わたし、えっと…ご、ごめんなさい」
縮みこんで、段々と声が小さくなっていく。
兄が好きだった姉から、エンブリヲのせいで弱り切った心のままの兄を奪い、畜生の妹として見られるのではないかと。レイゼルからはちゃんと許してくれるといったが、ヒルダ本人がそれを言わなければ意味が無い。
「まぁ、バカ兄貴には色々聞いたよ」
その娘が一体何をしたのか。
弱々しい姿で兄を拐かし、姉(ヒルダ)が大事にしてた人を妹(ライラ)が一時的に奪いとっていたことも。
「その、本当にごめんな、さいっ…」
何度も何度も謝り続ける。
エンブリヲが用意し、彼の娯楽として弄ばれたとしてもヒルダ本人は冷静になってライラと話す。
「…私の代わりに兄貴の手助けになったことだけは一応感謝する。マナも使えなくなって、立場だって逆転したもんな。
でも、今度私達を陥れるようなことをしたら…言わなくても分かってるよな。
私はまだ、許したわけじゃないから」
絶対に許さないと言わないだけ、一線超えてはいけないラインに足を踏み入れていないことが分かる。ヒルダも今までずっと我慢していた性欲を発散させたことで、感情的にならずに話せることができた。
ライラは許さなかった頃のレイゼルのように罵声を浴びせられるんじゃないかと思いつつ怖くなっていたが、そこまで怒っていなかった。
ライラは泣きそうになりながらに、震えたままの声で聞く。
「あ、あのっ…!レイゼル兄様とヒルダ姉様の二人と一緒にいても…良いんですか」
「…バカ兄貴は許したし、のけものにする事もない。ただし、一人だけ兄貴を独占するような事は無しだからな」
一緒にいていいとヒルダに言われたことに安堵し、また嬉し泣きしている。ヒルダの方は結局全部を許したわけじゃないが、少しだけ大人びた様に成長した。
*****
数分後、アウローラとプトレマイオスが合流する。今度は武器を構えず、レイゼル達もアウローラへと入っていく。モモカ、タスク、アンジュの三人は元気な様子で、待ってくれていた。
「あっ、エルシャだ!」
「それに幼年部の子供達まで…あいつら連れ戻せたのかよ⁉︎」
ヴィヴィアンとロザリーが、エルシャ達を見て驚いていた。レイゼル達のことはアルゼナルでは悪人扱いされ、その真実を隠されていた。前の頃ならノーマ側は殺そうと襲ってきたレイゼル達も敵として襲うが、ドラゴン側もそれは同じ。
結局悪い存在じゃなかったとはいえ、襲ってきたことに変わりはない。
「俺の方は戻ってくるのに色々あったけど、無事だったんだな?」
「私も脱走するまでは、ね」
ミスルギ皇国にいた時の頃とは違い、レイゼルの目に迷いはない。今までレイゼルの不在で元気を装ったヒルダも本調子を取り戻している。
だが、本来ノーマの指揮をしていた彼女がいない。
「…ジルは?」
「エンブリヲに懐柔されてたから…抜け出したところをロザリー達に見透かされて全部話したそうよ。
それと、私がガツンと言ってやったわ」
「なら、もう裏切る心配は無さそうだな」
もしもジルにまだノーマ達が指揮されているのなら、いくらアンジュが復帰したとしてもレイゼル達からしたらヒルダを陥れようとしたという前科持ちの相手を信用することなんてできなかった。
今のジルはエンブリヲと過去に一緒だったことがバレ、ノーマ達の指揮を降ろされ、ゾーラまたはアンジュがみんなを引っ張っている。
「貴方がレイゼルというお方ですか。
アンジュからは色々と聞かせてもらいました。
私はサラマンディーネ。
近衛中将を務めているものです。
側近のナーガと、カナメです」
ドラゴンが単に襲ってきたわけじゃなくて、目的があって襲撃したところまではわかっていた。しかし、彼女がドラゴンだったとはいえあまりにも人間と似ている。
彼女らもまたメイルライダーの格好と同じくらい、肌を隠す面積が少ない。
「…群をなしてたのは知っていたけれど流石に姫は考えもしなかっ、アダッ⁉︎」
「ジロジロみんなっ!」
「わ、悪かったって…」
レイゼルが彼女達三人に注目して見ているが、側にいるヒルダに小声でどつかれて嫉妬された。
