※この作品はR-18です。

IF~インフィニット・ストラトス~   作:アブソリュート

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どうも~お久しぶりです!
二ヶ月も書いていないので結構、文がへんかもしれません。
それと視点が結構、移り変わるので分かり辛かったらすいません。

千冬→デュノア。箒→シャルル。三人称→シャルル。

分かり辛かったら感想までお願いします。
それと、今回はキャラが変わっていたりするかもしれません
それでもいいなら……どうぞ!!


第二十六話「真実」

 「はぁ……やっぱり、この時が安らぐ時間だね」

 

 模擬戦を終えた後、急いで更衣室で着替えて寮の自室に戻ると、同居人の箒はまだ戻ってきておらず一人だけという状況だった。

 いつもはアリーナの更衣室のシャワールームを利用している。誰にも見られずシャワーを浴びれるのはあそこが何かと都合が良かった。彼女が帰ってくる前にシャワーを浴びようと思い、シャワールームに向かおうとする。しかし、シャワールームに向かう途中にあることを思い出す。

 

 (あっ……あれ出すの忘れてた)

 

 最近、ボディーソープが切れ掛かっていたのを思い出し、予備をクローゼットから取り出すのを忘れない。

 

 「よし。これで大丈夫だよね」

 

 忘れ物がないか周囲を確認してから再びシャワールームに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 「……ふぅ。やはり、あれはどうにかならないものなのか?」

 

 打鉄を戻すだけに随分と時間が掛かってしまった。専用機持ちとは違い、書類の枚数が多い。それだけではなく、名前以外にも書くことがあったせいだ。

 しかも、毎回打鉄を使うたびに書類の申請をするとなると面倒で仕方がない。

 

 「まあ、私がどうこう言っても仕方がないのだがな」

 

 申請についてはどうこう言える立場でもないので諦めることにした。そんなことを考えている内に、自分の部屋へと辿り着く。

 

 「すまない。今帰った」

 

 部屋のドアを開くがそこには誰もいない。だが、シャワールームから水音が響く。

 

 (なるほど。今、シャワーを浴びているのだな。―――確か、昨日ボディーソープが切れ掛かっていると言っていたな)

 

 シャルルが言っていたことを思い出し、予備のボディーソープを取り出そうとするが―――。

 

 (……んっ? シャルルの奴め、間違えて予備のシャンプーを持って行ってしまったか。仕方がない奴め)

 

 シャルルの持っていったシャンプーだが、見た目はボディーソープと変わらない。しかし、側面に書いてある字を見れば、すぐにわかることなのだが……。

 

 (どうにも間違えてしまうのだが……どうにかならないものか)

 

 ついつい側面に書いてある字を見ないで持っていってしまう。どうせなら間違えずに済むように色でも何でもいいから分けてほしい。

 私も何度も間違えて持って行ったことがある。

 

 (シャルルも困っているだろう。……仕方がない)

 

 シャワールームは洗面所兼脱衣所とドアで区切られている。とりあえず脱衣所まで持って行って、シャワールームのドアの入り口にでも置いとこう。

 そう思って私は洗面所へと入る。

 ガチャ。

 ―――ガチャ、だと?

 ふむ。ドアは先程開けて入ってきたのだから、今またその音が聞こえるのはおかしい。……となると、そうか、シャルルがシャワールームのドアを開けたということか。

 

 (……まて。そうなるとシャルルの今の状態は―――)

 

 必然的に裸ということになる。

 箒は、恐る恐る顔を上げると、目の前に立っている人物が青ざめた顔をしている。

 

 「………………」

 

 「………………」

 

 シャワールームから出てきたのは『女子』だった。

濡 れた髪はわずかにウェーブがかかったブロンドで、柔らかさとしなやかさを兼ね備えている。すらりとした体は脚が長く、腰のくびれが実質的な大きさ以上に胸を強調して見せている。

 金髪碧眼(きんぱつへきがん)という外見から日本人でないことにすぐ気が付く。そのせいだろうか、サイズ的にはおそらくCカップくらいのバストが大きさとは関係なく妙に際だっている。水を弾く若々しい肌には珠の雫が乗っていて、まるで宝石をちりばめたかのように美しい。

 だが、目の前の女子には見覚えがある。それはそうだろう。なんせ、この部屋には二人しかいないのだ。当然、思い当たる人物も限られる。

 

 「……あ、その、だな。間違えて予備のシャンプーを持って行っただろう」

 

 「えっ? あ、ほ、本当だ」

 

 「な、なら、それを渡せ。その代わりこちらを使え」

 

