※この作品はR-18です。

ゲスコイ   作:ふぁうすと

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千棘とは純愛(ゲス顔)を育みます


第2話 デート

 

 

高校に置いての芹沢総司は影である。

誰も気にしないし気にされない。特に遊ぶような相手もいない。

 

それに比べれば一条楽は日向の向日葵か。

その周りには必ず人がいる。

 

聞き耳を立てていたときに硝煙の臭いが気になると語ってはいたが。

そんなものは対して感じもしない。

血も鉄も臓物の味も何も知らずに育ったのだと総司は思った。

 

影と日向に生きるものは決して交わらない。

総司としては圧倒的な集英組の一条楽に安易に手を出すわけにもいかず、なれ合いに行って警戒されるわけにもいかなかった。

楽と千棘が言い合っている風景を少し離れた場所から見るぐらいだ。

 

だが彼女は違う。桐崎千棘は太陽だ。

ゆえに影である彼は彼女に触れられれば表舞台に立たざるを得ない。

 

(まぁ、送った時以来話しかけられもしないし問題ないかな)

 

と油断していた彼の机に突然誰かの手がたたきつけられる。

顔を上げると千棘が頬を膨らましていた。

 

「?」

 

「今度!アイツと!デートするからあんたもついてきなさい!友達でしょ!」

 

(なんで友達が他人のデートについていくんですかね―――)

 

なんて文句を言う隙もなく次の日曜の予定は確定されてしまった。

すでにクラス内では「なぜあいつが桐崎さんと」という話題で持ちきりである。

 

しかも否応もなく一条楽との接点が作られてしまった。

 

「どうしよ。虎。すまん」

 

汗を額からだらだらと流しながら来る運命を受け入れるしかない総司だった

 

 

 

 

 

(しっかし偽物の恋人関係とは面倒くさいことをする。抗争を避けるためとはいえ)

 

「はじめまして一条楽です」

 

「はじめまして――――芹沢――――です」

 

その名を名乗るか迷ったが隠しても仕方がない。

 

「まったくあの暴力――――彼女にも困っちまいますよ」

 

(うちの名前に反応しないとは―――覚えていないのか、はたまた自分の組が潰した相手すら知らないのか)

 

「ふぅ」

 

思わず屈んでしまう。

 

「なーんて顔してるのよ」

 

「なんでもないよ」

 

現れた千棘に声をかけられてようやく総司は立ち上がる。

 

「さすが千棘、モデルも形無しだな」

 

「そ、そう?」

 

少し顔を赤らめた千棘は照れたように見えてすぐさま楽のほうへと向き直る。

 

「何見てんのよこのカス!ジロジロみんな!」

 

こうして前途多難なデートが始まった。

とはいえ総司は本来ここにはいない身。

楽と千棘に先行させて自分は後ろからついていく形だ。

 

後ろにいる両陣営の尾行の視線が痛い。

時折、千棘が近寄ってくるがすぐさま戻っていく。

映画館、カフェなどを巡り騒々しい争いが展開される。

 

 

「ねーねーそこのお嬢ちゃんかわいいねー。どう、今ヒマ?俺たちとお茶しない?」

 

何とも柄の悪そうな4,5人のヤンキーが千棘をナンパしていた。

どうやら後ろにいる俺は認識されていないようだ。

 

影ながら頑張ってきた陰気キャラも板についてきたなと少し嬉しくなる。

 

「今、人を待ってるんで」

 

楽は今、千棘に命令されて買い物中だ。

 

「いいじゃんいいじゃん。一人なんでしょ?」

 

「つかめっちゃ美人じゃね」

 

「てか金髪やべぇ。ハーフってやつ?俺外人と犯ったことないんだけど」

 

「つかめっちゃやりてぇわ。あのケツ」

 

(集英組の影響下でもこの手のは沸くもんか。)

 

固く握りしめられた千棘の拳が放たれる寸前に一条楽が戻ってくる。

 

「はははー、こいつまだ日本語不安定でねー!!!わりー待たせたな千棘!こっちいこうぜ!」

 

「はっ?何コイツ」

 

この手の人種は脳みそが昆虫と変わらん理屈なんて通じない。

それに自分が格上だとわかると多少の犯罪ぐらいなら躊躇ない。

そもそも後先考えずに性欲だけで生きてるような人種。

 

