個人的にエタブリだと思います(曖昧)
珍しく修行に付き合う。
師としては失格もクソもない言い方だが、事実俺が人の修行に付き合うことは稀である。
エヴァの時はまぁ、一緒に行動していたということもあり珍しいことではなかったが、比較的平和な世の中で修行することなど滅多にない。それも自分の命を懸ける戦法を身に付けるなんて現実的じゃない。人の事言える立場じゃないけど。
それに教えるという点に関してはエヴァの方が断然いいだろう。あいつ自身苦労して、それこそ身が砕ける思いで今の今まで生き残ってきたんだ。俺みたいにある意味適当に戦闘を繰り返してるわけじゃない。しっかり考え、行動し、観察し、状況に応じて自己判断する。俺が直感タイプだとすれば、エヴァは努力タイプだ。それも数百年の努力。
魔法に関しても、俺よりエヴァの方が詳しいのにね…。治癒系は俺のが詳しいけど。
「ラントさーん、この治癒魔法ってどうやるん?」
「あー、これ結構難しいぞ。詠唱が端折れないから時間掛かるし、魔力も結構食うし。利点は…そうだなー、一定時間中度の治癒魔法が掛かってる状態になるくらいか」
「魅力的な利点だとは思うんやけどなー」
「そうか? 腕切られたら再生出来ないし、治癒出来る限度は精々骨折かそこらが限界だぞ?傷が大きければ大きいほど時間掛かるし」
「そう思うのラントさんだけや」
そうか? エヴァもあんまり使えないって…考えてみりゃあ吸血鬼に治癒魔法も何もないか、自動治癒するんだし。俺もするけど。
「でも、どうしてラントさんは治癒魔法がエヴァちゃんより手馴れてるんですか? ウチの記憶では、ラントさんもエヴァちゃんと同じく不老不死だったはずやけど」
「エヴァは無意識でも傷を負えば治癒される。一方俺は、治癒する・しないを選べるんだ。だから興に乗れば自動治癒させないこともある」
「えぇっ!? じゃ、じゃあもし自動治癒を切ってる時に死んでもうたら…」
「死ぬだろうね。でも復活するタイミングは自分で調節できるし」
「え、えぇー…」
「あ、理解しようとしなくていいよ? エヴァにも言われたでしょ、俺はアバウトな捉え方でいいって。その治癒魔法、出来るようになったら修行前にネギに掛けてみな」
「分かりました…」
どこか納得のいかない表情で刹那と明日菜、アルトリアが剣を打ち合っている場所までトボトボと歩いて行く。
俺はそういう存在だからねー、仕方ないね。
「にしても…」
三十メートルほど離れた場所では、アルトリアが刹那と明日菜に剣術を教えている。
西洋育ちのアルトリアが東洋育ちの二人に剣術(内片方は神鳴流派)を教えているというのは些かシュールだ。
確かに剣術は流派など数こそあれば基本は殆ど変わらない。やり方次第では互いの違いをカバー出来るだろうが…ま、いいか。戦えれば困らんでしょ。
思考の放棄なんかじゃないよ?
「…アルトリアの胸は成長させ甲斐がありそうだなぁ」
ガァンッ! と、模擬刀が右米神をスレスレで横切り背後の壁に突き刺さった。破片が痛い。
「(チッ…)すみません、手が滑りました」
「うわっ、ラントさんギリギリ…大丈夫ですかー!」
「アルトリアさん、お疲れであれば休みますか?」
「いえ、少々気が緩んでしまっただけです。お気になさらず」
嘘付け。明らかに狙ってたし外して舌打ちしただろ!