 ブロンドの少女は胸を隠しながらシャワールームへ戻り、間違えて持ってきた予備のシャンプーを渡す。そして、今度は本物のボディーソープを受け取る。

 

 「では、私はあっちに戻っているから」

 

 「う、うん。あ、ありがとう……」

 

 お互いに用を済ませるとブロンドの少女はシャワールームへと再び戻り、箒は脱衣所から出てドアをゆっくりと閉める。

 

 「………………」

 

 箒は一旦、深呼吸をしてから制服のポケットに手を入れて携帯を取り出す。そして、ある人物に連絡を入れる。

 

 『……どうした、篠ノ之』

 

 「ち、千冬さん!? た、大変です!」

 

 『どうした。何かデュノアとあったのか?』

 

 「と、とにかく大変なんです!! こちらに来ていただけないです―――」

 

 「うああぁぁぁぁぁ!?」

 

 背後から悲鳴交じりの大声を出しながらこちらに近づいてくる気配がした。ハッと後ろを振り向くと、身に何もまとってないブロンドの少女が向かってきた。

 少女は箒の持っている携帯を奪おうと言わんばかり手を伸ばしてくる。

 

 「なっ!? 待て! 何をするんだ!」

 

 「ちょ、ちょっとまって! 話を聞いて欲しいんだ!」

 

 「ならば、何故、携帯に手を伸ばしてくるのだ!」

 

 「だ、だって……だって!」

 

 相当混乱しているのか何を言っても話が通じる様子が見られなかった。何とか携帯を盗られないように身を捩ったその時―――。

 

 「なっ!?」

 

 「きゃあ!?」

 

 お互いの足が絡まりベットに倒れこむ。

 

 「うっ……だ、大丈夫か?」

 

 「う、うん……大丈夫だよ」

 

 箒は身を起こし、下敷きになっている少女に目を向ける。

 

 「………………」

 

 「………………」

 

 ―――綺麗だ。

 同じ女なのにどうしてこうも違うのだろう。例え同姓だろうと視線を外さなくてはいけないとは頭ではわかっていても目は釘付けになってしまっていた。自分だってそんなに見つめられていたら嫌だ。けれど外すどころかさらに視線を向けてしまう。

 ブロンドの少女は見られて恥ずかしいのか顔を赤く染めて目をキュッとつぶり耐えている様子だった。

 

 (……何故だ。何故、こんなにも心臓がドキドキしているのだ)

 

 静まった部屋だと自分の心音がよく聞こえる。

 ……私は何に対して心臓が高鳴っているのだ? まさか目の前の少女を見て気が昂(たかぶ)っているというのか? そ、それでは、まるで私が―――。

 

 (いやいや!? そんなことはある筈が無い!! 私はそっちの趣味はない!!)

 

 だが、どういうわけか心臓の音は速くなる一方で止まる様子が無い。どうすればいいのかと思っていると部屋のドアが開く音が聞こえる。

 

 「どうした!? 何があった!!」

 

 「「あっ……」」

 

 シーン。

 

 慌てて部屋に入った千冬が箒とシャルルの姿を見た瞬間、部屋の温度が下がるのを感じた。千冬の目にはシャルルが胸を両手で抑えている。しかもジャージだの寝巻きだのといった衣類を身に纏っていなかった。箒に関してはシャルルを四つん這いに跨がり見下ろしている。

 千冬がまず思ったことはただ一つ。

 

 「じゃ、邪魔をしてすまなかっ、た?」

 

 それだけを告げて部屋から出ようとすると箒がベットから転げ落ちながらもドアの方へ走って行く。

 

 「ち、千冬さん!? 待ってください! これには訳があるんです!!」

 

 「どういう訳か知らんがお幸せにな」

 

 「いやいや! 違いますから話を聞いてください! それとドアを閉めないで下さい!!」

 

 「確かにここは女子高なのは分かる。だが、そんな行為をこんな場所でするとは……流石だな。姉と同じ過ちを犯そうとするとは」

 

 「もうツッコミ所満載ですが、まず話が噛み合っていません! それと姉さんはそんなことをしていたんですか!?」

 

 そんな……まさか自分の姉がそんなことをしていたとは思いもしなかった。でも、心の何処かでそんなことをしていると思ったことは無いことはない。いや、むしろやっていそうだ。なんせ姉(ねえ)さんだから。

 それよりも驚きなのが千冬さんが混乱していることだ。普段は凛々しく、規律に厳しい。しかし、公衆の目の前でも一夏に甘い。一夏の話ではたまにスキンシップとしてキスされたりもするらしい。