『まぁあり得るでしょう。群で動いてる上に、機体でアルゼナルやミスルギ皇国を襲撃したんですよ。
とゆうより、実際子供達を守っていた貴方と相手してました』
アンジュがミスルギ皇国を脱走している時に彼女達が襲撃していた。その時のレイゼルはビーム攻撃から子供達を守る為、ずっとバリア防御に徹していたが、彼は守っている子供達と自分の事で精一杯だったから誰と戦っていたのか分からない。
「…ごめん、全然気づかなかった」
『いやいや、マスターぇ…』
「あら、そのペンダントは喋れるのですか?」
サラマンディーネは、レイゼルがつけてある水晶に顔を近づけている。レイゼルの知らない間にアンジュと彼女は仲良くなり、ドラゴンの世界にいる間、彼女達はライバルとして競り合ってきた。
(エンブリヲの打倒…ドラゴンとノーマは争ってたけど、今となってはここにいるみんなの気持ちが一つになったっているのか)
「あの、レイゼルさん」
「ナオミ、あとタスクか…」
ナオミもまたアンジュ達と共にドラゴンの世界で奮闘していた。アンジュ達と と一緒に巻き込まれ、
ミランダとココの二人とは、アウローラの戦力として活躍している。
ここまで三人とも生き残れたのは、アンジュ含む多くの仲間との絆があったからこそだ。
「二人とも無事だったんだな」
「本当に良かった…心配したんだよ」
「俺達も、助けに行けなくてすまなかった」
レイゼルは子供達を守っている事で頭の中が一杯で、アンジュ達もエンブリヲに追われてレイゼルを助けに行ける状況では無かった。
仮に助けに行こうとしても、追い詰められているレイゼルを説得する必要があっただろう。
「あと、ずっと預かっていたエクシアはどうなった?」
「あぁ…そう言えばそうだったな」
ミスルギ皇国に連れていかれるまでは、レヴェンの手で預かっていたエクシアを正常し、搭載されているデバイスも機能していた。
何日間も保管されていた。
「あ、あれっ…?形、変わってない?」
『なんか…いつの間に変なのが搭載されてますねー』
エクシアだけではなくオーライザーも装着されている。レヴェンが作ったわけではなく、エクシアのデバイスが勝手にやったのだ。
『この機体は他にも一機保管できる効果も搭載されてます』
「…なら、この機体にはアーキバスを乗せよう」
『それじゃあタスクさんはアーキバスを取り出して、ある程度の場所に着地させつつ回収します。
やり方がわからないかもしれないので私もお伴します。試運転も兼ねて…というわけでマスター、少しの間私をタスクに預からさせて下さい』
「タスク、終わったら俺に返してくれ」
「ありがとう」
レイゼルはペンダントをタスクに渡す。彼を信頼しているからこそ、レイゼル達にとって大事なデバイスを委ねた。かつてタスクの母親が載っていたアーキバスを取り込ませようと、タスクはエクシアを動かしていた。
「ナオミは、結構借金があるとかいってたが…もう大丈夫か?」
「う、まだ借金は返せてないよーっ…」
未だに彼女の負債が残っている。ここまで生き残っていたとしても、グレイブを失ったパラメイルの負債は馬鹿にならない。
彼女はお金のことを思い出すと、頭を悩ます。
「…もしレイゼル達をよく知らなかったら、ロザリーのようにお金目当てで嬉しく思ってたかもしれないな…」
「お互いに敵対してたんだ。目的が違うとはいえ…ドラゴンも最初は同じだったはずだろ?」
これまで、自分達は生きることに精一杯だった。相手をよく知らなければアンジュとサラマンディーネのように仲良くなっていいない。
「なぁ、ナオミ…この戦いが終わったら」
「?終わったら」
最後の戦いであっても生きていれば借金返済をすることとなるが、実際彼女が生きてる間に何がやりたいのか、お前はどうするつもりなんだと聞こうとしたが、
「…いや、終わってから聞くことにするよ」
「うん、分かった。
それじゃあ私はミランダとココのところに戻るね?」
ナオミの夢を聞かず、彼女は走り去っていく。純粋無垢な少女は、死ぬはずの運命だったのに辛うじて生きている。彼女もまた、アンジュのようにみんなを引っ張っていく一人なのだから。