「明日菜ー、俺は大丈夫だぞー。んなことよりアルトリアァァ! テメェ何済ました顔kふいwfんvもg!!」
「後半何言ってるか聞き取れませんよ…」
自分でも理解出来ないことを言った俺はアルトリアに模擬刀を回収させるため呼びつけ、この際だからハッキリ言っておく。
「いいか、ハッキリ言わせてもらうぞ!」
「何ですか?」
「おっぱい揉ませろやぁぁぁあああつんっ!?」
ワシワシさせた両手をアルトリアのおっぱいに突き出したが、それより少し早くアルトリアは壁から模擬刀を抜き取り刀の面を俺の顔面に思い切り叩き付けた。
今日一の激痛が顔面を襲う。
「ひやあああ、いったぁい!」
「自業自得です、何しようとしてるんですか」
「ちょっとしたスキンシップのつもりだったのに…」
「嘘ですよね?」
「揉みしだく予定でした!」
「素直ですね」 パァンッ!
正直に話したんだから揉ませろよ。
「まぁ、私に一太刀でも入れたら何でもしてあげますよ」
「ん? 今何でもって言ったよね?」
「…限度はありますよ?」
「あれれ~? 騎士王様がそんな保険みたいな言い方してもいいのかな~? はっ! まさかもう、騎士の誇りが…ない…!?」
「あ・り・ま・す! いいでしょう、受けて立ちます! 先に気絶した方が勝者の言うことを何でも聞く! 文句はありませんね!?」
「そんなんでいいなら大歓迎だ! よーし、お兄ちゃん頑張っちゃうぞー!」
「刹那さん」
「何ですか?」
「…私達、どうしよっか」
「…一先ず、休憩を挟みましょう。ラントさんとアルトリアさんが手合わせをするようなので、それまでは」
「そうねー…」
十分後。
「で、何故私が審判なんだ」
「俺とアルトリア以外で一番戦闘経験長いし」
「…別にいいけどな。アルトリア、何か言いたいことはあるか?」
「? 特にありませんが」
エヴァンジェリンの問いの意図が解らず、アルトリアは疑問に思いながらも答える。
「そうか。ラントを幾らか知っている私が忠告しておこう。…全力で殺しに掛かれ。奥の手も全て使い、あらん限りの力をぶつけてやれ。そうすれば、気絶くらいはしてくれるかもしれんぞ」
「…忠告、感謝しておきます。ですが私もセイバーのクラスを授かった騎士、そう簡単には倒れません」
「頼もしい言葉だな…。ラント、お前は偶には男を見せろ。一撃で決めようとせず…な」
「(何故バレたし)…エヴァの頼みなら聞いてあげよう!」
「では両者、心行くまで楽しむがいい。―――始めッ!」
エヴァンジェリンの声が響き、同時に後方に跳んで両者は一メートルの間を十メートルほどまでに伸ばす。
アルトリアはエヴァンジェリンの忠告を聞いていたが、正直ラントがそこまで警戒する人物だとは思えなかった。
確かに変態面では十分警戒するに当たるが、戦闘となるとどうしてもラントが強いという感じがしないのだ。騎士王足る者慢心してはいけないのが常であるが、温い生活で気が緩んでしまったのか。
だがそれも無理はないだろう。ラントはそこらの一般人と変わらない存在として力を制限しているため、威圧やら風格やらなんたらオーラを纏っているわけでもない。
甲冑を着込んだアルトリアは見えない剣を構え、ラントは握った拳をピタッと横に付け鞘から剣を抜くように振り切る。その右手にはどこにでもありそうな鉄の剣が握られ、長さも一メートル程と特に気になる点はない。
「先手必勝ォ―――!」
ラントは両腕を上げて剣を上段に構え、地面を蹴って距離を詰める。
アルトリアは冷静に後ろに身体を引いて上段斬りを交わし、手首を狙って素早く一閃。
「セェイ!」
「っ!」
しかしラントは伸びていた手首を横にし、剣先で不可視の剣を弾く。