先頭の男の手が一条楽へ向かう寸前

 

「おーい」

 

「なんだ―――っ!?」

 

不良たちの真横から某ハンバーガーメーカーの最大サイズコーラが投げ込まれる。

あっというまにねばねばとした砂糖の塊汁が不良たちに降り注ぐ。

 

「っぺ!テメェ!!」

 

「千棘!」

 

あっけにとられていた千棘はその声とともに楽を連れて駆け出していく。

それにつれて両陣営の尾行が離れていくのを総司は確認した。

 

 

「おいクソガキ――――――?」

 

先頭の不良が総司の胸倉をつかんで違和感に気付く。

持ち上がらないのだ。

 

2人の身長差は20㎝。

 

(重てぇ!なんだこりゃ!)

 

目の前の少年の体重は多く見積もっても60㎏がせいぜい。

にもかかわらずどんなに力を入れても少年の体が持ち上がらないのだ。

少年はというとポケットからカロリーの塊である栄養食、本来ロードレースなどに用いられるそれを取り出すとむしゃむしゃと食べ始める。

 

「くっ―――この」

 

不良は拳を振り上げると少年の顔面に向けて振り下ろす。

しかしその拳は空を切る。代償に不良の腹には拳が突き刺さっていた。

 

「―――っ」

 

それもただの拳ではない。ただ腹部への一撃で不良が呼吸困難に陥ったように崩れ落ちる。

 

「てめぇ!」

 

残った4人が襲い掛かろうとするもそれは不可能だった。動けないのだ。

倒れた不良の苦しみ方は尋常ではない。

 

「あー、久々だったんで加減間違ったかな。内臓は破けてないと思うんだけど」

 

青ざめたように4人が後退していく。

 

「おいおい。コレ置いてくなよ」

 

あろうことか不良の腕をつかむと成人男性1人を腕力だけで持ち上げたのだ。

少年がつかんでいる不良の右腕からは骨が軋むような音が鳴り響いている。

 

「あっ―――ぐっああああああっ!!!」

 

まちがいなく折れた。

 

「や、やめ!ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

そして折った腕をいまだに離そうとはせずに万力のようにねじあげていく。

 

「―――――」

 

「気絶しちまったか、おらもってけ」

 

不良たちはあわただしく去っていった。

 

「さてお嬢様と王子さまはどちらにいらっしゃったのか」

 

 

 

 

千棘は楽が買ってきたドリンクを飲みながら足をぶらつかせていた。

その楽はいまスイーツを買いに走らせている。

 

「アイツ大丈夫かなぁ」

 

アイツというのは芹沢総司のことだ。

モヤシと同じくらいひ弱そうな体型を思い起こすと不安になる。

 

「私と身長同じぐらいだし―――でもあの時は随分頑丈そうだったわね」

 

初対面の時、あれだけ派手に転んだにもかかわらず怪我らしい怪我もなかったことを思い出した。

もしかして案外鍛えてるのだろうか。そう思って彼の背中の感触を思い出し思わず赤面する。

 

「そういえばバカモヤシとはさんざん居たからわかるけど私アイツのこと全然知らないのよね。友達なのに」

 

クラスにいてもほとんど話さない。

 

「う~気になる!」

 

「おーい」

 

千棘が振り向くとそこには服一つ汚れてない根暗な少年がいた。

 

「ちょ、あんた大丈夫だったの?」

 

「謝ったら許してくれたよ、あとなんか飲み物くれない?」

 

「まぁよかったわ。はい」

 

そういって千棘は自分の飲んでいたドリンクを渡す。

 

「ん?ちょっと待ってそれ間接――――」

 

「何?」

 

勢いよくドリンクを飲む様、間接キスであることを気づいた純情な少女は顔を真っ赤にしてしまう。

 

「な、なんでもない」

 

(さすがに、これ以上ここで近づくのは限界か)

 

背後の視線から殺意がほとばしっている。

 

「あーまぁ、後は一条とよろしくやってくれ」

 

「え、ちょっと!待ちなさいよ!」

 

そう言って返されたドリンクには連絡先が書かれた紙切れが挟まっていた。

千棘は呆然とそれを見つめるしかなかった。

 

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