 大体、一夏にそんなことをするくらいなのだからこんなことで混乱されるとは思わないだろう。

 

 「千冬さーん! お願いですから落ち着いて話を聞いてください!」

 

 「大丈夫だ。私はいつでも冷静だ。それと一夏が大好きだ」

 

 「それは知っています! というか今そんなこと言うこと事態おかしいですからね!?」

 

 そんな箒と千冬のやりとりを部屋のベットから傍観していたシャルルはただ苦笑いをすることしか出来なかったのである。

 

 

 

 

 

 あれから三十分ほど経って、ようやく話が出来る状態へと移った。千冬は自分がしたことに気づいたのか顔を赤らめつつも平然とした顔を装うとしていた。

 箒は千冬とのやりとりが効いたのか、ぜぇぜぇと息を切らしている様子だった。

 シャルルは箒と千冬が騒いでいる間、自分の格好が裸だと気づき、シャープなラインが格好いいスポーツジャージを着ている。いつもと違う点といえば、胸を隠すための特別製コルセットをしていないことだった。

 

 「まったく……お前たちがあんなことをしていなければ、こんなに時間が経たずに済んだものの」

 

 「……えっ? それって私達が悪いんですか?」

 

 (確かにそうかもしれんが千冬さんだって取り乱さなければ良かったんじゃ……)

 

 そんなことを考えていると千冬さんが怪訝そうな顔でこちらの方へと視線を向けてくる。

 

 「なんだ篠ノ之? 私に何か言いたいことでもあるんじゃないのか?」

 

 「い、いえ……別に言いたいことだなんて」

 

 「そうか……もし、私が取り乱さなければ良かったなんて考えていたなら」

 

 「……いたなら?」

 

 「私と一週間地獄の特別授業をしようと思っていたところだ」

 

 「………………」

 

 一夏……お前はどうしてこんなにも理不尽な姉とやっていけるのだ? もしかしたら私の姉さんよりも酷いぞ。今度、秘訣を聞くとしよう。

 

 「それよりも、まずはデュノア」

 

 「……はい」

 

 千冬がシャルルに声を掛けるとシャルルは姿勢を正し、千冬の視線に目を向ける。そして、疑問に思ったことをぶつける。

 

 「何故、男のフリをしていた?」

 

 「それは、その……実家の方からそうしろって言われて……」

 

 「実家といえばデュノア社の―――」

 

 「はい。僕の父がそこの社長なんです。そして、その人から直接の命令を受けたんです」

 

 ……わからん。そこまでする理由が果たしてあるのか? わざわざ性別を偽って転入してまで何を得ようとしているのか。

 

 「命令……か。確かに会社のためとならば手段を選ばないかもしれん。だが、仮にも家族にそこまでのリスクを背負わせるとは―――」

 

 「それは……僕が愛人の娘だから」

 

 「「………………」」

 

 ―――絶句。

 なるほど。そうか、そういうことか。

 私は両腕を組み、周囲に気づかれないように力を込める。自身の骨がミシミシと悲鳴をあげる。まだだ。まだ、最後まで話を聞いていない。

 

 「引き取られたのが二年前。ちょうどお母さんが亡くなった時、父の部下がやってきた。それで、色々と検査する過程でISの適応が高いことがわかって、非公式ではあったんですがデュノア社のテストパイロットをすることになったんです」

 

 デュノアは、おそらく言いたくないはないであろう話をしてくれた。だから私は、ただ黙ってしっかりと耳を傾けた。篠ノ之も同じく黙って話を聞いていた。だが、どこか憤(いきどお)りを感じさせる。

 

 「父に会ったのが二回ほど。会話は数回くらい。普段は別邸で生活しているんですが、一度だけ本邸に呼ばれたんです。そういえば、あのときは酷かったなぁ。本妻(ほんさい)の人に殴られたっけ。『泥棒猫の娘が!』って。母さんもちょっとくらい教えてくれたら、あんなに戸惑わなかったのに」

 

 あはは、と愛想笑いを繋げるデュノアだったが、その声は乾いていてちっとも笑ってはいなかった。私も篠ノ之も愛想笑いで返すことが出来ない。それはデュノアも望んではいないだろう。

 

 「それから少し経って、デュノア社は経営危機に陥った」

 

 「むっ? デュノア社は量産機ISのシェアが世界第三位だったはずでは?」

 

 箒は疑問に思い、口に出すと千冬が口を挟む。

 