*****
レイゼルはアンジュやサラマンディーネ、他の仲間達を引っ張っていく人がこぞってレイゼルに話しかけている。敵になったかもしれない人物にまで、知らぬ間に関わり合っていている。そんな姿に、
「なんか…ちょっと兄貴のことムカっとする」
「いやなんで⁉︎」
「なんとなく…」
話している相手が女ばかりなためヒルダは頰を膨らませて、二人だけの時になると拗ねていた。そんな時に、
「あんたも、タスクと同じくいい男だ。その付き添いも可愛いねぇ…皇女様だった頃のアンジュと同じくらいからかい甲斐がある」
そんな時、第一中隊のゾーラが話しかけてきた。レヴェンの情報では判断力が鋭く、自分の付き添いであるロザリーやクリス隊員を可愛がっていた。
(こんな形じゃなかったら…敵対関係で終わっていただろうな)
過去にアンジュリーゼだった頃のアンジュをからかい、性的な意味で食べようとした。
ヒルダもまたノーマであり、少しくらいやんちゃで乱暴な部分もあった。もしアルゼナルに連れてこられたら今頃はゾーラと気が合いつつも一緒にいただろう。
「悪いけど、ヒルダを食べるのは俺だけだ。
ここは誰にも譲れない」
「な、なっ…⁉︎」
レイゼルの方はヒルダを独り占めにしていた。レヴェンと二人以外のずっと暮らしていたから、お互いしか信じることが出来なかった状況がこそいくら女同士であろうと譲れない。
ある意味二人とも強欲であるが、求めているものは大分違う。
「俺も、アンタと同じくらい強い欲望を持っている。
違いなんて俺みたいに行き過ぎた一途か、アンタみたいに気にいる女を手篭めにしたいってだけだ」
「アッハハハッ!
成る程な、通りで超えちゃあならない一線を超えそうになったジル司令と監察官さんが危うく大火傷しそうになったのも納得がいく!」
今でも下手なことをすればレイゼル達の堪忍袋の尾が切れる。今ここで揉め事を起こせばろくな事にならないというのが分からないほど、二人は馬鹿ではない。
「まぁいいさ。ここで関係を有耶無耶にするほどアタシも空気を読まない女じゃない。アタシにも、可愛い後輩が騙した裏切ったって躍起になって、まず私らで止めなくちゃいけないからそれどころじゃないんだよ。
からかってたのはほんの冗談だ。
それに、あんた達を迂闊に手を出したらアタシまで逆鱗に触れて怪我を負うことになる。
火に無理矢理手を突っ込むような真似はしないさ。クリスの相手は、私とロザリーにやらせてもらう。
気づけなかったのは私の落ち度だ。協力関係とはいえ間違っても横から割って入らないようにな」
「無粋な真似はしない。あんた達の問題はあんた達に任せる。だが本当に手に負えない状態になったなら、そこが先は分かってるよな?」
女癖のあるゾーラだが、戦いの中で死線を潜り抜けてメイルライダーの隊長格になっている。
レイゼルもまたアルゼナルを壊滅させるくらいの驚異的な力を持ち、たとえ機体がなかったとしても、時を止めるスタンドと生命を生むスタンドが牙を剥く。
お互いに、引きを取ることはない。
ゾーラはレイゼルがどういう人なのかを見てから、そのまま帰っていく。そばにいるヒルダを手篭めにするのは無理だと理解して。
「行くぞ」
「あ…うん」
レイゼルも、ヒルダの腕を掴んで、プトレマイオスに戻っていった。
*****
アナウンスから作戦会議をするようにと、全員を会議室に集める。
現状、国の海岸には艦艇、ピレスロイドも浮上しているが誰も外敵がやってくると思ってもいない。いたって平和だ。エンブリヲが何もしてこないあまりにも不自然極まりないと誰もが思う。
怪しいが、逆に無警戒だからこそチャンスだった。
指揮系統はアンジュとサラマンディーネに任せ、アウローラやプトレマイオスの防衛をレイゼル達がやることとなった。
「我々は、アウラを奪還します」
「それじゃあ…ダイヤモンドローズ云々は」
「私達に任せて欲しいってわけだ」
必ずサリア達が前に出てくるだろう。特にサリアはエンブリヲの言いなりな面もあるかもしれないが、愛されたアンジュに対する利己的な執念を持っている。