ただの剣に弾かれたのにも驚きだが、それ以上に間合いを完全に見切られている事に衝撃を受けたアルトリアは流石と言える足捌きでラントから少し距離を取り、躱わされたことで
「背後からとは卑怯とは思わんのかね!」
「なっ!?」
アルトリアは更に衝撃を受ける。
ラントは不安定な姿勢から正面に剣を薙いだ。薙いだ剣の刀身が消え、その刀身は出現する筈のない空間から姿を現しまたしてもアルトリアの剣を弾く。
「あぶ、あぶぶ、ぶへぁ!」
「くっ…」
アルトリアは追撃せず、結局足を絡ませ無様に転げ回るラントを見ながら考えを改める。
―――成る程、エヴァンジェリンの言っていた警戒というのはこういうことですか。気を引き締めなければいけませんね…殺すつもりで……あながち冗談というわけでもなさそうですね。それに、ほぼ初見だというのに
「いてて…騎士王が背後を取って一太刀浴びせようとするなんて…」
「いや、白兵戦では隙を見せたらそこを突くのが普通ですよ」
「騎士王のくせに…」
「騎士王関係ないですよ!」
「正面から打ち合わない騎士とかwww」
「―――」プッチン プリン
「騎士王は挑発に乗りやすい、はっきりわかんだねぃんっ!?」
疾風の如き速さでアルトリアはラントに急接近し、下段に構えた剣を切り上げる。
顎の先を数ミリ切られるだけで済んだラントは、襲い掛かるアルトリアの剣戟を全て受け止めながら徐々に後ろへと下がる。
「ちょ、まっ」
「ハァァアアアアアアアアアア―――ッ!!!」
剣と剣が激突し甲高い音が連続して響く。しかしそんな連撃の中でも、ラントは叫び声こそ上げれども全ての攻撃をしっかりと受けている。
怒りが徐々に収まってきたアルトリアは一旦距離を取り、剣を右腰に構え呟く。
「
全て受け切られるなら、受け切れない重さを叩き付ければいい。
アルトリアは剣に纏わせた風を解放し、破壊力を伴った推進剤として扱い弾丸のようなスピードでラントに切り掛かる。
―――受けれるものなら、受けてみろッ!!
鋭い眼光をラントに向けるアルトリア。しかしその一方で。
――― ニ タ ァ
ラントは、ねっとりとした笑みを浮かべていた。
「…ん……」
「お目覚めですか、アルトリアさん」
「チャチャマル…私はどうし、いっ…つ…」
「まだ少し休んでいた方がいいです。ラント様もゆっくり休ませておけと仰ってたので」
「彼が…。そういえば勝負…は、私の負けですよね…」
「残念ながら。しかし落ち込むことはありません。貴女は十分に戦いました」
「そうでしょうか。結局、エヴァンジェリンに言われた忠告を無視し奥の手は使わなかった…。それに彼は…笑っていました」
「それほど心躍る戦いだったということでしょう。今、お茶を入れますね」
アルトリアは異様に痛む全身の力を抜き、深く溜め息をつく。
手を合わせて、アルトリアにもラントの強さは幾らか解った。そして解ってしまった。自分がラントに勝てない事を。
勝負は意外とあっさりと終わった。
アルトリアが攻め入り黄金に輝く剣を切り下ろそうとした時、ラントは手に持つ剣を変形させ丸い盾を作り出した。
それまたなんの変哲もない盾なのだが、その盾に斬撃を防がれた瞬間、全身に吹き飛ぶほどの衝撃を受ける。その時点で意識を失っているアルトリアの身体は一瞬で上空へと打ち上げられ、地面に激突する前にラントがキャッチ。
というのが、勝負のラスト。
武器や防具の詳細などを知りたいところだが、それよりもまず頭から離れないことがある。
「何故、“何でも”なんて言ってしまったんだ…」
茶々丸がお茶を持って来るまで、悶々と後悔する騎士王さんであった。
戦闘がめんどかったわけじゃないんです。いや面倒ですけど。
今回は文字数普通だけど次はどうだろう。短いのがデフォだし…。
許しちくり~。