 「それは間違ってはいない。しかし、結局のところリヴァイブは第二世代型。ISの開発は莫大な金が必要とされる。ほとんどの企業は国からの支援があるからこそ成り立っている。それで、フランスは欧州連合の統合防衛計画『イグニッション・プラン』から除名されているのだ。第三世代型の開発は急務だった。国防のためでもあるが、資本力で負ける国が最初のアドバンテージを取れないと悲惨なことになる」

 

 そうだろ、とデュノアに訊くと、その通りです、と答えが返ってくる。

 篠ノ之は始めは、ふむふむ、と頷いていたが途中でわからない顔をしていた。……篠ノ之。つい先日、授業で出ただろう。しかも私の授業でな。

 

 (後でみっちりと放課後授業をしてもいいかもしれん)

 

 千冬はひっそりと心の内にしまっておくことにした。

 

 「そして、現在、欧州連合で第三次イグニッション・プランの次期主力機の選定中なんだ。今のところトライアルに参加しているのがセシリアさんのティアーズ型(モデル)、ドイツのレーゲン型、それにイタリアのテンペスタⅡ型。今のところ実用化ではイギリスがリードしているけど、まだ難しい状況なんじゃないかな? そのために実稼動データを取るために、IS学園に来たんだと思う」

 

 「ほぉ……よく知っているな。まあ、私の授業で言ったことなんだがな」

 

 「えっ?」

 

 千冬がそう言うと箒は思わず素っ頓狂な声を出す。そして、箒はハッと気づき口を塞ぐがすでに遅し。

 

 「……篠ノ之」

 

 「は、はい」

 

 「お前は私とこれから二週間、楽しい楽しい放課後授業をすることに決めた。みっちり扱いてやるから楽しみにしておけ」

 

 「………………」

 

 もはや楽しいを通り越している気がします……。というか声を出さなければよかった。

 

 「まあ、篠ノ之のことはどうでもいいんだ。デュノア、続きを頼む」

 

 「えっと、話を戻しますね。それでデュノア社でも第三世代型を開発していたんですが、元々遅れに遅れての第二次世代型最後発だから。圧倒的にデータも時間も不足していて、なかなか形にならなかったんです。それで、政府からの通達で予算を大幅にカットされたんです。そして、次のトライアルで選ばれなかった場合は援助を全面カット、その上でIS開発許可も剥奪するって流れに……」

 

 ―――そうか。そういうことか。

 

 「なるほど……そういうことか」

 

 「どういうことですか?」

 

 千冬の言葉に疑問を抱いた箒は質問するとシャルルが代わりに答えた。

 

 「つまりね? 僕が男装していた理由ってね、注目を浴びるための広告塔。それに―――」

 

 シャルルは箒から視線を逸らし、苛立ちを含んだ声で続けた。

 

 「同じ男子なら日本で登場した特異ケースと接触しやすい。可能であればその使用機体と本人のデータを取れるだろう……ってね」

 

 「それは、つまり―――」

 

 「そう、白式のデータを盗んでこいって言われてるんだ。僕は、あの人にね」

 

 やはり、か。千冬は今の話で確証した。どうしてそこまでのリスクを担ってまでIS学園に転入してきたのか。つまりは会社の危機を救うために娘を送り込みデータ採取をしてこいということか。特にIS世代で最も注目されているのが白式だと言ってもいいだろう。なんせ、私が使っていた暮桜に 近いモノを持っているのだ。……当然か。

 そして、話を聞く限り、その父親はただ一方的にデュノアを利用しているのだろう。たまたまIS適応があった、それなら使えると、そんな感じか。

 

 「とまあ、そんなところかな。でも、もう箒や織斑先生にもばれちゃったし、きっと僕は本国に呼び戻されるだろうね。デュノア社は、まあ……潰れるか他企業の傘下(さんか)に入るか、どのみち今までのようにはいかないだろうけど、今となってはどうでもいいことかな」

 

 「「………………」」

 

 「なんか話したら楽になった気がするよ。箒、聞いてくれてありがとう。それと、織斑先生。ウソをついていてスミマセンでした」

 

 「―――いいのか、それで?」

 

 深々と頭を下げるデュノアに、私は問いかけた。

 

 「……えっ?」

 

 「お前はそれを望んでいるのか? 嘘をついていながらも楽しそうに生活をしていただろう? 友達も出来て、これから学園生活が始まるというのに、親に帰って来いと言われただけで、はい帰ります、と言って帰るのか?」

 

 「ち、千冬さん!!」

 

