待っていた皆さん!どうか楽しんでいただけると嬉しいです!
「一体何が起こったんだ……」
私と鈴は先ほどまで試合をしていた。だが、試合中に突然アリーナ全体に轟音と衝撃が走った。アリーナの遮断シールドは貫通し、ステージの中央からもくもくと煙が上がっている。その煙の中に『何か』がいた。今の状況に混乱している中、鈴のプライベート・チャンネルが飛んでくる。
「一夏、速く逃げてっ!!」
いきなり鈴は何を言い出すんだ。そう思った瞬間、『白式』のハイパーセンサーから緊急通告が来る。
『―――警告。ステージ中央に高エネルギー反応発生。ターゲットロックされました』
「なっ!?」
(じょ、冗談じゃない!アリーナの遮断シールドを破壊したんだぞ!そんな破壊力を持つ攻撃を食らったら一溜りもないじゃないか!)
刹那、ステージ中央から光が発せられた。それに気づきその場を試合のために訓練してきた『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』を使い離脱する。離脱した直後、私がいた場所にビームが撃たれた。その大きさは人間一人分ぐらい大きなビームが発射された。
……あんなのをまともに食らっていたら終わっていただろう。そう思うと背中から冷や汗が吹き出てくる。
「一夏、大丈夫!?」
「あぁ……。大丈夫だよ」
鈴は心配そうに私の顔を覗う。私は再度、大丈夫だよと言う。
「しっかし何なのあいつは?」
「わからない。姿を見ないと何とも言えない」
鈴と私はステージ中央を見る。すると先ほどは煙が舞っていて見えなかったが今なら見ることができた。
「なんなんだ、あれは……」
ステージ中央には姿を見た感じ異形としか感じられないものがいた。深い灰色をしたそのISは手が異常に長く、足と手が地面についていた。それだけではなく見たところ首がなかった。そいつは肩と頭が一体化しているように見える。
何より特異だと思ったのが相手が『全身装甲(フル・スキン)』だという事だった。
通常のISには部分的にしか装甲が付けられていない。何故なら必要がないからだ。絶対防御によって守られるため『全身装甲』にしてもほとんど意味がないのだ。もちろん、例外はあるかもしれないが大抵のISには必要のないものだ。
見たところそのISは普通ISではないと語っている。その巨体は腕を入れ、全長二メートルを超えていると見える。頭部の部分には剥き出しのセンサーレンズが不規則に並び、腕にはビーム砲口が左右合計合せて四つはある。
正直な所こんな奴を相手にしたくないのだが今はそんなことを言っている場合ではない。
「お前は一体何者なのだ?」
「―――――――――――」
呼びかけてみたものの返事は返ってこない。当然といえば当然なのかもしれないが。
『織斑くん!鳳さん!今すぐアリーナから脱出してください!これから先生達がそちらに鎮圧に向かいます!』
山田先生は私と鈴に伝える。やはり彼女も教師なのだろう。威厳たる態度でこちらに言ってくる。
普通なら先生の指示を聞かなくてはいけないだろう。しかし……。
(このまま離脱するとまだ観客席に残っている人達が狙われる……)
そんなことを思っていたら、そばにいた鈴が挙手をしながら山田先生に告げる。
「はいは~い。いい案があるんだけどいいですか?」
『なんですか鳳さん?』
「あたしと一夏が先生達が来るまであれを食い止めるってのはどうですか~?」
『はいぃぃぃっっっっ!?』
鈴が言った案に対し、山田先生は何言ってんだこの子はという感じで驚いている。
「一夏もそれでいいよね?」
「鈴……」
『ちょ、ちょっと鳳さん!?馬鹿な考えは止めて早く脱出をしてくだ―――』
「あ~うるさいわね。ポチっとな」
鈴は山田先生との通信を切ってしまう。それに続き一夏も山田先生との通信を切る。
「これで良かったんでしょ?一夏」
「……私の考えていたことがわかったのか」
「当然でしょ!伊達に幼馴染をやってないわよ!」
鈴は相変わらず無い胸で主張してくる。
やっぱり何度見て思うことが胸がな……。
「……一夏?」
「は、はいっ!?」
「……後で覚えておきなさいよ」
……何故、私の考えていることがばれてしまうんだ?
