週一を目標にしてるけど、四月からは難しいかなー。
エヴァンジェリン宅 地下の別荘内にて。
「うおっ、めっちゃ広くなってる!? 俺が渡した時は箱ティッシュ百個分くらいだったのに」
「何故箱ティッシュで例えた…」
呆れるエヴァンジェリンに対し少年、ラントは気にせず別荘内をうろつき始めた。
この別荘、ラントが昔エヴァンジェリンに玩具感覚であげた物なのだが、一緒に旅をしている間は数えるほどしか使っていない。
今では外の世界の一時間がこの別荘内では一日になるという設定にはなっているが、これはエヴァンジェリンが付け足したオプション(魔法)である。
そのオプションは時間変更だけに留まらず滝や池、湖や青々とした木々、極寒の雪原、灼熱の砂漠地帯など数多くのエリアが存在しているのだ。
別荘に入ると滝や木々など自然豊かな空間が広がるエリアへと転送される仕組みになっており、そのエリアから特定のエリアへ転送することが可能。
広さはエリアにもよるが、平均して東京ドーム十五個分はあるだろう。
「たっけーし…うわ、ちゃんと魚までいる。つーか広すぎ、よく飽きなかったな」
「誰かさんが“ちょっとピラミッド攻略してくるわ!”とか言い出して私を放置してな。結局数百年経っても戻って来ないから、暇潰しに手を加えたらこうなった」
「あ、もしかしなくても怒ってる?」
「怒ってない」
「ならいいや」
ごんっ! と鈍い音と共に、ニ・三百メートル下の湖を覗いていたラントの顔が、首を九十度曲げて縁にめり込んだ。
「年端かもない子供に手をあげるなんて…」
「お前今年で何歳児だ」
「まぁ確実に万は超えてるよね」
めり込んだ顔を何事も無かったかのように引き抜き、立ち上がってエヴァンジェリンに向き直る。
「で、暴れてもいい場所ってどこ? 流石にこの場でってことはないよね、近くにベッドもキッチンもテーブルもあるんだから」
「壊しても作り直せるがな。こっちだ」
エヴァンジェリンに案内され、ラントは鼻の中に詰まったコンクリートを吹き出しながら付いて行く。
それほど時間は掛からず、キッチンやベッドなどがある階の階段を上って行けばすぐに着いた。
「あんまり変わらないと思うの」
「この空間のどこで暴れようが直せば済むことだ」
「つまり決闘場みたいな場所は無いと」
「この景色に無縁だろう、そんな野蛮なモノは」
「まぁ、確かにな。…んじゃやろうか! 最初から全力で行く?」
「肩慣らしからでいいか? この学園に居る間、別荘以外では力を極限まで封じられてるんだ」
「あらま、それまたどうして」
「…後でな」
「(男絡みと見た)じゃあ取り合えず、肩慣らしに的を五十個ほどね。強度はどうする?」
「七割で」
「MAXに設定しまーす」
「おい」
睨み付けるエヴァンジェリンだが、ラントは目を合わせず鼻歌を歌いながら準備を始める。
準備自体は簡単なもので、右手の親指と人差し指で〇を作りそれを口元に当て、息を吐くだけ。
それだけでシャボン玉のような泡が平等な大きさ(大体野球ボールほど)で吹き出され、宙に舞う。
次にパン! と一回手を叩くと、その泡は急激に膨らみ形を成していった。
「両手の皺と皺を合わせて、幸せ(皺合わせ)…上手いこと言ったもんだよ、ガウェインは」
「その言葉、この間テレビで売れない芸能人が言ってたぞ」
「そんなことより撃ち落そうぜ!」
「撃つのはいいが…どうして全部お前の姿をしているんだ?」
泡は人型となり、気付けばラントと同じ姿をしていた。しかもそれが五十体宙に浮かんでいるとなると、流石に気持ち悪い。
「こっちの方が“うおーやるぞー!”とか“絶対に全部撃ち落してやる!”って気分になるかなと思って。こういうの嫌い? 嫌いだったら何の面白味も無い普通の風船にするけど」
「もう面倒だからそのままでいい。撃ち落せばいいんだな?」
「出来るだけ早くね。纏めて消してもいいし一個一個確実に消してもいいよ」
「分かった」
ラントがエヴァンジェリンより後ろに下がり、エヴァンジェリンは魔力を高め一発目の魔法を詠唱付きで発動する。
「リク・ラク ラ・ラック ライラック。来れ氷精 闇の精 闇を従え 吹雪け 常夜の氷雪――闇の吹雪」
イマイチやる気の感じられない声色と共に放たれたのは、全く真逆な荒ぶる魔法。
ドリルのように回転しながら黒い吹雪は的へと向かい、強力な力で破壊していく。
「ウボアー」
「ヤーラーレーター」
「あはぁ~ん」
「アーッ」
「シカタナイネ」
「ギンモチィイイイイッ」
「………」
「こらー、もっとやる気出せー!」
「………(チラ」
マジでこのまま続けんの…? とでも言いたげな表情を見せるエヴァンジェリン。その表情から察したのか、ラントは笑顔で答えた。
「音声付きなんだ、その方がやる気出るだろ?」
「やーいおたんこなすー」
「奴等は我が的の中でも下級の存在。倒したところで第十第十一の的が…」
「ヒンニュー」
「どうしてそこで諦めるんだそこで!」
「だらしねぇな」
「今の攻撃? そよ風かと思った」
「ロリババ」
「六百歳児ワロス」
「ねぇ今的に挑発されてるけどどんな気持ち? ねぇどんな気持ち?」
「―――――」
ブチッと、エヴァンジェリンの何かが切れた。
全てラントの声で再生される挑発に身体を震わせ、エヴァンジェリンは大声で叫んだ。
「いいだろう! ただの的がこの私に喧嘩を売るとは良い度胸だッ!! 最近鬱憤も溜まっていてなぁ、ちょうどいいから今ここで鬱憤を晴らさせてもらうぞ!!」
エヴァンジェリンはここにきて初めて詠唱の構えに入り、先程とは比べ物にならないほどのやる気で詠唱を開始した。
「リク・ラク ラ・ラック ライラック! 契約に従い 我に従え 氷の女王! 来れ!
エヴァンジェリンが使用する魔法の中でも上位であるこの魔法、発動地点から凡そ150フィート(大体47メートル)四方の空間を絶対零度にすることが出来る恐ろしい効果を持つ完全凍結殲滅呪文。
草木は白く凍り、滝や湖は形を保ったままその姿を氷に変える。
未だに浮かんでいる的だが、絶対零度の中では宙に浮いていてもその効果範囲からは逃れられない。
地面から突き出た氷の氷柱が数個の的を貫いている。
「全ての 命ある者に 等しき死を! 其は 安らぎ也! ―――終わる世界ッ!!」
怒号の詠唱が完了した瞬間、全ての的が一斉に砕け散り粗目のように降り注ぐ。
そして怒りで力加減を間違えたのか、150フィート四方の効果範囲内全てのモノも粉砕してしまった。
ゴゴゴゴ…と崩れ行く様子を眺めながら、エヴァンジェリンは荒くなった呼吸を整え一言。
「…私は悪くない」
では誰が悪いというのだろうか。
色々と独自設定入れてます。タグにも追加しとかないと。
戦闘? そんなの書いたら頭が沸騰しちゃうよぉ。
相変わらず行き当たりばったりだからストーリー性がない。まぁタイトル見たら分かることだよね。