「アウローラとプトレマイオスにも襲ってくる可能性がある。敵側の収斂時空砲は流石に守れないが、防衛と支援は全力で援助する。
それに…アウラを助けるにはまず最初が肝心だからな」
アウローラに搭載されているN式冷製破壊砲で、アウラを塔を破壊する必要がある。
アルヴァアロンのような圧縮粒子ビーム砲で一掃することも可能だが、実際はアウローラの方が射程距離が長い。そして凍らせたほうが、物が容易に砕けて瓦礫になるよりも効率的だ。
レイゼルの機体で破壊するのは、塔が凍結して破壊できなかった場合の話となる。
次にエンブリヲを倒すにはアンジュの持つヴィルキスが必要不可欠になる。
『仮にエンブリヲが本当に死んだということが真実ならば…アウラを回収して終わりというだけなら凄く簡単です。
でも、深く考えれば考えるほど絶対に何かありそーですけどね…死んだって時点で怪しいですし』
レイゼル達の機体も、一機のみで軍隊を潰せるほどの実力を兼ねている。これだけの戦力が揃い、世界を変えようとしている。
「もしものことを考えたところで、埒があかないわ。それに何回死んでも間違いなく生き帰っている…あいつはそういう男よ」
「そうだ、奴には死を偽装させることも…造作もないはずだ」
アンジュだけではなく他の人達が何度も殺害を試みても、エンブリヲはしつこく蘇っていた。何回殺しても平然な顔で復活し、何度もアンジュを奪おうと近づいてくる。
無限に蘇る相手に、能力を見破らなければ勝ち目がない。それはここにいるみんなが良く分かっている。
(本当にそうかのか…?)
しかし、レイゼルはあの不可解な生体反応の消失に違和感を感じている。
当初の、エンブリヲはヒルダの母親とその娘を使ってレイゼルまでも手駒にしようとしていたのに、逆に娘を懐柔した後日、まるで興味がなかったかのように諦めている。
目的を変えてアンジュ達を優先にしていたが、エンブリヲにはもうアンジュの行方も知らない。あの時は、サリア達は立ち去ろうとするレイゼルに向けられ、クリスとシルヴィアだけがあの城に残っていただけだ。
二人がエンブリヲを殺すわけがなく、意味もないまま消息が途絶えた。
果たしてそれが自作自演の罠なのか、或いは本当に死んだのか。
作戦名は出撃の時にとアンジュが言い、作戦の内容だけをみんな理解した上でこのまま解散となった。
ーーー
タスクのダブルオーライザーはレイゼル側で預かっている。
「レイゼル、これありがとう」
「あぁ。男二人だが頑張ろうな」
アウローラでは機体が折り畳むことができないため、プトレマイオスに保管されることとなる。タスクは、借りていたレヴェンのデバイスをレイゼルに返した。
こうして戦いの準備は整ったが、アウローラの損傷と機体の整備も兼ねて1時間後に決戦となった。
「いよいよ…待ちに待った時だ」
世界を壊す戦いが始まる。 こんな形で不条理を覆すとは思わなかったが、もう今のレイゼル達には迷いはない。
ヒルダの母親のことも、新しい娘のこともあったが、もう恐れる事はなくなった。
レイゼルは過去のことを振り返っている。
「11年だ。妹と共に家から出てから、二人だけで生きていくために必死だった。
中立すべき法律はマナの有無によって左右されるから役に立たず、民衆は忌むべき法に首輪をつけられただけの奴隷だった。
俺達兄妹もまた、『恐怖』に首輪を付けられ、幼かったときはひっそりと片隅で怯えつつ生きていくことしか何もできなかった…外に出て、それなりの力があっても一人じゃ何もできなかった痛感さを思い知らされ、出ていく前に家族といた頃の幸せと、苦い思い出も胸に刺さる。
そのせいで、何度も足がすくんで前に進むことができなかった。
でも今はもう…止まっていた足は歩み続けている。そして、とうとう…ここまでたどり着くことができた」
レヴェンが用意してくれたアルヴァアロンの進化系、アルヴァトーレがようやっと完成する。
ヒルダが乗っていたアルケーガンダムも、出力の向上や肩に砲台を乗せることでヤークトアルケーガンダムに変わる。
