「………」
―――腹が立つ夢を見た。
「おはようございます、マスター」
眠気の覚めない頭を声のした方へ向け、ベッドに寝る少女…エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは一息付いてノロノロと身体を起こす。
エヴァンジェリンをマスターと呼ぶのは、魔法と機械をブレンドして作られたガイノイド(人型ロボットの女性型)である絡繰 茶々丸。エヴァンジェリンの
そんな彼女は現在、学校の制服に身を包み、未だ眠気眼状態なエヴァンジェリンの着替えを手伝う。
「マスター、ピシッとして下さい」
「うるさい」
そんなエヴァンジェリンの言葉を気にした素振りも見せず、茶々丸はエヴァンジェリンを制服に着替えさせ寝床である二階から降りて一階の台所へと向かった。
―――相変わらず、茶目っ気のない奴だ。
声には出さずそう思うも、別に茶々丸が嫌いなわけではない。寧ろ好きか嫌いなら好きの部類には入るだろう。
何故彼女がそう考えるのか。それはつい二ヶ月前にここ“麻帆良学園”の二―A(二ヵ月後の今は三―A)に着任・担任になった少年が原因であろうか。
少年の名は、ネギ・スプリングフィールド。父であるナギ・スプリングフィールドは
歳は十歳と若く、普通なら教員になれない歳であるが麻帆良学園を管理しているのは魔法関係者が多いので、そういった
まぁ、当然と言えば当然か。
勿論魔法を知らない学生・教員が多数を占め、普通のマンモス校としても機能している。
話を戻そう。
この二ヶ月間でエヴァンジェリンは、茶々丸が変化していくのではないかと少なからず期待していたのだ。
ロボットであるが故に感情はなく、ボケてもツッコミに困るものばかり。
ぶっちゃけ話が盛り上がらないのでつまらないのだ。
そこにネギという少年が現れ、茶々丸を接近させ様子を窺っていた。
―――あの
「茶々丸、お前は坊やについてどう思う」
「…? 歳相応で可愛らしいと思いますが」
此間と同じ回答じゃないか。と心で落胆。
所詮ロボットはロボット。心情の変化は得られないのか…恋心とか芽生えたら、結構盛り上がりそうだなーとか考える辺り、余程楽しみがないらしい。
その後二人はゆっくりと朝食を済ませ、遅刻ギリギリの時間に教室へと到着。
ちょっと前までは教室に入るどころか校舎内に入ることすらなかったエヴァンジェリンだが、ネギとの戦闘で負け出来る限り登校して来るよう約束してしまったのだから仕方がない。
席に着くなり頬杖を付いて騒がしい教室内を見渡す。
談笑する者、怪しげな機械を弄る者、読書する者、観光名所の雑誌を見る者、説教する者etc…様々な学生がチャイムが鳴るまでの間を楽しんでいた。
因みにこの教室、女学生しかいない。
麻帆良学園は全体を見れば男女混同なのだが、その中で男子校・女子校と分かれているため男女別学なのだ。
そんな所に仮にも男であるネギを放り込んでいいのか。そんな不安は頭のネジが数本弾け飛んだ変人…
お前等全員(ただし数名除く)ショタコンかよ…というのがエヴァンジェリンの素直な感想。ただ単に子供が好きなだけかもしれないが。まぁ
そんな事を考えていると時間は過ぎ、麻帆良学園全体にチャイムが鳴り響き一人の少年が教室に入ってきた。
「はーい、みなさん席に着いてくださいねー!」
ここ、三-A担任であるネギ・スプリングフィールド。
元気に生徒相手に話す彼の声をBGMに、エヴァンジェリンは頬杖を付いたまま窓を見る。
―――そういえば、あいつは今頃何処で何をしてるんだろうか。
彼女は夢に出てきた男のことを思い浮かべ、そっと目を閉じた。
受験中だというのに俺は何をやっているんだ。