「この一件を受けて総理は―――」
総司はテレビを見ながら大量の食事をかきこんでいた。
その隣には同じく食事をとる虎の姿があった。
「あの一件はどうなっている?」
あの一件とはいうまでもなく橘千花誘拐事件のことである。
あの後、結果的に結婚式は取りやめとなった。
当主が誘拐されては元も子もないからである。
当然、動機があり不法侵入を行っていた一条楽が疑われ拘束されたが橘真里花の父である警視総監橘巌がそれを抑えたらしい。
結果的に一条楽は釈放されたが、集英組への警察からのマークは厳しくなった。
「大体警視総監がヤクザと交友を持っているってのが信じられんな」
総司は虎お手製の炒飯を頬張りながら腑に落ちない顔で吐き捨てる。
彼としてはあわよくばこれで集英組をつぶせればよいと考えていたがそう思い通りにはいかず不満なようだった。
「そのことに関しては警察内でも評判は良くないようですね、彼の地位は橘家という後ろ盾があるからこそでしょう」
「そりゃぁ、警視総監と集英組の頭が知り合いなんてのを週刊誌にでもすっぱ抜かれれば警察の威信にかかわる大問題だ」
集英組は麻薬などのあからさまな犯罪行為こそ行っていないものの総司が前にも言った通り、ヤクザはヤクザなのだ。
「ビーハイブとのその後は?」
「互いの当主、アーデルトと一条一征が手打ちを計ったようです。かなり両者は親しい関係のようですね。部下たちを必死に押さえつけています」
こっちも失敗かと総司は頭を悩ませる。
だがすでに千棘は手中に収めている、焦る心配はないか。
「何を悪巧みしているの?」
2人の間に橘千花が相変わらず無感情な顔でずいっと割り込んできた。
あれ以来彼女は総司と虎の家に住んでいる。
(しかし何度見ても1児の母とは思えん、10代だといわれても信じるぞ―――)
様々な女性を見てきた総司でも橘千花の外見は衝撃的だった。
仮に16歳で橘万里花を産んだにしても現在は32歳、とてもそうとは思えない外見だった。
現在は総司らが用意したワンピースを着こんでいるが少女にしか見えない。
(吸血鬼か妖怪か―――?)
「私の顔に何かついているかしら」
「今日もきれいだよ千花さん」
「大人をからかうのはよしなさい」
(うーん、雰囲気は確かに大人の威厳はあるな色気はまるで―――)
「何か?」
(ちょっと強引にいってみるかな――)
小柄な千花の体を抱き上げるとすたすたと自室まで歩いていく。
総司の部屋には簡素なベッドと日用品があるぐらいだった。
総司は千花をベッドに寝かせるとその上から馬乗りになる。
「千花さん、宿泊代は体で払ってもらいましょうか」
馬乗りという状況、いまから強引に犯されるかもしれないというのに相変わらず無感情な千花に総司もいまいちやる気にならなかったが―――
(マグロは好きじゃないんだけど、鶫なんかアイツすげぇからなぁ)
こちらの攻めに逐一反応して自らねだりだす鶫にはある意味エロスの才能があるのかもしれない。本人は認めたがらないだろうが。
「性行為のことかしら?なぜそんなことをする必要があるの?」
「え?なぜって」
「性行為は子孫を作るためのものでしょう?」
総司は初めて理解した。橘千花はその境遇ゆえに性行為や恋愛というものについてきわめて歪んだ価値観を持っているのだ。
「性行為は子供を産むためだけのもの」。母体として生まれ育った経験ゆえに仕方のないものであるのかもしれない。
恋愛感うんぬんにいってもそうだろう、彼女の価値観からはあまりにも剥離しすぎて理解ができないのだ。
もしかしたら彼女が高校生の頃ならばそうでなかったかもしれないが鳥籠で彼女の価値観は完全に狂ってしまったのだろう。
「いえ、それもありますが、互いの愛を確かめるというものでもあるのですよ」
「愛―――あなたは私を愛しているの?」
真っ直ぐとした瞳が総司を射抜く。
「はい」
男が橘千花を心の底から愛しているのは事実である。他の女も愛しているという点はあえて触れないが。
「ん?――-ってそれじゃまさか千花さん最後にシたのは――――」
「私は幸運にも最初にあの娘を宿したわ―――それ以来ね」
(10年以上やってなかったって―――経験一回とかもうほぼ処女じゃん。そりゃそんな幼いころに無理やり孕まされてちゃロクな感想は持たなかっただろうなぁ)
高校から連れ戻されて見ず知らずの相手に孕まされる。下手な強姦よりひどい話かもしれない。
「ん―――」