そんなやりとりをしているとステージ中央にいたISがこちらに近づいてくる。それを合図に私と鈴は再度、武器を構える。
「―――来るわよ!」
「あぁっ!」
そして私達は敵に向かって同時に飛び出して行った。
「もしもし!?織斑君聞こえますか!?鳳さん!?返事をしてください!?」
ISのプライベート・チャンネルで一夏と鈴に呼びかけるが返事は返ってこない。ちなみにプライベートチャンネルは声に出す必要性がないのだがそんなことを気にせず一夏と鈴に呼びかける。傍から見ると大声で独り言を喋っている感じだ。つまり、そのことを知らない人が見ればかなり危ない人に見えるだろう。
「山田先生。そんなに焦っても仕方がないだろう……」
「お、織斑先生……」
千冬は、はぁ、とため息をつきながら真耶に言う。
「いいか?教師とはどんな時でも生徒を見守るのが大事なんだ。だから―――」
「あの~織斑先生?」
「……なんだね山田先生?今良いところなんだぞ?」
「……オルコットさんが今にも死にそうなんですけど」
真耶は千冬の腕の中にいるセシリアに指をさす。状況を簡単に言うとセシリアは千冬にヘッドロックされていた。セシリアはかろうじて意識を保っていた。
「お、織斑先生……」
「なんだオルコット?私は山田先生に生徒と教師の関係について話しをしている最中なんだが」
「な、何故わたくしがこんな目に遭っているのですか?」
「たまたまそこにいたからつい首を絞めたくなってな」
「危ない人ですわ!?しかも先ほどまで生徒と教師について話していたのに!?」
「はて?そんな話をしたか私は?」
「お、織斑先生!首がさらにしま……ぐぇっ!?」
千冬はさらにセシリアの首を絞める。するとセシリアは魂が抜けたかのようにぐったりする。千冬はつまらんと言い放ちセシリアを地面に放り投げた。……かなり酷い扱いである。
「あ、わかった!」
真耶は手をポンと叩き千冬に言い放つ。
「織斑君のことが心配なんですよね!」
「………………」
沈黙した千冬に真耶は言葉を続けて言う。
「たった一人しかいない兄弟ですものね!」
「………………」
「わかりますよその気持ち!可愛い弟が心配する気持ち!わかります!」
「………………」
イヤな沈黙が広がる。そして真耶は悟った。あ、私またやらかした、と。すると千冬がゆらりと体を動かしながらこちらに近づいてくる。
やばいと思った時にはすでに遅し。真耶の首はすでに千冬の腕の中に納まっていた。
「ち、違うんですよ!決して嫌味とかそんなんじゃありませんからね!?」
「……最後に言い残すことは?」
「え!?え、えっと……テヘぺろ?」
いつの時期かに流行った言葉を言う真耶。それに対し千冬は静かに告げる。
「……一回死んで来い」
ゴキッ!!
「ギャアアアアアアアアアアッッッッッッ!?!?」
真耶は絶叫を上げセシリア同様に口から魂が抜けていた。セシリアとは違い千冬は真耶を勢いよく放り投げる。真耶は顔を地面につけ尻を上に上げた状態になっている。傍から見るとかなり惨めな姿になっていた。
「全く……。どいつもこいつも馬鹿ばかりなのか?」
先ほどと同じくため息をつく。そして千冬は自分の周りを見渡して気づいた。
「……篠ノ之がいないだと?」
気づいたときにはすでに遅かった。箒がいなくなってから時間は随分と経っていた。
「くっ……!」
これで四度目!