「勝つぞ、みんなで」
「うん、そうだね」
二人で手を握り、最後の戦いに向けて気を引き締めた。かつての家族との絆は母が壊れ、新しく産んだもう一人娘もできてもう戻れないかもしれない。
でも、やり直すことはできると微かに信じて。
*****
一方ミスルギ皇国ではーー
彼の影響を受け過ぎていたクリスとサリアの二人はエンブリヲの仇を討つためにまだ怒り狂っていた。ターニャとイルマの二人は導く人だった人が突然の急死で動転し、サリア達のような怒りより絶望の方が上回って身体が全く動かない。
アンジュの妹であるシルヴィアは、エンブリヲの死で寝込んでいる始末だ。クルエルの方も音信不通となり、そいつがエンブリヲを殺した犯人だと決まった。
だが、あまりのことに誰も動けなかった。
ミスルギ皇国に捕らえられたリィザまで解放され、エンブリヲの統治されていない状況は絶望的だった。マナの偉い人たちは、誰もエンブリヲが殺されていることすら知らない。
アウラはまだ装置で捕獲され、ドラグニウムを搾取してマナが使える状態ではあるため、各国は平穏を保っている。が、もしアウラの場所も分かってしまった以上いつミスルギ皇国にドラゴン側が攻め込んできてもおかしくない。
彼らは万全の準備をもって、大部隊で襲撃してくるだろう。装置を破壊すれば、アウラの力で分離された二つの世界が元どおりになり、マナの力もなくなる。
しかし、
(エンブリヲ様を…よくも、よくもっ…見つけ出して絶対に殺してやるっ‼︎)
エンブリヲが死んだというのに、彼女らは彼の死してもなお彼の洗脳に囚われている。感情的になり、冷静な判断がまともに出来ない状態だった。
ミスルギ皇国など、もう知ったことじゃないと、動けなかったサリア達は立ち上がる。
「…エンブリヲ様の仇を取るわよ。イルマ、ターニャ」
「隊長…でも、どうやって」
エンブリヲを殺したクルエルがどこにいるのかすらもわからない。気絶したシルヴィアが少しずつ眼を覚ましていたが、サリアの話を聞いて驚いてしまう。
「⁉︎お待ちになりなさい!貴方達っ‼︎ここを離れれば、一体誰がこのミスルギ皇国を守るのですかっ⁉︎」
ようやっと目覚めたシルヴィアが椅子で移動し、彼女らを引き止める。が、彼女達の格好は既にメイルライダー用の服を着用して出ようとしていた。
サリアはゴミのような目でシルヴィアを見下す。
「わ、私を置いてどこに行くつもりなのですかっ!
女帝シルヴィアなのですよ⁉︎」
「あっそ…」
冷酷な目で見下しているサリア達は、喚くことしかできないシルヴィアを置いてここから立ち去った。たとえ立場が偉くとも、そんなことサリア達の知ったことではない。
エンブリヲによって彼女らの心を欺いて操り人形にしても、操る本人がいなくなっても人形達はまだ憎悪で動いている。
騙した男が消え、死しても彼女達は未だに操られているというのは、皮肉なものだった。
*****
深海
海の底深くには黒い物体がゆっくりと流れている。
無残に散っていったパラメイルの機体を取り込み、形を集めつつ同化した。ドラゴンとの戦いで、墜落していった複数の機体が海底から目覚める。まるでメイルライダー達の無念が、機体に憑依したかのように。
その泥は各地にばら撒かれ、廃棄されたアルゼナルの装置、マナ使いの機器にも侵入する。そのデータにはカスタマイズされたパラメイルとヴィルキスの絶対兵器の情報を再現させ、完成させた機体を海の底へ沈んでいく。そして、クルエル本体は分裂し、思い入れの中で世界の希望と絶望の象徴をこれまで集めた情報から再現する。
泥によって作られた大型、小型ドラゴンは空高く飛翔しようと体制を上に向けた。
ヴィルキス
クレオパトラ
テオドーラ
レイジア
エイレーネ
ビクトリア
ヒステリカ
焔龍號
ガンダムエクシア
アルヴァアロン
紅蓮聖天八極式
全てを取り戻すための全面戦争、そして舞台の終焉はすぐそこまで近づいていた。
クルエルがやったのは、けものフレンズ2のセルリアンが絵を取り込んでいるのと同じことをしてます。