男は千花を腕の中に座らせると後ろから彼女の首筋、肩を指先でなぞっていく。
決して強くはなく、なぞる程度に愛撫していく。
「千花さん、目を閉じて」
千花は言われたとおり目を閉じる。
だが次の瞬間、自らの口に侵入してきた舌に驚いて顔を離し、男をジト目で睨み付ける。
「なぜさっさと挿れないの?男は挿れて中に出すものでしょう?」
「猿じゃないんだし、こういうのもセックスなんだよ」
再びキス。今度は千花は抵抗しなかった。
舌が触れ合うたびに小さな千花の体が震える。
初めての行為に恐怖を感じている人妻をしっかりと抱きしめることで恐怖を和らげる。
男の手が千花の胸を軽くなぞる。乱暴に揉むようなことはせず、優しく頭頂部をくすぐるように愛撫する。
それに呼応するように小さく小刻みにぴくんと千花の体が震える。
「千花さんブラジャーしてないんだ」
「普段は着物だもの、そういう習慣はないわ」
「でも勃ってきたのよく分かるね」
男の指が自己主張する胸の先端を優しく摘まんで愛撫する。
透き通るような千花の肌に朱が差していく。
「んんっ―――」
男の指が千花の首筋をなぞり、耳に触れると敏感になった彼女の体は思わず声をあげてしまう。
千花はなぜ自分がこんな声を上げたのか分からない様子だった。
そんな自分を男が見つめているのに気付くと恥ずかしくなって顔をそむけてしまう。
「かわいいなぁ千花さんは」
「からかわないで」
いままで氷のように冷たかった千花の態度と体がほんのり熱を帯びてきたことを感じ取った男は千花の下腹部へと手を伸ばす。
その行為に思わず千花は内股を閉じてしまう。
(これじゃまるで生娘ね)
一回り年下の少年に弄ばれる自分に軽い羞恥を覚える千花。
千花のそこは人妻とは思えないほどきつく閉じていた、もう何人も受け入れないかのように。
うっすらと生えている毛をなぞりながら淫核を優しく撫でていく。
「千花さん入れるよ?」
「んぐっ―――ンンッ!」
男のゴツゴツとした指が千花の中へと侵入してきた。もう忘れていた刺激に思わず腰を浮かしてしまう。
(うおっ、キツいなぁ。処女だった鶫のより締め付けてきやがる)
愛液の音を響かせながらゆっくりと膣内をなぞりつつ膣肉を広げていく。
唇を奪われ、乳をなぶられ、首筋をくすぐられ、耳たぶを触れられる。
玉の汗が千花の首筋を流れていく。
「ぁあっ――――っ!?」
「我慢しなくていいのに」
「大人をからかうのはやめなさいっ――――んっ!」
小さな千花の体が男の責めから逃れようとよじれるが男の腕の中にすっぽりとはまった彼女には叶わなかった。
再び彼女の口内へと唇が侵入してくる、歯列を、上顎を犯されるように舐められ、臆病になった舌を痛いぐらいに吸われてしまう。
呼吸すら許さないほど加速した攻めに千花の頭がくらくらとする。
(これが―――性行為――)
自分の体が自分の意思では制御できないほどに熱い、心臓の鼓動は耳に直接響いてくるようだ。
セックスに嫌悪感しか持っていなかった千花だが、ただひたすらに愛撫を重ねられるうちに薄まりつつあった。
「ああっ―――んっッ!」
2本目の指が膣内へと入っていく。
2つの指による攻めが千花の意識を薄めていく。
(んん――やっぱ子供産んだだけあっていけそうだな)
ねっとりとした感触が指にまとわりついてくる。
千花のそこは男を受け入れるために広がりつつあった。
男は女の服を剥ぎ取るとゆっくりとベッドに寝かせる。
女の顔はあまり表情は変わらないものの白い肌にはほんのりと朱が差している。
千花のすべてが男の前にさらされる。
引き締まってはいない、ただただ細く、触れれば崩れそうな細い手足。
儚さと神聖さすら感じる美しさ。
「っ!」
千花は組み伏せられ、股を開かされる。
そこで初めて男のモノを目にすることになった。
記憶から消そうと試みていたそれを。
「千花さん、いくよ」
挿入とともに小柄な千花の体は跳ね上がった。
毒蛇のような長大な生殖器の挿入感は10年以上閉じていた千花の膣を強引に切り開いていく。
その挿入感は想像を超えていた。
「ん―――んぅッ―――うっ――――うぅ―――」
下腹部が満たされる充塞感と強すぎる刺激に初めて千花の表情が崩れた。
それは苦しみと、女の悦び。
それをみて男のソレはより一層大きさを増していく。
「千花さんの膣内小さいけど温かいなぁ、表情とは大違いだ」
そういって男は千花の頬を撫でる。
「これで全部っと」