先ほどから私達は鈴が敵ISに猛攻を繰り広げ、隙が開き次第私が攻撃をするといったパターンをしているのだが未だに攻撃は当たらなかった。
「一夏っ!一旦下がって!」
「わかった!」
普通の相手ならかわせないほどの角度と速度で攻撃をしている。だが、敵の装備されている全身に付けたスラスターの威力が異常なのだ。零距離からの攻撃でも、いとも簡単にかわされてしまう。
鈴の猛攻は凄まじかった。さっきそこで戦っていた鈴とはかけ離れていた。多分、セシリアよりも強いと思う。今思うと試合中、鈴は手加減でもしていたんだろう。
……悔しい。そう思った。結局のところ私は鈴の本気を引き出せなかったのだろう。
「一夏っ!」
「―――ッ!?」
目の前にビームが通り過ぎる。
今はそんなことを考えている場合じゃない!私は再び集中をする。
しかし改めて思うと敵の行動が無茶苦茶なのだ。敵ISは攻撃を避けた後、必ず反撃に転じてくる。そこまではいい。だが、方法が無茶苦茶だ。自身の長い腕をでたらめに振り回しながら接近してくる。しかも、回転速度が高速なうえビーム砲撃までしてくる。これじゃ下手に近づくことさえできない。
「ちっ!めんどくさいわねコイツは!」
敵のビーム砲撃をかわした所で『龍砲』で攻撃をする。
――――がしかし、敵の腕はその見えない衝撃を叩き落す。その隙に接近し青龍刀で攻撃するがもう片方の腕で防御をする。
「ちぃ!」
鈴は舌打ちをしつつその場から何とか離脱をする。そして離脱した鈴は私のところにやってくる。
「鈴大丈夫か!」
「平気よ。……それよりも一夏、あんた残りの残量はどれくらい?」
「……かなりやばいかな」
『零落白夜』を発動する場合、あと一、二回しかできないだろう。それほどまでもエネルギーが底を尽きていた。
「鈴の方はどうなの?」
「こっちもかなりヤバイわね。……迂闊に接近できないわね」
「……どうしよう」
あれから随分と時間が経ったのにも関わらず、未だに教師達の救援が来ない。……おそらく何かあったのだろう。これからどうするかを考えている時、ふと違和感を感じた。
「……妙だ」
「えっ?何がよ?」
「それは……なんて言うか」
うーんと唸り声を上げる。そして、手をポンっと叩く。
「そう、あいつってさ……なんか機械じみてないか?」
「?言っている意味がよくわからないわ」
「要は本当に人が乗っているのかっていうこと」
「当たり前でしょ。ISは操縦者がいないと動かない――――」
とそこまで言って鈴は言葉を止める。
「――――そういえばあたし達が会話している時には攻撃を仕掛けてこないわね。まるで興味があるかのように聞いているように見えるわね……」
「もし無人機なら試したいことがあるんだ」
「試したいこと?」
「ああ」
そう言って私は『雪片弐型』を見せる。すると鈴は「勝算は?」と聞いてくるのに対し、私は「ある」と答える。
「……わかったわ。一夏が何を試したいのかはわからないけど勝算があるなら手伝うわ」
「……ありがとう」
―――本当にいい幼馴染をもったと思う。
「それで?あたしは何をすればいいの?」
にやりと不敵な笑みを浮かべながら聞いてくる。それに対し、私は敵に指でさしながら告げる。
「あいつに向かって全力で『龍砲』を撃ってくれ」
「……当たらないわよ、絶対」
そう、『龍砲』で全力で攻撃しても避けられるのは目に見えている。だが、私の狙いはそこじゃない。むしろ当てることが目的ではないのだから。
「構わない」
「……わかった。じゃあ、早速―――」
私が突撃姿勢に入り、鈴が相手に『龍砲』を撃とうとした時、敵が私達とは反対側に向き始めた。何故、急に背を向けだしたのか疑問に思いその方向を向くと……箒の姿が見えた。
「…………」
私はつい先ほどまで千冬さん達と一緒にいたのだが、私はその場から抜け出した。あの後、試合の途中に謎のISが現れた。それに対し、一夏と鳳は自分達が残り時間を稼ぐと言っていたらしい。そのことを傍で聞いていた私は居ても立ってもいられずその場から駆け出してしまった。