 千冬はシャルルをじっと見つめて思ったことを告げる。その言葉を聞いていた箒が止めようとするが止まらない。そんな千冬の言葉に耳を傾けていたシャルルが唇を噛み締め、大声で怒声をあげる。

 

 「―――ッ!! 織斑先生に僕の気持ちなんかわかるわけないじゃないですか!? 『ブリュンヒルデ』と呼ばれて不自由なく過ごしている貴女に何がわかるって言うんですか!!」

 

 「………………」

 

 「親に良いように利用されて使えなくなったら捨てられる。到底、貴女には理解出来ないことだと思いますけど!!」

 

 はぁはぁ、と息を切らすシャルル。思いに思ったことをぶつけられた千冬は、ただ黙って聞いていた。

 

 「……言いたいことはそれだけか」

 

 シャルルは視線を千冬の方へと向けると鋭く、冷たい視線が突き刺さる。だが、目の奥底には何かを感じさせた。

 

 「デュノア、お前は言ったな。親に捨てられる気持ちなど私には理解できないと」

 

 「……えぇ、言いました。それがどうかしたんですか」

 

 「私は―――私と一夏はその『親』というのに捨てられた」

 

 デュノアが戸惑いと驚愕の表情をしている。私は組んでいた腕を解き、握りこぶしを力一杯込める。

 

 「お前の言いたいことは理解できる。だが、どんな形であれ親は親だ。ここまで育ててもらった。そこに愛情があるかどうかはわからんが。そして、一時でも母親と幸せに住んでいたのだろう?」

 

 握り締めていた拳から数滴の赤い雫が床に落ちていく。痛みがあってもそんなことは関係ないと言わんばかりに強く握り締める。

 

 「だが、私の親は一夏を産んですぐに私たちを捨てたんだ。『親』という義務を放り投げた。幼い頃の私たちには、その理由すら教えてもらえなかった! 一夏なんて親の顔を知らずに育ってしまった。……それがどんなことかも知らずに」

 

 「………………」

 

 「不自由なく過ごしただと? 親に捨てられ子供二人で生きていくのがどれだけ、辛く、大変なことなのか、お前に理解できるのか!?」

 

 シャルルは千冬が言った意味がようやく理解できた。一夏の資料の際に『両親不在』と書かれていたことに。シャルルは申し訳なさそうに顔を伏せる。

 

 「……すみませんでした。僕、そんなことがあったなんて知らずにあんあことを言ってしまって」

 

 「……私もこんな話をして悪かった。今のことは忘れてくれ」

 

 「ぜ、善処します……」

 

 「ところで、シャルルはこれからどうするのだ?」

 

 箒がシャルルに訊くと、うーん、と唸りつつも口を開く。

 

 「どうって……時間の問題じゃないかな。フランス政府もことの真相を知ったら黙っていないだろうし、僕は代表候補生をおろされて、よくて牢屋とかじゃないかな」

 

 「それでいいのか?」

 

 「良くはないけど……方法があるわけじゃないし」

 

 そう言って見せたシャルルの微笑みは、痛々しいものだった。助かることを諦めていることが許せない。同時に、自分には友人を助けることが出来ないのかと思うと情けなくて仕方がなかった。

 考えることが苦手な私だが脳をフル活用して考え付いた結果……。

 

 「……方法なら、ある」

 

 「……えっ?」

 

 「特記事項第二十一、本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものである」

 

 「それって……」

 

 そう。これは特記事項五十五個のある一つ。前に一夏と話していたのを思い出した。

 

 「―――つまり、この学園にいれば、少なくとも三年間は大丈夫ということだ。その間に何か方法を探せばよいのではなか?」

 

 「すごいね、箒。よく覚えてたね」

 

 「ま、まあな」

 

 「なら私の授業の時もそれぐらい覚えろ」

 

 「あ、はは、は……」

 

 苦笑いを浮かべる箒に千冬はため息をつく。

 

 「まあ、何にせよ。理由はわかった。あとはどうするかはお前が決めろ」

 

 「……いいんですか?」

 

 「いいもなにも私には関与することは出来ん。せいぜい悩め、小娘」

 

 それだけを告げて、千冬はそっと部屋から出るのであった。

 そして、部屋から出た直後、イギリス少女の悲鳴が廊下に響き渡ったのかは知る由もなかった。

 




……まあ、千冬さんも普通の人なんですよ。
誰だって混乱すると思います(多分)
今回は書いていてちょっと楽しかったです。
それと、8000字書けたので結構満足していたり。
次回はいよいよ銀髪軍人VSチャイナ&メシマズ(オイッ)対決です。
それでは、また!!
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