腰を掴まれて引き寄せられると閉じた子宮を亀頭冠が刺激する。
「ンっ!!」
さすがの千花も余裕はなく、激しい吐息をしていた。
「ねぇ、千花の旦那さんとどっちが大きい?」
「そう―――ね、こっちのほうが大きっ―――ンっ!」
子宮に巨大な熱いモノ押し付けられる感触が千花を襲う。
(体弱いらしいしあまり負担はかけられないな)
男は激しい動きはせず、ゆっくりと千花の膣内を味わうように腰を動かしていく。
浅く、そして深く、ゆっくりとしたストローク。
スローセックスに近いようなものだったが、それが千花にはお気に召したようでかつて氷のように凍りついた表情は蕩けたような表情に変わっていた。
黒真珠のような瞳は変わらないが口は半開きになり、熱い息を吐き出している。
これがもし鶫ならば遠慮なしに腰を動かしていたところだが
橘家特有の体の弱さ、触れたら壊れてしまいそうな細い体。
今回ばかりは彼女に無理させるのはだめだろう。
ゆっくり、極力動かずにじっくりと、ねっとりとした愛撫が千花の体を這っていく
体を震わせながら小さな千花の足から腰へ、そして小さなふくらみを愛でるように触れて、舐めていく。
少しずつ、ゆっくりと腰を動かしていくと千花の膣肉が離れたくないようにくっついていく。
はじめて与えられた刺激に男の腕の中で氷のような表情はすっかり氷解してしまい、だらしなく喘いでいた。
今まで凛としていた女性の初めての表情に興奮を覚えた男はその体を蹂躙するように征服していく。
千花は羞恥からか細い腕で顔を隠してしまう
「千花さん顔隠すのやめてほしいな」
「っ―――やめ―――んっ――――」
その手を掴み、ベッドに押し付けると火照った顔が露わになる。
肉付きのない体は鎖骨が浮き出ており汗が表面を伝っていた。
「千花さんはかわいいなぁ」
千花は何か反論しようと試みるが軽く突かれただけで言葉は嬌声に変わってしまう。
(でもさすがに人妻を妊娠させるのは不味いよなぁ)
こんな状況でも残った理性で総司はその危険性を悟る。
動きは激しくないとはいえ総司の限界はそろそろ近い
さすがにまずいだろうと腰を引く。
「ごめん、千花さん抜くよっ!」
その男の言葉に女の瞳がキッと鋭くなる。
「うぉっ!?」
さすがの総司も予想外だったのか情けない声が出てしまう。
千花の細い足が総司の腰に絡みついていたのだ。
「んっ―――あまり大人を舐めない方がいいわ」
千花の膣内、子宮が吸い付いてくる。
肉棒が痙攣して今にも限界といった具合だ。
「ちょ、ちょっとまっ、さすがに不倫して妊娠はまずいって!!!」
「あら、当主の私なら愛人の一人ぐらいはかかえられるわよ、それに跡継ぎ的な意味で子供ができても問題ないわ」
千花は初めて、大人の女性としての小悪魔のような笑みを見せる。
「まずっ、出るッ!」
その言葉とともに千花の脚がぐっと男の腰を自らへと押し付ける。
子宮へと亀頭が密着し、夥しい数の吐精が流れ込んでいった。
「はっ―――――んっ―――――熱い―――」
広がっていく熱い鼓動に千花は愛おしそうに下腹部を撫でる。
「ち、千花さん」
狼狽える男の頬に手を添えて千花は告げる。
「覚えておきなさい、私――――こう見えて内面は結構情熱家なのよ」
これが彼女の、橘家で塗り固めた能面の中身だったのかもしれない。
無表情の奥にあったのは激しすぎる感情の波。
初めて女性が見せた笑顔が高校生の時以来だったと知るものはいなかった。
しかし主導権を握ったつもりがいつの間にか立場が逆転している様にさすがの総司も苦笑いだった。
行為を終えた後、男にしだれかかる千花。
「そろそろ帰るわ―――」
そういった彼女の顔は暗く曇る。
橘家という力の大きさを誰よりも知っているのは彼女だ。
事実として彼女がこれ以上逃亡を続けることは難しい。
彼女自身も体調の問題もあるしこれ以上の大ごとになると総司らだけでは処理できなくなる可能性が高い。
「それなんだが―――いい案があるんだけど」
男が邪悪な笑みを浮かべる。
「あら、乗らせてもらおうかしら」
女が妖婦のような笑みを浮かべる。
数日後。
橘家に車が一台停まる。
先日の一件で厳重警戒されており、すぐさま護衛の人間が近づいてくる。
「なっ!千花様!?」
車から現れたのは当主の姿だった。
すぐさま城内へと通される千花。そのそばには総司の姿もあった。
事情を聴くために部屋には千花と総司、本田、橘巌が揃っていた。
