「世界にはな、意思があるんだ」
「………は?」
何その面倒臭そうな顔。ちょっとムカつくんだけど。
荒れた荒野の恐らく真ん中の大地を、少女と青年は歩いていた。
うむ、まさに旅の道中と言う感じがしていいな。喉渇いたけど。
「水」
「ない」
あっさりとした返答に肩を落とす。歩き出してもう半日は経ったのに町の面影も見えてこないとかどうなってんだよコンチクショウ。
「ていうか、水が飲みたいなら自分で出せばいいでしょ。飲み干したのも自分なんだから」
「教えてやろう。魔力はな、使うとそれなりに腹も減るんだぞ?」
「それはラントだけ」
すぐに一蹴され、いい年ながらも涙が出てくる。おっと、水分が勿体無い…。
「いいから君の分の水を少し分けろ下さい」
「却下。自業自得でしょ、自分の分を飲み干したのは」
この幼女はキツイことを言いよる。一滴くらい分けてくれてもいいのよ?
それにしても、この流れだと日没までには町に着きそうにないな。仕方ない、今日はここで野宿にしよう。
数時間前までカンカンと熱線を飛ばしていた太陽は地平線に沈み掛け、極寒の夜に切り替わろうとしていた。
「と言うわけでそれなりに良いテントを建てようと思います。潔く手伝いなさい」
「魔法の練習するから無理。寧ろ一人でやった方が絶対早いでしょ」
「折角コミュニケーションを図ろうと提案したのに…夕食がパッサパサに乾燥したパンになってもいいのか?」
「死なないからいいもん」
「またこの子は強がっちゃって…お母さん困っちゃうわ」
「誰がだ!」
「まぁ一応一人でも出来るけどさ。あんまり遠く行くなよ? 飯出来たら呼ぶから、さっさと行って来い」
「…ん」
テクテクと歩いて行く我が儘少女基(もとい)幼女。ったく、お爺ちゃんは疲れたよ。
溜め息を一つ吐き、右手の中指と親指で指パッチンをする。
ぱちんっ、と乾いた音が鳴るとどこからともなく動物の毛皮で作られたテントが出現し、無造作に地面に置かれる。
次は指パッチンを連続して五回程鳴らすと、テントは誰の力も借りずに浮き上がり形を成していく。
あっという間に高さ三メートル、幅五メートル、長さ三メートルの長方形型テントが出来上がった。
あいつが言うとおり、俺一人で準備した方が早いって言う。いやー、魔法って便利ね。
テントの中に入って肩に掛けていたバッグを下ろし、テント内の中心に両手を向けて同時に指パッチンする。するとボッ、と焚き火が出現し、テント内を明るく照らしてくれる。
バッグから干し肉と安物のパン、それにオレンジを二つ取り出し、木皿に乗せて地面に置いておく。
さて、飯の準備も終わったし呼びに行こうかな。まだ十分も経ってないけど。
いやー、毎度の事ながら時間が掛からないな。
テント内を出て呼びに行って見ると、数十メートル先で白い魔力光を発見した。
さっきから頑張ってるみたいだけど、やっぱり全然安定してないなー。
「まだまだ大雑把だぞー。少ない魔力量で流れを均一にして、速く操作してみろよー」
「うっさいやってる!」
怒られた。
だがそれで集中が切れてしまったのか、緩急が激しかった魔力の流れは更に乱れる。
「くっ、ううう…っ!」
眉間に皺寄せちゃってまぁまぁ………可愛いなぁ。
「はーい、やめやめ。全然駄目だ、それ以上やると魔力回路イカレるぞ」
パンパンと手を叩いて中止させ、近くに寄る。
「全然まだまだだなー。まぁ魔力っつーもんにまだ慣れてないってのもあるんだろうけど…にしても、雑だねぇ。魔力量はそこそこあるのに、勿体無い」
「…これからだもん」
「これからっていつよ。百年後? 二百年後?」
「明日には慣れてる!」
「それは無理だろ」
何言ってんだこの金髪吊り目幼女は。