……しばらく辺りをうろついてみるがどこの扉もロックされており一夏達のもとに行けない。そんな時、私の中で焦りが生まれていた。鳳は試合を見たところ大丈夫だろう。……問題は一夏の方だった。一夏は鳳とは違い、ISの稼働時間はまだ一ヶ月そこらなのだ。いくら剣道で腕がいいとは言っても、じゃあISに乗れば強いのかといえばそれとこれとは話が別だ。
私には鳳や一夏のように専用機持ちではないし強いわけでもない。だが、私にはきっと一夏の支えぐらいにはなるだろう。そう思いながら出口を懸命に探す。
しばらく辺りを走り回ると扉が開いていた場所を見つけた。上を見るとそこには『中継室』と書かれたプレートが視界に映った。私は中継室に入ると一夏達が敵と交戦しているのが見える。
何か一夏の役に立てないだろうかと思考を錯誤させると目の前にマイクが置かれていた。
「……これを使えば」
一夏を応援できる。そんなことを考えながらマイクに手を伸ばすと……敵のISがこちらに向かって手をかざしていた。すると手の中が光が収縮されていった。
「……えっ?」
何故、気が付かなかったのだろう。自分が標的にされないとは限らないのに。私自身が相手を肉眼で確認できるというのに相手ができないわけがあるはずがない。そもそも敵はISを纏っているのだぞ。こちらより遥かに周囲を確認できるというのに……。
……本当に私は何をしているのだろう。そう思っていると――――敵の腕が地面に落ち始めたのだ。
「――――箒っ!?」
何故、あんな場所に箒がいるのかがわからないがこのままでは箒が殺されてしまう。そうなる前に私は鈴に呼びかける。
「鈴っ!!速く!!」
「わかったわ!」
両腕を下げ、肩を押し出すような格好で『龍砲』を構える鈴。最大出力砲撃を行うために補佐用の力場展開翼が後部に広がった。そして私は、その射線上に躍り出る。
「ちょ、ちょっと一夏!?何してんのよ!」
「いいから撃ってくれ!」
「ああもうっ……!わかったわ!」
高エネルギー反応を背中に受け、私は『瞬間加速』を作動させる。
――――『瞬間加速』
原理は後部スラスター翼からエネルギーを放出しそれを内部に一度取り込み、圧縮して放出する。その際に得られる慣性エネルギーを利用して爆発的に加速をする。……つまり、外部からのエネルギーでもいいのだ。
鈴の『龍砲』による砲撃をぶつけられる。背中の骨、筋肉から悲鳴が上がりながら私は―――加速した。
「――――ハアァァァッッッ!!!」
右手に持つ『雪片弐型』が強く光る。通常より二回り大きいエネルギー状の刃を形成していた。残りのエネルギーの九割以上をエネルギー転換をした。これで外れれば只ではすまないだろう。だが、当たれば必殺の一撃になるだろう。
(これから私は関わる人達を守る!だから、負けるわけにはいかない!)
そして、私の必殺の一撃は、敵の右腕を切り落とした。
その際に、敵の反撃で左拳を受けてしまう。追撃というばかりに敵は零距離からビームを叩き込もうとしていた。
「一夏っ!」
鈴の叫び声が聞こえる。――――大丈夫、私は一人ではないから。
「―――セシリアッ!!」
『わかってますわ!』
刹那、客席から『ブルー・ティアーズ』の四機同時狙撃が敵を打ち抜く。
そう、先ほどの攻撃のときに敵の腕と同時に遮断シールドを破壊した。威力を高めたことによって遮断シールドも破壊することができたのだ。
セシリアの攻撃をまともに受けた敵は地面へと崩れ落ちていく。
『わたくしが何故来るのがわかったのですか?』
「なんとなく……かな」
セシリアに向かって信じていたからとは少し恥ずかしくて言えなかった。
「なんにせよこれで終わりだ――――」
ブンッ!
「―――ガハッ!」
私はまだ、動けているISの左腕で殴られた。回避もできずにそのまま地面に頭を打ってしまう。そして、そのまま意識を失ってしまった。
余談なんですが活動報告を見てくだされば大体の状況がわかるようにしていますので宜しければ見てくださるといいな~と思います