橘巌は明らかに異質な少年をじっと軽い殺気を込めて睨む。
だが少年は涼しい顔で笑い返すだけだった。
(この男―――)
本来、自分のような強面の男に殺気付きで睨まれれば一条楽の様に多少なりとも狼狽えるはずだ。
それが正常な反応である。
それがないということはこの男はこの程度の殺気ならばすでに慣れているのだろう。
巌は警戒心を引き上げる。
少なくとも普通の人間ではない。
その横に座る、自らの妻に目を移す。
なぜならそこに座る女性が本当に自分の妻なのか目を疑ったからだ。
以前の様に大きく重い着物ではなく、はだけた遊女のような着物を着ている。
「私は集英組の手によって誘拐されました、そこを彼に助けられたのです」
「――-それは本当か」
警視総監である橘巌が異議を唱える。
彼は一条楽を顔見知りの好で解放した張本人である。
「しかし、あの楽君が誘拐などという――――」
「事実よ。そもそも彼は不法侵入の現行犯、状況証拠は十分じゃないかしら?」
「ぬぅ――」
千花は夫の方に向き直ると氷のような言葉で反論を叩きつぶす。
婿養子という立場上、発言力の弱い橘巌はそれ以上の反論を行えなかった。
「それと万里花の結婚の件ですが、今回の結婚はなしとします。社長には後ほどお詫びに伺います。本田。」
本田は一礼して了解しましたと頭を下げる。
「そうか、あの娘もこれで―――」
望まぬ結婚に反対していた橘巌は胸をなでおろす。
親として娘には自らの望んだ相手と一緒になってほしかった。たとえそれがヤクザの息子だったとしても。
「新しい結婚相手として私の恩人である芹沢総司君を用意しました」
それを聞いて総司が深く頭を下げる。総司は千花に与えられた高級スーツに身を包んでおり、見た目には好青年といった風体だった。
発言に場が凍ったように静まる。
「なっ、急すぎる!」
さすがの巌もこれには異議を唱えた。
妻が娘を道具のように扱うのは知っていたがそれでも彼の良心が許さなかった。
「これは決定事項です。近々、結婚式を行います。万里花にもそう伝えておいて」
それだけ言って千花と総司は部屋を出て行ってしまった。
「ではお嬢様には私から伝えておきます」
そう言って本田も部屋から出ていき、1人残った巌は頭を抱える。
彼には先ほどの千花の様子が気になっていた。
夫婦の愛情などまるでなかった2人だがそれでも長い時間連れ添っているがゆえにその変化に気付くことができた。
千花の後ろに座っていた少年。
以前の千花ならば無意味に自分の傍に本田以外の人間を置くことはなかった。
だが少年は千花のすぐ後ろに控え、度々2人がアイコンタクトを行っていた。
いままで妻が誰かに心を開くことなどなかったはずだが―――
巌は不安を払拭することができなかった。
以前までの千花は誰も寄せ付けない氷のような空気を放っていた。
だが今の妻は違った。表情こそ前と同じように無表情だ、だが纏う雰囲気が違った。
それは妖婦のような色香を漂わせている、その無表情な瞳の奥に毒々しささえ感じた。
(思い過ごしであればよいのだが)
「母が義理の息子と会うのは不思議ではないものね」
橘千花は一回り以上歳の離れた少年の胸に抱かれながら、以前の彼女からは想像にできないほど甘い、甘い毒のような声で囁く。
それは紛れもない大人の色香であり、見た目の幼さと相まって妖艶と言える雰囲気を纏っていた。
橘万里花と総司の結婚。
そうなれば橘千花は総司の義理の母となる。
総司の本来の母親はすでに鬼籍に入っている。
橘千花がそれを憐れんで彼の下を足しげく通ってもそこまで疑問には取られないだろう。
「んっ」
男は返事をすることなく唇を押し付ける。
千花もまた背伸びを行い男に唇を押し付ける。
「んっ―――んっんん―――」
舌を絡ませあい、唾液を交換する2人。
長い長いキスが終わると千花はふたたび男へと体を預けた。
「千花さん城内でこれ以上は―――」
総司もさすがに日中のこんなところで不倫は不味いと思ったのか千花を押しのけようとする。
「誰にも文句は言わせはしないわ、さんざん私を縛ってきた権力ですもの―――――これからは私のやりたいように使わせてもらうわ―――文句なんて言わせない」
押しのけようとする手を振り払い、着物を着崩しながら女は男へと寄りかかり、はだけたシャツの胸元に舌を這わせる。
2つの影はもつれ合いながら城内の部屋へと入っていくのだった。
千花編終了
千花は以後もちょくちょく出てくる予定です。